凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法   作:けっぺん

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勇者「理想の世界? 1000年早いよ!」
プロローグは軽やかに


 

 

 風の試練を終えた翌日。

 ゼクセリオンの内部に繋がる扉を開けると、中から焦げ臭い煙が外に出てきた。

 何事かと思って駆け込んでみれば、大部屋には鍋を前に腕を組んで唸るクイールと、我関せずと本に目を向けるイリスティーラがいた。

 

「むむ……今度は何がいけなかったんでしょう。お塩の加減……? ――あ、おはようございます。ユーリくん、リッカちゃん」

「やあ。久しぶりの故郷は満喫できたかい?」

「おはよう、二人とも。楽しめたし、ゆっくり休めた、けど……何事?」

「聞くまでもないだろう? クイールの“いつもの”だよ」

「……」

 

 まあ、状況を見れば概ね想像は付いたが、やはりクイールが“やらかした”ということらしい。

 鍋から濛々と立ち上る煙を見て、リッカは深々と溜息をついてから、制御の術式を操作して換気を行う。

 たちまち部屋に籠った煙が抜けていくが――大丈夫だろうか。

 一気に外に出た煙を見て、村のみんなが驚かないか心配である。

 

「……作り直す」

「あぁぁぁぁ……」

 

 なんというか……あの煙を見る限り、もう満足に口に出来るものではなくなってしまっているのだろう。

 無慈悲に鍋の中身を片付け始めるリッカに苦笑しつつ、僕も朝食の準備を進める。

 

「村の方はもういいのかい?」

「うん。みんなも元気そうだったし、ここまでどんな旅をしてきたかも伝えられた。次に戻ってくるのは、魔王を倒した後かな」

「――そうか。キミたちにとって良い帰郷だったなら、それで良かった」

 

 村のみんなは驚きつつも、僕たちを迎え入れてくれた。

 たった一晩。それも、カルラのいない夜だったけれど、何もかもが始まる前の遠いいつかのようで。

 ずっと過ごしていた家で眠る夜は、試練を終えて、“最後の場所”への足取りを探す前のリフレッシュとしては最高の夜だった。

 

 ……心残りとしては、クイールとイリスティーラをみんなに紹介する機会が流れてしまったことか。

 自分たちがいては僕たちのための帰郷にはならないだろうと、二人は村から少し離れた場所に設置したゼクセリオンで一晩を過ごした。

 残念だったが、試練の直後でもあるし、二人もゆっくりと休みたいだろう。僕たちにも気を遣ってくれたのだし、全てが終わったら、また改めて村に招きたいところだ。

 

「さて、手を動かしてもらっているところ申し訳ないが……昨晩からの成果について、三人に話しておこう」

「成果?」

 

 イリスティーラはテーブルの上に持っていた古ぼけた本を何冊か置く。表紙を見る限り、歴史書であるようだ。

 三人と言っていることからクイールにも共有はしていないようで、彼女も首を傾げつつ椅子に座る。

 

「試練の後、魔王が告げた地名――ロスラウド。聞き覚えのない名前だったし、改めて幾らか文献を漁った。どこかにそんな名前で呼ばれる場所があるのか、或いは、歴史上そんな場所が存在したのか」

「イリス、なんでそんな本持ってきてるんですか?」

「念のため備えていただけだよ。私が慎重なのは今に始まったことでもないだろうに」

 

 答えになっていないからか、それとも慎重であるという自己評価に物申したいのか、微妙な表情のクイールを置いてイリスティーラは話を続ける。

 

「それなりに由緒正しい文献だが、隅から隅まで読み込んでもそんな名前はなかった。少なくともその場所は、知る人ぞ知る秘境の類ではあるらしい」

「そうなると……やっぱりその場所の手掛かりを見つけるところからってこと?」

「ここに来て足踏みってのも、なんか悔しいですけど……」

「私も同意見だ。あてもなく探し回っていればきりがない――という訳で」

 

 話を途中で区切り、イリスティーラは懐から小さな板状の魔道具を取り出した。

 ――風の試練に向かう前、彼女が僕たち全員に渡してきた、通信用の魔道具である。

 かつて冥界であった領域との疎通は取れなかったことから、試練の最中にリッカたちと連絡を取り合うことの出来なかったそれだが、今出してきたということは……。

 

