凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法   作:けっぺん

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『合流連理』/幽冥Ⅳ:豪雨の彼方に

 

 

 力が漲る。高まった気力が、誰かと繋がる。

 究極の僕としての力は、僕一人が絶対的な勇者としてあるためのものではない。

 新しい僕の力がこうなったのは、きっと、ユーリくんの影響だ。

 誰かと絆を結ぶこと。誰かの声と共鳴すること。それは、一人で旅をしていた頃の僕ではどうあっても出来なかった。

 

 けれど、今は違う。

 

 イリスとも分かり合えた。

 ユーリくんと同じ方向に歩いていける。

 あとは、リッカちゃんの信頼を裏切ることはないと、僕を信じてもいいのだと、僕自身が証明するだけ。

 

「っ……」

 

 外装に組み込まれた強化魔法が、この場の“三人”を結ぶ。

 受け入れてくれた仲間同士を繋ぎ、強化し、連携を更なる力に変える、パーティを束ねる勇者としての能力。

 それが結んだ人数は、これまでの最多と同じ、三人だ。

 かつては僕と、イリスと、ユーリくん。

 ――そして今は、僕と、イリスと、リッカちゃん。

 リッカちゃんがこれまで、この魔法の支援を受け入れてくれたことはなかった。心の底から僕を信頼していなかったことの証だろう。

 これが初めてだ。お試しの信頼、その最終局面。この時をもって、お試しを終えて、本当の信頼を勝ち取れるかどうか。

 

「ほう。まだ本気を隠していたのか。だが、所詮それは単独の力。ぼくたちの(ラブ)を超えるには、まだまだ不足だ!」

「それに、足止め? そこの小さな彼女が? なら、やって見せてもらおうかしら。まずは、離れない翼であるあたしたちを離すところからね!」

 

 僕たちと向かい合う二人は、まったく同時に鳥の姿へと変わる。

 向こうも戦闘態勢ばっちり。連携が強力な魔族――その片方とはいえ、足止めなんて、僕の知っているリッカちゃんでは難しいと思う。

 だからこそ信じるのだ。何をするかも分からない、リッカちゃんの規格外を。

 

「リッカちゃん! お願いします!」

「――――」

 

 ここから先は、僕がリッカちゃんに信じさせる十秒間だ。

 足下の泥を吹き飛ばし、力を込めて地面を蹴る。その刹那、視界の端にいたリッカちゃんと、ミツカイの片方……女性の方が、消えた。

 

「なっ……ッ!?」

 

 どんなトリックを使ったか、なんて考えている暇はない。今起きた出来事は、リッカちゃんが始めたことだ。

 突然の事態に目を見開いているミツカイに向けて飛び出し、剣を振るう。

 相手の回避が寸でのところで間に合ったのは、今の出来事に少なからず、僕も動揺していたからか。

 

 だが、動揺で発生した支障は向こうの方が遥かに大きい。

 何故ならば、僕たちの驚きは、リッカちゃんが起こすと信じていたもの。それが実現したのなら、信じるままに戦うだけ。

 一方で、彼はまったくの予想外を叩きつけられた。そして、最大の強みであった、コンビネーションを奪われた。

 片翼しかないのであれば、彼は強力な魔族というだけだ。

 

「ノンノ――」

「逃がしませんっ!」

 

 翼を慌ただしく羽ばたかせ、煙をたなびかせるミツカイに組み付く。

 

「ごぁっ……!」

 

 その手を離しつつ、外装を纏った頭を打ち付け、地面に叩きつける。

 再度、翼めがけて剣を振るうが、ミツカイは泥の中を滑るように動いて、躱してしまった。

 ――だけどそこは空ではない。かれらがその性質を最大限に活かせる環境ではなく、その環境が完成する上で必然的に発生してしまう、最もかれらが飛ぶのに向かない場所だ。

 ミツカイの体を、泥から飛び出した数本の細い触手が絡め取る。

 

「動きが荒いようだが?」

「ッ――――!」

 

