凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法 作:けっぺん
あ、今年の更新はあと27日と31日を予定しています。
「ん……」
微睡みから意識を引き上げる。
狂気が生む快楽に呑まれた――というよりは、今回は疲労からの気絶といった方が正しいかもしれない。
勇者たちを支える、魔剣としての仕事。
剣術はまだまだ素人なユーリの動きを補正することやら、剣を流れる魔力の調整やら。とにかくやることが多いのだ。
それは随分と気力を使うもので、長時間続ければ、アリスアドラ様の狂気にやられるまでもなく疲れ切って眠ってしまうらしい。
あの狂気に満たされる幸せが、どうにも足りない気がした。
まさか、慣れたとでもいうのだろうか。アリスアドラ様の狂気を注がれても、無事でいられるくらいに。
……あり得ないか。それはアリスアドラ様から解放されたということに他ならず、心酔するあの方への反逆も同然なのだ。
私の心は、まだあの方を想っている。今回それに耐えられたのは偶然だと、違和感に解答を出す。
最近、無理があるのではと囁く声が聞こえなくもない現実に辟易しながら目を開ければ、そこには見慣れた阿鼻叫喚の光景が――
「おや、オハヨウ」
「……」
迷宮のような深さのある、銀色の瞳が目の前にあった。
目を見ただけで億劫になるほどの情報量が流れ込んでくる存在など、私は一人しか知らない。
こいつと目を合わせることは極力したくない。
私からすれば未だに、誰よりも信用ならない怪物である。
気持ちよく寝ていた私を見ていたのは嫌がらせであり宣戦布告だろうと受け取り、下手人に向けて指をさす。
それだけで辺りの空間がざわついた。
「ん? ――おわあぁぁぁぁぁぁぁ――!?」
指示を受け取ったのは大小さまざまな虫だった。
よりによってなんでこいつらが、とは今は思うまい。あの女の使い魔の中でも一番、生理的嫌悪感を刺激する連中だが、味方であるのならば文句もない。
虫たちに群がられて、下手人はあっという間に悲鳴を掻き消され、その姿は埋もれていく。
……なんで私、当たり前のように使い魔たちに指示できるようになっているんだ?
いやまあ、最近はあの女も自重を知ったようで、かれらの苗床になるようなこともなくなった。
それに、虫球の中にいるこいつの言動が気に障って、そこら辺にいる触手を引き抜いて振るうことも多かった。
この空間の内部で私が特別な扱いになっていることは明らかだ。あの女が命令系統に調整を加えたのだろうが、こんな権限まで持たせて良いのかと思わずにはいられない。
使い魔に指示を出せるということは、ある程度あの女に対する反抗だってさせられるということだ。
いつだか――あの女は言っていた。
使命を果たした後は、この空間の管理を私に任せるとかなんとか。
あの時の自暴自棄なあいつに、私は返答を返せなかった。だが、“それ”に向けてあの女が手を動かし始めたのだとすれば。
……考えるのはやめよう。どの道、ユーリによってあの女も思い直した筈だ。
別に反抗できるからといって何をしようとも思わないし、そもそもあの女の信頼とか自覚するだけで気味が悪い。
考えると頭が痛くなるようなことは考えないようにするのがサキュバスとして大成するコツである。いや、私は出来なかったが。
「起き抜け早々、機嫌が悪いねぇ」
「誰かさんのせいでね」
座ってくれとばかりにスライムたちが作った椅子に腰かけ、お望みとあらばと不機嫌さを表に出しながら適当に返す。
日に日に気が利くようになってきている使い魔たちに、微妙な気持ちを抱かざるを得ない。
これがどの程度の個体が集まって形成されているかなど知らないが、大元を増やしたのは他でもない私なのだ。その“ほんの少し前”を思い出せば、気も滅入る。
この状態で私を捕えでもしてきたらあの女に文句を小一時間聞かせてやるのだが、そうした素振りもなく、使い魔は椅子になり切っている。