「昨晩、ナディアに連絡したよ。“詳しい話は全員で戻ってきてから”とのことだが、あの言い方からして何か知っているのだろうさ」

「ナディアが――?」

 

 ――魔王は僕たちの知る誰かが、手掛かりを握っているというようなことを言っていた。

 どうやらイリスティーラはそれを気にかけ、既に確認を取っていたらしい。

 ナディアの持つ手掛かりがどれほどのものかは分からないが――ともすればそれは、ナディアの時代には知られているものだったのだろうか。

 

「……なら、予定通りこれから聖都に向かうって形で良さそうですね。ナディアちゃんに話を聞いて、それからロスラウドへ向かう準備をしましょう」

「うん、そうだね。ゼクセリオンを使えば、ここから聖都まではそこまで時間は掛からないと思う」

 

 勇者として旅を始めた頃は、この村から聖都までも険しい旅路だった。

 だが、空路を使って真っ直ぐ向かえば、昼には着くだろう。

 勿論道中の油断こそ出来ないが、地理に対するスケール感が大きく変化したことを自覚する。

 自分の世界が広がった、というべきか……良い変化なのかは、いまいちわからないが。

 

「それなら、キミたちさえ良ければこの後すぐにでも向かおうと思うが、大丈夫かい?」

「うん。僕はそれでいい。リッカは?」

「……ん。大丈夫」

 

 もう、村のみんなに出発する旨は告げてきた。

 ずっとここにいたいという気持ちは、もちろんある。

 遠い昔であるかのように錯覚する、当たり前のいつか。

 それを、惜しいと思う――だからこそ、必ずまたリッカたちと戻って来られるように、僕たちの使命を果たそう。

 

 

 

 ――それから数時間ほど。

 食事を済ませてゼクセリオンをややゆっくりと飛ばし、途中で休憩を取り、聖都に着いたのは昼過ぎとなった。

 四人で正門へと近付けば、それに気付いて、そろそろ顔馴染みとなった門衛のエルフがやってくる。

 

「やっぱり、勇者殿たちでありましたか。今回も無事……と言いますか――」

「どうやら、試練を終えたようだな。ユーリ殿も、そしてクイールも」

 

 エルフ――ルークとフェンは僕たちを一目見てそう判断した。

 風の試練を終えたことで、勇者の証にはまた変化が起きたのはイリスティーラによって確認が取れている。

 それを二人も見て取ったのだろう。

 

「相変わらず、そうは見えずとも……既に我々の及びもつかない力を有しているのだろうな、あなたたちは。聖都は二人を歓迎しよう。そして、クイール――よく戻ったと言っておこう。……一応、イリスティーラ、貴様にもな」

「あ、はい。ただいまです、フェンちゃん」

「入らせてもらうよ。ほら、住民証明だ」

 

 フェンとイリスティーラの間には、互いに拒絶があった。

 それでも、仕事は仕事なのだろう。バッグのポケットから半透明なカードのようなものを取り出すイリスティーラを、フェンは止めようとする。

 

「待て。貴様とクイールはまだしも、ユーリ殿とリッカ殿には手続き、が……」

 

 聖都の住民でない僕たちは、何もせず入ることは出来ない。

 簡易的な手続きであるため一度目と二度目の来訪では彼女たちが済ませてくれていたようだが、試練に関わりのない状態であれば話は別だ。

 さほど時間を取るものでもない。すぐに済ませようと思っていたのだが――イリスティーラは重ねていたそれをずらして、三枚の住民証明をフェンに見せた。

 

「え……?」

「クイール、キミは再発行した筈だから、自分で持っているね?」

「はい……僕はありますけど……イリス、それは?」

「ユーリくんとリッカくんの分の住民証明だよ。毎度門を通る度に手続きをしていても面倒だろう?」

 

 いつの間にやらイリスティーラは、僕たちの分の住民証明を用意していた。

 困惑するのはフェンだけでなく、僕たちも、である。そんな簡単に用意できるものなのかとか、そもそもそんなことをして良いのかとか。

 

