凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法 作:けっぺん
週二くらいの更新は続けていきたいですがお約束は出来ませんので、気長にお待ちいただければと思います。
クーファが宿した、トロルの力。
注意すべきは巨体と怪力――だが、あまりにも度が過ぎていた。
「そら――これならどうだいっ?」
イリスティーラが黒衣を変化させ、霧の如く薄弱な黒い手を無数に伸ばす。
巨大な腕に纏わりつき、僅かにその動きは鈍った。
だが、完全に停止させるには至らない。寧ろ纏わりついた、霧とは思えないほどの重量を利用して、彼はさらに勢いの乗った薙ぎ払いでイリスティーラを襲う。
「ユーリ、今っ」
「うん――!」
腕を包む妨害を続けつつ、攻撃を回避するイリスティーラ。
やがて誘うように動きを鈍らせ、押し潰すように拳が叩きつけられたと同時、彼女はその全体を霧に変えて回避する。
鉄槌が尋常ではない衝撃を巻き起こす中で、僕は魔剣に水の属性を込めて砲撃を放った。
「む……」
この砲撃が持つ性質は、破壊力ではなく相手の妨害。スライムが如き粘度によって、大地と拳を接着し、その場に固定させる。
そうしている間に、クイールが彼の背後から迫る。
聖剣をより強く輝かせ、可能な限りの一撃を――叩き込むより前に、クーファは対処した。
「甘いっ」
「な……!」
押し付けられた拳から魔力を放つことで、周囲の地面を励起させ、自然の盾としたのである。
真下からせり上がってきた大岩に対し、クイールは咄嗟に聖剣を向け、破壊する。
そうしている間に、束縛していた液体を引き千切って脱出したクーファはその勢いのままにクイールに殴りかかる。
防げるか――という心配をしている暇はない。
助けに向かうことが出来ない以上、今この場で出来るのは、その隙を突くことだけ。
『――アドラ・エクスラッシュ!』
魔剣を持ち直し、火の魔力を込めて振るうことで、赤熱した斬撃が防壁を切り裂いて標的へと食らいつく。
その直後、クーファを中心に巻き起こった再三の衝撃がより苛烈な地鳴りとなって、周囲の地面を好き放題に爆発させた。
「クイールッ!」
「――大丈夫、です!」
クーファの強力無比な拳と、地面の爆発。
それらの中にいたクイールは、力を重視した巨大な外装を纏った上で、拳を受け止めていた。
――『マックスブレイブリー』。
クイール曰く、短期決戦用の巨大外装。聖剣ではなくその体を武器とする形態の発揮する能力であれば、クーファの攻撃を受けきることも不可能ではない。
「……驚いたな。逆に
斬撃は、不意を突くことは出来ていたらしい。
だが決定打にはなっていない。灰色の肌に目立つ一筋の痕からは、赤というよりは黒に近い血がじわじわと染み出していた。
「じ、十二分に、驚いてますよ……こんなメチャクチャできる相手とっ、戦うのは――! 初めて、ですか……らぁっ!」
自分を押し潰そうとする拳をどうにか押し返し、クイールは灰色の巨体を見上げる。
あれで素早く、細かな動きが出来るというわけではない。
しかし、それを弱点と感じさせない防御力と豪快な攻撃範囲。
短所を無くすのではなく長所を突き詰めることで覆い隠した、難攻不落の巨岩。
本来ならば……相手にするのが間違いだというほどに、馬鹿げた力の持ち主――それでも僕たちは、彼を避けては通れない。
「……先が思いやられるね。これで『ドム』だって? まあ上に行けば行くほど強いなんて、単純なものではないだろうが……」
黒霧が集まり、再び元の形を取り戻したイリスティーラは呆れた様子で自身の因子を再調整する。
ムルゼ霊山に辿り着くまでの間に、ある程度定まった連携の形。これは直接的な攻撃力に秀でたクイールを中心に、必然的に組み上がったものだった。
僕たちが協力して戦うならば、一つの中心となるだろう理想形。それで与えられたのが、斬撃一発とは。
「確かに、おれはこの山において最強にはなれない。一人を屠る力も、多くを破壊する力も、そして死なぬために最も重要な生命力も、おれでは及ばぬ高みがこの山にはいる」
「ぞっとする話ですね。あなたに勝てなければ――門前払いもいいところ、ってことですか」
「あくまで、未来を見据えるか。ならば、あえて言おう――そういうことだ。おまえたちが試練とやらで目指すものを、おれは知らない。だが、たとえばこの山を征するつもりならば、“話にならん”」
「……!」
「おれはおれの理由でおまえたちを打ち砕く。おまえたちがこれ以上何かを成したいならば、おれを踏み越えろ。もっと強い、絶対的な力でもって」
風の試練として倒すべき、最初の壁。
それを突き崩して進むには、今のままではあまりにも不足。
連携を強化する。攻撃の威力を向上させる。それを決定打まで持っていけるよう、総合力を引き上げる。
生半な妨害では彼は微動だにしない。