ちなみに弾力があり過ぎるわ冷たいわで座り心地は最悪である。いい加減服を返せと言いたい。
「いやあ、この子たちも遠慮がなくなってきたねぇ。ほら、ぼくの触手まだ齧られてる」
「苗床にされないだけマシでしょうが。……あんた、性別どっちなワケ?」
「どっちがいい? 望めば望む方になれるよ、ぼくは―ーもが」
虫の塊から何事もなかったかのように這い出てきたそいつに、スライムを千切って投げつける。口元に張り付いた。良いコントロールだ、私。
……よくよく考えれば、この空間において、使い魔たちが互いを捕食し合うような光景は見ない。
かれらもまた、捕えた苗床たちと同じように、食事などを必要としないように出来ているのだろうし、基本的には使い魔同士は攻撃対象ではないのだろう。
私も、こいつも、今の状態としてはあの女の使い魔のようなもの。
だとすれば、こうして虫たちやスライム、触手をけしかけるのもじゃれ合いのようなものなのか。そう解釈すると腹立ってきた。こんなのとじゃれ合う気はない。
ともかく、あの虫たちも、甘噛み程度で済ませている訳だ。
私はごめんだが。虫たちが肌を這うだけで怖気が走るのだ。噛まれるとかやっていられない。
「……」
周囲を見渡す。
幾らかあの女が気を利かせたのか、ここの内装は変化している。
簡単に言うと、部屋が区切られたのだ。私がユーリたちの補佐をする際、他の連中に悟られないためだろう。
苗床付き合いの配慮をしてくれる優しいご主人様である。余計なお世話だ。
私が今いるのは、幾つか分けられた区画のうち、一番端にある場所。
辺りは使い魔が蠢いていて陰になっている、こうして寛ぐのには打ってつけな場所なわけだ。
「……四つの試練が終わった。あとは、魔王様を倒す」
口に出してみても、どうにも現実感がない。
しかしそれは紛れもない真実。ユーリたちは風の試練の完了という、千年の内で誰も達成し得なかった偉業を成し遂げたのだ。
四つの試練全てを終えた勇者は、これまで一人もいなかった。
それゆえに、これらの試練を終えた勇者に何が待つのかというのは、私たち魔族にしてみても不明瞭である。
しかし、順当に考えるのならば、これから先、魔王様へと至る前にもう一度、ユーリたちは四天王と会うことになるだろう。
試練という、加減された形ではない。
今度こそ本気のあの方たちと戦うことになるのだ。
それに、そうなれば四天王に仕える側近もまた、何もしないということはあるまい。
――ジル様は、最後の最後、口に出さないまでもユーリの在り方を認め、風の試練の案内役としての任を果たされた。
はっきり言って、それまでのジル様は好ましいと言える人格ではなかった。
だが、もうあの方を悪く言うことはあるまい。あの方の言葉を省みるに、あの場で錯乱するに足る理由もあったようだし。
ジル様は亡くなった。そして、風の四天王バラルバラーズ様もまた倒れた。
形式上、彼の側近として扱われていたミツカイとはもう戦う理由がない――とすれば、残るはリーテリヴィア様とオドマオズマ様の側近が二人ずつに、アリスアドラ様の側近が三人。
リーテリヴィア様とオドマオズマ様については、私はよく知らない。
魔王様に関する任務を請け負っていたことから、あのオリヴィエという方と、エコーという方はそうなのだろうが、これもあくまで推測だ。
私が今考えられるのは、アリスアドラ様に仕える三人。
エヴァネス様、イルミナ様、ネリネ様。
……アリスアドラ様と、戦えるとは思えない。それだけではなく――私は、イルミナ様と、戦えるのだろうか。
――ラフィーナ。此度の『初戦試験官』に選ばれたそうですね。私も鼻が高いです。
――は、はい! 全霊をもって努めます! あっ……。
――フフ。あなたはそれで良いのです。“変わり者”なのは強きサキュバスの第一歩。私たちと同じ、特異性なのですから。
――イルミナ様たちと……同じ?