 イリスが変質させた左腕だ。

 それまでの意趣返しのような、死角からの不意打ち。

 イリスらしいやり方だ、と苦笑する――いけないいけない、気を抜くのは、もう少し先だ。

 

「くそ、この……」

『ホーネットコード、レディ』

 

 触手に絡め取られた状況でさえ、かれらには脱する手段が存在する。体を水へと変え、自在に飛び回るすべ。その対処を怠るイリスではなかった。

 素早く撃ち込まれた弾丸は、体への咄嗟の命令を封じる僅かな痺れを齎す。

 弱い毒だ。そう長時間、戦局を左右するほどのものではないだろう。だが、ほんの数秒を手にするのには打ってつけ。

 水へ変わろうとしたミツカイの行動は失敗する。翼をばたつかせ、半端に浮き上がろうとした、その瞬間。

 

「やああああぁぁぁぁぁぁ――――!」

 

 その翼に向かって飛び込んで、聖剣を振るった。

 明確な手応えに続くように、翼がミツカイから離れ、羽根が辺りに舞う。

 放り出された翼を、獣の顎に変わったイリスの腕が捉え――直後、もう片方のミツカイが、近くの泥に落下してきた。

 

「くっ、は……ご、ゴーユ……!?」

「ノン、ノン……っ! ぶ、無事か……? 無事なんだね……!?」

 

 地に落ちた二人が互いの無事を確かめ合っている間に、僕たちの前にリッカちゃんが現れる。

 ――瞬間移動のようにしか見えない。そこにやってくるという前兆は、まるでなかった。

 リッカちゃんは肩で息をしている。きっと、大仕事だったのだと思う。

 

「リッカちゃん!」

「……、っ……。……秒」

「え?」

「……――九.八秒」

 

 リッカちゃんが喋ったのはそれだけ。

 限界だったのかもしれない。そこで咳き込み始め、ハンカチで口元を押さえてしまった。

 ……多分、彼女が数え始めてからの秒数だ。

 ギリギリ。ほんの一回のまばたきの差でオーバーしてしまうほど。

 それでも、十秒切っているということは、合格ということで良いのだろうか。

 

「ゴーユ、その、翼……もしかして」

「ああ――まさか彼女たちに、外の民に奪われるとは。安心してほしい……とは言えないな。恐らく、七日は飛べないだろう」

 

 ちゃんと、再生するのか。それなりの時間は必要なようだが。

 たった数分で戻るものではない。翼を奪ったという成果は、ここまでの形勢を引っ繰り返して余りある。

 比翼鳥……名前からしてそれは、二つでいることで完全となり、二つでいることで初めて飛ぶことの叶う種族。

 片方の翼が残っていても、飛ぶことは出来ない。離れて飛んでいた時でさえ、煙が二人を繋いでいたのだろう。

 殆ど、決着といってもいい状況。それは、向こうの認識としても同じらしい。

 

「七日……長いわね。油断していたつもりはなかった。たった今の十秒……十秒……? ――で、七日も取られちゃったってこと」

「そういうことだ。ああ――長い十秒だったんだね。外の民も、妙な手管を使う……ぼくたちでは、ここからはどうにも出来ない。そう思うのだが、どうかな」

「ええ、同じ気持ちよ、あたしのゴーユ。あたしだけでは、あの子たちに勝てない。だったら、大番狂わせに頼るしかないわ」

「すまないね、愛しきノンノン。これで良かったと――そう思える日が来る事を願おう。ぼくたちに残された希望は、それだけだ」

 

 ミツカイとしての姿に戻って、支えられつつも立ち上がる、男性の方。

 かれらには、既に戦意はなかった。片翼を失っただけ……ではない。かれらにとって、それは決定的なことだったのだ。

 二人で共に飛ぶことが、かれらの自由。

 自由を失った以上、敗北も同じ。そして、もう片方もその決定に抗おうとはしない。

 失墜する時は共に……か。まさに一心同体、潔いというかなんというか。

 そこまで一人の相手に殉じられる精神は、なんだか羨ましく思えた。

 

「キミたちの勝ちだ。受け取ってくれ」

 

