凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法   作:けっぺん

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聖都での平穏

 

 

 聖都にやってきた翌日、僕はリッカと共に、大通りに買い物に出ていた。

 道中も含めて長丁場だった風の試練で使い込んだ日用品や食料を買い込むのに、小さな町では不足だっただろう。

 その点、聖都の品揃えならばまったく問題ない。

 

 クイールはホープと共に、ナディアによる魔法の勉強。イリスティーラは昨日から引き続いて、旅の荷物を整理しているらしい。

 昨日、僕たちはゼクセリオンを屋敷の庭に設置させてもらい、夜を過ごした。

 イリスティーラに少しの信頼こそ置いていても、やはりその屋敷に寝泊まりするのは、リッカとしても抵抗があったようだ。

 

「これでしばらくの食料は大丈夫だね。あとは……」

「魔道具……いくつか買っておきたいかも」

 

 確かに、ゼクセリオンがある以上、清めや魔除けの魔道具に頼ることも少なくなってきたが、それでも用意しておくに越したことはない。

 買い込んだものを拡張したリュックに仕舞い込み、魔道具を売る店を探す。

 ああいった品については、ものによって質の差が大きい。それでいて、一目見てそれを判断するのが難しい。

 聖都であれば平均的に質が良いとはいっても、状況によっては命綱になる以上、下手な買い物はしたくない。

 間違った品を買わないためには、組み込まれている術式を読み取り解析できるほどには魔法に熟達している必要がある。

 その点、リッカであれば問題ない。

 露店で売られている魔道具を流し見て、質の良いものをチェックしていく。

 

「今のは?」

「そこそこ。こういう街なら、もっと安くて良いものがあるから、妥協はしたくない」

 

 使うような状況は好ましくないが、緊急時が想定されるからこそリッカに妥協はない。

 一つ一つ見ていけば日が暮れてしまうほど、聖都には店が多い。今見つけたものよりも良いものがあるという判断をしたらしい。

 

「ごめん、ユーリ。付き合わせて……」

「ううん。大丈夫。それでリッカが安心できるなら」

「…………ん」

 

 魔道具の重要性は、旅の中で僕も理解していた。

 この備えが少しでも、リッカの安心に繋がるのなら、最上位のものを探したいと思う。

 

「……」

「……」

 

 露店の品を見比べながら、人々や魔族に紛れて歩く。

 珍しい食材を見つけて思わず買おうとしたり、気になっていたけどこれまでは控えていたアイスを二人で食べたりして過ぎていく時間。

 安全の確約とは、あくまでも名目に過ぎない。如何に聖都と言えど、危険が一切ないという訳ではないのは、水の試練の一件や、アリスアドラの一派が証明している。

 完全に気を抜くことなど出来ないが、辺りに時折好奇の視線はあっても敵意は兆しさえない。

 魔族であっても、大半が僕たちを気に留めもしない――それほどまでに、魔王の存在も勇者の使命も、どうでもいいことなのだ。

 

 きっと僕たちが使命を終えようと、どこかで敗北しようと、殆どの魔族にとって、大して変わるものはない。

 ある意味では、気が楽だった。

 僕たちがやったこと、その影響の大きさを気にかけて、リッカと共に歩む足が鈍るようなことがないのだから。

 

「……ユーリ」

「ん?」

「考えていることがあるの。ユーリの、新しい力について」

 

 新しい力――そう聞いて思い浮かべるのは、バラルバラーズとの戦いで使われた、リッカが纏う外装だった。

 あれと同じことを指しているのだとしたら、新しい外装についての話だろうか。

 

「これは、ユーリが戦うための力で、ユーリを守るための力。はじめは、私の“こうしたい”って考えから魔法を組み始めた。それから、いくつかイレギュラーが起きて、今はそっちの方が当たり前になってる」

 

 リッカの想定通りではなく、異なる形で発現した力。

 それは今の戦いの主になっている。

 僕に一番馴染む力(『ユーリフューリー』)でさえ、リッカが想定して組み上げたものではなく、リッカが纏ったあの外装も、能力自体はリッカの思い通りだろうが本来は僕が使うつもりだったという。

 

「別に、それ自体は構わない。それで、ユーリと前に進めているなら。けど……これでも、まだ足りない。最後の戦いのために取れる“最善”じゃない」

 

 大きな力を得ることが出来たと、そう思っている。

 ここまでの道程は、紛れもなく僕たちの“最善”で、しかしそれはここから先に備えるには“最善”とは言えない。

 そのリッカの懸念に、大丈夫だと断言することは出来なかった。

 残る三人の四天王、そして魔王。きっとここからの戦いには、不足が出てくる。

 