――ええ。サキュバスである以上、抗えない情欲。それと向き合うための何かを、あなたは持っています。いずれその意味を理解するでしょう。
変わり者だった私に剣術を教え、アリスアドラ様に選ばれた私を送り出してくれたイルミナ様。
あの方の剣の冴えは、私のように教わったものを我武者羅に繰り返し、体に叩き込んだだけのものとは違う。
私が――あの方と戦う決意を固められたとして、私がどれだけ補正しても、ユーリがイルミナ様に剣で勝ることはない。
剣を主武装とするのはいい。だが、それだけでは足りない。あのわけの分からないキックを含めた格闘術。この使い魔たち。可能ならばさらなる強みを。
尊敬の対象という色眼鏡もあるかもしれないが、そう思うほどにあの方は強敵となるだろう。
ユーリたちは試練を終えた。バラルバラーズ様を倒した。
このことはたちまち広まるだろう。いよいよ魔族たちは勇者を見る目を変える。
ここから先は立ちはだかる誰もが、全霊で来る。油断すれば、即座にバッドエンドまっしぐらだ。
そうなるのは勝手だが……まあ、今更どこででものたれ死ねばいいとは思わない。
――アリスアドラ様への崇敬は残りつつも、だからといってかれらが何も残せず終わるということには抵抗を覚える。
そんな思考の不具合が、どうにも気持ち悪かった。
「ラフィーナ」
「何よ――あんた、珍しいわね。最近こっちを歩き回ることなんてなかったのに」
考え込んでいる中に言葉を挟まれて、苛立ち混じりに返してから、その声の正体に気付いた。
ここ最近――風の試練が始まってから新しい魔族が入ってきておらず、さらに長期間ユーリと逸れていたこともあって、こちらに顔を出していなかったらしいリッカ。
相変わらず不機嫌そうな仏頂面と顔を合わせれば、やっぱり気持ちはげんなりとする。
一切心配していないとかではないが、それでもこの女は苦手なのだ。
「ちょっと来て」
「へ? ちょ、引っ張るなっての!」
リッカは私の腕を掴み、ぐいぐいと引っ張ってくる。
いつの間にか先程まで鬱陶しいちょっかいを掛けてきていた怪生物もいなくなっているし、どうやら私個人に用があるらしい。
しかし、力が強い……ではなく、私が力を奪われているのか。
この空間はこいつに誰も逆らうことの出来ない空間。
私は魔族だし、こいつは人間にしてもひ弱な身。本来ならば全力で引っ張られたところで、小動もしない自信があるのに。
「一体なんだってのよ」
「ラフィーナに任せたいことがある。こっち」
リッカの歩く先にいる使い魔たちは、邪魔にならないよう次々と動いて道を作っていく。
殊勝な使い魔たちだ。同じような立場である私とは大違いである。
しかし、どうしたのか。どこに行こうと代わり映えのしないこの空間において、場所をわざわざ移さないといけない用事などそうは考えられない。
その前提で予測してみれば……駄目だ。碌でもないことである気しかしない。
出来ればこれ以上胃が痛くなるようなことではありませんようにと誰にでもなく願っていたが、開けた場所に出てきてみれば。
「――おのれ、下等生物風情がわしに触れるなどと! 忌々しいッ!」
「――――」
そこにあったのは想像していたような光景ではなく、少し――いや、大いに予想外な状況だった。
魔族としての特徴を半端に残しつつも、苗床として適した肉体へと変質させる、この女が作り上げた狂気の魔法。
その中でも最新の犠牲者にして、この女の長い長い旅路の中でも最大の成果。
実際にそうだという確証はないけれど、こんな変化が起きてなおここまで尊大な方は、他に考えられまい。
「肉体を脆弱にさえすればわしが黙るとでも思うたか! 下らぬ! 下らぬわ!」
「……あんた、無力化してないわけ?」
「しきれなかったんだと思う……ここからは出られないし、この空間を傷つけられもしないけど、“使い魔たちよりは強い”くらいには力が残ってる」
頭から生える角に、腕や脚を覆う濁った緑色の鱗。
なおも力強さを残す尾と双翼。そして、大きな傷によって削り取られた右目。
間違いないといえる要素は十分に残されていた。その上で、しっかりと肉体は作り替えられているのだから性質が悪い。
しかしながら、こうしてこの悍ましい空間の虜囚となってなお、“力を失い切っていない”というのもまた恐ろしい話である。
それほどまでに、あの方の力は規格外だったということだろう。
この空間に閉じ込めることさえ、さぞ苦労したに違いない。
「ッ、貴様ら……!」
襲い来る使い魔たちをひたすら蹴散らしていた無法者が、こちらに気付く。
この空間が始まって以来の偉業と言えるだろう。
元四天王ともなると、ここまで抗うことが出来るのだ。
