凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法 作:けっぺん
一層、風が強まった。
僕たちの言葉を受けたバラルバラーズが、愉快そうに笑みを零しながらも、風に込める魔力を強めたのが分かった。
「カカ。最悪――良い言葉よ。人間が魔族に対して抱く感情に相応しいではないか。なあ、エルフ?」
「私にそれを聞く辺り、本当に性格が悪いな、キミは!」
降り注いできた鋭い風の刃を、イリスティーラは手に持った棒状の何かを振るって迎撃した。
赤黒いそれは風にぶつかって砕け散り、液体となって辺りに飛んでいく。
手元に残ったものを投げ捨て、新たに一つ形作られたものを持ち直す。
刺突を目的とした、細い剣――いや、寧ろそれは巨大な針と言って良いかもしれない。
元になっているのは……血液、だろうか。
「我らの息吹の次はコウモリ共の力か。またひどく見境のないエルフじゃな。混沌をよしとするとは、酔狂なものよ」
「使えるものはなんだって使うさ。ヴァンパイア由来のこの力は使い勝手もいい」
外装を纏ったイリスティーラは身体の性質を変えてのトリッキーな戦い方が主となる。
しかし、攻撃においては魔道具に頼る部分が大きい。度々の対処にも性質の変化という一工程が挟まる分、近接戦闘は不得手だという。
それを補うために、新しい武器を用意していたのだろう。
壊れやすいが代えが利き、少ない消費で用意できる武器は、イリスティーラの戦い方に適している。
「面白い。そら、次の手品を見せてみよ!」
大きく広げられた翼の周囲を、風が渦巻く。
込められた魔力はあちこちで纏まり、無数の球体を形成する。
あれを一斉に撃ちだしてくる――違う。
バラルバラーズの意識はこちらに真っ直ぐと向いてはいない。さらに風を強く、と集中する様子は、単調な攻撃の前のそれではない。
吹き荒ぶ風が強まった――そこに球体の群れがふわりと乗せられた。
瞬間、ただ集まっていただけの魔力は暴威へと変転する。
「リッカ!」
「大丈夫、間に合う……!」
『フィーチャリンク! U-リッカ――セプテニファ!』
横から殴りつけてきた魔力の球体を、変化した外装に装着された盾で受け止める。
一撃で終わりではない。これまで吹いていた風に、明確な脅威が追加されたのだ。
「ッ……!」
この場には木々も建物の類もない。
だからこそ、風で何かが倒壊し、飛んでくるようなことはなかった。
そうした暴風による副次的な危険を、バラルバラーズは己の手によって付け加えた。
触れれば炸裂する緑の弾丸。それが好き放題に舞い踊る戦場は、とてもではないが僕たちが満足に戦えるものではない。
「くっ、鬱陶しい……!」
「これじゃあ攻めようにも……けど……!」
だが、その嵐の中であっても、踏み込まなければいけない。こうして立っているだけではいずれ押し負けるだけだ。
前に進むことすら厳しいこの状況で、自分に向かってこられるのかという挑戦的な笑みがバラルバラーズにはある。
それは期待であり、油断。治癒してしまったものの、先程はそれを突くことで、彼に傷を負わせられた。
もう一度、それと同じように。
それでいて、状況を変えられるほどの一撃を。
「こんなことであっさりと諦めてたら、勇者は務まりません――!」
『
一層輝きを強めた外装を纏い、クイールが駆け出す。
周囲に舞うきらめく粒子で風の弾丸を受け止めるクイールが誰よりも先に行くことは、分かっていた。
誰よりも勇者であることに拘る彼女の勇気は、僕たちの意識を統一させて、奮い立たせる。
どう動くべきかの解はすぐに頭に浮かんだ。盾に手で触れ、機能を出力させることで、あらかじめ構築された魔法が発動する。
「ありがとうございます! ユーリくん!」
単純な身体能力の強化魔法は、踏み込む力をより強く、そしてバラルバラーズに辿り着く時間をより早める。
襲い来る弾丸を、踏み込みの中途で体を一回転させ、聖剣で吹き飛ばしたその一秒後には、クイールは彼の面前にまで至っていた。
「はぁ――!」
「グゥ……ッ!?」
更に一手、聖剣での攻撃を予期していたのだろうバラルバラーズの不意を突く。
