凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法 作:けっぺん
「おのれ……ッ!」
接近した僕たちの攻撃を防いだのは、雷に覆われた翼。
サンダーバードとしての本質の一つで僕たちを弾き返すミツカイは、息を荒げながら玉座へと戻る。
「今のは……トカゲ共の……!」
焼けた腕を押さえつつも、ミツカイは受けた攻撃を素早く分析した。
イリスティーラが有する攻撃手段は多岐にわたる。その中でも、威力と貫通性に秀でたものが、ドラゴンの因子を利用して魔道具から放つ熱線だ。
ドラゴンは個体ごとに特殊な性質が発現しやすい種だ。
だが、その中でも炎の如きブレスを持つ個体は多いという。この山に棲むドラゴンも、例外ではないのだろう。
「……そうか。その節操のなさがお前の強さであり、生きる知恵か」
「おかげで
「すなわち、お前も不自然で個を確立したと。やはり、お前たちは、この山を荒らすに値しない」
――ミツカイの敵意が膨れ上がるのを感じる。
そして、空がにわかに明るくなった。雨雲を上から掻き分けて、星の群れが落ちてきた。
「これは……!」
大した狙いも付けていない星であるという点は変わりない。
違うのはその数。夜空が突然近付いてきたのかと錯覚するほどの輝きの雨は、殆ど気にしなくても良いという認識を今すぐ改めなければならないほどのものだった。
「山の変革にお前たちは必要ない。ここで潰えろ、外の民!」
直上に降ってきたものを砲撃で対処し、残る星々の回避に動く。
一つ一つの輝きは小さい。引き起こす爆発も、木々を数本巻き込む程度でしかない。
しかし、それが群れを成して次々降り注げば、たちまち戦場は、絶え間なく爆発が巻き起こる危険地帯へと変わる。
そう何度も受け止められる威力ではない星は全て回避することの困難な雨となり、その合間をミツカイの雷が駆け巡る。
「リッカ、あれって……」
「……こっちに対する、一定値の拒絶がトリガーになったんだと思う。こうしている間にも、どんどん出力が上がってる」
リッカの分析を聞いて――リッカが共にいることを意識し、焦る心を落ち着ける。
二つの爆発に巻き込まれ、飛んでくる雷を魔剣で弾く。吹き飛ばされてきた木々を躱し、再度の反撃に打って出る。
このまま躱しているだけではいずれ限界が訪れる。あのミツカイと“ソロ”、まずはどちらかだけでも止めないといけない。
「諦めが悪いな……!」
「こっちの台詞よ、混ざりもの!」
「お互いさまだろうに!」
少しでも対処が楽になっているのは、イリスティーラの働きが大きい。
先の挑発でミツカイは彼女を強く敵視したようで、言葉で彼女の攻撃を誘導させている。
必要に応じて複数の弾丸を用いることで、可能な限り僕たちに対する攻撃を防いでくれていた。
「ユーリ。少なくとも、あれ自体はあの女が座っていないと、力を発揮しない。だから、叩き落とせば隕石も収まる」
「隕石……? ともかく、了解。それさえ出来れば、一気に押し切れるかも、だね」
以前のように自らの翼で飛ぶことなく、二つの異なる攻撃をもって苛烈に攻め込んでくる戦法には、相応の制限がある。
あの星――隕石と呼ぶらしいそれを呼ぶ“ソロ”は、どうやら先程の領域にあった単眼とは違い、玉座に乗り手がいることで初めて能力を発揮できるようだ。
ならば、方針は自ずと決まる。ミツカイをあの玉座から離すことが、窮地を脱することに繋がる。
「クイール!」
「はい! とりあえず、共有――出来てます!」
魔剣を振りかざし、ミツカイに接近しながら叫べば、反対側から雨を裂いて突っ込んできたクイールも攻撃のタイミングを合わせる。
彼女にも、リッカの分析は伝わっている。
これまでよりも、無言の連携は確実で、体はずっと軽く動く。
「鬱陶しい……落ちろ、羽虫の如く!」
「お断りですっ!」
玉座についたままに、ミツカイは両腕を変えた翼で僕たちの攻撃を受け止める。
