凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法   作:けっぺん

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もう一つの試練

 

 

「よぉ。随分と激戦だったようじゃねえか、らしくもない。この洞穴が崩落して死ぬんじゃねえかと思ったぞ」

 

「あなたのジョークは共感できなくて笑えないわ。……躾のなっていないトカゲ共よりは骨があったわね。仕留め切れていないみたいだし」

 

「逃がしたのか? 我らの秩序は不調と見える。よほどその首飾りは重荷になったか」

 

「“外来種”の低俗な催しに付き合わされる身にもなりなさい。あなたみたく、気軽にこれを手放せる立場じゃないのよ」

 

「おっと、お見通しか。だがまあ、許せよ雷。ああいう生命の足掻きは、俺の眼には眩しく映るものだ」

 

「使命を放棄したとはいえ、日輪(イソラ)が誰かを眩しがるなんて、あってはならないこと。民に聞かれたら侮られるわ」

 

「別に俺は気にしねえが――そもそも、ここに近付き、踏み入る物好きなんて皆無だ。閑古鳥の一羽も寄ってこねえ」

 

「サンダーバードが寄り付くフェニックスのねぐらよ。そんなところに飛んでくる閑古鳥がいてたまるものですか」

 

「違いない。外の民だのクギミゴだのは寄ってきたがな」

 

「……岩室の何たるかを知る筈のクギミゴめ。何処に行ったのやら……緊急転移を仕込んでいる辺り、外の民を放り出して逃げ果せるつもりだったのが小賢しいわ」

 

「危機管理が出来ている証拠だ。さぞ外で苛烈な環境にいたんだろうさ」

 

「山に踏み入る免罪符として使命を掲げたのなら、それは全うすべきよ。ミツカイであるか否かに関わらず、一つの生命として。それすら投げ出して自己に執着しようなど、そんな意志薄弱な小娘、生きる価値すらないわ」

 

「――お前がそういうのならそうなのだろう。お前は正しい。肯定されるべき、ムルゼの秩序だ」

 

「ええ、そうよ――その通り。私は正しい――私こそが正しさ。如何な狂飆にも揺らがない、穢れなき黎明の星。そうよね、日輪(イソラ)

 

「お前は星だ。ミツカイ誰しもが見上げる星だ。その失墜は、誰も見たいとは思うまいよ」

 

「もう二度と墜ちることはない。……あなたは助けたようだけど、私は連中をすべて殺すわ。どうか、悪く思わないで」

 

「“セラ”の決定に異を唱える“ケル”はいない。お前はよく知っているだろう。俺は俺の価値観で自由を行使しただけ。ミツカイの自由は、上から塗り潰されるものだ」

 

「それを認識した上での行動だったならば、私は何も言わない。――不快なものね。この岩室に、自然に反した色がこびり付いているのは」

 

「外の民の歩みの果てだろう。俺たちとは違う、変革の風だ。少なくとも俺は気に入った。主の齎した銀色とは調和しなさそうなのが残念だ」

 

「……今日のあなたは随分と失言が多いわ。ムルゼの賢者の言葉は、決して安いものじゃない。そこだけは、強く自覚しておいてほしいものなのだけど」

 

「元より“お喋り好き”なんだ。癖なんてもんはいくら死んでもなくならない。魂の根っこが同じな限りな」

 

「いくらでも死ねる命など、それこそあなたや真正のフェニックスくらいよ。それ以外の死に還りなんて、節理(ルール)に反した愚行に過ぎない」

 

「どうだかな――ともかく。この色はこのまま進めば、またムルゼを変える。あれから四度目の風だ」

 

「変えさせない……この山に吹く風は、私の羽ばたき一つでいい」

 

「ならばそれを期待して、見届けよう。ミツカイの誇り、守って見せろ、強きテオトル」

 

「ええ。……また来るわ。次は、全てが終わった後。今は忙しいの。連中を探すのもだし――恵み(トカゲ)を各地の集落に分け与えないと」

 

「あれだけ雷落とせば大量だろうな。ちゃんと中まで焼いたか? あの毒血は俺でも堪えるし、最近の流行は“よく焼き(ウェルダン)”なんだろ?」

 

「トカゲの焼き加減に流行も何もない。その他の獣肉の話なら好まれる傾向にあるのは“そこそこ焼き(ミディなんとか)”らしいわ。まったく……日々の食事にも娯楽を見出せる程度に民が腑抜けているようで何よりよ」

 

「探求は若人の特権だ。責務を持たない者に許された自由――お前にも益があるんだろうし、楽しんでおけよ」

 

「繊細な味は嫌いなの。あれを感じ分けて楽しむとか、一生理解できそうにないわね」

 

 

 

 

 

 

 

 

「――行ったぜ。もう出てきていいんじゃねえか」

「よっ……と……いやあ、助かりました。というか、助かったことがまだ半信半疑ですけど」

 

