凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法   作:けっぺん

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ハーメルンでDDoSグルマーがイグニッションしていたようなので一日遅れの投稿となります。

本話は本編ではありますが別に見なくてもそんなに支障ないです。


冥界色のエンゲージリング(??)

 

 

「ふん、ふん……」

 

 昼御飯を食べ終えて、お皿を洗った後、なんとなしに庭を眺めていた。

 独りで遊んでいることがほとんどだった庭は、いつの間にか友達との遊び場になった。

 きっかけは、トーマが自分の友達を連れて、肝試しに来たこと。

 この家は聖都の他の人たちからすれば怖い場所みたいで、面白半分にやってくる子も多い。

 そんな子たちを危険なく追い払うために、イリスは色々な魔法を辺りに張っている。

 そういう子たちの気配を感じた時は、外で遊んでいてもすぐに家の中に入るように言われていたけれど――あの時は、ナディアと一緒に魔法を勉強していて、気が付かなかった。

 やってきた三人は、わたしやナディアに怖がることもなく、魔法に興味を示して……話してみれば、すぐに友達になれた。

 

 元気でみんなを引っ張るトーマ。臆病だけど芯の強いコウヤ。気配り上手で優しいヒルダ。

 ほとんど毎日のように遊んだり、魔法を勉強したりしている。

 ナディアは“先生”としてとても丁寧に教えてくれて、今では魔法が苦手だったトーマも同じスピードで学べるくらい。

 わたしはみんなと違って庭の外に出られないけれど、それを気遣ってみんな庭に集まってくれている。

 わたしの自慢の友達だ。イリスはちょっと複雑そうだったけれど、ママは嬉しそうだった。

 

 そんなみんなは、今日は来ないみたい。

 というのも、なんだか聖都の外でよくないことが起きているみたいで、外に出ないようにとお触れが出ているから。

 それと関わっているのか知らないけれど、ママたちも朝から出かけている。

 イリスも、ナディアも、ママによればリッカとユーリも一緒みたいだから心配はしていないけど、何が起きているかは気になった。

 

「……」

 

 ……うん。気になって庭の外に出てみようという欲が生まれたけれど、やめておこう。

 好奇心でそういうことをすると後悔するって、前に魔導書に勝手に触ってしまったことで思い知ったつもり。

 もう一回繰り返すなんて、リッカに愛想をつかされてしまう。

 大人しくしていようと、ナディアが選んでくれた魔法の教本に手を伸ばした時。

 

 ――――バリバリと、何枚も重ねた紙を破ったような音が、外から聞こえてきた。

 

「な、なに……!?」

 

 そんな音が鳴るような仕組み、イリスが用意していると聞いたことはない。

 というか、先程まで外を見ていたのだ。誰かが入ってきたなんてことはないはず。

 すぐにカーテンを閉めて、隙間から外を覗き込む。

 少し前までは、誰か来たらこれが当たり前だった。最近は気軽にやってくる友達も増えて、こんなことをする頻度は減った。

 街の子供がやってきただけなら別にいい。けれど、今のは魔法を無理やり破った時の反応だ。

 そんなことをするのは、悪いヤツに違いないという警戒から、誰か入ってきたらすぐに隠れられるように、入り口に向けてじっと目を凝らしていると――

 

「ク……くく……随分、過剰な守りだとは思ったが……なるほど。そうする理由はあったということか」

「ひゃっ!?」

 

 そんな、反響するような気味の悪い声が聞こえてきたのは、部屋の中から。

 反射的に声から遠ざかるように飛び退いて、廊下に出る。

 足の速さは自慢の一つだった。階段を転がるように駆け下りて、“いざという時に起動するように”と言われていた魔法の仕掛けを動かしながら庭に出る。

 家の中にたくさんあるはずの隠れられる場所に向かおうだなんて考えられなかった。

 今すぐ、あの声の主から離れないとという危機感の方が勝った。

 出来ることなら、動かした仕掛けのどれかがあれを倒してほしいと思いながら、草木の陰に隠れる。

 

 ――けれど、それは無理だという確信は、すぐに現実になった。

 入り口の扉から堂々と出てきた、骨が黒衣をまとった、黄色と黒の魔力を持った魔族は、まっすぐとこちらに向かってくる。

 

「やはり、この祝福の中でも、これだけ死を纏えば数分は持つな。それで十分さ。勇者でもなんでもない、“混じり”の娘一人……私からすれば多すぎる猶予だ」

「た……すけて、ママ……!」

「残念ながら、今この屋敷にキミ以外いないのならば助けは来ない。他の舞台に掛かり切りだからね。私はいち早く下りてきたのさ。これ以上茶番などに付き合っていられない。これが利口な選択というものだ」