妨害をするにしてもより強固に、攻撃するならばより強力に。
それを極めれば、きっと倒せない相手ではない。
「望むところです――三人とも!」
仕切り直しとばかりに、クイールがこちらに戻ってくる。
それと同時に、巨大な外装は解れ、いつもの鎧に戻った。
あれはそう長く維持できず、さらに膂力を重視した形態。そもそもの力で相手の方が上ならば、緊急回避で役目は終わる。
「――使うのかい?」
イリスティーラの短い確認に、クイールは力強く頷く。
「はい。ただ、突破しきるのは難しいですね」
「なら、僕たちとイリスティーラで支援する。それから、妨害も」
「了解だ――精々私たちで、彼の足を引っ張ろう」
改めて方針を定め、イリスティーラがどこか楽しげに笑った。
先程の動きと、大きく何かが変わるわけでもない。しかし、こうして言葉を交わし合うことが重要なのだ。
互いの行動が何を意味するものなのかを意識して、信頼すること――それがより確たる連携に繋がっていく。
自分は自分のやるべきことを全うする、その動きを完璧に合わせるには、本来は相手の力も把握した上で、もっと綿密な話し合いがいるだろうが、当然そんな猶予はない。
上手くいくかは、やってみて確かめるだけ。
「リッカ、借りるよ」
「ん……構築は、私がやる。ユーリは戦いに集中して」
リッカから世界の彼方に伸びる、細い細いつながり、その一つを僕たちの可能性として手繰り寄せる。
向こうからの応答はない。あれから何度か試したものの、同じようにつながるには至らない。
ただ力を貸してくれるだけ。だが、それで十分だ。
『フィーチャリンク! U-リッカ――セプテニファ!』
虹色に光る彼女の力を、外装のさらに外側に纏う。
淡く輝く強固なプレートは単なる防具ではなく、彼女の能力が簡略化され、僕たちが使える形になったデバイス。
この形態――『セプテニファフューリー』が齎す力は“催眠”。対象の意識を操作して理想までもを書き換える、禁忌の術理。
……当然、この力を行使するのには抵抗がある。
しかしそれも使いよう。なにも、相手を操ることだけがこの力ではないのだ。
『……』
――魔剣からの、無言の抗議。
どうもラフィーナは、この形態で運用されることを嫌っている節があった。
そういえば、虹色の彼女に嫌悪感を向けていたのはアリスアドラをはじめとした他のサキュバスも同じだった、と思い出す。
……なんというか、サキュバスという種族と反りが合わないのだろうか。
申し訳ない、と思いつつも手放すことなく、魔剣を持ち続ける。
戦闘が終わったわけでも、魔剣が不要になったわけでもない。
何より、この姿は純粋な戦闘能力で『ユーリフューリー』に劣る。対応の選択肢を狭めることは出来ない。
「性質が大きく変わった……いや、増えたのか。不思議な力――む」
こちらを観察するクーファの言葉は、途中で止まる。
それまでよりも強く、大きく、一層勇気を高めたクイールに、ただならぬものを感じたのだろう。
「僕たちも、あなたの事情は分かりません。なのでそこは考えずに――僕たちの理由のために、あなたを倒します」
「互いに、それで良いのだろう。その上で信念をぶつけ合えば、戦士の対話というものは事足りる」
「……僕はそこまで、だれかの気持ちが分かる自信はないですけど。そう期待されたら応えないとですよね。なんてったって、僕は勇者ですから!」
クイールは高らかに剣を掲げ、宣言する。
彼女が誇る、勇者の姿。それはどこまでも眩しく、理想的な、物語の主人公そのもの。
頑なに貫き通して、内に蠢いていた余計なものも消え去って、より真っ直ぐな己の願いへと昇華された勇気。
今のクイールの輝きは、初めて出会った時よりもずっと強い。誰しもが当たり前に思い描く――真の勇者に相応しい光。
「聖剣ブレダリオン! 僕の……いえ、僕たちの進む道に祝福を! 立ちはだかるのがどんなに高い壁でも、破って進む力を! さあ、共に輝いて、世界を照らしましょう!」
輝きは聖剣あってこそ。己の象徴たる一振りを胸元まで戻し、その鍔に手を当てる。
『ブレイブコード! スタンバイ!』
過去の縛めから解き放たれたことにより、クイールが手に入れた更なる力。
それはクイールの信念の証明であり、聖剣の力と彼女自身の力が正しく高め合い、より“勇者らしい”姿を形作る。
黄金の鎧はより重厚に、そして一時の迷いから生じた黒さえ混ざり合い、力強い色彩が彼女の歩みを保障する。
これまでの外装と何よりも違うのは、金に縁取られた黒のマントと、兜の後ろから一房のポニーテールのように流れる勇気の魔力。
ドラゴンを模した、人間を超えた強者という印象ではなく――あくまで人間の極限としての在り方を強調した、クイールのための、クイールらしい戦装束。
――自身こそ勇者だと、これ以上ないほどに主張する。
――勇者でなければならないと、誰よりもその在り方を誇示する。
