凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法 作:けっぺん
バチ、バチとミツカイの周囲で雷が弾ける。
本来空という高みから落ちてくるべきもの。
それが自分たちの立つ大地、真横から襲い掛かってくるという事象は、普通であればあり得ない。
だが、ここはムルゼ霊山という高みの大地。僕たちが今まで旅をしてきた場所からしてみれば、空と同じように見上げるべき世界。
――であれば、雷もまた、相対すべき敵なのだ。
「……防ぐとは思っていた。何故ならば、外より来たる者は悉く、この山の意に沿わないから。本当に、忌々しいったらない」
「……僕たちはここで負ける訳にはいかないんだ。キミがその首飾りを渡してくれないなら、僕たちはキミに抗って、奪い取る」
今の一撃には確かに殺意があった。
しかし全力ではない。当たれば御の字という程度の牽制だ。
こちらにもダメージはない、より苛烈な攻撃が来ようとも、立ち向かうことは出来る。
『I-スティーラー、ショー・タイム』
『マスターアップ! Q-クエスター!』
「必ずしもことを荒立てようという気はない。担当のミツカイ全員が、大人しくそれを渡してくれれば、私たちも可能な限りすぐ山を出るんだがね」
「といっても……交渉できるような感じじゃなさそうですけど」
外装を纏ったクイールとイリスティーラが並ぶ。
戦うしかないならば、打ち破って先に進む。僕たちの意思の表れを、両腕に雷を帯びさせたミツカイは不快そうに見つめていた。
「ふざけた鎧。そんなごっこ遊びで成立する外の民の試練か。さぞお前たちは優秀なのでしょうね。
「ごっこ遊びのつもりはないんですけどね……僕たちは全力、百パーセントです」
「あっそう。遊びじゃないならいいわ。そんな気概でこの山を荒らすなんて二度とさせない――そして、
――気付けば、周囲に何かが飛んでいた。
手のひらよりも小さな発光体。あのミツカイと同じ、バチバチと弾ける魔力を宿した極小の魔族。
一体や二体ではない。どこからか無数に現れたそれは、ふよふよとした不安定な飛行で、ミツカイへと近付いていく。
「これは、妖精……?」
「外の民は
彼女がハオカーと呼んだ小さな魔族たちは、誘われるように彼女の腕へと集まっていっては、その存在を散らして魔力の粒子へと変わる。
そしてその度に、彼女の腕を走る雷はより太く、迅く、強くなっていく。
――“充電”と気付いた時には、その両腕を超えて、彼女の周囲には雷の檻が形成されていた。
「っ!」
来る――こちらへの意識がより鋭くなると同時、魔剣を銃砲の形態へと変化させ、引き金を引く。
今度は先程のように、受け止めることは出来ない。集まってくるハオカーなる魔族の利用に気付いた時点で確信したのは、僕だけではない。
クイールとイリスティーラは先立って、それぞれ別方向に跳ぶ。
真っ直ぐにこちらに伸びてくる閃光は弾丸を容易く掻き消し、僅かに威力が削れた隙に魔力を吹き出して、上空へと跳躍した。
聖剣に魔力を込めたクイールに合わせ、魔剣をミツカイに向ける。
イリスティーラもまた魔道具を突き付けており、三方向から雷の檻を狙った状態。
ミツカイには焦りも驚愕もない。ただ、より強めた怒りをもって、僕を見上げていた。
「……日輪に届かない、炎如きが私を見上げるのね」
「え……?」
「地に足を付けて生きる者が、翼さえ持たない者が、空への畏敬を持たないなんて。お前はどこかで、それに足る力を示したというの?」
飛行していることに怒っている、のだろうか。
まるでクイールやイリスティーラなど存在しないかのように、ミツカイは怒りと疑問を僕にぶつける。
「外の民にとって、自然とは何? 我らの主と異なれども、高き者への祈りは? 信仰さえ存在しないと? 度し難い上に悍ましい――ここまで認める価値のない愚か者だとは、思わなかった」
「――!?」
雷の檻が肥大化する。
イリスティーラの放った弾丸さえ容易く呑んだ球体から、再度僕に向けて放たれる電流。
外装によって補強されていなければ到底見切れなかっただろう速度のそれに弾かれるように、体は地面に叩き落とされる。
「そう、それでいい。覚えておきなさい、外の民」
――素早く立ち上がった時には、球体が空へと舞い上がっていた。
ミツカイを覆い隠す三メートルほどの雷球は、そこから飛び出した巨大な“片脚”から伸びる、鋭く尖った黒曜石のような四本の爪でドラゴンを吊り下げ、ゆっくり空へと上昇していく。
雷球の左右には、一対の巨大な翼。