 

 よく分からないことを言いながら近付いてくる魔族から離れようとするけれど、外に出てしまった以上隠れる場所はもうない。

 庭の外……は、出ちゃ駄目だって言われている。

 どうしよう――と考えている間にも、魔族はもう目の前まで来ていた。

 

「大丈夫だ。怖いだけさ。すぐになくなる恐怖だ。最後に思う存分味わっておくことは、間違いじゃない」

「イリス……! ナディア……!」

 

 手を伸ばしてくる魔族。

 その数秒後が怖くて、目を閉じた。

 

「リッカ……ッ!」

 

 最後に、友達の名前を絞り出して――――

 

 

 

『――アテンション!』

 

 

 

 ――そんな、絶望を塗り潰すような、元気な声が聞こえてきた。

 

「……なんだ?」

 

 恐る恐る目を開ける。

 一体どこから聞こえてきたものなのかと、魔族は辺りをきょろきょろ見渡していた。

 咄嗟にそれを隙だと思って、魔族から少しでも離れようと走り出す。

 

「っ、待ちたま――」

 

 ――その時、わたしとすれ違うように、何かが魔族の方へと駆け抜けていって。

 

『バーチャライド! マイスタイル! ライブ・オン!』

 

「ぐっ……!?」

 

 振り返れば、その“何か”が魔族を蹴り飛ばしていた。

 すっ転がる魔族の一方で、綺麗に着地して、顔だけを僅かにこちらに向ける、おかしな鎧を着た“だれか”。

 ――その鎧は、いつかの夜に見たものと全然違うけれど、雰囲気は不思議とよく似ていた。

 ピンク色で、ツインテールみたいに――或いは、わたしの触角みたいに、後ろに流れる二房の魔力の束。

 キラキラとかがやく魔力の粒子を辺りに散らしながら立つその姿は、どこまでも“自分らしさ”に満ちていた。

 

「……」

『どうしました、先輩? 座標は間違いない筈ですが……』

「先輩言うな。……なんでもないよ。気にしないで」

 

 ……あの腰に巻いているベルト、かな? ……から聞こえる魔法音声を受けて、視線は外される。

 一体、なんなのだろう。鎧の人の方も、少し声を加工しているみたいで、男の人か、女の人かも分からない。

 

『それにしても、びっくりです。配信でも“ライブバース”への用事でもないのにバーチャル体の起動許可が出るなんて』

「今回ばかりは仕方ないからね。社長への貸しを帳消しにするってことで許可貰ったよ。残業だと思って付き合って』

『先輩のためなら、いくらでも!』

「先輩言うな。ま、ありがとね」

 

 よく分からないけれど、仲良さそうな会話。

 だけど、そうしている内に魔族も立ち上がる。

 

「次から次へと……一体キミは何者だ? どんな理由があって私の邪魔をした?」

「理由ったって……ここで邪魔するって決まってたから? ……ねえ、なんて説明したらいい?」

『“あなたのやることが気に喰わなかったからです”でいいかと!』

「――そういうことみたい」

他人(ひと)を煽る天才か?」

 

 当然だろうけど、魔族は怒っているみたいだった。

 それに対して、逃げも隠れもせず、ピンクの鎧の“だれか”は真っ直ぐに向き直る。

 

「んで、何者か、だっけ。あんまり名前出すと都合悪いんだよね……だから、そう……」

 

 ――――『Ⅳ』(フォー)

 

「……フォー?」

「そう。目指したソラの向こうで得たこの力に、みんなで付けた名前――その一部。さ、もういいよね。結構無茶しているし、あんまり長くここにいて役割(ロール)がねじ曲がっちゃってもいけないから」

 

 たくさんの想いを込めて、簡単に名乗った『Ⅳ』は、その場でとんとんと軽く跳ぶ。

 あれは――わたしも良くやる動き。走る前に体の調子を確かめている時にするやつだ。

 『Ⅳ』が誰なのかは分からない。けれど――少しだけ希望が生まれた。

 

「行くよ!」

「……!」

 

 素早いステップで『Ⅳ』は魔族に踏み寄って、そのまま戦闘に入った。

 魔族の、黒い魔力……あれは確か、死の色。ナディアと同じ、アンデッドの証だ。

 アンデッドは、傾向として体が頑丈じゃないから、魔法とかを使わずに直接戦うのは苦手なはず。

 一方で、『Ⅳ』の動きは軽快だ。鎧も動き易そうで、魔族を翻弄しながら蹴りを浴びせている。

 ……けど、どうして『Ⅳ』の魔力の色は分からないんだろう。触角みたいな束の色は、魔力の属性とは違うみたいだし、それも声みたいに、隠しているのだろうか。

 

