凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法   作:けっぺん

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『遊びそよ風』/リッカの支え

 

 

 リッカの混乱によって、新しい魔法が使用されたのは良い。

 だが、その点で困るのは僕がこの姿についてまったく知らないこと。

 いつも使っていた『オズマフューリー』でさえ、触手を利用した戦い方と聞いて困惑したというのに。

 

 フェアリーたちはふわふわ飛びながら、こちらを興味津々な様子で見ている。

 仕方ない――ひとまず拘束し、杖の奪還を目指そう。

 

「リッカ。この姿、どう戦えばいい?」

「――え? ……あ……、えっと……ちょっと待って」

 

 ほぼほぼ無意識に使用したのだろう。

 ようやく少し正気に戻ったらしいリッカが術式を操作し、視界の左半分を埋め尽くさんばかりの文字が表示される。

 鎧の目の部分を通して伝達される各機能説明の方が、今の自分が伝えるより適格だと判断したらしい。

 それを素早く読み進めている間に、杖を持っていない方のフェアリーが寄ってくる。

 

「ねーねー、なにその魔法! へんしん!?」

 

 自分たちが発端だとは微塵も思っていないのだろう。

 目を輝かせるフェアリーにどうもやりづらさを感じつつも、この姿の性能を把握する。

 傾向としては、攻撃よりも防御に秀でている。というか、攻撃性能はさほどではないと言っていい。

 その防御力の所以が、頭部と両腕、両足を覆う液体。

 これの柔軟性によって衝撃を和らげる。或いは硬度を変化させて純粋に防具として使用することによる、『オズマフューリー』を超える身の守り。

 そして、この液体が防御のみに扱われる訳ではない。

 

「えっと――こうかな」

 

 申し訳ないと思いつつ、フェアリーに手を向けて、液体を操作。

 両腕、両足、側頭部の合計六か所に存在する機構からは、この液体の入出力が出来る。

 それにより防具としての必要以上に片腕の液体を出力し、管制機構によって切り離し――発射。

 

「わあっ!?」

 

 小さな水の弾丸と化した液体は、不意打ちに凄まじい反射神経を発揮したフェアリーに回避される。

 地面に落ちた液体は土に染み込むことなく滞留し、未だに管制機構の制御下にあるらしく操作可能であることが窺える。

 なるほど――触手よりは、すばしっこいフェアリーに対して相性が良い。

 たとえば見た目に違わぬ耐久力があったとしても、これであれば一度命中すればその飛行能力を奪い無力化することが出来るだろう。

 

「もう、何するのさいきなり……わかった! “たたかいごっこ”だ! トノカー!」

「うん! がんばろうね、シナト!」

「……」

 

 ごっこ遊び感覚らしいフェアリーたちは張り切った様子を見せる。

 ようやくそれで、やれると気持ちが引き締まる。

 どうにも向こうの緊張感の無さに気が抜けるところはあるものの――それでも、相手は魔族だ。

 戦いになれば話は別。いや、勿論その気概は戦いでなくとも持つべきなのだろうが。

 

「――とりあえず、杖を返してもらうよ」

「だめだよ。これはわたしたちが拾ったんだもん!」

 

 一応それを先に告げて、液体を引き延ばす。

 あのスライムがやったように、これを伸縮性の高い鞭として。

 フェアリーは捕えられなくとも、杖だけは絡め取れればと期待した横薙ぎを、フェアリーは杖ごと一回転するように躱した。

 ……器用だ。あと、思ったより力が強い。筋力とは別の、魔族特有の力を使っているのかもしれないが。

 

「えーいっ!」

「っと、危ない!」

 

 いつの間にか足元に突っ込んできていたフェアリーを飛び退いて回避する。

 ただの突進であれば大した攻撃ではないのだろうが、そこに感じたのは何となくの嫌な予感。

 着地し、カシャンという音に思わず足元を見る。

 円盤の魔道具だ。稼働中で熱を発するそれはこの姿であればさほど影響は受けない。

 問題ないかと判断し前を向けば、青のフェアリー――トノカが杖を思いっきり振り下ろしてきた。

 今度は回避ではなく、手で受け止める。

 それを用いて魔法を使ってくるならばまだしも、単純な物理攻撃なら問題ない。

 

「今……!」

「わ、わ、わっ!?」

 

 受け止めたその腕から液体を伸ばし、杖を絡め取って回収。

 それに巻き込まれるのは不味いと直感したのだろう、トノカは慌てて杖を手放した。

 これで一番の問題は解決した。あとはこの二体をどうするかだが……。

 

「タッチ!」

「え?」

 

 その声は足元から。

 僕の足に手を触れた緑のフェアリー――シナトは此方を見上げて満面の笑み。

 攻撃という訳でもない。まるで鬼ごっこでもやっているかのような様子に気が抜け――

 