 こちらに向けられた言葉で、ひとまず危機を脱したことを把握する。

 決して熱くない、包まれていれば奇妙に気持ちが安らぐあたたかな火の中から一歩外に踏み出せば、そこは薄暗い洞穴の中。

 岩肌を照らすのは、今出てきた小さな焚火だけ。

 背負ったリッカちゃんは……まだ気を失っているけど、とりあえず無事。

 “僕たち三人”が入れる空間など明らかにないその火の中から、一つ遅れてイリスも出てくる。随分と険しい表情だった。

 

「ああ、くそ、因子がぶれる……軽い冥界下りの気分だ。しかも私たちのところとは領地が違う、長く浸っていたらどうなっていたか……」

「冥界ソムリエかよ、お前。まあ、慣れ過ぎないに越したことはないが。死んだ時にそっちの冥界に拒絶されても困るだろ」

 

 イリスとミツカイの会話は、最近よく聞くようになった冥界のこと。

 正直、僕はよく知らない。あらゆる生命が、死んだ後に魂を休める場所……だとかなんとか。

 歩いて辿り着く方法も無くはないのだが、命知らずを通り越して、よほどトチ狂ったバカでもなければ踏み入ろうとは思わない場所。

 死者には安寧を与え、生者をも歓迎する、この世界の中で違うルールを持つ領域。

 そんな風にイリスが長く解説していた覚えがある。

 

 僕からしてみれば、ルールが違う場所というのならば町と外だってそうだし、このムルゼ霊山だって当て嵌まる。

 イリスの言うルールとは、もっと根本的なものなんだろうけど、理解するには少し難しかった。

 昔から僕は感覚派。知識をもって理解するのは、どうにも慣れないのである。

 

「それで……どうして助けてくれたんですか?」

 

 振り向いて、今出てきた焚火に向かって問いかける。

 

 ――少し前、風の試練の案内者だというジルちゃんに連れられてやってきた、ムルゼ霊山中腹にあるこの洞穴。

 焚火の姿で揺らめく彼は、本来ならば僕たちが戦うべきだったミツカイだ。

 しかし、フェニックスを宿すのだという彼は戦うことなく、僕たちの目的である首飾りを渡してくれた。

 協力的、とはいえそれ以上は関与しない。そんな風に思っていた。

 

「ん? “次の縁は案外近い”っつって送り出した連中が数十分で戻ってきたら、流石にちょっと心配にも思うだろ」

「……ごもっともです」

 

 洞穴の外に出て、すぐに出会ったもう一人のミツカイ。

 位階は“セラ”――つまり、ミツカイの中でも最も立場が上の存在。

 彼女は強かった。決着とまではいかなかったけれど、結果としては敗北……といってもいいかもしれない。

 凄まじい威力の雷が飛び交う中で、仕掛けられた攻撃は多くない。

 ユーリくんたちの力で一時的に追い詰めることは出来たものの、介入してきたドラゴンたちを倒している間に態勢を整えられてしまった。

 

 そして、ミツカイが必殺の一撃として放ってきた、それまでとは比較にならない雷。

 僕なりの“究極”に至った姿でさえ、まともに受けたくないと思えるほどのそれは、一帯を巻き込み吹っ飛ばしかねない威力だった。

 ユーリくんが受け止めてくれている間に、気を失ったリッカちゃんを回収してどうにかこうにかこの洞穴に避難し、見かねたらしい焚火のミツカイに匿ってもらった……というのが顛末である。

 

「しかし、フェニックスだのサンダーバードだの……キミたちはこの山を出たことがないんだろう? ある程度知っていたつもりだが、どうなってるんだい? この山の生態系は」

「これだけ広い山なんだ。生息する命も混沌をきわめる。他にも色々いるぞ、ヒッポグリフとかモー・ショボーとか」

「特殊な鳥類保護区か?」

 

 ……これだけドラゴンがいたら、そういう鳥型魔族は保護出来ないのではと思う。

 ヒッポグリフは昔絵本に出てきたような。モー……なんとかは確か、この山に到着する少し前に戦った魔族だ。

 ゴーストの変質で、人間を襲って頭を割ってしまうという凶暴な鳥。

 何故か女の子の姿に化けてユーリくんをひたすら追いかけ回して、そこそこ大変な事態になったのは記憶に新しい。あの日、リッカちゃんが終始不機嫌だったのと、イリスが浮かべていた何とも言い難い微妙な表情は印象的だった。なんだったんだろう。

 

「っ……」

 

 もそり、と背中が少し揺れた。

 よかった――気付いたようだ。目が覚めるのは……一つの懸念が解消されてからの方が、良かったかもしれないけど。

 

「……? ――――ッ!?」

「っとと、お、落ち着いてくださいリッカちゃん! 下ろしますから!」

 

