凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法   作:けっぺん

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早いもので、投稿し始めてから一年経ちました。
皆様の評価、感想等、いつも励みになっております。
最近更新ペースが週一になってしまっていますが、出来る限りこれ以上遅くならないよう努めていきますので、今後ともよろしくお願いします。

また、一年経ったらネタばらししようと決めていたので匿名も解除します。


暗夜R:希望への第一歩

 

 

 ユーリくんがいない――つまり、リッカちゃんが戦闘に参加できないこの状況。

 何が問題かといえば、戦うべき状況になった時、僕が突貫することができないということ。

 基本的に、僕の戦い方は聖剣を用いた近接戦闘だ。

 この聖剣はユーリくんが使う、ラフィーナちゃんの魔剣のように、砲撃ができる形態に変形することはない。……いや、多分、剣が変形することの方がおかしいと思うけど。

 僕の外装にも、遠距離攻撃の手段はある。けれど、聖剣が引き出せる出力と比べると、どうしても劣る。

 あまり強くない魔族であれば、それだけでも対応できるものの、この山に棲むのは、魔族の中でも上から数えた方が早い種ばかりである。

 

「クイール! そっちに行ったぞ!」

「――――――――!」

「っと、と……っ!」

 

 出来る限り、強大な魔族には会わないように、慎重に。

 そんな風にユーリくんのところに行こうと努めていたのだが、そんな中で出会ったのが、樹木をなぎ倒して迫ってくる巨大イノシシだった。

 ドラゴンのたくさんいる山の中で、ひっそりと生きることを選ばず、力でのし上がることを選んだのだろう。

 体中が傷だらけ、牙は折れまくってその度に新しいのが生えてくることで、口からはねじ曲がった牙がまるで剣山みたいに生えた姿は、並のドラゴンより恐ろしい。

 まあ……とはいえ、やっぱりドラゴンに比べれば、単調な分助かったりもするけれど。

 

「リッカちゃん!」

「ッ――!」

 

 傍にいたリッカちゃんを抱き上げて、『究極(Xtreme)ブレイブリー』の出力を抑えつつ跳躍する。

 リッカちゃんが身を竦ませているのが罪悪感を煽った。現在進行形であのイノシシより僕に怖がっている気がしないでもない。

 ――であるならば、少しでも早く、この戦闘を終わらせる。

 

「そら!」

 

 僕に向かって突っ込んできたイノシシが真下を通り抜けたタイミングで、外装を変質させたイリスが仕掛ける。

 腕から伸びる、吸盤の無数に貼り付いた、真っ黒な触手。

 確かあれは……そう、スキュレーだ。海にいる珍しい魔族みたい。クラーケンとは違うのだろうか。

 

「――――――――!?」

 

 片足を絡め取られ、バランスを崩したイノシシは思い切り転倒する。

 それだけで辺りの木々を巻き込んでへし折っているのだから、直撃すればひとたまりもなかっただろう。

 

「リッカちゃん、しっかり捕まっていてくださいね」

 

 あの分厚い毛皮の鎧を破るならば、やはりこれが一番確実。

 リッカちゃんから離れることが出来ないなら、抱えたままやればいいのだと、自分を納得させる。

 ……体が弱いみたいなので、衝撃については十分に気を付けつつ、魔力の障壁で身を護ることを優先しておいて――

 

『ファイナライズ! スタンバイ!』

 

 身動きの取れないイノシシの体のど真ん中に聖剣を投げつける。

 そうすれば、聖剣は自ら放つ勇気の魔力で結界を構築して、対象を拘束する。

 必勝の機は、絶対に決められるタイミングで。その上で、僕に出来る最大火力を。

 力を足先に込めて、僕自身を聖剣に続く第二の矢にする。

 

『――究極(Xtreme)・エクストリーム――!』

 

 ――別に隠すわけではないものの、僕にとって一番の威力がこういう形になったのは、ユーリくんたちに影響されている。

 土の試練で手に入れた、新しい力。真の勇者として立ち上がったユーリくん。

 そのナディアちゃんを救った時の輝きに、僕は魅せられたのだ。

 

「やあああああぁぁぁぁ――ッ!」

 

 望むものを掴み取る、一筋の流星。それは勇者としての在り方の理想に近い。そう感じた。

 初めて使った時――つまり、イリスとの喧嘩の時、僕はまったく無意識に、こういう形での力の行使をした。

 力を使い切ってまるで動けなくなった僕に、あまりに野蛮だと文句を言ってくる満身創痍のイリスだったが、それはきっと、あの輝きを知らないから。

 これぞ勇者の必殺技なり。僕はそう思い至ったのである。

 

「――――――――!」

 

 勇気の魔力が爆発する中で、マントを盾にしてリッカちゃんを守る。

 ……よくよく考えれば、結界の要領で保護しておけば良かったのかと今更ながらに思った。

 