さらに背中からもう一対の翼を伸ばし、叩き落とそうとしてくるのを――素早くゼクセリオンで回り込んできたクイールが伸ばした手を取ることで回避する。
追撃のために伸びてくる雷。
それを誘導しながらクイールは星を避けつつミツカイの真上まで飛び上がり、示し合わせたように僕は手を離した。
「ッ――――!」
『ファイナライズ! アクセプション!』
星が落ちてこない、玉座の直上。
唯一、この星々の雨の中でも空を気にしなくても良いその位置ならば、恐れるべきはあの雷のみ。
全身に漲る力を足先に集中させながら、落下の勢いを強めていく。
ミツカイとの“蹴り”の勝負にはならない。座った状態では足を変化させて、振り上げるには時間が足りない。
ゆえに、ミツカイには選択が突きつけられた。
判断に許された時間は一秒にも満たず、こちらを見上げて目を見開きながらも、ミツカイは玉座から飛び退くことを選ぶ。
「ユーリ!」
「うん――!」
『ユーリ・エクストライクッ!』
空っぽの玉座に、力を注いだ一撃を叩き込む。
確かな手応えと共に玉座は砕け散り、その反対側まで突き抜ける。
だが、それに達成感を覚えるより前に背筋に走る寒気。極まった殺意が、僕に向けられた。
「外の民……貴様ァッ!」
「ぐっ、ぁ……っ!」
「ユーリッ!」
腕を更に変化させ、合計三対となった翼を広げ、こちらに迫るミツカイ。
先兵の如く放ってきた雷の矢が腹に突き刺さり、激痛と共に、忘却していた疲労が全身に広がる。
都合のいいやせ我慢は、いつまでも続かない。
ここに至って、魔法が解けたかのように体が重くなる。
「死――」
「隙ありですっ!」
「――ッガ――――!?」
――続く雷に黒焦げにされるようなことはなかった。
こちらに集中していたミツカイにとって、横から突っ込んできたクイールは不意打ちでしかない。
玉座への攻撃とは違う。ゼクセリオンの突撃をまともに体に受け、跳ね飛ばされたミツカイは勢いそのままに大地に失墜した。
しかし命を拾った安心も束の間、浮遊した状態を維持できず、ミツカイに追従するように落ちかける。
「――――」
「ッ、
「任せてください、リッカちゃん!」
遠くなりかけた意識を引き戻したのは、聞き慣れた声で発される、その声で聞いたことのない名前。
倒れそうになる体がクイールに支えられる。クイール自身は、異質に感じたそれを自然に受け入れているようだった。
気を失うのとは違う意味で、暫し真っ白になった思考。
ようやく理解が追いついた時、僕が抱いたのは嬉しさだった。
この場所に来るまでに、何かあったのだろう。リッカがクイールを信じるほどの――或いは、信じなければならないほどの――出来事が。
同時に理解する。どうしてこれほどに体が軽く動いていたのか。
今のクイールが纏う外装は、共闘する味方の強化を行い、連携を補強する力を持つ。
その特異な魔法は、対象と見なした相手が受け入れることで有効となる。
これまで、リッカはそれを受け入れていなかった。他の誰かを、自分の意思で信じることが出来ていなかった。
そこに変化が生まれたことで、僕たちのつながりに新たな可能性が増えた。到底勝てなかった相手を追い落とせるほどに、大きな可能性が。
「――さあ、チェックと言ったところかな。キミらに遊戯の文化があるかは知らないが」
地面に落ちたミツカイに魔道具を突きつけるイリスティーラの傍にまで移動して、クイールは僕たちを下ろす。
黄色と翠色の翼は叩き落とされ、泥の中を転がったことで、輝きは褪せて到底同じものとは見られないさまになっていた。
「おの、れ……たかがこの程度で勝ったつもりか、外の民!」
「いいえ、思ってないです。けど、ある程度、僕たちの力は見せられました」
ふらつく体に喝を入れて、もう暫く、と構えて立つ。
ここからどう出るか、クイールに何か策があるらしい。
「“雷”のミツカイさん。僕たちは、風の試練があなたたちにとってどんな意味があるのか知りません。けど、ミツカイにとってはとても都合が悪いことで――僕たちが試練を突破すれば、解決することだっていうのは知っています」