先端が僅かに翠緑に染まった、雷球と同じくらいの大きさのそれは、羽ばたくことさえなく飛行を成立させ、表面に雷を走らせている。
完全に変質した訳ではない。
それは、あくまで片鱗。全てのミツカイがそのように出来るかは定かではないが、彼女は雷球の中で肉体の一部のみを変えている。
巨大な翼と、片脚。それらから感じられる力の圧は、非常に分かりやすいはっきりとしたもの。
個体が持つ特異性ではなく、彼女が宿したその種族に共通した、強大な力。
「――星とは、仰ぎ見るものよ」
雷球の、更にその上に現れて纏わりついていく、やはり雷を帯びた黒雲。
纏う雷から零れるように、ハオカーと呼ばれた魔族たちが次々と生まれては、その威容の彩りに加わっていく。
「これって……」
『……ドラゴンだのとんでもトロルだの……何なのよ、この山……雷を操る種族は、数こそ少ないけど幾らかいるわ。ただ、あの爪と翼なら一つに絞り込めるわよ』
呆れた様子のラフィーナにも、相当の緊張があった。
ただの獲物にしか見えないドラゴンを鷲掴みにする光景だけで、強力な種であることは見て取れる。
では、それはなんという名の種族なのか。
ラフィーナとイリスティーラ、そしてリッカも同様に思い至ったようで、同時に呟かれた。
――サンダーバード。
「ッ!」
バチリ、と真上の空が弾けた。
咄嗟に後方に飛べば、それまで立っていた場所に一筋の光が落ちてきて、大地に罅を入れる。
一発ではない。高度を上げるミツカイを中心に広がった黒雲から無差別に落ちる雷が、次々と大地を砕き始めた。
「然り。空の瞬きを横に見るなど許されない。仰ぎ、武器を捨て、そこにひれ伏せ。なればその存在、痛みさえ感じない刹那で刈り取ってあげましょう」
荘厳に感じるほどの、死刑宣告だった。
近付くことさえままならなくなった雷の中から、“山の秩序”の声が降り注ぐ。
「今を生きる
ミツカイの最高位――セラ。
この山に生きる者の中でただ一人しかいないというその階級は、彼女の誇りと責務そのもの。
そして、その冠名に恥じない圧倒的な力を持つ、彼女が宿した魔族こそが、リッカたちが言い当てた“サンダーバード”。
片脚でドラゴンを持ち上げる膂力と、あれだけの雷を操る技量を併せ持つ種。
「リッカ――」
「……大丈夫。もう、ユーリはあれに負けないくらいの強さを持ってる。ただ――」
雷の放射を、彼女の真下に潜り込むことによって回避し、翼に向けて砲撃を放つ。
しかしミツカイはハオカーを使い魔の如く操り、数体を“圧縮して”形成した防壁でそれを防いでしまう。
イリスティーラによるドラゴンの熱線は降り注いだ雷によって相殺され、クイールに対してはハオカーたちが常に追い回すことによって接近を許さない。
「ふん……」
持ち上げたドラゴンの陰に隠れるように立ち回っていたことを煩わしく思ったのだろう。
ミツカイは食い込んだ爪を引き抜き、焼け焦げた巨体を落としてきた。
そして真下から退避したところに伸びてくる光の柱――回避するのは難しい。
『U-リッカ――セプテニファ!』
幸いだったのは、その不意打ちの意思を読み取れたこと。
退避と共に実行した形態変化の完了は雷に間に合い、左腕の盾でそれを受け止めた。
「――この威力は、受け続けるのは厳しい、かも」
「そう、みたいだね……!」
『セプテニファフューリー』が催眠能力に加えて長所とする、堅牢な防御力。
盾を使って受け止め、減衰させてなお、体の芯まで震えるような衝撃だった。
これを受けるのは、リッカにも相当の負担となる。
回避を徹底、或いは、こちらが積極的な攻勢を移れるよう戦況を作ることが望ましいが――それも、そう簡単ではないらしい。
盾としての運用から、催眠を扱うデバイスに切り替え、実行する。
こちらへの攻撃を停止する指令を、ミツカイは意にも介さず、僕たちは再度の攻撃を受け止めることになった。
衝撃に弾かれることで威力を可能な限り受け流し、体勢を整える。そこに霊体のような軽さに己を変質させたイリスティーラが駆け寄ってきた。
「――どうだい?」
「……効いてなさそう。多分だけど、こっちを“殆ど意識していない”から、かな」
この形態による催眠の実行は、僕たちにとっての必勝パターンともなり得る。
それだけに、彼女も期待していたのだろう。
催眠は向けられた意識を操作するもの。僕たちが何をしているのか、向こうが気にも留めていないならばそれほど有効に作用はしない。
戦いへの心意気として在り得ざることだが――いや、そもそも、戦いとすら見ていないのだろう。
今の彼女が行っているのは、山の穢れを濯ぐ掃除のようなもの。