「……リッカちゃん、大丈夫ですか?」

「……っ」

 

 小さく、リッカちゃんは頷く。

 そこそこ激しい動きになってしまった。少し息を荒くしているリッカちゃんは、懐から取り出したハンカチで口元を覆った。

 確かあれは、リッカちゃんが故郷の村のもう一人の幼馴染に貰ったもの、なんだっけ。

 特別な植物の、葉っぱの魔力を縫い込んであって、呼吸を落ち着ける効果があるんだとか。

 ユーリくんから聞けた話でしかないけれど、ユーリくんも、リッカちゃんも、その幼馴染をとても大切に思っているのは伝わってきた。

 このハンカチは杖同様に、リッカちゃんが大事にしているものなのだろう。

 

「ここまでやる必要があるかい?」

「どんな特性を持った魔族か分かりませんからね」

 

 外装を解いて歩いてくるイリスは呆れ顔。

 確かに、見た目通りの相手であれば、ここまで威力を出さなくても倒せたと思う。

 けれど、再生力を持っていたりしたら困る。僕のやり方は理に適っている筈である。

 

「獣型がそこまでの再生力持っている訳ないだろう……」

「エルフだってイリスほどすぐに傷が治ったりしないですよ」

「それとこれとは話が別だ。自己を改変するイノシシがいて堪るか」

 

 うーん……いるとは思えないけれど、誰かに改造された、とかならどうだろうか。

 イリスは他者をそういう実験に巻き込んだりはしない。自分のやることは、自分が負って然るべきだからという信条があるから。

 だがそれは、探求者という存在の中でも少数派。

 大抵そんな存在は、いわゆるモルモットの“消費”を気にしないものだ。

 いや、実際に出会ったことはない訳だけど。

 

「見てみれば分かるよ、このくらい。魔力をたらふく摂取して変質しただけ。元はただのイノシシだ」

 

 イリスは焼き焦げた“一部”を手に取って言う。

 毒とかはなさそうだし、元・ただのイノシシというならちゃんと調理すればおいしいんだろうけど、流石にこれを食べる気にはならなかった。

 

「さて、リッカくんは大丈夫そうなら――先に進もうと言いたいが、日も暮れるね」

 

 現在いるのは森林地帯。

 こういう、元々視界の悪い場所で、夜も気にせず突き進もうというのは悪手である。

 ここを棲み処にしている獣や魔族からすれば、そんな人間は格好の獲物だろうから。

 ひたすら戦って力を付けたいというならば、敢えて進むという選択肢もなくはないが、今の状況でそんなことやっていられない。

 

「そうですね……うん、今日は休みましょう、リッカちゃん」

「……、……でも」

「僕たちに何かあれば、辿り着くことも出来ません。ユーリくんを信じて、休むべき時はしっかり休む。それが大事ですよ」

 

 朝だろうと夜だろうと、リッカちゃんは歩き続けて一秒でも早くユーリくんのもとに辿り着きたいだろう。

 でも――体力の限界というどうしようもない一点が、それを可能とはしない。

 リッカちゃんの体力切れは近い。精神的に負担が掛かっているから、なおさら。

 休めるかどうかは分からないけれど、体力だけでも回復させておくことが必要なのだ。

 

「結果としてここに開けた場所も出来た。光翼を展開してしまおう」

「はい。……リッカちゃん、また明日、頑張りましょう」

「……」

 

 先程よりも小さく、やや抵抗の色を持ちつつも頷いたリッカちゃん。

 とりあえずの納得は貰えたところで、僕自身も外装を解いて、懐からゼクセリオンを取り出す。

 これがこっち側にあったのは、幸か不幸か。ユーリくんは満足に休めるのだろうかという不安が残る。

 

「……それで? クイール、中々全力で戦っていたようだが、キミの方は大丈夫なのかい?」

「大丈夫か、大丈夫じゃないかでいえば、大丈夫じゃないですね」

「まったく……」

 

 ゼクセリオンを拡大させつつ、イリスの分かり切った様子の問いに答える。

 やっぱり……あの外装の反動は強い。短時間であれば、単なる疲労感で済むけれど。

 戦っている最中に、この反動がやってこない辺りは助かる。終わってからのものであれば、倒れていてもなんとかなるだろうし。

 

 イリスに引きずられるように、展開されたゼクセリオンの中に入る。

 僕が一人で旅をしていた頃の野宿を超えた、ユーリくんとリッカちゃんが選んだテントを更に超えた、安全性と快適性を兼ね備えた僕たちの拠点と言える内部の空間。

 一度知ってしまえば、野宿には戻れない逸品である。

 いや、正確に言うとテントの時点で、それまでの僕の旅はなんだったんだと思うレベルであった訳だけど。

 まともなものが食べられるのは町や村に着いた時だけ、なんか見たことのある木の実や多分食べられる獣の肉で済ませていた――そんな時代はもう過去のもの。

 ……うん、あまりあの頃の食生活は思い出したくない。

 あれでよく生きていられたなあとか、今では他人事のように思う。そのくらいは、日常のおいしいごはんにやられてしまった。

 

