凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法   作:けっぺん

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『壊嵐』/最強種(1)

 

 

 辺り一帯を縦横無尽に駆け巡る風は、魔力による姿勢制御がなければ立っていることも難しい。

 風に乗って舞う雨は視界を遮り、岩肌を濡らすことで、立つことを更に困難とする。

 だが、それらは雨が降り、風が吹けば当たり前に起きる現象だ。

 バラルバラーズが巻き起こした嵐は、その風雨に乗った魔力。

 彼の自己主張が現れたように、暴風は緑に染まり、ただの風ではあり得ない脅威を生む。

 

「っ……!」

「流石にこれは……いちいち気にしてたらきりがないですね!」

 

 雨に紛れて舞う、無数の魔力粒子さえ、生身で触れれば肌を少しずつ傷つけていくだろう。

 こうして外装に守られていなければ、風雨にさらされているだけでやがては致命傷に至る。

 そんな脅威の一粒一粒を防ぐのは不可能だ。出来るのは、対抗するように放出した魔力で自分を覆うことによる、被害の低減くらい。

 防ごう、防ごうと思っていればいつまで経ってもバラルバラーズには辿り着けない。

 緑が舞い散る中を駆け抜ける。まずは一撃――突き出そうとした魔剣を受け止めたのは、やはり風。

 

「ぐぅ……!」

「残念賞、じゃな。そら、また一からやり直すが良い」

 

 個々の粒子は小さな脅威。だが、それがバラルバラーズによる操作を受けて集まれば、風に乗って走る巨大な槌となる。

 岩盤に刃を叩きつけたような衝撃で勢いが瞬時に殺され、体が押し戻される。

 これで止まってはいけないと、魔剣に火の魔力を込めて抵抗する。

 力を込めれば、風の槌は砕けて粒子へと還った。

 そのまま一歩踏み出し、魔剣を持ち替えつつ魔力を込め直す。

 

『アドラ・エクスラッシュ!』

 

 魔剣を振り抜けば、血の如き赤に染まった斬撃が放出され、分厚い鱗の鎧に叩き込まれる。

 

「ほう……? やるではないか。奇妙な鎧に奇妙な剣――それをもって人間の限界を超える。当然の帰結であり、面白き手段でもある。とはいえ、それでは少々威力が足りんのう?」

 

 僕たちが有する攻撃の中でも、特に高い威力を発揮する斬撃だ。

 『アドラフューリー』の攻撃性をもとにしたその一撃は、単純な防御力だけで防ぐことは難しいだろう。

 バラルバラーズの堅牢な鱗を削り、その腕に広い傷をつけることは実現できた。

 しかし、それは早くも治癒の兆しを見せている。

 彼は躱すどころか、受けるに際してなんら動きを見せることさえなかった。

 この程度の傷は傷の内に入らないとでも言いたげに。

 

「これならどうですっ!」

「それからこいつも、持っていきたまえ」

 

 クイールの聖剣と、イリスティーラが魔道具から放った熱線もまた、特に備えることなくバラルバラーズは受け止める。

 どちらもただのドラゴンであれば、直撃すれば軽い傷では済まない攻撃だ。

 だが、彼は切り裂かれ、焼け焦げた鱗を一瞥し、鼻で笑う。

 

「聖剣とやらは、ともすればわしを討つに能うやもしれぬが……エルフ、それはわしの同族の吐息か? なればわしを焼こうとするのが間違いじゃよ。鱗を焼き切るより癒える方が早いわ」

「……まともに効くと期待してはいなかったが。しかし妙だね。ドラゴンとはそこまで治癒力に優れていたかい?」

「百の個体があれば百の性質を有するのが我らよ。“そういうものもある”――そんな柔軟な理解がなければ、我らを相手取ることなど出来ん」

「まあ、そうですよね。ブレスが通った傍から草木が枯れてしまうようなドラゴンもいましたし」

 

 ――クイールと出会った時に戦った、あのドラゴンか。

 この山で多くのドラゴンを見てきたが、あれほど特異な性質を持った個体は目にしていない。

 吐息を吹きかけたものの時を奪い、生命を枯らせる。リッカが繰り返しの果てで手に入れた力に近しい位置にあるあの能力は、ドラゴンとしてもきわめて稀なのだろう。

 