「くっ……何故私が続けざまにこのような接近戦を……! こんなこと、私の柄ではないというのに……!」

『先輩! あれは自分の苦手を克服しようともしないダメ人間にありがちな言い分です!』

「そもそも、どうして誰もが脚本に逆らおうとする! 私がどれだけ劇的な物語を用意しているか、そしてそれを書き上げる苦労も知らないで……!」

『先輩! あの人、自由なPLに対応できない吟遊GMみたいなこと言ってます! 全部望み通りにやりたいなら小説でも書けばいいのにって思いませんか!』

「さっきからうるさいな魔法音声! 言ってることよく分からないけどとんでもなくバカにしてないか!? なんなんだそのやけに感情豊かな魔法音声は!」

『驚きましたか! これぞ最新、AIの極致! 今やAI婚も当たり前の時代ですから! ね、先輩!』

「してないしするつもりもないけど」

『えっ』

 

 あ……フラれた。

 魔法音声の方、本当に感情があるみたい。そういうのはまず無理だって、ナディアに聞いたことがある。

 『Ⅳ』はそれを特に気にせず、魔族を攻めたてる。

 そのまま押し切れるかと思ったけど――魔族もそこまで甘くなかった。

 

「ええい――調子に乗らないでほしいな!」

「おっと……」

 

 魔族の内から黒い魔力が爆発する。

 流石に近付いたままではいられなかったようで、『Ⅳ』は咄嗟に飛び退いた。

 その隙に、魔族は辺りのあちこちに魔力を集めて、ぞっとするほどの力が凝縮された弾を形作った。

 

「悪いが、戯れに付き合っている暇はなくてね。キミがどこの誰かは知らないが、さっさと消えてくれないか」

「時間がないのはお互いさまだよ――っ」

 

 軌道も速度も不規則に、『Ⅳ』に向かって弾が飛んでいく。

 対する『Ⅳ』は焦ることなく、冷静に立ち向かう。

 最初の一発を滑るように潜り抜け、二発目に拳を打ち付けて相殺する。

 

「いった……! 流石にパンチじゃ押し勝てないか……っと!」

 

 三、四と飛んでくる弾を危なげなく躱していくけれど、迎撃は難しいみたいだった。

 多分、死の属性が多く込められていて、物理的な攻撃とは相性が悪いから。

 それを魔族も察したのか、さらに弾を増やしていく。

 あんな高度な魔法、少し学んだだけでは出来ない。とびっきりの――それこそ、リーテに並ぶかもしれないくらい強力な魔族だと、いま気付いた。

 

「手立てがないなら逃げないでもらえると手っ取り早いんだが」

「ない訳じゃないんだけどね……! まあ、仕方ないか。ほら、やるよ!」

『……つーん』

「…………はぁ」

 

 『Ⅳ』の言葉に、魔法音声は応じない。さっき望んだ返事がもらえなかったからか、拗ねてしまっているらしい。

 ……本当にあれ、ただの魔法音声なのだろうか。だとしたら不便を通り越して、こう……欠陥というか、ちょっとおかしい。

 魔法の方にストライキされたら、いざという時困ると思う。その、いざという時が今みたいだけど。

 とはいえ、『Ⅳ』には考えがあるみたいで、溜息をついたあと、ベルトのお腹の部分にあったデバイスを取り外した。

 

『あっ、ちょっ! マニュアル操作はズルいです!』

「あとで社長に文句言っとこ。不具合で死にそうになったって」

『お茶目な冗談ですって! ごめんなさい先輩! やりますから! ――コラボコード! アテンション!』

 

 魔法音声はあのデバイスから発されているみたい。

 ちゃんとストライキを起こされた時のために、マニュアル操作は完備されているようだ。

 デバイス――イリスが作っていた離れたところとのやり取りをするための魔道具に似ている――の操作をしようとした矢先、魔法音声の方が焦りながら謝って、何かを実行する。

 そして、デバイスが『Ⅳ』の手元から浮き上がり、ちょうど接近していた弾を跳ね返した。

 そのまま離れたところまでひとりでに移動して、何かを投射する。

 

 鳥のような真っ白な翼が生えて、弓を持った、綺麗な女の人……イメージが浮かび上がっただけみたいで、それ以外のことは分からない。

 

 さらにデバイスは『Ⅳ』と、その女の人のイメージ――二人に光を浴びせてから、『Ⅳ』の手元に戻る。

 そして近付いてきた弾を、今度はデバイスではなく、女の人が翼で防いだ。

 