「……それがどうした。お前たちが下らぬ儀を終えることなど――ッ!?」
片腕を翼から普通の形に戻し、首元に手を当てたミツカイは、驚愕に目を見開く。
そこにあるべき、試練の首飾りが存在しないことに、僕もたった今気付いた。
まさか、とクイールの方を見てみれば、彼女は手首に掛かった首飾りを揺らし、持っていたもう一つの首飾りと統合させる。
埋めるべき空白に、“雷”の欠片が填まり込んだ。
「……手癖が悪いなクイール。キミ、一人旅の頃そうやって日々の糧を得ていたんじゃないか?」
「そんなことしてませんよ!? イリスは勇者をなんだと思ってるんですか!?」
――今の突撃の際、手を伸ばしていたのか。
驚くべき手腕である。リッカさえ唖然としている。
……どうやったのだろう。聖剣は一時的に鞘に納めていたとして、僕の手を掴もうともしていた筈だが、まさか完全に手放しでゼクセリオンを操っていたのだろうか。
「“地鳴り”、“日照り”、“雷”……そして、ここに来る道中、“洪水”に勝って、証を受け取りました。これで、僕たちが集めるべき証は、残り二つです」
クイールの言葉に、再び僕は驚くことになった。
思わず見てみれば、確かに首飾りには、“雷”の欠片とはまた別に、見たことのない欠片が填まっている。
“洪水”のミツカイを、既に彼女たちは征していたのだ。
「あのミツカイたちが言うには、僕たちが勝ったからには、僕たちが山を征するのが、かれらの希望だそうです。もしかすると、あなたにとってもそうなんじゃないですか?」
「――……? 希望、だと……? 何を、まるでゴーユたちが死んでいないかのような……」
「死んでいませんよ。首飾りは譲ってもらった……というより、借りたってのが正しいですかね。七日間の猶予付きなので」
どういう事態が起きていたのか、いまいち掴めないが……クイールが嘘を言っている様子はない。
恐らく、比較的穏便な形で、“洪水”との決着はついたのだろう。
「残りの“吹雪”と“嵐”がどこにいるのかは、まだ知りませんが――僕たちは止まる気はありません。絶対に、成し遂げて見せましょう」
「……っ、……出来る訳がない。知らないからそのような物言いが出来るのよ」
「――知っているよ。山頂、でしょ」
あまりにも偶然だった。先程、少しだけ歩み寄れた案内者から、その情報を受け取っていたのは。
「“吹雪”は、山頂を守る、砦の“ソロ”。そして、“嵐”はバラルバラーズ」
「ユーリ……それを、どこで?」
「ジルから聞いたんだ。これが本当なら、キミが無理だっていうのも頷ける」
ミツカイの表情は、この情報が真実であることの裏付けになった。
「……それを……それを知って、お前たちはどうする。怖気づいて山を去るなら、その運命をこの山に、私たちに残していけ! それがお前たちが果たすべき、最低限の責任だ!」
叫びは悲痛なものだった。
それが彼女にとっての唯一の希望なのだと、確信させるものだった。
この先に待ち受ける“詰み”から逃げるのならば、希望だけは残していけと。それ以上この山を変えるなと。
僕が同じ立場であれば、同じことを思っていたかもしれない。
旅立ったばかりの、被害者でしかない僕であれば、運命から逃げるために頷いていたかもしれない。
けれど――今は違う。
「怖気づくなんてことはないよ」
「何……?」
「誰が相手だろうと関係ない。バラルバラーズがここで立ちはだかるなら、ここで倒す。ハッピーエンドに辿り着いて、その先の景色を見るために」
「ユーリ……っ」
満身創痍なのは覆しようのない事実。だが、それでも僕の決意は変わらない。
惜しげも恥ずかしげもなく、使命を終わらせた先の理想を宣言する。
それが、この旅の中で至った、僕の――百代目勇者の在り方だ。
「その通りです。四天王、何するものぞってやつですね!」
「趣味の悪い試練だよ、まったく。だがまあ、そういうことだ。良い変化にしろ、悪い変化にしろ、この山は大いに変わるよ」
