凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法   作:けっぺん

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次回の更新は多分明後日とかです。


冥界色のエンゲージリング(10)

 

 

 ――斬撃のキレが増した、気がした。

 振るわれる剣の威力は、一撃受けることさえままならないというほどではない。

 けれど、その速度や振るい方が、より洗練されている。

 学んでいる、というよりこれは……慣れ始めた……?

 

「うむ。剣など持ったこともないが、これはこれで面白い。闇雲に振るうだけでは駄目なのだな、これは」

 

 少し良くない流れかも、と危機感を覚える。

 それまでの剣は、決して力自慢ではない魔族の、力に任せた振り方だったから、怖くなかった。

 しかし剣の扱いに慣れ、自身の手足――蔦のように振るえるようになってしまえばどうなるか。

 

「ッ!」

 

 正面から振るった拳を、双剣が受け止める。

 さらに魔力を込めて威力を高めれば、剣は砕け、鎧に手が届いた。

 破片を撒き散らしながら吹き飛ぶその体を、腕を伸ばしたイリスが掴み取り、振り回してから叩きつける。

 確かな手応えがあった。これで倒し切れていなければ少なからず驚くくらい。

 ――木片が土煙のように巻き上がる中から現れる姿は、やはり無傷。

 手には何も持っておらず、手首から生えた蔦が、煙の向こうへ伸びている。

 

「そら」

 

 引き寄せられた蔦に絡まった剣が、彼女を通り過ぎてこちらに迫ってくる。

 弾き返す間に、本体が接近――今度はイリスを意識から外すことなく、蔦で持った剣をそちらに向かわせながら、徒手で攻撃してきた。

 自身の魔族としての特性を応用して、攻撃の幅を広げる。

 それをたった今思いついたように実行する彼女からは、どうしようもないほどの無邪気さを感じた。

 ユーリくんだったらどう感じるだろう。彼女の感情から、何か突破口を見つけ出せるのだろうか。

 僕にはそんな力がない。相手が掛かってくるというのなら、それを真正面から押し返すだけ。

 

『ファイナライズ! スタンバイ!』

 

「む……?」

 

 これまた慣れていないのだろう、徒手での戦闘。

 向こうが自覚していないらしい隙はいくらでも見つけられた。

 ただ攻撃しても、どういう理由かすぐに修復されてしまう。そういうのは、少し前に戦った風の四天王だけでお腹いっぱいだ。

 ならば、これならどうか。仕組みはイリスが見つけてくれることを期待しつつ、あまり長く維持していられないこの形態での最大威力をお見舞いする。

 

『マックス・エクストリームッ!』

 

「それ――――!」

 

 勇気の魔力を右の拳に込めて、全力を彼女に叩き込む。

 振り上げた拳は、やはり殆ど抵抗を感じずに、彼女を高く打ち上げる。

 注いだ威力の爆発は、打ち上がった先で発生する。まるで花火のように。

 ――爆発の中から、きらめく光が飛び散った。彼女が耐えきって、落ちてくるようなことはなく――

 

「――見事。大した威力よ。魔族であっても、こんなものをまともに受ければ堪らぬな」

「え……!?」

 

 その声は、後ろから。

 すぐさま振り向いて拳を振るい、既に彼女が懐にまで迫っていたことを悟る。

 

「ふむ……こうすれば良いのかの?」

 

 握った拳に、彼女なりに力を込めて。

 

『――ファイナライズ――』
 
『――ファイナライズ――』
『――ファイナライズ――』
『――ファイナライズ――』
『――ファイナライズ――』

 

 この森の中の、誰か一人が言ったようだった。或いは、それまでみたく皆が言ったのかもしれない。

 聞き入っていられるほど余裕はなくて、けれど集中してもその攻撃をどうにかする猶予もない。

 

『――エクスリライト――』
 
『――エクスリライト――』
『――エクスリライト――』
『――エクスリライト――』
『――エクスリライト――』

 

 とん、と当てられた拳。たったそれだけとは思えないほどの威力。

 しかし、想像していたよりはずっと弱い、体が揺さぶられるだけの衝撃が、全身に響いた。

 困惑の中で、まだこうした『必殺技』に不慣れなのかと、そんなことを考えて。

 ――直後、力の外装が解れて、基本としている勇者の外装へと戻り、傍に現れた聖剣を慌てて掴み取った。

 

「ッ、何が……!?」

「なるほど、こうなるか。ままならぬものよ。目的への最適化は、常に目先の楽しみと引き換えになる」

 

 思わず聖剣の柄に触れて、確かめる。

 外装の一つが、使えない。起動することさえ出来なくなっている。

 間違いなく、彼女の今の行動によるもの。では、一体何をしたのか――考えるのは後だ。自分の中で、今の状況の危険度を引き上げる。

 あの攻撃は、受けてはいけないものだと。

 

「――イリス!」

「分かっている!」

 