その油断を突く、或いは、敵としてより強く意識させる。
それが出来れば形勢を変えるきっかけとなる、のだが。
「当然。高き者が、弱者の行動一つ一つに注視するものか。お前たちの行動は、悉く穢れを受け入れんとする度し難い抵抗――それ以外の意味を、私が理解する義理はないわ」
「ここまでひどい高慢がこっちの益にならないことがあるかい……!?」
僕たちが何をしていようと、その仔細に興味はない。
どうあれ、彼女はその抵抗全てを叩き潰すだけ。
油断というレベルではない、本来ならば僕たちの有利に働きかねないものだというのに、“催眠を行使する”という一点に関してはその限りではない。
最低限、こちらを脅威と認識する程度には、彼女を追い込まなければこの形態の優位性は発揮できないだろう。
「わわっ……! さ、三人とも! ヘルプお願いしますっ!」
「チッ……シンプルに強力な魔族ってのはこれだから! こういうのはクイール頼りなんだが!」
ハオカーを操ることで形成された、小さな雷の球で囲まれるクイール。
その包囲網に魔剣を向け、風の魔力を充填する。
「行け――!」
『バラーズ・エクスバスター!』
増幅した魔力が拡散し、細かい弾となって射出される。
ミツカイ本体はともかく、使役するハオカーたちはそれほど強力な存在ではない。
包囲網を撃ち抜いていけば、そこから脱出したクイールが高く跳躍して脱出――その姿は、マントをなびかせる“究極の姿”へと変じている。
「ありがとうございます、ユーリくん! ここから先は……九百九十九パーセントですっ!」
「小賢しい……!」
聖剣を振り抜き、クイールはその魔力を解放する。
あの姿で発揮できる最大の威力でこそないものの、それだけで通常の姿で振るう聖剣の出力を大幅に超えた、反動を度外視した一撃。
それにミツカイは初めて“向き合い”、正面にいた多数のハオカーを圧縮する。
好ましい状況とは言い切れないが、意識がこちらから外れた。あそこまでの威力を見せれば、あのミツカイといえど、手を抜く訳にもいくまい。
ならば、僕たちはその背を狙うだけ――互いの動きに合わせた連携が、今の僕たちの力となる。
『U-リッカ――フィルミナイ!』
形態を切り替え、僕たちに力をくれた、もう一人の“彼”の外装を装着する。
右腕の注射器を構え、工場が如き機能をフル稼働させ、僅かな隙で完了できる最大限の調合を行う。
「よし、ユーリくん、私に続くんだ!」
「わかった!」
『ファイナライズ、レディ』
『ファイナライズ! アクセプション!』
クイールの聖剣の輝きと、ミツカイの放電がぶつかり合う。
その背に向けて、イリスティーラが魔道具を、僕が右腕の装備を突き付けた。
『キメラ・エクスプロージョン』
『フィルミナイ・エクスタシーッ!』
背にも走る雷をイリスティーラが放った光弾が引き剥がし、続くように完成した魔法薬を射出する。
魔法薬を相手に撃ち込むという、『フィルミナイフューリー』の唯一の特性。
この姿が必殺技として有するのは、魔法薬をコーティングし、弾丸として放つすべ。
貫通性を増し、より確実に相手に届くよう十全な保護を施された魔法薬は、爆風の中に飛び込んで、寸でのところで異常に気付き動こうとしたミツカイの肩を掠める。
「ッ……!?」
その傷に僅か染み込んだ
聖剣の輝きを相殺し切った直後の体のぐらつき。
翼を痙攣させるその体の失墜を――すぐさま真下に集まったハオカーたちが、“雷の足場”を形成することで防いだ。
【セプテニファフューリー】
高い防御力と催眠を武器とする『ユーリフューリー』の派生フォーム。
催眠は強力だが、弱点も多い。抵抗するには高い精神力が必要。
高すぎる精神力で無効化されるのは当然だが、一定以上の精神力を持つ対象が、自身の動きを細かく認識しないレベルで油断していると、暗示さえ認識されない場合もある。
「イッチと勇者くんも強くなったしそんなレベルで油断されないじゃろ」とは自社の主力製品を社長特権でカスタマイズしてユーリたちにぶん投げてきたとあるサキュバスの言葉である。
【フィルミナイフューリー】
魔法薬の調合を武器とする『ユーリフューリー』の派生フォーム。
機能の全てが魔法薬の取り扱いに特化しているため戦闘能力は低いが、『セプテニファフューリー』で対応できない、高い精神力を持つ相手へのデバフ付与が行える。
「変質からの保護とか自動調合は知らん。そんなんあったら俺も苦労してない」とは停止した世界で人類の遺産を保護し、発展させることによる“事実上の救世”を成し遂げたとある月面移住者の言葉である。