僕の、そしてクイールの、イリスティーラの言葉を受けて、ミツカイはほんの僅かに怒りを忘れ、困惑を見せた。
何かに縋るような――心細さ。あまりにも無意識なそれは、彼女の本来の顔に見えた。
しかし、それも数秒のこと。
怒りの仮面が着け直される。強く噛んだ唇が切れて、泥まみれの口元に血を滲ませる。
「――外の民の傲慢を、またも受け入れろというのか」
「ッ!」
――その怒りに呼応したように、未だ空に浮いていた、大穴の空いた玉座が唸りを上げる。
体から放出されたありったけの雷は、僕たちを害する意思がなかった。
しかし、捌き切った時には、目の前の泥溜まりにミツカイの姿はない。
代わりに感じた空からの熱に視線を上げれば、それまでよりも遥かに強い輝きを放つ玉座があった。
「変えるのであれば千年前に変えるべきだった! あの時にお前たちが打ち払っていれば、
発熱する巨塊にしがみ付き、叫ぶミツカイ。
崩壊の進む“ソロ”の出力が次第に高まっていることは、火を見るよりも明らかだった。
「一つ前ならば、私も耳を傾けただろう。だが――もう遅い! “私を使う”とあの悪鬼が決めた時点で、お前たちに預ける希望は潰えたのだ!」
ミツカイの絶叫を、噛み砕いて理解している暇はなかった。
間もなく、あの玉座は限界を迎え、爆発するだろう。
爆発してしまえば、その威力を防ぐ方法は、恐らく僕たちにはない。であれば、離れるか、限界の前に迎撃し、高まった力を逃がしてしまうか。
「この山に最後の
しかし、方針を決める時間は与えられない。
空を飛ぶ機能さえ失ったのだろう。玉座は傾き、こちらに向けて落下を始める。
さながら、あの玉座そのものが、最後の星であるかのように――!
「これ以上私の邪魔をするな、外の民ッ!」
「ッ、二人とも、私の……ユーリの傍に来て!」
「リッカちゃん……? ――、イリス!」
「分かっている――っ!」
そんな中で、リッカが何かを思いつく。
もしかして策があるのかと聞く前に、輝きが最高潮に達し、視界が白で染め上げられる。
だが、それも一瞬。白はあっという間に銀色に塗り潰されて、感じていた痛みが遠くなっていく感覚に見舞われた。
『ソロ・ユ・エマ』
【属性】火/星
【攻撃力】■■■■■■■■■
【防御力】■■■■■■■■■
【素早さ】■■■
【魔 力】■■■■■■■
【精神力】■
【種族】スレイプニル種
馬は古来より世界各地で人間や魔族と関わりのあった動物であったからか、馬型魔族は多くの種が存在する。
角に特殊な力を宿したユニコーンやバイコーン、清流に住むケルピーなどが有名だろう。
空を駆ける馬型魔族といえば、代表的なものはペガサスだ。かの種はかつて比較的人間と近しい種であったようで、人間と共に旅をする物語なども知られている。
とはいえ、ペガサスは基本的に同種同士の仲が非常に悪く、共に一つの仕事をさせることは不可能に近い。
魔族の戦略家であれば多くが考えるだろう、ペガサスを使い空を駆ける戦車が存在しないのは、そういう理由だ。
【『未明異本』ソロ・ユ・エマ】
空駆ける馬の戦車――を模した、真紅の玉座。
それはミツカイたちの間で伝えられる、主の座す至高の席であった。
その時代を知る者によれば、主はその玉座で山を飛び回り、ミツカイたちの営みを観察していたという。
玉座が持つ力は、星の輝きを落とすこと。狙いを定めるでもなく、ただ“自然現象”としての避け得ぬ破壊を齎す、一つの罰としての機能を有していたようだ。
主の去った時代において、玉座の所在を知る者は殆どいない。かつて山を襲った風によって遺失したのだと、大半の者は認識している。
『ソロ』に数えられるこの玉座は、『セラ』に位置するミツカイが山のどこかに隠している――その真実を知る者は、その本人と、自らを賢者と揶揄する一人のみである。
【セラ・テオトルの評価】
「主は仰った。この玉座や、頂にありし砦は盟友たるバルハラとの友誼の証だと。それを主の残した威光、象徴として統治に扱う私は……」
【バルハラの評価】
「うわ、懐かしい」