勢いよく振るった足で顎を蹴り上げ、失った勢いを魔力の放出で取り戻し、顔の側面にまで移動。
聖剣を叩きつけ、返ってきた衝撃を利用して彼の背後へと跳んだ。
「こっちも行くよ、ユーリくん」
「分かった!」
『ファイナライズ、レディ』
『ファイナライズ! アクセプション!』
クイールの外装が齎す強化によって、僕たちはこれ以上ない連携を実現できる状態になっている。
バラルバラーズはクイールに注意を向けずにはいられない。そこを突くのは道理だ。
盾の表面全域を撫でるように触れていく。手が通り過ぎた位置に映し出されていた『アイコン』が投射され、周囲へと浮き上がる。
味方への強化や、相手に対する弱体。
多種多様な効果を発揮する魔法が組み込まれたパネルの数々は、飛び出した傍から盾になり、弾丸を防いでいく。
その中でイリスティーラが魔道具の銃口をバラルバラーズに突き付ける。
先端に充填されていく魔力は既に、風の弾丸よりも何倍も大きな球体を形作っていた。
バラルバラーズの後方では、クイールが聖剣を振り上げ、投擲の姿勢に入っている。
「……!」
バラルバラーズが対処のため動き出す。
ならばこちらは吹き荒ぶ風に負けない威力を同時に叩き込むだけ。
『――
『――キメラ・エクスプロージョン』
『――セプテニファ・エクストライクッ!』
射出された光弾に合わせ、体を跳ねさせる。
パネルは縮小して右足に集まっていき、多くの魔法が一ヶ所に集束する形となった。
その右足でもって、光弾を蹴り出す。込められた強化魔法は威力の後押しに。そして弱体の数々は光弾に移し替えて。
「ク、ハ――!」
吐き出すような笑いが聞こえてきた後、風がさらに強まった。
魔剣を地面に突き立てて、飛ばされないように耐える。その風の中で、光弾は勢いを弱めることなく真っ直ぐ向かっていく。
暴風は、翼を大きく羽ばたかせたことによる影響か。
彼の巨体が持ち上がり、繋がっていたコードがジャラジャラとこの場に不相応な音を鳴らす。
彼がそのまま飛び上がることはなかった。体を起こすことは出来ても、飛行を可能とするほどの猶予は与えられていない。
横にしていた体を起こし、両足で立ち上がった。
僕たちの攻撃は、彼にその判断をさせるほどのものであり――それで対応できるものだった。
「なるほど、わしに両手を使わせるか!」
光弾を左手で握り込み、後方から投擲された聖剣を右腕で受け止める。
立ち上がったことにより、その威容はさらに大きなものになった。
「こ――のぉ――!」
突き刺さった聖剣への追撃。
クイールの蹴りが突き刺さり、聖剣の輝きがバラルバラーズの腕に広がっていく。
彼はそれに押し負けてはいない。そちらに片腕で対抗しながらも、もう片手を吹き飛ばさんとする光弾を握り潰そうと力を込める。
その一時、余裕と嘲笑は彼にはなかった。
――顔に貼り付けたような笑みはそのままに、臓腑が軋んだような苦痛が、伝わってきた。
「……ユーリ、あのコード」
「え?」
そんな中で、リッカが注目していたのはバラルバラーズ自身ではなかった。
彼の巨躯のあちこちに刺さり、背後の柱へと繋がっているコード――見てみれば、その一本一本に、鈍く輝く魔力が流れているのが分かる。
柱から、バラルバラーズに。まるで彼に力を注いでいるかのように。
「……ラフィーナ、あれ、何か分かる?」
『――いいえ、知らないわ。ただ、あんな風に魔力が供給されているのを見たら、バラルバラーズ様の治癒能力の
バラルバラーズの力の性質が嵐の操作にあるならば、それと同時に異常な治癒能力まで持っているのは、いくらドラゴンといえどもおかしい。
イリスティーラだけでなく、ラフィーナも同様の見解であるようだ。
どうあれ、それがバラルバラーズに対し、魔力を送っている何かであることには変わりない。
あれを一本でも破壊することが、勝ちに繋がる。
そう考えて、魔剣を構え直し彼の足元に踏み込む。それを彼が見逃す筈もなかった。
「させぬわ!」
「ッ!?」
こちらに向けて薙がれた巨大な尾を、躱し切れずに受け止めようとして、弾き飛ばされる。