 現在進行形で、蔦が操る双剣を対処しているイリス。

 木々の間を通り抜けて絡ませても、すぐさま蔦は剣を手放し、木から伸びた別の蔦がそれを受け取って追跡を続ける。

 最早、カルラちゃんのお母さんがあの剣を操っているのかさえ怪しい。

 その複雑な追跡を躱し続け、こちらを援護できるタイミングを見計らうイリスに動きを合わせ、聖剣を振るう。

 流石に徒手相手ならば、リーチの差からも僕が先を行く。

 ――あそこまでの再生能力を持っていながら、攻撃を受け止め、躱す様子を見せているということが、再生に限界があることの証だと思いたい。

 まさか、これさえ戦いの真似事だなんて言い出さないだろうかと思いつつ、飛び出してきたイリスに向け、彼女を吹き飛ばす。

 

『――キメラ・エクスプロージョン』

 

 直撃した巨大な魔力弾の爆発に呑み込まれ、再び飛び散る破片。

 そして爆発はイリスを追っていた双剣をも巻き込み、ちゃっかりイリスは傍をすり抜けて脱出する。

 

「……倒せましたかね?」

「気になってもそういうことは言うものじゃないよ。まあ……望み薄ではあるがね」

 

 ほんのちょっとだけ気を抜いた、イリスとの雑談。

 そうしている間にも、前方――木の根が絡まった床から生えてくるように、結晶の鎧姿は復活した。

 

「……どうなってるんですか?」

「訳の分からない経緯で、訳の分からない性質と戦わされる身にもなってほしいな……」

「“今までと同じ”で倒せる相手など、面白くなかろう? この不条理を破る可能性――余は、それを求める。ゆえに」

 

 離れた位置で振るわれた剣。

 聖剣を模した一振りから放たれた銀色の斬撃を、こちらも同じ攻撃で迎え撃つ。

 爆発で覆い隠された向こうを凝視するまでもなく、突っ込んでくるのは分かり切っていた。

 双剣を受け止めれば、先程までとは段違いの重みがのしかかってくる。

 押し切られる――そう思って、兜からの砲撃に頼った。放った一撃が頭部を吹き飛ばし、力が緩む。

 一度その体を押し返そうとして、次の瞬間、全体に罅が入り崩れていったことで勢いが空回る。

 

「っと――!」

「まずはそなたたちも窮地に陥るが良い。そこからどう巻き返すか、余は見てみたい」

 

 背後からの蹴りが突き刺さる。先程の拳よりも、ずっと鋭い一撃だった。

 体勢を崩さずに耐えることは不可能で、転がりつつも距離を置いて起き上がる。

 僕に追撃してくるということはなく、彼女はイリスに向けて双剣を振るっていた。

 

「くっ、この……!」

「近接戦闘は好まぬか? こちらはようやく、動きやすくなってきたのだが」

 

 イリスの真骨頂は、魔族の因子を切り替えることによる多種多様な戦法。

 それを切り替えることもままならない近接戦闘では、真価を発揮することが出来ない。

 斬撃を受けて、外装に入った裂傷は致命的なものではない。けれど、そのまま受け続ければイリスが危ない。

 援護しようと接近し――僕が聖剣を振るよりも早く、結晶の剣はこちらに突き出された。

 

「く、ぁ……!?」

「しかしまあ、運動としては上々、潮時というものよ。ひとまずはここまでとしておこう」

 

 しかしその攻撃で、反撃の隙も逃げる隙もイリスに与えることはない。

 引き戻しがてらにまたイリスを切り付け、立ち直った僕に対しても左手の剣から放った弾丸が襲い掛かってくる。

 聖剣でそれを受け止めながらその射線から外れようとして――激痛と共に足が動かなくなる。

 

「いっ、つ――!」

 

 足下から突き出てきたのは、彼女が両手に持つものよりも小さな剣。

 外装を貫通して動きを封じるそれに怯んでいる間に、彼女は双剣を軽く振るいながら、その力を高めていた。

 

『――ファイナライズ――』
 
『――ファイナライズ――』
『――ファイナライズ――』
『――ファイナライズ――』
『――ファイナライズ――』

 

「クイール!」

「おっと。そなたも逃がさぬぞ」

 

 左の剣を床に突き刺し、右の剣に銀色の魔力を帯びさせて。

 狙うのは僕とイリスどちらかではなく、両方。

 イリスに向けて、床から次々と突き出てくる剣の群れ。それを待っていればどうなるかなど明白。

 離れようとするイリスだったが、背後からも同じものが近付いてくることを悟り、咄嗟に飛び上がる。

 そこを――囲むように無数の剣が出現した。

 

 ――ゴーストやレイスのような魔族の因子で、切り抜けられないか。

 魔道具に手を置いたイリスは、きっとそんなことを考えたのだと思う。

 けれど、それをしなかったのは、こんな冥界でゴーストなんかに近しくなってしまえば、どうなるか分からないから。

 動けない今、出来ることは何だと考えて、無意識の内に聖剣を構えていた。

 向こうの剣が振るわれるのに一歩遅れ、僕も聖剣を振ろうとして。

 