「ッ!?」

 

 きわめて局地的な強風にあおられたように足が浮き上がり、体勢が崩れた。

 フェアリーの仕業というのは明白。だが、ただ触れただけでそんな力が発生する訳がない。“ごっこ”に見せてそれが攻撃だと判断し、ひとまず受け身を取る。

 

「次はこれだよ、シナト!」

「うん!」

 

 そこから起き上がるまでの僅かな時間で、フェアリーたちは次の行動に移っていた。

 先の魔道具を杖を失ったトノカが持ち上げ、それをシナトが支えてこちらに向けている。

 何をするつもりかなど、“火を見るより”明らかだ。

 無邪気なままに、悪意も殺意もなくそれをやろうとするフェアリーたちに戦慄しながらも、咄嗟に液体の防壁を展開する。

 

「いっけええええええ!」

「ぶっぱなせえええええええっ!」

「くっ――――!」

 

 あの二体も危ないというのに、躊躇なくそれは実行された。

 許容できないほどの魔力を注ぎ込まれた魔道具は暴走。

 爆発といっても過言ではないほどの熱風が巻き起こり、衝撃で体が吹き飛ばされる。

 痛みはない。吹っ飛ばされた経験で言えば、サキュバスのラフィーナから受けた何発もの攻撃の方がずっと痛かった。

 それもこの防御に秀でた魔法のおかげか。

 

 わー、とやはり大事ではなさそうな様子で飛んでいくフェアリーたちと距離が引き離され、僕たちは川に落ちる。

 浅く、流れも緩やかな川だ。ここまで吹っ飛ばされたことにさほど問題はない。

 フェアリーたちの行動には驚かされるが、やはりこの姿でいれば向こうの攻撃は致命的にはならないのか。

 

「……ユーリ。この川の水、使って」

 

 スライムの特性、その大前提は水を取り込み一体となることにある。

 その性質を参考に作ったらしいこの魔法による姿もまた同様。

 流れる川の水を取り込めば、それは短時間で使用可能な液体へと変換されていく。

 防御的な姿にして、水場でこそ真価を発揮するのがこの『リヴィアフューリー』だ。

 

「あちち……やりすぎちゃった」

「でもおもしろいよシナト! これ、持って帰ってあそぼう!」

 

 当然のように無傷なフェアリーたちは、ぷすぷすと煙を上げる円盤を持ち上げて笑っている。

 どうやらお気に召したらしいが、あれはもう回路が焼き焦げているだろうし、使い物にならないだろう。

 ――リッカの不機嫌を感じる。教会で資金の提供を受けているとはいえ、あの魔道具はあまり気軽に買えるものでもない。

 必要なものへの出費は躊躇しないリッカだが、それゆえに資金繰りに頭を悩ませており、あの魔道具はいくつ予備を買っておくか特に悩んでいたものだった。

 その一つが早くも臨終したのがショックなのは十分伝わってくる。

 

 ……うん、魔道具の敵討ちだ。

 やりすぎかもとは思うが、リッカの不満を晴らすこと、それからあのお調子者たちに少しだけお仕置きを与えるという意味でも、リッカの望み通りにした方が良いだろう。

 

「わかった――思いっきりやるよ、リッカ」

「うん。全力で」

『ファイナライズ! アクセプション!』

 

 必殺技用のコードを実行する。その性質もやはり、『オズマフューリー』とは異なる。

 供給される膨大な魔力によって高まるこの姿の可能性は、液体という性質が持つ自由度と合わさり更なる力を発揮する。

 こうしてほしい、というリッカの無言の要求通りに、今取り込んだ水が変換された液体を上空に出力する。

 ――自分でやっておいてなんだが、目立たないだろうか。あと、流石にあれは死なないだろうか。

 数メートルもの巨大な水球は恐らく何百キロというレベルではないだろう。見た目から抱く感想と言えば、殺意の塊である。

 

「……ユーリ。やって。約束する――絶対に(ころ)さない」

 

 しかし、そんな思考を悟ったようにリッカは断言する。

 殺さないという言葉の割にあまりにその声色は殺意と圧に満ちていたが、同時に確信にも満ちていた。

 気のせいだろうか。なんというか、殺してなるものかといった意味合いに聞こえる。

 

「う、うん……いくよ――」

 

 指摘はしない。リッカを信じているというのが八割、今のリッカが怖いというのが二割。

 多分フェアリーたちからすれば“死ぬほど痛い”ということになるだろうが……ごめん、これで反省してほしい。

 おー、と拍手して水球を見上げる二体にそんな願いを込めて――

 

『リヴィア・エクスタシーッ!』

 