「ナディアのものを作るついでに、無理を言って作らせた。“聖都の長”には少しばかり、貸しがあったからね。まあ、別に持っていて損があるものでもない。私からのプレゼントだと思ってくれ」

 

 そう言って、僕とリッカに一枚ずつカードを渡してくる。

 どうやら、先立ってリーテリヴィアに作らせたもののようだ。

 

「リーテリヴィア様に……? ……証明が本物であることは確かだが、後ほど確認させてもらうぞ」

「好きにしたまえ。何か不備があれば、私の家を訪ねてくれれば話は聞こう」

「誰が貴様の屋敷など――ユーリ殿たちに聞かせる話でもないな。証明がある以上、手続きに時間を取る必要もない。入ってくれ」

 

 疑いを持ちながらも道を開けるフェンたちを気に留めず、イリスティーラは足を進める。

 住民証明を持ち、それに続けば、初めて入った時と変わらない活気が僕たちを迎え入れた。

 

「人間の住民証明というのはそれなりに簡単に発行できる。これで短期間の滞在ではなく、そうしようと思えばキミたちは聖都に住むことも可能だよ」

「……そっか。でも、僕たちは――」

「――まあ、強要でもない。今は面倒ごとをスキップできる手段だと捉えてくれればいいさ」

 

 それは多分、僕たちの旅が終わった後の話をしているのだろう。

 すべてが済んだら、どうするか。具体的なビジョンは、今は思い浮かべなくても良いと考えている。

 リッカと、カルラと共に、当たり前の日常に戻りたい。その願望さえ、確かなものであれば。

 そして、それを実現させるのならば、相応しいのは何も知らなかった頃を過ごした村であるべきだろう。

 聖都の方が暮らす上で不便はないと分かっていても、だ。

 

「気が変わったらいつでも言ってくださいね。イリスの屋敷なら何人でも住めますから」

「どうしてキミが私の家を薦めるんだ……まあ、部屋は余ってはいるが。そういう話は“区切り”がついてからにしたまえよ。片付けだって必要だしね」

 

 話をさっさと切り上げて、足早にイリスティーラは裏路地に進んでいく。

 風の試練のため、聖都を出た時の道と同じだ。

 人気のない道をわざわざ選ぶのは、イリスティーラが他のエルフと関わることを極力避けているから。

 そして同時に、僕たちがあまり注目されないようにという配慮もあるのだろう。

 聖都に住むエルフをはじめとした魔族たちの中に、僕たちの内の勇者の証を見て取ることの出来る者がどれだけいるかは分からないが、そうした者たちがどういう反応をするか分からないと。

 更に言えば――リッカの魔族嫌いを慮ってくれているというのもあるかもしれない。

 リッカがイリスティーラに対して、ほんの僅かに警戒を緩めた事実もある。風の試練で僕のいない間に、彼女なりに信頼を獲得したのだろう。

 

 やがて表の通りの喧噪も聞こえなくなり、聖都の輝かしさがそこだけ避けているかのような、柵で囲まれた敷地が姿を現す。

 中は雑草が伸び放題になっているだけで建物なんて見えない。

 ところが、これは外観を騙す、この土地に仕込まれた魔法によるもの。

 門を開こうとしても意味がない。正しい入り口は、門の反対側にある小さな柵。

 それを潜れば、それまで見えていなかったことが不思議なほどの大きい館が現れて――

 

「出来たわ! ディアネシュアの証明術式!」

「ぼ、ぼくも……!」

「俺も! これ俺たちのしょーめー術式にしようぜ! いいよね、ナディア!」

「ええ、いいですわ。ただし、みだりに見せびらかしたりしないこと。あなたたち四人だけの秘密としておくように――あら?」

「――ママ!」

 

「……ええっと」

「どういう状況だい? これ」

「さあ……?」

「……」

 

 ――ナディアを中心として、魔法を操作しながらはしゃぐ子供たち。

 ホープがこちらに気付き、クイールに駆け寄ってくるも、一体何が起きているのかはまったく分からなかった。




本話より最終章となります。
やることは決まっていますがどれくらいの長さになるかは不明です。
頑張っていきますので感想・評価・ここ好き等よろしくお願いします。
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