「ほう? ディアネシュアの小僧に送ってやった中でも特に変わり種であった赤子じゃな。もういつのことだったか覚えておらんが。なるほど、ぬしが討ったか」

「はい。結構たくさん倒しました。あれと比べれば、傷が早く治るくらいは“あってもいい”範疇ですね」

「それ単体ならね。ご老体、キミの本領はこの嵐だろう。加えて“コレ”なんてのは、やりすぎじゃないか?」

「カカ。長く生きればその分得るものがある。ぬしらエルフのような頭の固い種であればより賢く、淫魔であればより艶めかしく、そしてわしらドラゴンであれば、より強く」

 

 彼の言葉にじっくりと耳を傾けてはいられない。

 岩肌を抉りながら迫ってくる風を切り払えば、背後からまた別の風が襲い来る。

 それも受け止めた矢先、全身を鋭い痛みが駆け巡った。

 

「くっ!?」

「ッ――今のは、っ!?」

「雷……嵐を操るなら、それもまたお手の物ということか!」

 

 衝撃は上空から。どこからともなく生まれ、周囲を好き放題に走る雷は、あのミツカイのものではない。

 暴風が吹き荒れ、豪雨が降りしきるのならば、当然のように雷も走るということか。

 

「そら、上ばかりではないぞ。ここは高み、地平の誰もが仰ぎ見る天に位置する領域じゃ。なれば風は何処からでも吹き、雷もまた何処からでも襲い来る。辺りに群がる雲全て、ぬしらを狙う牙と思え」

「――ユーリ!」

「分かった……!」

 

 リッカが僕を呼ぶと同時に起動させた外装の機能から、意図を悟る。

 周囲に展開された出力術式。

 そこから飛び出したのは触手や無数の虫の群れ。

 攻撃のためではなく、防御手段として表出させたリッカの使い魔の力は、自ら風や雷へと向かっていく。

 

「使い魔か、また珍しい魔法を――」

 

 強力な風の槌、雷の刃を単体で受け止められるほどの頑丈さは、この使い魔たちにはない。

 だが、リッカがこれらの強みとしているのは数。

 小さくとも、その数を武器とすることで力の差を強引に埋める使い魔たちは、群れを成して盾となる。

 

「ナイスです! ユーリくん、リッカちゃん!」

 

 辺りから迫っていたバラルバラーズの攻撃をまとめて受け止めたことで、再びバラルバラーズへの道が開けた。

 一気に距離を詰め、聖剣に魔力を込めるクイール。

 その動きに合わせて、僕もまた魔剣に先程とは違う属性を込めて大きく振るう。

 

『――オズマ・エクスラッシュ!』

 

 魔剣の刀身が変質し、黄色い光を帯びて伸びる。

 この状態においては魔剣から切断という役割がほぼ喪失する。

 大きくしならせて振り抜けば広く切り払うことも出来ようが、剣としての汎用性を失うことで代わりに生まれるのは、自在に伸縮することによる拘束性能。

 

「ム……っ?」

「ッ――――!」

 

 伸びた刃はバラルバラーズの首に絡み付く。

 そして、僕は魔剣を持ったまま、魔力を放出して後退。高みにある彼の頭部を、引っ張り下ろす。

 

「お、おぉ……?」

 

 外装によって強化されたとて、ドラゴンと力比べが出来る筈もない。

 ゆえに、魔力での推進を利用し、無理やりそれを可能とさせる。

 こちらを試すつもりで侮っているバラルバラーズに付け入る、一度きりの不意打ち。

 頭部という生物共通の弱点に適格に攻撃を与えるための一手を、クイールは決して見逃さない。

 岩肌に叩きつけられた、僕たちの背丈を超えるほどの巨大な頭部の面前に強く踏み込み、クイールは両手で握り込んだ聖剣の輝きを更に大きくした。

 

「――これが僕たち、勇者の力です!」

 

『マスター・エクストリームッ!』

 

 その輝きを敵への脅威に変えて、一振りによって解き放つ。

 クイールがただ一つ持つ、圧倒的なまでの勇気の魔力。それが局地的に発揮する威力は、バラルバラーズの巻き起こす嵐にも劣らない。

 どのような敵でさえ呑み込まんという決意の伝わってくる眩い光が突き刺さる。

 ただ、四天王に対して、その一撃で押し切ることが出来るかは、分からなかった。

 後押しが必要だと判断して、魔剣の刃を引き戻す。

 砲撃形態へと移行し、追撃のためのその引き金に手を掛けて――

 

「――ッ、ゴォアァ――ッ!」

 

 ――クイールが放つ輝きを優に超える、濃緑の嵐が僕たちをまとめて吹き飛ばした。

 

「あっ、ぐ――!」

「く、ぁ……!」

「――マズい、三人とも!」

 

