凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法   作:けっぺん

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『合流連理』/幽冥Ⅲ:十秒間のトライアル

 

 

 いや――まあ、分かっていたとも。

 先程から愛しい……とか言っていたし、兄妹でもなければ二人がそういう関係なんだということは想像がつく。

 想像はつくが、そこまではっきりと主張されると、どうにもやりにくい。

 

「……キミらの関係は分かったが。それとこれとは話が別じゃないか?」

「同じだとも。愛とは即ち相互理解さ。深く愛し、愛されるからこそ、互いのことはすべてが分かる」

「どこにいるか、何を思っているか、どうしてほしいのか! だからあたしたちは決して分かたれない。連携が乱れることもないわ!」

 

 二人が同時に、風景に溶け込んだ。

 今までのように離れて見えなくなったのではない。

 まるで、周囲にあっても気付かないものに変わってしまったかのような――!

 

「ッ!?」

 

 横腹に重い衝撃を受け、慌ててバランスを立て直す。

 同時に、イリスが何かに突き飛ばされた。咄嗟にコウモリの翼を広げて飛び上がるも、その両翼に同時に穴が開く。まるで、その行動が先読みされていたかのように。

 ――見えた。穴が開く瞬間、水風船が弾けたように、辺りに水が舞った。

 雨粒とはまた違う。きわめて見えにくいけれど、あれはまったく別の要因で発生した水だ。

 

「互いに姿が見えずとも、ぼくたちは互いを感じられる。風雨の中を自由に舞い踊り、自在に合流する!」

「あなたたちはこんな風に出来る? 互いが完全になるための、もう片方の翼になれる?」

「くっ……!」

 

 桶を引っ繰り返したような水が降り掛かり、それはたちまち川の中にいるような水流に変わった。

 体がぐんと重くなり、何かが外装に突き立てられる。

 この外装の防御力は並ではない。弾き返すことは出来たが――かなりの痛みを感じるほどの衝撃ではあった。

 間違いなく、今のはかれらがくわえていた剣によるもの。そして水流はかれら自身だ。

 雨に紛れて飛び交う、二つの水流。視認することも難しく、突然に襲い来て僕たちを押し流し、そして切り裂く洪水。

 これが、かれらの真の力のようだ。

 

「イリス!」

「こっちは大丈夫だ、クイール――チッ、どこから来るやら知れたものじゃない!」

 

 僕たちが目も耳もあまり頼れないこの状況に、最も適した狩りの形。

 これだと、尚更に攻撃される一方だ。

 水を斬る訓練なんてしたことがない。スライムならばまだしも、この状態でまともに攻撃できるものなのか。

 とにかく、相手を捉えるところから……かな。

 やろうと思えば、全部蒸発させるほどの熱だって聖剣が発生させられるが――

 

「ぅ、ぐ……ッ!?」

 

 頭が跳ね飛ばされるような衝撃を受けて、ほんの一瞬、思考が真っ白になった。

 ぐらぐらと揺れるような感覚に見舞われながらも、状況を確かめる。

 顔に一撃受けて――気付けば僕は、ゼクセリオンから投げ出されていた。

 

「しまっ……!」

「クイール!」

 

 立て直せない。何をする前に、上空から突っ込んできた水流が滝のように、僕を失墜させていく。

 横目で、もう一つの水流がゼクセリオンを襲っているのを見た。

 不味い……如何に頑丈だといっても、攻撃をまともに受けたら内部に影響がないとは言い切れない。

 どうにか、避難するようにリッカちゃんに促そうとして――声を出せないまま、地面に叩きつけられた。

 

「かふっ……い、つつ……」

 

 ――大丈夫、まだ戦える。

 地面がべちゃべちゃになっていたのが幸運だった。多少なり、衝撃を和らげてくれたようだ。

 とはいえ、かれらに抜かりはない。今の攻撃で、同時に刃を突き立てていたようで、外装を超えた鋭い痛みが脇腹に走っていた。

 暫くは我慢できる。後で、イリスに治してもらえばいい。

 今はそれどころではない。僕に続くように、攻撃を受けたゼクセリオンが落ちてきていた。

 

「ッ、リッカちゃん!」

 

 攻撃を受けて墜落した時、内部の空間が無事である保障はない。

 それを一番分かっていたのは、あれのメンテナンスを引き受けていたリッカちゃんだったのだろう。

 外への強制転移を使ったのか、杖を抱えたまま飛び出してきたリッカちゃんを、泥を蹴って跳び受け止める。

 

「二人とも、大丈夫かい?」

「僕はなんとか……リッカちゃん、怪我はないですか?」

「……っ」

 