かつての力なんて指先ほども発揮できないだろうに。強いて言えば、満足に動くこともままならなかった元の肉体よりは遥かに動きやすくなっているだろうが。
リッカに殺意を向けていた彼……彼女……? ――だが、私の方を見ればたちまちその殺意も移ってきた。
「淫魔……ッ! そうか、アリスの――アリスの差し金か! あの小娘が、我らに等しく与えられた結末を独占しようという腹かッ!」
何の話なのだろう。
この女に協力していたという件についてならば、恨まれる理由もあるだろうが、何やらそれとは違う。
この女もそうだが、巻き込むつもりなら私を置いて話を進めないでほしい。
「ええい、これだから淫魔というのは始末におけぬ! あのクギミゴ上がりの淫魔擬きが従わぬわけよ! よもや種族総出でわしを謀っていたとはな!」
「……すみません、なんの話だか――」
「なれば今すぐわしを解放せよ! 無関係な者が手を出すなど烏滸がましいわ!」
おおう……これは。
魔剣越しに話を聞いていただけだったし、それ以前は噂話程度しか知らなかったが、“中々”だな。
この状況で癇癪一歩手前の当たり散らしが出来るのは凄い――相手がアリスアドラ様ではないからか、どこか冷めた気分で私は四天王と相対していた。
本来であれば、叛意を抱くことさえしてはならない筈なのに……というのもまた、今更か。
私も内心色々吹っ切れているところがあるのだろう。
「……で? 私に何をしろって?」
リッカに聞いてみれば、彼女は指先で使い魔を“新入り”に嗾けながら少し思案する。
一斉に襲い掛かる使い魔たちだが、それをものともしないあのお方の余力には恐れ入る。
いずれ限界は来るだろうが、このまま好き放題させればそれなりにこの空間に対する痛手になるかもしれない。
「――これのこと、任せたい」
「は?」
「だから、これを堕とすの」
いまいちわかりにくい要望に思わず問い返したら、数倍意味不明になって戻ってきた。
一度外装を解除されるほどのダメージを負っていた筈だし、その時に頭でも打ったのだろうか。
「堕とす、って……?」
「ひとしきり快楽でも与えて、“その気”にさせる。ラフィーナ、得意でしょ。サキュバスなんだし」
――こいつ、私のことをちゃんとサキュバスだって認識していたのか。
いや、だからといって当たり前のように受け入れることなど出来ないが。
つまるところこういうことだ。
この女は、この空間においても、自分の行いに一枚噛めと――そう言っているのだろう。
「……あんた、全部が終わった後がどうのって話、まだ考えてるんじゃないでしょうね」
思い出したのは、いつぞやの自暴自棄。
自身が満足した後、今ここに広がる空間をどうするかという話。
私に任せようなどと言っていたそれは、この女が考えを改めたことで有耶無耶になったと、そう思っていたが。
「それは……今はもう、考えてないけど。今回のはまた、別の話」
「どういうことよ?」
「……これには、
「……」
こいつに対して「何言ってるんだ」って思うことなんて、もう何度あったか数えきれないが。
これまでに類を見ない方向性で、頭が痛くなった。
なんだ、こいつ。単に復讐の手段だっただけじゃなくて、もしかしてこの空間そのものがこいつの趣味だったりするのか。
そう考えてみると、この空間にいること自体に寒気がした。とうに忘れ去った恐怖が蘇ったかのようだった。
「この空間におけるラフィーナの権限、ちょっと前に昇格してある。使い魔にある程度指示することも、種族としての能力も振るえるはず」
「……あんたを一発ぶん殴ることは?」
「それは無理」
私がドン引きしていることを知っているのかいないのか、気にする様子もなく彼女は続ける。
そしてとんでもないカミングアウトもされた。
いつの間にそんなことされたんだ。だから最近使い魔が妙に聞き分け良かったりするのか。
別に解明されなくてもいい秘密が明かされた。何も嬉しくない。
しかし……自覚してみれば、確かにサキュバス“らしい”ことが出来そうだ。久しく封じられていた機能が解禁され、それまでの不自由さに気が狂いそうになる。
――まったく。本当に腹立たしい。
遺憾極まりないことだが、この女はここまで私に気を許したようだ。
その油断を後悔させてやりたい衝動は、不思議とすぐに消える。そんなことをしても、ほんの一瞬の自己満足にしかならないだろう、と。
「あんた、死んだ後、碌な目に遭わないわよ」
「……別に死んでからのことなんて、どうだっていい」
ああ、そうですか。前向きになったようで何よりだ。というか“死んでから”の解釈にもよるが碌でもない目には十二分に遭っているんだったな、こいつ。