「だから――作る。ここからの戦いを切り抜けられる力。私が用意できる、ユーリのための、“最強”の力を」

 

 ――“最強”。

 その言葉には、リッカの強い信念が込められていた。

 まるで夢物語。昔であればともかく、今のリッカが軽々しく使うような言葉ではない。

 それは、ハッピーエンドへと歩むためのリッカの決意。自分に出来る“最善”を尽くすという想いであった。

 

「……僕に何か、出来ることはある?」

 

 実際のところ、この魔法を一つ組むことがどれだけの苦労であるのか、僕には想像がつかない。

 これまでは旅の中で少しずつということなのだろうが、余暇であってもリッカには可能な限り休んでほしい。

 魔法の技術に関して、僕には何も手伝えないだろうけど、それでも何かないかと尋ねれば、リッカはすぐに頷いた。

 

「ある。言った通り――これまでの力は、私がこれが必要だと思って用意したもの。イレギュラーもまた、私たちのどっちが想定したものでもない。……だから教えてほしい。ユーリは、どんな力が必要だと思うか」

「僕に……必要な力、か」

 

 僕に一番適した性質、或いは、僕の不足を補える性質。

 戦いの中に、何を求めるか。一体何があれば、僕はリッカの思う“最強”に至るのか。

 これまでの外装には、それぞれに強みがあった。これだけがあれば良いというような外装は、一つとしてなかった。

 どんな相手にも対応できるようにする――全部の良いところ取りなどは無理だろう。では、どうすれば可能な限りそこに近付くのか。

 

「……難しいね」

「うん。けど、なんでもいい。考え付くことを片っ端から言ってくれるだけでも。ユーリが戦うため……ユーリが、誰にも負けないための力だから」

 

 僕のための力。僕が何よりも、僕らしく戦える状況。

 そんな前提で考え直せば、思いつくものはある。

 どういう力が必要なのかというよりは、心構えの話ではあるけれど――。

 

 一つの思い付きから、リッカと共にあれやこれやと案を出し合う。

 もちろん、それら全てを叶えるなんて無理なこと。リッカは残念そうに言っていた。

 歩きながら思い描いたそれは実現させるには荒唐無稽が過ぎたけれど、互いに好き放題言い合っていた“いつか”をなんとなく思い出す時間だった。

 

 

 

 それから僕たちは魔道具を売る店をいくつか巡り、必要な魔道具を取り揃えた。

 やはり聖都は店の数もそれぞれの品揃えも段違いだ。何日あれば全部回り切れるだろうかと思うほどに。

 もっと良い品があるのではと探していればあっという間に日が暮れてしまうだろう。そのつもりで街を回ってみるのも、面白いとは思うが。

 一応、買うべきものは買った。イリスティーラの屋敷に戻ろうかと、来た道を戻り始めて。

 

「もう! いつまで悩んでんのさ! ほら、さっさと行くよ兄ィ!」

「もうちょっと待てっての! これだけ安くて質の良い魔石、ここで買わなきゃ次はいつ手に入るか……!」

「安いったって魔石だよ!? 私らの稼ぎどれだけ分だと思ってんの!」

「いや、暫くメシのレベル落として切り詰めれば……ちょ、引っ張るな!」

 

 ――なんだか久しぶりに聞く声だ。

 目を向けてみれば、かつて一度出会った二人が露店に並べられた石を前に言い合っていた。

 

「せっかく聖都に来たんだから食事は豪勢に行こうっつったのは兄ィでしょうが! そもそも今、魔石には困ってない!」

「それでも良い魔石には目が行くのが俺の性分で――ん?」

 

 どうやら稀に見る質であったらしい魔石に惹かれる兄と、必要ないと引っ張ろうとする妹。

 多少人通りの少ない通りであることも相まって、二人の様子は実に目立った。

 そんな二人を立ち止まって見ていれば、向こうも気付く。

 

「あんたら――ユーリに、リッカか?」

「へ? ……あ、ほんとだ。久しぶりじゃん、二人とも!」

「うん、久しぶり。リヒト、トーカ」

 

 ブラウンの髪を後ろで結んだ、そっくりな二人。

 リヒトとトーカは、僕たちが土の試練を終えて、ハローネの町に寄った後に出会った行商の兄妹だ。

 聖都に戻ってくるまでに別れたが、かれらも順調に旅を続けているようだ。

 リヒトは魔石を露店の店主に返しつつ、駆け寄ってくる。

 

「聖都に来てたんだね」

「おうよ。こっちの大陸に足を運ぶのは初めてだったが、その甲斐もあった。最高の街だな、ここは」

「ま、来る途中ワイバーンのおやつになりかけたんだけど」

「……よく無事だったね?」

「行商は逃げ足と悪知恵が資本だからな。流石にワイバーンに襲われることがあるとは思ってなかったが」

 