『――エクスリライト――』
 
『――エクスリライト――』
『――エクスリライト――』
『――エクスリライト――』
『――エクスリライト――』

 

『ファイナライズ! スタン――』

「――――――――ッ」

 

 溜めが間に合わず、銀色の斬撃が体を突き抜けていく。

 思ったよりも痛みはなくて、しかし体に力が入らなくなり、軽く浮いた。

 そして、イリスを囲んでいた剣が一斉に中心に向けて突撃し、大きな爆発を引き起こすのを見る。

 消耗の具合としては、まだ戦える確信があった。まだ、風の試練の時のような大きなダメージは負っていない。

 だというのに、外装はあっさりと解れていく。限界とかではなくて、はじめから――そんな機能はないかのように。あっさりと消えてしまった。

 

「ぐ……ぁ……!」

 

 それは、イリスも同じこと。

 黒い装束は破片となってパラパラと崩れていき、落ちたその場にイリスは倒れ込む。

 

「まだ……まだ……!」

「ほう。立てるか。やはりそなたたちは面白い」

 

 力の入らない体に、それでも力を込めて、立ち上がる。

 これで僕に手がなくなったと思ったら、大間違いだ。

 外装の力を封じる奇妙な攻撃。ならばもう二度と、それを受けなければいい。

 まだ僕には外装が残っている。僕にとっての究極の勇気は、失われてはいない――!

 

「まあ落ち着け。準備運動と言ったろう?」

「くっ……!?」

 

 聖剣の柄に手をかざすより前に、体に結晶の蔦が絡み付く。

 咄嗟に、聖剣で振り払おうとして、腕を弾かれたことで手を離してしまった。

 

「あ……!」

 

 離れた聖剣は、樹で出来た床を跳ねた後、下層へと落ちていく。

 拾いにいく前に、イリスと共に樹に縛り付けられ動くことが出来なくなった。

 一方で、カルラちゃんのお母さんは満足したとばかりに玉座に戻り、外装を解く。

 彼女は同じように縛られたカルラちゃんを傍に置き、僕たちを見上げてきた。

 

「まだ抗う力があるというのなら、それは後の楽しみとしておくとしよう。そなたたちの力は見た。次は当代の可能性を見てみたい」

「お母様……!」

「カルラや、そなたも共に見ようではないか。そなたの信じる人間の足掻きを」

 

 ……流石に、絡まる蔦を千切ることは、出来なさそうだった。

 聖剣があればきっとどうとでもなるけれど……後で探さないと。

 

 ――或いは。

 下層へと落ちていった聖剣の在り処に、一つの推測……というか、一抹の希望を思い描く。

 あれは僕が持ち主として認めてもらった聖剣で、他の誰をも持ち主とはしないものだ。けれど――この状況を打開するための、ほんの一時の取引ならば。

 だって、彼は本来、僕と同じように聖剣を持つに相応しい人である筈だから。

 きっと彼もピンチだろう。

 それでも、いつだってとんでもないことをやらかして、状況を好転させてきた男の子なのだ。

 今を打開して、戻ってくるために、今回だって希望を掴む。そんな可能性に満ちていることは、旅を通して僕も知っている。

 

「ほう……? まだそこまで希望を抱けるか」

「勇者ですから。このくらいの危機、なんてことはありません」

「クイール――まあ、そうだね。このまま私たちの首を掻き切る気がないというのなら、精々休ませてもらおうじゃないか」

 

 イリスの強がりも、きっとユーリくんが何かしてくれるという期待を込めてのもの。

 不安げなカルラちゃんに、心配はいらないと微笑む。彼女はユーリくんの幼馴染だ。信頼も、心配もずっと大きいだろう。

 だからこそ、“信頼の方を信じるべきだ”という意思を持てばいい。

 カルラちゃんのお母さんが可能性を望むというのなら、とびっきりを見せてくれる筈だ。

 僕と同じように――ユーリくんだって、勇者なのだから。




EL(イル)-カルラ】
劇場版でよくある、敵専用の変身とかそういうやつ。
本来、群体に近い性質を持つアルラウネは同族を理解する。人と人との相互理解よりも、深く深くまで。
それはユーリのつながりの力とは異なる、種族としての本能。同じ株から生まれた個体であれば、一個体が拒んだとしても、上位の個体の意思が優先されるという。
離れていた個体の経緯も秘め事も、全て詳らかにされる以上、アルラウネ同士に隠し事は通用しない。
そもそも、一つのコロニーで個体ごとの感情が共有されるアルラウネは、個々の意思が薄弱な傾向にある。
深い愛情も、強い憎しみも、アルラウネには本来ないもの。ゆえに、それがコロニーの共有意識になった時、起きる事態は誰にも予想できない。
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