 首に掛かったそれを引き千切って、ミツカイは投げ渡してくる。

 “洪水”の欠片――それを認識して、外装越しに手で触れると同時に、その欠片は消えた。

 首飾りを取り出してみれば、そこに新しい欠片が填まっていた。三つ目……試練の折り返しだった。

 

「七日、キミたちに猶予をあげよう。その間ぼくたちは、キミたちに対して何もしない。この山で何をするのも、キミたちの自由だ」

「それこそ、儀を進めるのも、磐座へ行くのもね。ただ、七日を過ぎたら、もう一度あなたたちを襲いに行くわ。次は警告もなく、あなたたちを殺す」

 

 どうやらかれらは、期限付きで僕たちを認めてくれたらしい。

 またも制限時間かと思ったが、今回のそれは少しだけ、猶予がある。

 今すぐ再度敵対するよりもずっと良い。決して簡単な道ではないけれど、その七日間で試練を終わらせればいいのだから。

 

「……ぼくたちの愛は永遠だ。永遠でなければならない。だから……ぼくたちに敗れる気がないというのなら、この山を征してくれ。それがキミたちとぼくたち、どちらにも好ましい結果だろうから」

「外から飛び込んできた風を、外からの風に塗り替えてもらうのは釈然としないけれど……この山は昔からそうだって言うしね。いい? 七日よ? 七日だからね」

 

 そう念押しして、二人は確かな足取りで泥を踏みしめながら、去っていった。

 嵐は去った……いや、現在進行形で大雨が降っているけれど。

 ひとまず、あの集落にいたミツカイ――マユナちゃんが言っていた、僕たちを阻む障害については、取り除かれたらしい。

 

「……こうもあっさり降参されると拍子抜けだね」

「それだけ、翼はあの二人にとって重要だったのでしょう。再生するみたいで、良かったです」

「また甘いことを……まあ、暫く邪魔されないようだし、良しとしよう。これでようやく、磐座とやらに行ける訳だ」

 

 リッカちゃんを支えつつ、墜落したゼクセリオンまで歩いていく。

 問題なく飛ぶことは出来るようだ。いつか、聖都に戻った時の墜落でさえ平気だったのだから、泥に落ちたくらいでは問題にもならないのだろう。

 

「それで、リッカくん。キミの足止めには助けられたが、いったいどんなトリックを使ったんだい?」

「……自衛手段を、用意していたってだけ。本当に、少しの時間を、誤魔化せる程度の」

 

 イリスはリッカちゃんが行った足止めの手段が気になっているようだ。

 まあ……僕も気にならないといえば嘘になる。

 リッカちゃんはユーリくんが戦うための魔法の他にも、支援を可能とする魔法を扱える。

 よく使うのを見るのは、傷の治療だったり魔道具の解析だったりというものくらい。戦闘で使える魔法は、それよりも外装の方が強力だからという理由で使われていない。

 そうした使われない手札の一つだったりするのだろうか。

 

 ただ、そうだとすれば、十秒を稼げたという結果と噛み合わない。

 僕は得意じゃないので詳しいことは知らないが、魔法とは発動に時間が掛かるもの。

 速度に秀でたあの魔族を相手に強力なものを使うには、それこそ僕たちが時間を稼ぐという方が正しい筈だ。

 ううん……分からない。リッカちゃんが話してくれないならば、僕はお手上げである。

 

「……そうかい。体力の消耗以外に目立った怪我はなさそうだね。ただ、磐座は近い筈だ。このまま向かっても構わないのかい?」

「それで、いい。……休んでいる暇なんてない。早く、行かないと」

 

 リッカちゃんの消耗は激しい。本調子に戻るには、相当な時間が要ると思う。

 だけど、ユーリくんとの合流はやはり、それよりも優先される。

 ゆっくり休むのはユーリくんと合流してから、ということか。リッカちゃんに無理はしてほしくないが、僕も賛成だ。

 ゼクセリオンの中に入っていくリッカちゃんを、嘆息してイリスも追おうとする。

 そんな、僕たち三人全員が認識できる、ギリギリのタイミング。

 