 ……聖都からそう離れていない平原を、一体のワイバーンが縄張りとしているのはこの辺りでは有名な話。

 村に来る行商人も、絶対に近寄らないというその地帯は、一見すれば魔族も少なく安全に見えるらしい。

 僕たちも……進んで踏み入ろうとは思わない。というか、当分ドラゴンは懲り懲りだ。

 

「クイールたちはどうしてるんだ?」

「別行動。クイールもナディアも聖都にいるよ」

「本当にナディア、聖都にいられるんだ……」

 

 驚きを見せるトーカ。ナディアのような境遇で聖都の祝福に適応できるのは、それだけ特異な事例だということだ。

 

「みんな無事なようなら何よりだな。旅の方はどうだ? 勇者の試練? ってやつ」

「四つの試練は、全部終わったよ。少し聖都で休んで、また出発するつもり」

「そっか――全部の試練を。よく知らないけど、この千年で初めてなんだろ? おめでとさん。なあトーカ、世界変わるかもしれねえぞ」

「なんで兄ィがしたり顔なのさ……でもまあ、それでこういう街に住んでない魔族が少しでも大人しくなって、外が歩きやすくなるなら願ったり叶ったりかな。応援してるよ、二人とも。もちろん、クイールも」

 

 たとえ魔王を倒したとして、世界がどれほど変わるかは分からない。

 魔族たちの立場は、そう変化しない気もする。そもそも、勇者という文化をそれほど重要視している魔族が少ないのだから。

 だが、それでも多少なり、外を歩きやすくなるのだろうか。

 人が外を旅するというのは危険極まりないことだが――町から町へ、近場を移動するだけならば、恐れる必要がないほどにはなってほしいとは思う。

 その方が、そこから先で、リッカも安心できるだろうから。

 

「あ、そうだ。渡したアッシュはどうなったよ。あれからそれなりに経つし、面白い学習してるんじゃないか?」

「うん。アッシュには、すごく助けられてる。緊急の時に、外装を構築してくれるんだ」

「なんて?」

 

 この二人との出会いがなければ、僕たちは今頃こうして聖都にいることも出来なかっただろう。

 アッシュによる外装の構築は、魔法を使えなくなった時や、リッカと逸れた時――どうしようもない状況を助けてくれた。

 そうなるとは予想していなかったのだろう。

 アッシュの“学習”について話せば話すほどに目を丸くし絶句するリヒトに、懐から取り出したアッシュ自身はどこか得意げであった。




【アイス】
製氷、保冷技術が進歩している聖都においてはポピュラーな菓子。
イチゴなどの果物を用いたフレーバーが人気で、高価な町ではすこぶる高いが聖都では安価で食べられる。
イリスティーラが幼い頃から既に聖都の名物であったらしい。
リッカはかつてこれを食べた結果一つバッドエンドを迎えたことがある。何故かは知らん。
どうあれ今回――実感として数百年ぶりに――楽しむことが出来たのは、ユーリといれば大丈夫だという、彼女なりの希望なのかもしれない。

【リヒト&トーカ】
魔剣ラフィーナ初陣の際に出会った行商の兄妹。
勇者たちに会ったことでこれまで足を運んでいなかった海の向こうに興味を抱き、商売の手を伸ばした。
聖都には珍しい品の仕入れ兼観光で訪れた。「魔族多すぎじゃないか……?」ってなってる。

【アッシュ】
リヒトが開発した魔道具。リッカ(と愉快な転生者のみなさん)によってその日のうちに自己学習のリミッターを外されている。
結果、ラフィーナとの通話が出来るわ変身アイテムになるわ偉人(ヨハンナ)を餌にするわと開発者も絶句する進化を果たした。

【ユーリ】
勇者とは“魔王を討ち世界に平和を取り戻す”者ではない。
実際、世界を照らす存在であると自らを定義するクイールはかなり稀有な例であり、大抵は自分の事情で手一杯である。
ユーリも例に漏れず、リッカのことが最優先であるため、「危険なワイバーンがいるので積極的に退治する」など――一般的に思い描く勇者の思考回路になることはあまりない。
ただし、自分が巻き込まれたり、目の前で誰かが困っているならば話は別。直接見て、感じ、共鳴して動くのが、彼の勇者らしさなのだ。

【リッカ】
ここから先、魔王や四天王たちとの戦いが待っていることは想像がつく。
それらを切り抜け、ハッピーエンドを迎えるための準備を進めている。
その一つが、彼女にできる最強にして最後の外装の構築。
自分はユーリのために何ができるだろう? 一体どうすれば、ユーリが自分の力を最大限に発揮できるだろう?
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