 それを叩き付ける。

 その瞬間は視認できなかった。だが、間違いなく二体は躱すことが出来ずに鉄槌に巻き込まれた。

 衝撃は結界の外には届かない。僕の気分からすれば密室殺人である。

 到底そうは見えない血まみれならぬ液体まみれの殺人――殺妖精現場。またの名を今日の僕たちの野宿場所。

 この液体は離れて暫くすれば水に戻るが、流石にこの場を湿地帯にする訳にはいくまいと、『リヴィアフューリー』の力で回収していく。

 とりあえず魔道具が一つ臨終したのと、最後の一撃で地面がへこんだこと以外はさほど影響はなくなった。

 

 魔法を解除する。

 もう一度魔力に分解され、再び元の姿を取り戻すリッカ。

 同時に杖も液体から解放される。その場に転がろうとする杖を、リッカは素早く抱き留めた。

 

「っ……」

「リッカ、その杖って……」

 

 旅の始まり、村を出る時からリッカが持っていた杖。

 それは僕の――ほぼ使っていない――木剣と同じように村の大人が用意してくれたものだと思っていた。

 だが、そうだとしたら、如何にリッカと言えどここまで必死になって取り返そうとするだろうか。

 今のリッカも、心底から安堵しているように見える。

 

「……カルラから貰った芯を使ってる。私を支えてくれる、大切な杖」

 

 まるで、それが長年の支えであるかのように、リッカは零す。

 いや、村でずっと一緒だったカルラと離れ離れになっているいま、あの杖は真実、カルラとの思い出の象徴なのかもしれない。

 この旅の中でも、今までと同じように、カルラはリッカの支えなのだろう。

 

「……そうだったんだ。なら、僕も注意しておかないと。二人とも油断して、妖精に盗られるなんてことがないように」

「ん……迂闊だった。こんなところに妖精がいるなんて」

 

 リッカの焦り様は相当だった。よほど想定外の出来事だったのだろう。

 まさか、旅を始めてこんな早くに妖精と遭遇するとは。幸か不幸かで言えば、起きた被害を考えると不幸寄りだが。

 

 魔除けの魔道具が壊れていないことを確認したリッカは、予備の円盤を取り出す。

 もう辺りに別の個体はいないようだが――うん、今後は妖精にも気を配らないといけないか。

 確か、対策としては甘いお菓子を持っておくことだった筈。それはそれで、気が抜けているようだが。

 それでも、今後妖精と会うたびにこのような混乱を生むくらいであれば、穏便に済む手立ては整えておいた方が良いだろう。




『シナト&トノカ』
【属性】風
【攻撃力】■
【防御力】■
【素早さ】■■
【魔 力】■
【精神力】■

【種族】フェアリー種
些細なことだが原因の分からない不思議な事象を『妖精のいたずら』と呼ぶことがある。
大抵は何かを見落としていたり、稀ではあるが空気中の魔力が偶然小さな魔法を成立させたなどの現象が起きていたなどであり、実際に妖精が干渉していたということはほぼないと言って良い。
妖精は精霊の下位個体であり、どこからともなく生まれる自然現象だが、その大半は人間の生存圏から離れた森などで発生するからだ。
フェアリーは妖精の中でもポピュラーな種族であり、生存圏を出ることの多い行商人の類であれば一生に何度かは出会うこともあるだろう、成人の顔ほどの大きさにも満たない種族だ。
持ち歩いていた甘味を分けてやるなどすれば大喜びして去っていくことも多く、魔族にしては遭遇時の危険は小さいと言える。
だが油断してはいけない。フェアリーの動機とは全てが気分と好奇心である。
かれらが何を始めようとしても、その理由は「楽しそうだから」だ。それに抵抗すればするほど、「惜しむほど楽しいんだ」と解釈する。
無邪気というのは恐ろしいもの。ひとたび目を付けられれば、何をされてもおかしくはない。

【『遊びそよ風』シナト&トノカ】
フェアリーがどこで生まれ、どういう風に過ごしてきたのかを察するのは困難だ。
気分次第でどこへでも行くし、かれらの行動には一貫性がなく、人間を脅かすこともあれば興味本位で人間に手を貸すことだってある。
そんなフェアリーが二体で行動するというのはきわめて珍しい。
自然として生まれ、自然に還ることで死ぬフェアリーにはつがいという概念すらないからだ。
確かにある個体のいたずらの現場にどこからともなく群がってくることこそあるが、基本的にフェアリーとは単独行動の種族である。
しかしこの二つのそよ風は、いつからか二体で行動するようになった。
何らかの事情で「一緒にいた方が楽しい」と両個体が判断したのだろう。

【ユーリの評価】
「よ……妖精って……危険なんだね……次の町に着いたら、お菓子を買っておかないと」

【リッカの評価】
「大して魔力も生まないし、こう小さいと扱いにも困る……本当になんなの、こいつら……」
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