いくら嫌味を言っても堪えまいと肩を竦める。この女もユーリも、一度こうと決めたら図太いったらない。
その神経は見上げたものだが、だからといってこの女の復讐の片棒を担ぐのも――それもまた、今更の話か。
魔剣越しのオペレーターとして補佐すること。サキュバスとして、この空間で種族の性質を振るうこと。
どちらも大きな違いはない。私はもうずっと前から反逆者。
同じサキュバスが相手でもなければ、躊躇いさえ感じなくなっているほどには、“勇者たちの仲間”なのだから。
「貴様、何を――むぐぅ!?」
尾を伸ばしてみれば、なんだか前よりも軽く振るえた気がした。
この女の言う権限とやらが具体的になんなのかは知らないが――元々よりも強くなったのではないかと錯覚して癪だ。
苛立ちに任せて、“獲物”の口を塞いだ尾から、
「ん――む、ぐぉ……ッ!」
魔族とは、総じて理不尽な何かを有するものである。
価値観であったり、能力であったり、種族によってまちまちであるが、何かが外れているものだ。
そして、それこそがその種族の強みである。
サキュバスにとっての強みとは何か。
――考えるまでもなく、他者の思考を蕩かし貪ること。
「くっ……貴様、なに……を……っ!?」
「……何って……決まってるでしょ。サキュバスがすることなんて」
フリでもいいから、敬意を捨てて見せようと思ってみれば、自分でも驚くくらいあっさりと“らしい”言葉が出た。
案外そういう不真面目な方が向いているのだろうか――と考えかけて、その思考をすぐさま捨て去る。
それが無理だと受け入れたからラフィーナという自分があるのだ。今の立場はともかくとして、それを否定するつもりはない。
「ぅ……ぐぅ……!」
そら、効いてきた。元々はどうだったか知らないが、こうして肉体が変じてしまった以上、抗うことは出来まい。
サキュバスの体液とは、その全てが脳を侵す劇薬のようなもの。
汗も、血液も、唾液も何もかもが、相手の思考を奪うための薬となる。
そして吸精のための器官である尾からの分泌液はその最たるものだ。
“専用”に作り替えられている肉体であれば、効き目も抜群だろう。
「ッ、よせ淫魔! そのような軽挙に走ればどうなるか分からぬか! わしの体が元に戻った時、貴様は死さえ生温い苦痛を味わうことになろうぞ!」
「舐めないで。そんなの、とっくの昔に経験済みよ。それより、まだそんな甘い考え持ってるの?」
「は……?」
「まともにモノが考えられる状態で、外に出られると思ってるのかって聞いてるのよ」
「貴様……っう!?」
まともに動けなくなったその体に尾を巻きつけ、足払いで体勢を崩してその場に倒す。
抵抗して振るおうとした腕を掴んで押さえれば、普通ではないことが即座に分かるほどの熱が伝わってくる。
出せる力は使い魔以上、私以下といったところか。
すかさず襲い掛かろうとする使い魔たちに「待て」を突きつける。
ここで動かれてもいつも通りだ。別に私は良いとは思うが、あの女はそれを求めていないのだろう。
「ああ、そうそう。最初がどれがいいか、決めておきなさい」
「な、にを……!?」
だったら徹底的にやってやる。
別に相手が男だろうが女だろうが関係ない。
“淫魔風情”と侮られているのならば、その体に知らしめてやるとしよう。
――獲物を快楽で堕とすことにおいて、私たちの右に出る種族なんて存在しないということを。
「だから――どれの苗床になりたいかって。たくさん子を増やしたいんでしょ? ここからはもう、なんの心配もなくなるわ」
「――――違う、わしは……! そうではない! 何故理解せぬ!? やめろ……ッ、やめ――――!」
喜びを露わにするようにざわざわと蠢く使い魔たちの様子を見て、ようやく被食者であることを自覚したのだろう。
許された抵抗に意味がなくなり、ようやくその目に恐怖が滲んできた。
……やはり、この手の趣向はあまり好きではない。さっさと進めてしまおう。
怖がることはない、とは言わない。貴重な感情だ、今の内に味わっておくことだ。遠からず、その恐怖さえなくなってしまうのだから。
快楽の果てに屈服し、やがては解放さえ拒み永遠を求める――なるほど。
それこそが、誇り高い“最強”の魔族に対して、リッカという復讐者が望む凋落の姿なのだろう。
【ラフィーナ】
剣士として特筆した能力はなくとも、他者を快楽に堕とすすべはあらゆるサキュバスが熟知している。
寝台という戦場において、彼女たちに勝てる魔族は存在しない。
たとえそれが、四天王たる最上位の存在であろうとも。
【バラルバラーズ】
大変久しぶりな新入りネームド苗床である隻眼ドラゴン娘。
ロリかどうかは不明。リッカ曰く、答えは各々の心の中に。