 目覚めて、僕に背負われているという状況を理解してすぐ、リッカちゃんは僕の背中を押して抜け出そうとする。

 力こそ弱いけれど、僕も外装を解いたばかりで、少し休まないとリッカちゃんの抵抗でも厳しい。

 ゆっくりとその身を下ろせば、足が地面につくや否や、飛び退くように離れてしまった。

 ……分かってはいたけど、まだまだ警戒されている。というより、信頼されていないらしい。

 

 一緒に旅をするようになってから、それなりに経つ。

 ある程度、リッカちゃんとも話せるようになってきたのではという自負はあった。

 とはいえそれも、やはりユーリくんがいたからこそ。

 リッカちゃんが信頼を置いているのは、ユーリくんのみ。彼が信じるから、自分も“警戒するだけ”に留める……それが、リッカちゃんなりの譲歩なのだと思う。

 

「キミの杖はここだ。目の前に落ちてきたから、回収しておいたよ」

「……」

 

 イリスが杖を差し出せば、リッカちゃんはそれを素早く奪い取る。

 あれはリッカちゃんにとって、とても大切な杖だ。

 そもそも僕がユーリくんたちと出会ったのは、あの杖が魔族に奪われて、取り戻す対価として聖剣を求めたから。

 どういう杖なのかって聞けてはいないものの、ユーリくんもあれを強く大事にしている節がある。失くして良いものではないだろう。

 

「……ユーリ?」

 

 洞穴を見渡して、ぽつりと信頼の拠り所の名前が零れた。

 当然気付く。気付かない筈がない。そして、それは僕たちも向き合わないといけない事実ではあった。

 

「――リッカちゃん。さっきまでのこと、覚えてますか?」

「……」

「さっきのミツカイとの戦い、その最後の雷は、対処が難しかった。ユーリくんが受け止めてくれている間に、僕たちは避難しました。その途中で、投げ出されたリッカちゃんを受け止めましたが――ユーリくんとジルちゃんは、来ていません」

「――――」

 

 それを告げた瞬間、血相を変えて飛び出そうとしたリッカちゃんの腕を慌てて掴み、止める。

 

「ッ、離してっ」

「今外に出ても、ユーリくんがいないんです、まずは僕の話を聞いてください!」

 

 苛立ち以上に焦りを見せて、手を振り払おうとするリッカちゃん。

 今の彼女は、落ち着いてと言って落ち着いてくれるような状態ではないが、それでも外に走らせるわけにはいかない。

 

「いいですか? 僕の外装の力で、協力体制だったユーリくんがどこか、戦場の外に転移したこと――その瞬間まで生きていたことは確認しました。まだ最悪の事態にはなっていない可能性は高いんです」

 

 共に戦う仲間との連携を強化する、僕の外装の新しい力。

 それにより漠然と伝わってきていたユーリくんの最後の状態は、ダメージこそ大きいものの限界には至っていなかった。

 ジルちゃんが用意していた何らかの手段によって彼女と一緒に転移して、そこからは不明。

 悪い言い方をすれば――ユーリくんは孤立してしまったということ。

 魔族と一緒の可能性が高く、傷を負っていて、しかもリッカちゃんがいないことで外装の大部分も使えない。

 

「ユーリくんとの合流は最優先です。ですので――」

 

 間違いないとも。もう、僕一人で勇者として、使命を果たそうだなんて思わない。

 魔王を倒すには――もっと言うと、風の試練を突破するのだって、ユーリくんとリッカちゃんの力は必要なのだ。

 だから、そのための最大の関門。

 これに比べれば、首飾りを持った強力な魔族と戦うなど、なんてことはない。

 

「僕を信じて、一緒に来てください、リッカちゃん」

 

 ユーリくんのいない状況で、リッカちゃんからの、真の意味での信頼を得る。

 それが、僕に与えられたもう一つの試練だ。




【ユーリ、ジル】
行方不明。

【クイール、イリスティーラ、リッカ】
雷のミツカイが放った一撃とのぶつかり合いで気を失ったリッカをクイールが回収。
周囲を雷が埋め尽くす前に岩室に避難し、日輪のミツカイの助けによってひとまず危機を脱した。

【モー・ショボー】
人の住む町の近くに現れる鳥型魔族。
幼くして死んだ少女の妄念が魔族に変貌するという性質から、ゴーストの一種とする見方もある。
恋を知らずに息絶えた未練から、男性の旅人を探して襲い掛かる。
人間の頭蓋を割って脳を食べる凶悪な一面と、死ぬ前の少女の姿を可能な限り想起して不完全な人型に化け、好みの男性に求愛する一面を持つ。
後者の場合、その個体に害意はなく、上手く向き合えば心を満たして消滅するという。
ムルゼ霊山に向かう途中、ユーリたちが出会った個体は後者だったのだが、鳥型魔族に迫られることに軽くないトラウマを持つユーリ(+モー・ショボーの性質を知っていたためキレたリッカ)により撃破された。
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