「ここまででいいね。少し休んだら部屋に戻りたまえよ」

 

 自分用の椅子に座らされ、余計にじわりと広がる疲れに屈してテーブルに体を預ける。

 こうして、油断していられる心地良さは如何ともしがたい。このまま眠ってしまいそうだ。

 だが、それは許さないとお腹が切に訴える。一度食事の事を考えてしまったせいか、空腹を自覚してしまったらしい。

 

「ごはん……」

「一応、言っておくけれど。ユーリくんはいないからね」

「――――――――はっ」

 

 イリスの無情な指摘で、ユーリくんと合流するまでのもう一つの問題点を思い出す。

 ユーリくんがいない。つまりそれはユーリくんがいないということで、ごはんを作ってくれるユーリくんがいなくて――

 

「……」

「私の荷物に、幾らかレトルトは詰め込んでいるが」

「……、……、…………背に腹は代えられませんか」

 

 自分の料理の腕が壊滅的……もとい、伸びしろはあるがまだまだ未熟ということは、十分に自覚している。

 色々と練習して、ホープに手伝ってもらってようやく、ギリギリ及第点のものが出来るのだ。

 そんな僕が、一人で何かしようとしたところで、明日も頑張ろうという空気を崩しかねないし、イリスはまだまだ効率主義を抜け出せていない。ユーリくんの料理は驚いて食べていたクセに。

 仕方ない。本当に仕方ないが、レトルトで飢えを凌ぐしかないか。

 味気ないのは否めないが慣れ親しんだ幼少期の味である。食べて食べられないことはない。

 

「……」

 

 テンションがガクッと落ちて、テーブルに突っ伏した状態から余計に動けなくなった。

 思わぬ大打撃で暫く呻いていると、テーブルの上――僕のすぐ傍に、何かが置かれた。

 見てみれば、それは発熱の魔道具と鍋。

 顔を上げると、ものすごく複雑そうに眉を顰めたリッカちゃんがいた。

 

「……リッカちゃん?」

「……ユーリに会うまで、倒れられたり……やる気をなくされても困る……」

 

 嫌々と、それでありながらも、てきぱきと準備を始めるリッカちゃん。

 絶望を堪えて先に進む、というのは少し大げさすぎるけれど。

 それはリッカちゃんなりに間違いなく前向きな、今の状況と向き合う選択だった。

 ――そして、同時に僕にとっては救済である。

 

「り……リッカちゃん……!」

「近付かないで。手伝わないで。邪魔しないで。大人しくしていて」

 

 途轍もなく嬉しくて、心が震えた。次の瞬間、真逆の意味で、心が震えた。

 保管していた食材を幾つか取り出しているリッカちゃんに、並行して四連続で心臓を刺されたような気分だった。

 果たしてこれほどに残酷な刃がこの世にあるのかと思うほど、痛みを感じた。

 

「……そっちは?」

「私もかい? ――うん、ありがとう。いただくよ。毒は効かないから、入れないでくれよ」

「……」

 

 大ダメージを受けた私などいないかのように、リッカちゃんはイリスに確認していた。

 ……いや、良いとも。戦力外通告は心に来たが、それ以上にリッカちゃんが仕方なくでも歩み寄ってくれたのは嬉しいのだ。

 イリスに対して決して良い感情を抱いていないものの、これ以上悪い状況にしないようにという、リッカちゃんなりの努力だろう。

 そんな風に、僕たちに歩み寄ってくれたならば、僕もまた応えないといけない。

 リッカちゃんのごはんを待ちつつ、より確かな決意をするのだった。




【リッカ】
不足がない程度には料理スキルがある。
限界状態なものの、どうすれば自身の生存率が上がり、ユーリとの再会が確実になるかは分かっている。
信頼、歩み寄ったというよりは、利用の域。

【イリスティーラ】
「……彼女、濃い味好きなのか?」

【クイール】
もう昔には戻れない元・極限勇者。
旅の最中ではそれが一番手間が少なかったからそうしていただけで、町に着けば普通の食事をしていた。
ホープが全力で補正すれば百点満点中三十点くらいのものは作れる。

【ユーリ】
土の試練で使用した必殺キックがクイールに強く影響を与えた。
とはいえ、彼自身、そのような攻撃を行ったのは直前の出来事に影響されたためである。

【キャプテン・フレア】
元凶その1。

【サキュバスネキ】
元凶その2。
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