それまで、彼の背後には回り込まなかったゆえに使われていなかったが、その尾は十分に脅威だ。
ただ振るわれただけで、受けた衝撃は風の槌に劣らない。
ドラゴンという種族が、共通して持つ肉体の力、その極みともいえる強さがそこにあった。
「っ、だけど、あれに手を出させようとしなかったってことは……」
「ん……弱点って言っているようなもの」
態勢を立て直しているうちに、戦況に次の変化が起こった。
痛手は与えられたものの、貫くことは出来なかったのだろう。
聖剣を持ち直し、罅の入ったような腕の上を駆けてクイールはバラルバラーズの死角に飛び込む。
「イリスティーラ、僕たちも」
「ああ。あのわざとらしいコードだろう? あからさまだが、狙ってみるのも悪くない」
クイールの背後からの斬撃を、バラルバラーズは体を覆うように巻き起こした鎧の如き風によって防ぐ。
それでも、一撃では諦めず風を貫かんとするクイールは、僕たちの方針を察したのだろう。
油断ならない攻撃を死角から繰り返すことで、僕たちへの注意を逸らそうとしてくれているのだと伝わってきた。
飛んできた風の弾丸を切り払い、砲撃形態へと変えた魔剣を構え、引き金を引く。
『バラーズ・エクスバスターッ!』
一撃の威力を重視するのではなく、散弾として広範囲にばら撒かれる砲撃。
その内の幾つかはバラルバラーズの弾丸を相殺し、確実に道を拓いていく。
それだけでは不足と判断したのか、壁のように尾が立ちはだかるが、魔剣を振るいさらに広くばら撒けば、防ぎきれないほどになる。
――幾つかが直撃し爆発したが、コードは変わらず魔力を流し続けていた。そこまで強度のないものではないようだ。
「これならどうだいっ」
しかし、コードの一本に対して尾を潜り抜けて接近していたイリスティーラが残っている。
獣の如く変化させた左腕。その鋭い爪が勢いよく突き立てられ、やはりコードが引き裂かれることはない。
「それでは足りんな、勇者ども!」
バラルバラーズの纏う風が竜巻を構成し、退避を余儀なくされる。
クイールもそのまま攻め続けることは出来ず、一度こちらに戻ってきた。
僕たちが一ヶ所に集まったのを好機と見たか、すぐさまバラルバラーズは攻撃に移る。
「――――ゴアァッ!」
嵐の力が集束されたかの如き魔力の密度を持ったブレス。
それを三つの攻撃を合わせて相殺すれば、仕切り直しとばかりに静寂が包んだ。
――いや、錯覚だろう。
今なお風は鳴り、雨は降り続け、雷もそこかしこを走っている。到底、耳が休まる状況ではないのだから。
「……カカ。いやあ、やはりこの歳になると、立つだけでも一苦労じゃな」
「呑気だな――こっちは命がけなんだがね」
「なに、ぬしらは誇るべきよ。わしを立たせ、手を使わせた。わしに傷をつけ、戦をさせた。それが出来る者など、ついぞこの山には現れなんだ。千年の締め括りに相応しい活躍を、ぬしらは見せてくれる」
再び腰を下ろし、受けた傷を癒しつつも、バラルバラーズは僕たちを称賛してきた。
これまで数えきれないほど繰り返されてきただろうミツカイの抵抗。それは彼にとって、戦いにさえなっていなかった。
ゆえにこれは――実に千年ぶりの“戦”だと。
「ぬしらは強い。強き者は良い。ただ力ある者だけであれば、わしの周りにもいた。だが賢しく、知恵と技術をもって絶対的な力を覆さんとする者、不屈をもって差を埋めんとする者は見たことがない。その強さをわしは知らず、そして求めておった」
その称賛は心からのものだと分かった。
だが、何か。
ただ強さを称えることとは、違う意味合いが彼の中で生まれたような。
「うむ――決めたぞ。ぬしらは殺さん。勇者として、その従者としての務めを果たせずとも、わしが庇護してくれる」
そんな不意の言葉に――僕たち全員、一瞬思考が追い付かなかった。
どういう風の吹き回しなのか、頭でも打ったのかと疑う僕たちに、バラルバラーズが言葉の真意を明かすまではすぐだった。
「全員であればより良かったが、不満があるわけでもなし。女子ども、わしの子を孕め。その身体、我が氏族がさらに前に進むために使ってやる」