「使い魔の召喚術……?」

「まさか。使い魔なんかじゃない。友達で、仲間で、ライバルで――コラボ相手だよ」

 

 言いながら、『Ⅳ』がデバイスをお腹の部分に再び取り付けた。

 『Ⅳ』を守っていた女の人は、ゆっくりと周囲を回って、やがて二人の姿が一つに重なる。

 

『バーチャリンク! ハンタースタイル! ライブ・オン!』

 

 次の瞬間、『Ⅳ』が着ていた鎧が、まったく違うものに変化した。

 後ろに流れていた魔力の束はなくなって、全体が白くなり、そして背中から生えたこれまた真っ白な鋼の翼。

 そして、右手に持っているのは弓のような形をした射撃武器。

 コラボって言うのはよく分からないけれど――『Ⅳ』はあの女の人の力を借りたのだ。

 

「――ああ、そういうタイプか、分かっていたとも!」

 

 魔族の方はなんだかヤケクソみたいに声を荒げて、さらに弾の数を増やす。

 それを自分の方へと誘いながら――『Ⅳ』は翼を広げて飛び上がった。

 追ってくる不規則な魔弾を素早い飛行で躱しながら、弓のような武器から放った矢で一つ一つ撃ち落としていく。

 弾と一緒に砕ける矢はきらきらと空で輝いて、思わず見とれてしまう。

 

 ――そうしている内に近付いてくる魔族に、わたしが気付いたのは、『Ⅳ』が急降下してそれを突き飛ばしてからのことだった。

 

「ぐぅ……っ!?」

「やっぱそういうタイプだよね。やり方がせこいったら!」

 

 起き上がろうとする魔族を追撃の矢が襲う。

 あの矢はアンデッドに有効な、祝福の力を含んでいるらしい。

 そもそも、聖都の祝福に耐えているアンデッドには殆ど効かないのではとも思ったけれど――聖都の祝福に無理やり耐えているというのなら話は別。

 それ以上の祝福を撃ち込まれれば、聖都にいるための備えはどんどん消耗していく。

 しゅうしゅうと煙を上げる魔族に『Ⅳ』はさらに矢を撃ち込んで――その体を家の外壁に縫い付けた。

 

「これは……マズい、呪詛のバランスが……!」

 

 逃れようとする魔族と、わたし。その間に降り立って、鎧を元のピンクのものへと戻した『Ⅳ』が、こちらに振り返る。

 

「……ねえ。あの家、修復魔法あるんだよね?」

「え……? ――う、うん。わたしじゃ、起動できないけど……」

「なら……いいか。うん、仕方ない。――家主が帰ってきたら謝っといて」

「……?」

 

 なんだか覚悟を決めるように頷いてから、またベルトからデバイスを取り出す。

 

「……ジャミング、お願いね」

『合点承知です! 先輩!』

「先輩言うな」

 

 デバイスを操作して、すぐにベルトに戻す。

 ……工程が煩雑で、戦いながら操作するとなると大変そうだと、そんな感想が生まれた。

 

『ファイナライブ! アテンション!』

 

 急激に高まっていく魔力の圧。

 その魔力は足の方へと流れていき――それを使って、『Ⅳ』は一跳びで魔族から離れて、庭の端に着地した。

 何故、という疑問を持つ前に、『Ⅳ』はその場で地面を強く蹴り、思い切り駆け出した。

 助走のためだったんだと気付いた直後に、私の目の前を通り過ぎる。

 足が自慢なわたしの、何倍もの速さ。そんな速さで助走をつければ、勢いはとんでもないものになる。

 

 必死で目で追って――行き着く先は当然、壁に縫い付けられた魔族。

 

『マイスタイル! EX:(エク)ストリーム!』

 

 その勢いのまま強く地面を蹴り、右足を突き出して真っ直ぐ向かっていく姿は、まるで矢のようだった。

 超速の矢は抵抗もままならない魔族に突き刺さり、引き起こされた爆発から逃れるように跳ねて、『Ⅳ』は戻ってくる。

 壁に広がった罅の中心にはもう魔族はいなかった。

 

「――よし。おしまい」

『お疲れ様でした、先輩! アンデッドは遠方に転移したようです!』

「倒し切れてなかったんだ。……ま、いいか。異邦人がこれ以上やる訳にはいかないよね」

 

 ……もう、終わったのだろうか。わたしは助かったのだろうか。

 安堵と同時に、少しだけ惜しいと思う気持ちがあった。

 『Ⅳ』の、きらきらとした戦いを、もっと見ていたかったのだ。

 