 それはまるで、巨大な槌が無数に振り回されているような、暴力の渦だった。

 魔力の塊でどこを何度殴られているかも分からず、その嵐の中で認識出来たことは、規格外の反撃を受けたということだけ。

 いつまで続くかも判然としないそれにどうにか対抗しようとして、何かに腕を掴まれ引っ張り出される。

 

「大丈夫かい? 生きているだろうね!?」

「っ……ぼ、僕はなんとか……ありがとうございます、イリス」

「僕たちも――リッカ?」

「……大丈夫。魔法の維持も、まだ出来る」

 

 どうやら、イリスティーラが外装の性質を素早く変化させて、僕たちを救い出したらしい。

 もしも彼女の介入がなければ、或いは致命的だった。

 かなりの衝撃だったが、まだ戦闘は可能だ。リッカも素早く各機能の確認を済ませた。

 

「カカ、いかんいかん。わしとしたことが、少しばかり油断をしたわ。今のはわしとて、幾らか重ねて受け止めれば“もしも”が在り得る攻撃であった」

「……その割には、平気そうですね」

「そう不満そうにするでない。確かにその刃、わしに届いておった。だからこそ反撃せずにはおれぬのよ」

 

 鱗が剥がれかけ、眉間から血を流すその様子は、そこだけを切り取れば瀕死に見えるかもしれない。

 だが、バラルバラーズはその状態でさえ、こちらを試し嘲る笑みが消えることはない。

 そして腕に走った傷と同様、その傷もたちまち血は止まり、癒えていく。

 確かに、その威力をこちらが発揮し続けることが出来て、それを無防備のまま受け続ければ、危ういと判断したのだろう。

 それでいて、彼にとってその攻撃は、相殺し容易く返せるほどのものでしかなかったということだ。

 

「良いぞ。この山のミツカイどもよりよほど面白い。連中は鮮やかな鎧も輝く剣も持たず、ただ己が力を振るうのみであった。それではこの頂など取り戻せぬと、学習しても良いのだがなあ」

 

 次は細かな刃となって迫りくる風を、魔剣から放たれる散弾で迎撃する。

 バラルバラーズが持つのと同じ、風の魔力だが、その威力の差は歴然。

 ゆえに一つの刃を十の弾丸で相殺する。

 

「まったく、いつかはあのミツカイどもがわしに一矢報いないものかと期待しておったのじゃが。ぬしらがここに辿り着いた時、喜びと同時に失望もあったわ。あの娘はまたも山を護れなんだのか、とな」

「サンダーバードのミツカイのことかい? 私たちが言えた口でもないが、酷い言い草だね。キミが彼女たちに期待をかけたって?」

「凌辱した側だからこその期待もあろう。山の外と同じよ。人間とは餌であり、玩具であり、苗床である。哀れな家畜の慟哭と反抗を肴とする世界がここにもあるというだけの話じゃ。カカ、理解できんか? 清廉なる聖都のエルフよ」

 

 周囲に渦巻いた風を、クイールが一閃で吹き飛ばす。

 そこから飛び出した僕とイリスティーラの攻撃を、バラルバラーズは僅かに持ち上げた手の甲で受け止めた。

 

「ところで、あの娘は死んだのか? であれば、興醒めもいいところじゃが」

「……知らない。首飾りを取ってからは、会っていないよ」

「生きておればと思う限りじゃな。そうでなければ、せっかくの愉しみも台無しというものじゃ」

 

 喉を鳴らす彼の悪意に、一瞬吐き気のようなものが込み上げる。

 笑みを零す彼が、あのミツカイに何を期待していたかは明白だった。

 

「連中から聞いておるか? この山のドラゴン、元をたどればすべて連中の胎から出でたものであると。あ奴らの生きるすべを聞いた時はわしも笑わずにはおれなんだ。よもや同胞から生まれたものを喰らい糧とするとは」

「……それ以上喋らないでもらいたいのだが。はっきり言うが、耳障りだ」

「同胞を護れず、生かすために屈辱を噛み締め、いつか山を取り戻さんと意気込む娘を愉しむのは此度と決めておった。それがこの山の終焉よ。雷を宿した娘より生まれる我が子は特に強きものになろうと、この千年幾度思い描いたか。あとは支柱を折られ抗うことさえしなくなったミツカイどもを適当に嬲り過ごす。悪くなかろう?」

「……少なくとも、僕たちとは趣味は合わなさそうですね。ちょっと最悪です」

 

 それを想像し、バラルバラーズはより口数が多くなる。

 リッカも、クイールも、イリスティーラも、ラフィーナも、等しく彼への不快感を抱いていた。

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