――勇者でありたいのだと、絶対的に宣言する。
それがクイールらしさ、彼女なりの我儘であるのならば。
やはり僕は同じようには輝けない。もしも、自分が答えに辿り着く前に、クイールがこの光を手にしていれば、羨望から過ちへと繋がっていたかもしれない。
――だが、今の僕にはこの輝きと共にあっても、霞まない理想の未来が見えている。
だから並び立てる。まったく別の勇者の形を、僕もまた誇らしく思っていられる。
『
周囲に過剰な程の魔力粒子を散らしつつ、魔法は実行を完了した。
燦然と輝く、クイールの勇者としての“究極”の姿。
それに並び立てば、負けるかもというネガティブな気持ちなど微塵も生まれない。
共に大きな壁を打ち砕こうと、強い気持ちが沸き上がる。
「――ぃよっし! 無敵! 不滅! 究・極・進・化ッ! これが僕の
マントをはためかせる
一種の自己暗示でもあるらしい、独特の語彙にイリスティーラは呆れ返る。
「……精神高揚は仕方ないことなんだろうが、キミその姿になると普段より頭が悪くなってないか?」
「普段からちょっと頭が悪いみたいな言い方しないでください! 勇者は自分を信じることが重要なんです! ユーリくんだって、頭の中で似たようなこと考えてるに違いないです!」
「考えてないから安心して」
多分、その考え方はクイールの描く勇者の形であればこそ、有効に働くものだ。
少なくとも僕が勇者らしく在るための意思の持ち方とは違うのである。
「先程までよりも、おまえたちの力が統率された雰囲気がある。ふむ――死力を尽くすべきか」
「それでこそ――こっちも限界以上ですから。さっきまでと同じと思ったら後悔しますよ!」
打ち勝つべき巨人が気を引き締め、その拳により力を込めたことを感じ取る。
死力を尽くすのはお互いさまだ。そうしなければならない理由があって、互いの未来を奪い合う。
一つの生存競争――ここからはそのクライマックスだ。
「さあ! ここからの僕は九百九十九パーセントです! 遅れずついてきてください! イリス、ユーリくん、リッカちゃん!」
もちろんだ、クイールがどこまで強くなろうとも、後れを取るつもりはない。
僕たちだって止まらない。必要があるならば、もっともっと強くなる。
力強く踏み出したクイールと共に、魔剣を握り込んで巨人に迫る。
そして、リッカが素早く構築を終えた、この形態が持つ特殊機能を実行した。
『Q-クエスター
【属性】勇気
【攻撃力】■■■■■■■■■
【防御力】■■■■■■■■■■
【素早さ】■■■■■■■■■
【魔 力】■■■■■■■■■■
【精神力】■■■■■■■■■
【マイティエクスペリエンス999】
異なる勇者との相乗効果によって覚醒した超経験増幅システム。
他者の勇気と同調し、能力を無制限に増強させ、スーツおよび肉体にそれに耐え得る強度を与える。
体の無事が保障されたことで出力の上限が解除された本機能は下限が百パーセントとなっており、装備者が望む限りどこまでも出力を引き上げることが可能。
その分、負担は“変身を解除した時”に戻ってくるため、限界は装備者本人が見定めなければならない。
可能と不可能の境目さえも無くした、真の勇者としての力。
【レジェンドブレダリオンアーマー】
真の勇者のみが纏うことを許される鎧。
無尽蔵に生み出される勇気の魔力を放出する機構が各部に備えられており、『マイティエクスペリエンス999』の出力に応じて強度と攻撃力を増幅させる。
攻撃を受ける際、自動的に魔力放出による威力減衰が発動し、可能な限りダメージを抑える機能も持つ。
【レジェンドブレダリオンローブ】
『マスターブレイブリー』における補助外装が変化したマント。
優秀な耐久力を持ち、受け止めた衝撃を勇気の魔力に変換し、再放出や周囲への散布を行うことができる。
強引な加速こそ出来なくなったものの、堅実で盤石な戦闘を可能とする攻防一体の装備となった。
【ハピネスアルティメリア】
装備者の勇気を成立させるきわめて強固な精神力に外装が反応することで放出される黄金の魔力粒子。
聖剣を含めた攻撃能力を上昇させ、相手に攻撃を命中させることで徐々に自身の攻撃への耐性を下げていく。
この粒子は他の勇者の勇気にも反応するため、複数の勇者による共闘で真価を発揮する。
【リブレイブリーダー】
余剰魔力によって形成される、後頭部から流れる一房の髪のような疑似感覚器官。
味方の意識の方向を大まかに把握するなど、感応・共鳴の支援を行い、自身の強大な力を他者と合わせやすくなる。
【ブレイブパーティアクセラレータ】
頼れる味方と共に戦うことを前提とした共闘支援システム。
一定時間ごとに各種強化魔法を味方全体に掛けるほか、的確な攻撃の連携が繋がるたびに全員の能力を引き上げる。
このシステムの発動時の契約魔法に同意した者を“パーティメンバー”として定め、支援の対象とする。