「……あの。助けてくれて、ありがとう」

「――気にしなくていいよ。けど、ここの家主には言っておいて。もっと守りを強固にした方がいいって。特に、こういう誰も戦える人がいない状況なら、さ」

 

 開けっ放しになった、庭の入り口を見ながら、『Ⅳ』は言う。

 あそこじゃなくて、決まった場所から入らないと、色んな仕掛けが動くようになっているのがこの家だ。

 それでも、強い魔族には破られてしまう――ちょっと驚いた。イリスの作った仕掛けは、完璧だと思っていたから。

 

「それじゃ、もう行くから。あまり長居出来ないんだ」

「……! また、会える……?」

「――うん、まあ、会えるんじゃない? そう信じ続けていられるなら、さ」

 

 そう、言葉を紡いだ直後――『Ⅳ』の体は強く輝いて、光になって消えてしまった。

 ……そんな魔法は知らないけれど、夢だとも思えない。

 『Ⅳ』が刻み付けた壁の罅はそのままで、わたしの記憶にも、痛いほどに刻み付けられていたから。

 

 ――『Ⅳ』が置いていった粒子が上る空を見上げる。

 朝は少し雲が多かったけれど、今は眩しい青空が広がっていた。




【ホープ】
未曾有の事件の舞台には上がらず、留守番をしていたら未知と遭遇した。

【オドマオズマ】
しょうもない舞台に付き合わされた腹いせに何か爪痕を残してやろうと取って置きの祝福への備えを用意して聖都に侵入したら未知と遭遇した。

【本話の出来事】
現在進行している中編は毎年夏にある終盤な映画のようなイメージ。
本当に夏まで終わっていないとは思わなかった。
この時期の映画では秋から始まる新シリーズの顔見せが定番となっており、どこかしらで発生した危機に現れる。
本作では別に続編も次回作も構想していないため、この一話のためだけに設定をあたためたりあたためていなかったりした。
以下に設定を記載。これ以降にはもう出てこないので興味がある物好き人のみどうぞ。

V-Ⅳ(ブイ・フォー)
コミュニティ(つながり)から生まれる災厄と、コミュニティ(つながり)をもって戦う戦士(アイドル)『V-ライバー』のひとり。
その外装はピンクを基調としている。いわく社長が好きな色であり、『V-ライバー』のプロトタイプたる零号機。
速度を重視したマイスタイルを持ち、軽やかな足捌きを中心に戦うが、同時に多数のコラボコードを有しており、必要に応じてバーチャリンクも多用する。
V界のエースも名高いが、本人としては制約の多い配信をさほど好んでいない。
自分である以上自分らしく生きたいというスタンスで、現実(リアル)における友人との交流の方が好き。
エースとしての実力は認められてはいるものの、『V』としての活動を疎かにしがちなためそこをたびたび視聴者に叩かれるとか。

【V-ライバー】
数多の並行世界を繋ぎ、あらゆる命に夢と娯楽を提供する企業『全世界ワンダーランド』に所属するバーチャルアイドルの総称。
社長“狂った(マッド)アリス”によってさまざまな世界から選ばれたかれらは、実体とは別に他の世界への干渉を可能とするバーチャル体を持ち、それを用いて世界を賑わす配信活動を行う。
その目的は、負の心が結ぶコミュニティ(つながり)で全ての世界を滅ぼそうとする組織『NEGA★T↓VE(ネガチューブ)』への対抗であり、かれらが作り出す怪物『ネガチューバー』と戦うため、専用デバイス『ライブドライバー』を利用し外装を身に纏うことを可能とする。
感情同調機能『エモーションキャプチャー』により、感情の高まりを出力に反映させる。
これにより、『V-ライバー』は自分らしくあればあるほど、戦闘力を向上させることが可能。
基本となる形態はマイスタイルと呼ばれ、他の『V-ライバー』の承認によってアバターのデータを貸与されることで、一時的にその能力を獲得するフォームチェンジ(バーチャリンク)が使用できる。

【ライブライバ】
『V-ライバー』が共通して持つ通信デバイス。『全世界ワンダーランド』の製品で世界観を超えた他者との連絡が取れる。
持ち主の意思で遠隔操作が可能なほか、サポートAI『マネージャー』が搭載されており、日常生活から『V-ライバー』としての活動まで幅広くサポートする。
バーチャル体の状態でアプリ『V-ライブ』を実行し、自撮りの要領で自身をスキャンすることで、自身と外装を同調させ、その状態でライブライバを『ライブドライバー』にセットすることで外装が装着される。
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