凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法   作:けっぺん

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終着点の在り処

 

 

「まずは――お帰りなさい、四人とも。風の試練の完了、おめでとうございます」

「うん。ありがとう、ナディア」

 

 イリスティーラの屋敷についてしばらく。

 どういうわけか庭にいたホープ以外の子供たちはナディアの一声で解散し、僕たちは屋敷の一室に集まっていた。

 

「留守番やら諸々、助かったよ、ナディア。ところで、取り急ぎ一つ確認をしたいのだが……」

「例の名称のことですね?」

「そっちもそうだが、さっきの子たちはなんだい? エルフまで混じっていたが」

 

 先程解散した子供――ホープ以外の三人を思い出す。

 十歳かそこらと思しき男の子が二人と、少し背の高いエルフの女の子が一人。

 この屋敷を警戒する様子はなく、楽しげであったが、この屋敷を誰より知っているイリスティーラだからこそその様子は不可解なものなのだろう。

 そんな彼女に、ナディアは若干の呆れを見せた。

 

「少なくとも一人は“肝試し”の常連でしょうに……あなたとも話したことがあると言っていましたよ」

「個々の顔なんて覚えていないよ。大抵適当にあしらっているだけだしね。……それで?」

「まったく……残る二人はあなたたちが発ってから来るようになった子たちです。ホープと意気投合したようで」

「うん。トーマと、コウヤと、ヒルダ。わたしのともだち」

「ホープの……そうですか――そうですか!」

 

 イリスティーラが複雑な表情を浮かべる一方で、クイールは満面の笑みで、膝に乗るホープを抱きしめる。

 あの子たちに悪意は感じられず、純粋にあの場で楽しんでいた。

 この屋敷が聖都の子供たちにとって、肝試しのスポットになっていることは知っていたが、その中の数人とホープは打ち解けることが出来たようだ。

 

「……ああ。ナディア、分かっているとは思うけど……」

「家の中には入れないように、でしょう? 心得ていますわ」

「なら、いいが……随分と盛り上がっていたようだが、何をしていたんだい?」

「ディアネシュアの証明術式を教えていました。あの子たちの“友情の証”とするそうですよ」

 

 証明術式……その家の格を示すという術式は、僕が知る限り今の時代には伝わっていない文化だ。

 ナディアはそれをホープだけではなく、その子たちにも提供したらしい。

 今や、ナディアの家は再興の叶わないもの――彼女にとっては既に不要なものなのだ。

 

『良案と判断する。形は変われどディアネシュアの誇りは次代に継がれる。かの国に仕えた身としては喜ばしい限り』

 

 ナディアの選択を聞いて、懐から飛び出したヨハンナもまた、賛同を示した。

 ムルゼ霊山で彼女の有していたリソースを用いてかなり無茶をしたからか、数日停止状態に陥っていたが、今朝方、動ける状態にまで回復した。

 小さな翼を広げて浮遊する姿を見下ろし、ナディアも微笑みながら頷く。

 

「その通り――それと、お疲れ様でした、ヨハンナ。あなたも無事なようで、何よりです」

再会に心からの喜びを(ハロー・ワールド)、ナディア』

「さて……それじゃあ、早速教えてもらえるかい? キミの知っていることについて」

 

 雑談もそこそこに、イリスティーラは本題を急かす。

 

「ええ。ホープ、少し席を外してもらっても?」

「うん、わかった」

 

 もしかすると、ナディアは既にホープに言い含めていたのかもしれない。

 一言伝えればホープは素直に頷き、部屋を出ていく。

 それに合わせて、懐からアッシュが飛び出した。

 

『一言くらい掛けておいた方がよかったかしら。それで()()を持っていかれても困るけど』

「あら、ラフィーナ――その魔道具から声を発せるようになりましたの?」

『こっちで会うの初めてだったかしら? ま、そんなところよ、お姫様。一応関係者だし、話を聞かせてもらうわ』

 

 そういえば、ナディアとラフィーナの面識はあくまで、魔剣としての状態のみだったか。

 アッシュはテーブルの上でヨハンナの隣まで移動し、それに危機感を覚えたようにヨハンナは少し離れた。

 