 慌てて下りてきたイリスは泥を踏まないよう、すれすれを浮いたまま僕たちに問いかける。

 リッカちゃんは小さく頷いた。ひとまず安心だが……気を抜いてもいられない。

 

「おや、もう一人いたのか。だが、やはりぼくたちの敵ではない」

「その子はあなたたちみたいに、変な鎧は着けないの? 今にも死にそうな顔が丸見えよ?」

 

 煽るように、二人のミツカイは僕たちの前に姿を現した。

 宿した魔族の姿ではない。今まで出会ったミツカイたちと同じような、痩せた白い人型の姿を。

 このぬかるみの中を歩くすべなのだろう。膝まである長靴のようなものを履いた男女だ。

 魔族の姿の時にくわえていた翠色の剣は腰に下げられている。あの姿だと、背丈とそう変わらない長さだというのに、器用だと思った。

 

「その子はどうやら、戦える存在ですらないらしいね。少しの力さえ感じない。不調なだけか、それで普通なのかは知らないし、興味もないが……キミたちはその子を守って戦わないといけない訳だ」

「ねえ、もう大人しく降参してくれないかしら? 雨の中じゃああたしたちには勝てないわ。それとも、三人一緒に死にたいとか?」

 

 ……結構厳しいのは、否定できない。

 ただでさえ読みにくい攻撃をしてくる相手だ。リッカちゃんに被害が及ばないように戦うのはかなり難しい。

 地上で戦うともなれば、この足場も牙を剥く。足は重くなり、否応にも相手を待ち受ける戦いをしなければならないのだ。

 選択を迫られていた。

 一度試練を諦めて、この場を凌ぐ。認めたくないけれど、生き残るためならそれが一番かもしれない。

 あの二人の狙いは僕たちの命ではない。求められている首飾りさえ渡せば、どこかに去っていくだろう。

 そうでもしなければ――この場でリッカちゃんを守れない。

 

「……離、して」

「リッカちゃん……?」

 

 べちゃり、と飛び降りるように、リッカちゃんは腕の中から出ていった。

 そして、ふらふらと前に出て、ミツカイと向かい合う。

 まさか、僕たちより先に諦めて、自暴自棄になってしまったのだろうかと不穏な想像をしたけれど――リッカちゃんに限ってそれはあり得ない。

 リッカちゃんは、ユーリくんのために逃げない。ユーリくんは、リッカちゃんのために屈さない。

 そういう二人だってことは、ここまで一緒に旅をしてきた僕だからこそ分かっている。

 

「あら、そんなに震えて、でもまだ抗うの? その気骨を無駄にしてはいけないわ。だって、あたしたちは(ラブ)を掲げているからこそ、加減が出来ないもの」

「命を無駄に散らすものじゃない。外の民とて、愛し合う者を見つけ、尽くすことは変わらないのだろう? この幸せを知らずに死ぬべきではないと言わせてもらおう。さあ、試練の証を渡してくれ」

 

 ミツカイは同時に手を差し出してきた。

 鏡合わせのような光景は、雨の中でも様になっている。

 いや……そんな風に思っている場合ではないのだけど。

 リッカちゃんを庇うために、僕も前に出る。リッカちゃんがどういうつもりかは知らないけれど、危険なのは確かだ。

 この雨、この泥の中では、どうあってもかれらに速度で勝てない。加えて、僕たちに勝る、二人で一人を体現したようなコンビネーションがかれらにはある。

 あまり認めたくないが……この状況で、リッカちゃんを守れる自信が、僕にはない。

 

「なん、で……私たちの、邪魔をするの」

 

 リッカちゃんなりに、必死で声を張って、ミツカイに問いかける。

 求めているのは単純に、首飾りを砕きたいから、という答えではない。

 そもそもこれを欲するのは何故なのかという、根本的な理由。

 それに対して、当然のことのように、ミツカイは即答した。

 

「無論、ぼくらの幸せのためさ。下らぬ因習ではあるが、当事者となってしまったなら仕方ない。悪く思わないでくれ」

「あなたたちは、あたしたちが取り合うべき獲物。未来に希望を繋ぐために、どうしても必要なことなの」

 

 ――試練の首飾りを持つミツカイは、僕たちと戦う理由がある存在だという。

 それがどうしてなのかは、僕たちは知らない。“日照り”のように、投げ渡してくる者もいた。

 個々でその重要性は変わるものなのだろうが……基本的には、なんとしてでも僕たちを倒さなければならないらしい。

 

「……それは、勇者が、無事に試練を、終わらせれば……解決する話?」

 

 一秒さえも惜しい状況で、これ以上戦いを長引かせないための説得。

 慣れていないことだとは一目で分かった。それでも、恐怖の対象であるかれらに対して、リッカちゃんは言葉を紡いだ。

 