 少し遠くの空が輝く。

 そこでも当然降っているのだろう雨を押し退け、引き裂いて、光の柱が落ちていく。

 雨に紛れつつも轟音が聞こえてきた。

 自然のものかもしれないが――その方向は今から僕たちが向かおうとしていた先で。

 加えて、雨天であるにも関わらず、燃える炎のような塊が、光の柱の先端にあるように見えた。

 

「――さて。あれが間違いなく、天然のものではないとして。今すぐ駆けつけるべきものか、過ぎ去るまでここで待っているべきものかは賭けだね」

 

 偶然、僕たちの行く先で、なんらかの無関係なトラブルが起きているという可能性は、もちろんある。

 だけど同時に、今すぐ僕たちが駆けつけなければならない事態になっているということも考えられた。

 ピリピリと、まるでその光の影響がここまで伝わってくるかのような感覚が、体を通り抜けていく。

 嫌な予感、というやつだった。このまま呑気に突っ立っていれば後悔する、殆ど確信だった。

 

「行きましょう。中に入ってください、二人とも。飛ばします」

「っ……」

「連戦の覚悟はしておこうか。クイール、キミはアレの目の前に飛んでいくことになるんだ。注意は怠らないように」

「分かってますよ」

 

 二人を急かして、僕もゼクセリオンに飛び乗る。

 外装は――このままでいいだろう。この姿の反動は、解いた時に一気に襲ってくる。

 この後、恐らくもう一戦交えることになると考えると、今それを呼び込むのはあまりにも悪手に思えた。

 

 ゼクセリオンを浮遊させ、一気にスピードを上げる。

 マユナちゃんや、先のミツカイたちが言う磐座なる場所には、すぐに辿り着く。

 そして、炎のような塊の全様も、すぐに明らかになった。




『ヴァ・ゴーユ&ヴァ・ノンノン』
【属性】水
【攻撃力】■■■■■
【防御力】■■■■
【素早さ】■■■■■■■
【魔 力】■■■■■■
【精神力】■■■■■■

【種族】バンバン種
バンバンは比翼鳥という通称の通り、体の片側にしか翼を持たない鳥型魔族である。
もちろん、それでは飛ぶことは叶わない。魔力の操作で飛行を可能とする個体もいるにはいるが、自由に空を舞えるほどではない。
かれらが空を飛ぶためのもう片方の翼とは、即ち生涯を共にする伴侶。
本来多くの鳥型魔族にとって、反対側の翼がある箇所から、バンバンは魔力煙をたなびかせる。
それを伴侶と認めた個体の魔力煙と結び合わせることで、初めてかれらは両翼を揃え飛翔することが出来る。
肉体を水に変質させ、空中を舞う水流とすることで外敵に対処する。バンバンを洪水の前触れとする地域もある。

【『合流連理』ヴァ・ゴーユ&ヴァ・ノンノン】
ムルゼ霊山の西側にある豪雨地帯の集落『藍の雨樋』で生まれ育ったミツカイの男女。
ゴーユとノンノンは言わば幼馴染であった。
『藍の雨樋』は他の集落との交流が少なく、同じ年に生まれた子供ということもあって、幼い頃から結ばれることが決まっていた。
二人は昔から仲が良かった。互いにそれを否定する感情はなかった。
同じ年に生まれ、共に育ち、誰よりも互いを理解していた二人は、ある時集落における成人前の習わしとして、周囲の哨戒に出るミツカイに追従する。
その途中、寿命を終えんとする比翼鳥のつがいと出会った。
二羽は死ぬまで愛を全うしたと語った。この山で生き、ミツカイについてもよく知っていた二羽は、死の間際に出会った二人の若きミツカイに自分たちを託した。
強大な敵に立ち向かい、超克する――正しい形での成人の儀とは異なる、命の継承をもって比翼を宿した、二人のミツカイ。
かれらは己の(ラブ)をもって、幸福で在り続けることを誓う。かれらの知る最も誇り高い魔族がそうであったように。

【クイールの評価】
「ああいうの、恥ずかしいけど……なんか、ちょっと羨ましかったり」

【リッカの評価】
「…………」
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