「――はっきり言って、連絡をもらった時は耳を疑いました。もう二度と聞くことのないだろう名前でしたので」

「前のネシュアでは、有名な場所だったの?」

「いいえ。その名を知る者は、かつてのネシュアでも殆どいません。わたくしも、ちょっとしたきっかけがなければ名を聞くことさえなかったでしょう。もっとも、全容を知っているわけではありませんが」

「ふむ。そこまで知る者が制限されるような場所なのかい?」

「ネシュアの“極秘”なんて数え出したらきりがないでしょうけど、その中でも指折りのものでしょうね――かつてネシュアには、志を同じくする技術者たちの集まった派閥が無数に存在しました。たとえば、“聖女ヨハンナ”が設立した決戦派ですね」

 

 ラフィーナが操っているのかそうでないのか、口を開いてゆっくり近付いてくるアッシュを避けようとするヨハンナが、ナディアの言葉を受けて思わずと言った様子で首を下げ一礼する。

 それを隙と見たのか、一気に距離を詰めたアッシュにヨハンナは捕えられた。

 ……遥か過去の時代の偉人。僕たちの使命にも関わってくる存在である人物が振り回される姿に、なんとも言えない気持ちになった。

 

「……こほん。決戦派は上位存在と同等の領域に至るため、ネシュアに多くの技術革新を齎しました。そしてネシュアに大きく貢献した派閥は一つではありません。代表的なものは、最善を目指し時間遡行に挑み続けた追想派。そして――」

「……時間、遡行?」

「気になりますか、リッカ? ですが結局あの蒙昧賢才どもは本懐の実現には至らなかったようですよ。そうでなければ、ネシュアの滅びはなかったでしょうし。まったく、嘆かわしい……」

 

 思わず呟いたリッカにとっては、無視できない言葉だったのだろう。

 だが、結局それは夢物語でしかなかったと、ナディアは嘆く。

 ネシュアが滅亡したということは、かれらの思う最善とは完成しなかったのだ。

 ――ネシュアのことで、ナディアがここまで辛辣に言うのは珍しい。大きく貢献したというのは間違いではないのだろうが、ナディアとしては好印象を持っていないようだ。

 

「ともかく、この二つと肩を並べていたのが、記録派。黎明から終末まで、世界の起こり得る事象すべてを観測するという命題を掲げた“知りたがり”の巣窟です」

 

 それが可能だとして、一体どれだけの時間と技術が必要なのかという、途方もない命題。

 想像もつかないスケールの大きさに、イリスティーラも苦笑する。

 

「世界のすべて、か……それはまた、随分な目標だね」

「そうした高みを目指し続けたのがかつてのネシュアです、が……まあ、そうですね。大言壮語にも品格が要るというネシュアの価値観では、かれらのそれはあまり好意的に受け入れられてはいませんでした」

「けど……代表的な派閥っていうくらいですし、色々と功績もあるんですよね?」

「ええ。この三派閥はネシュアの主軸と言っても良い大きな柱でした。そんな記録派ですが……ネシュアの末期――数十年ほどは、ある計画を秘密裏に進めていたとか」

「ある計画……?」

「――ロスラウド計画(プロジェクト・ロスラウド)。命題の成就を最終目的とした、巨大地下施設――否、地下都市の名が、ロスラウドだったようです」

 

 ――地下都市ロスラウド。

 その名称を呑み込むまで、少なからず時間を要した。

 記録派なる人々の命題に勝るとも劣らないほどに、それは夢物語のようだった。

 

「計画の大きさの割には、少数の関係者で進められていたと聞きますが、詳細は不明です。ネシュアの滅亡までに、どの規模まで進められたのかも」

『ネシュアの地下都市。当機は記録派とは縁がなかったゆえ、初めて聞く。決戦派たる我らが言えたことでもないが、連中の発想は珍妙だ』

「……地下都市、ですか。イメージ出来ませんね。冥界――みたいな感じですか?」

「……確かに、地下というとどうにも冥界のイメージとは切り離せないが。あくまで、人の手で掘られたものだろう? 冥界ほど深くにはないだろうさ。しかし……ネシュアにそんなものが。そのようなことが書かれた文献もやはり見たことがないな」