「……あたしのゴーユ。この子、凄いわ。まだ自分たちがこの儀を終えられるって、そう思ってる」

「ああ、愛しきノンノン。勇ましくも悲しい自惚れだ。ぼくたちにも勝てない勇者たちが、高きテオトルにさえ勝てると宣うなど。残念ながら、キミたちはぼくたちが希望を託すに値しない」

 

 もしかすると、僕たちがもっと、ミツカイたちも抗えないほどに絶対的な力を持った勇者であれば。

 かれらと戦うことのない道もあったのかもしれない。

 かれらの言葉はつまりそういうこと。かれらにとって望ましくない何らかの事態は、僕たちが試練を突破することで解決できるものなのだ。

 しかし、とうにかれらは見切りを付けた。自分たちの希望は自分たちで掴み取ると。

 眩しい決意だった。素晴らしいものだと思った。だけど……だからといって、僕たちも足を止める訳にはいかない。

 

「……そう。なら、いい。これ、以上は……話している時間も、惜しい」

「あら。じゃあ襲わせてもらうけど、いい?」

 

 ミツカイの言葉を無視して、リッカちゃんは構える僕の方を向いた。

 雨具のフードの下、暗がりのような瞳が、じっとりとこちらを見ている。

 

「な、なんですか? リッカちゃん――」

「私が、片方の足止めをする」

「――へ?」

 

 耳を疑った。僕だけではない、イリスも、ミツカイたちも。

 

「リッカくん? 頭でもぶつけたのかい? 自分が何を言っているのか――」

「――――」

 

 身を案じようとしたイリスを、リッカちゃんが一瞥した。

 その視線に、どんな意味を込めたのかは、僕には分からない。けれどイリスは何かを悟ったように、黙り込んだ。

 

「とっておき、長持ちはできないと思う。十秒あれば、もう片方の翼を奪える?」

 

 逆に言えば、十秒間という決して魔族と対峙するには短くない時間、リッカちゃんは一人で魔族を足止めするつもりということ。

 無茶だと言いたかった。だけど同時に、ユーリくんならばなんて言っていただろうと、考える僕がいた。

 最初は止めようと思う筈。そしてその後――リッカちゃんの決意が、止められるという確信が、信じられるものであるならば、ユーリくんはきっと任せる。

 ユーリくんにとって、リッカちゃんは誰より信じるべき相手だから。命を預けられる相手だから。

 リッカちゃんは何かをしようとしている。とっておきというからには、出来る限り使いたくない――ユーリくんのためだけに使いたい何かを。

 ならば、お情けであっても、僕にそれを託そうとしてくれているリッカちゃんに対して、僕がすべきことはただ一つ。

 

「……勿論です。リッカちゃんの無茶に、全力以上で応えてみせましょう!」

「おい、クイール。キミ、そんな無責任な……」

「そのくらいやってみせないと、リッカちゃんの合格判定は出ないんでしょう? ――信じてください、リッカちゃん。僕も、リッカちゃんを信じますので」

「……ん」

「ふ……理解不能だよ、外の民。わかった、哀れむのはもうやめようじゃないか。ここからは心底から、ぼくたちの(ラブ)のために動くとしよう、愛しきノンノン」

「ええ! あたしのゴーユ! あの子たちの思い上がりを終わらせてあげましょう。そうして、あたしたちはあたしたちの幸せに向かって飛ぶの! その果てで、二人永遠になるのよ!」

 

 悪いけど、イリスにも付き合ってもらうしかない。

 全力を超えた全力で、制限時間十秒の試験をクリアする。

 ユーリくんなら、絶対に成し遂げる。寧ろ、リッカちゃんのためなら五秒だって切ってもおかしくない。

 ならば僕だって、やってみせる。リッカちゃんの無茶な要求に応じてこその、もう一人の勇者なのだ。

 

「さあ、行きますよ、聖剣ブレダリオン! そしてイリスも! ここからの僕たちは、九百九十九パーセントですっ!」

「私は心も体も外装も、そんな出力想定していないんだが」

 

 イリスがぼやくが、そんなことは気にしない。

 やろうと思えばそのくらい、出来るものである。人間がそうなのだから、エルフであるイリスだって出来る筈だ。

 

『ブレイブコード! スタンバイ!』

 

 更なる勇気を内から引き出す。己の究極を空想する。

 自分の最高を自覚して、それよりもさらに前に進まんと、全力を凌駕する。

 勇者として在るために。今回は、リッカちゃんの信頼に応えるために。

 

究極(Xtreme)アップ! Q-クエスター!』

 

 ――さあ、限界を振り切ろう!

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