 

 なんのために、というのはこの場に記録派の志を継いだ者がいない以上、理解することは出来ないのだろう。

 ネシュアで暮らしていたナディアやヨハンナでさえ、その発想は異常に感じられるらしい。

 

『……ま、重要なのはその記録派ってヤツらの考え方じゃなくて、魔王様がその場所を提示したってことでしょ』

「――そうだね。まずはその場所を、見つけないと」

 

 ネシュアの民が計画し、秘密裏に作り上げていた地下都市。

 魔王はそこにいるという。

 それが何を意味するのか。これだと断言できるほどの情報は集まっていない。

 一つだけ間違いないのは――僕たち勇者の運命が、ネシュアという地に帰結するということだ。

 

「それにしても、どうやって見つけます? 根気強く穴掘りとか?」

「脳筋すぎるぞキミ……その連中が本当に、手を使って掘っていたなら、今もあの廃墟のどこかに大穴が開いていたって良いし、当時もっと話題になっていただろう」

『魔法が絡んだ空間、と考えるべきでしょうね。スコップで掘った塹壕にいる魔王様ってのは、なんていうか、想像したくないわ』

「……っ」

 

 ラフィーナのどこか雑なぼやきに、ナディアが口元を押さえて俯き肩を震わせた。想像したらしい。

 なんというか……ナディアの笑いのツボは独特である。

 ――ともかく、僕たちはネシュアの跡地を訪れたことこそあれど、探索や調査を目的にしていたわけではないが、確かに大穴らしきものは見なかった。

 ラフィーナの言う通り、何かしら魔法によって入り口が隠されているという可能性は高いだろう。

 

「ふぅ……――ネシュアの終わりがわたくしの時代ならば、どこに何があるかはある程度覚えています。記録派が集まっていたと思しき場所の心当たりを辿ることは出来るでしょう」

「……言うまでもないと思うが、見る影もないよ? 目印を見つけることさえ一苦労な場所だ」

「それでも、わたくしの感覚では数ヶ月前まであの地で生きていたのです。ある程度の距離感くらい覚えていますわ」

「地味に凄い特技ですね、それ」

 

 ナディアが見栄を張っているようには見えない。

 土の試練であのネシュアを目にし、それでも可能だと判断したのだ。

 だが、ナディアに任せるのだとしても、一つ問題がある。

 

「でも、それって――ナディアを連れてネシュアに行くってことだよね。場合によっては、そのままロスラウドにも踏み込むことになる」

「ッ……!」

 

 イリスティーラは既にその考えに行き着いていたのだろう。僕の言葉に強く反応したのは、リッカとクイールだった。

 ネシュアはオドマオズマがいなくとも、アンデッドの多い場所だという。

 ナディアには戦う力はない。あの場所に連れていくことは、あまりにも危険だった。

 

「まあ……そういうことになりますわね」

「……駄目。ナディアは……」

「うん、わかってる。ナディアを危険な目には遭わせられない」

 

 リッカがナディアを強く想っていることは言うまでもない。

 もう、聖都を出てほしくはないのだろう。外がどれだけ危険であるのか知っているリッカだからこそ。

 

「うーん……僕も反対ですね。ナディアちゃんが危なくない手段を探しましょう」

「……あなたたちがそういうなら、それで。であれば簡単な地図など用意はできますが……どうあれ、少し聖都で休息を取りなさいな。ネシュアに向かうのは、英気を養ってからでも遅くはないでしょう?」

「そうだね――数日休んでも罰は当たるまい。方針もゆっくり決めようじゃないか」

 

 今すぐに出発するというわけでもない。

 結論は急がず、イリスティーラはそう言って話を切り上げた。

 クイールたちもホープと過ごす時間が必要だろう。しばらくは聖都にいることになるだろうし、僕たちも羽を伸ばすとしよう。

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