凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法   作:けっぺん

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冥界色のエンゲージリング(21)

 

 

「クイール、イリスティーラ、ナディア、ラフィーナ――力を貸して」

「もちろんです!」

「そのための力ですわ――遠慮なく、頼ってください」

「いまの私、生身なんだがね……いや、文句も言っていられないか」

「それを言ったら私もよ。もう今更だけど」

 

 四人と示し合わせたように駆け出す。

 共闘するとなれば、互いの意思疎通は当然必要になってくる。

 それを補佐するのは、クイールの外装が持つ支援機能。

 風の試練における戦いに比べ、さらにナディアとラフィーナが増えたことで、全員がぴたりと噛み合う共闘はより困難になった。

 だが、それはこれからのために、慣れなければならない負担だ。

 

「 ――――――――! 」

 

 スフィンクスによって毒が癒され、万全の状態へと立ち返ったケルベロスが咆哮する。

 そのまま飛び掛かってきた、陽炎をまとう巨体に対して、出すべき答えはすぐに導き出される。

 

「っと……!」

 

 その熱を躱すために動き始めた一秒後、立っていたのはケルベロスの真横。

 慣性に押されて転びそうになる体を左右のユニットが制御し、外装の性質を理解すると共にケルベロスの首がこちらに向く前に動き出す。

 足に力を込めれば、その直後、僕たちは一息でネルガルの眼前にまで迫っていた。

 

「何……!?」

 

 剣での防御は間に合わないまでも、振るった拳は直撃せず、ネルガルは咄嗟に後退することで被弾を避けた。

 ネルガルは即座に僕たちに反応し、剣を地面に突き刺すことで、命令に応えるように幾本もの結晶の剣が地面から突き出てくる。

 それが迫るまで悠長に待つことはない。

 ユニットが放出する魔力が、滑るように僕たちを導いていく。

 体感したことのないほどの速度でもってネルガルの背後に立ちながら、僕は手元に力を込める。

 今、この手に魔剣はない。武器がないのならば、作ればいい。

 

「なんたる速度――ぐっ……!?」

「それだけじゃありませんよ、お母様!」

 

 ――外装のあちこちに生成されている結晶と同じもので出来た、不格好な剣が、手に握り込まれる。

 それを力の限り振るい、ネルガルの背に叩き込むと同時、剣はあっさりと砕けて辺りに魔力の暴風を解き放つ。

 

「ッ……なるほど。カルラと手を結んだことによる新たな力か。面白い!」

 

 外装の罅が広がっていき、内から現れた真新しい外装が新たな剣を作り出す。

 今のダメージはまるで無かったかのように、振るわれる剣は真っ直ぐで、ブレがない。

 柄だけになった結晶を投げ捨てて、こちらも左手に剣を生成する。

 即興で作り出す僕たちの剣は、同じ透き通った結晶のものだとしても、その組成の完成度には大きな開きがある。

 だが――僕たちの作る剣の脆さは、“そうあるべき”ものだ。

 ネルガルの剣とぶつかり合い、またも簡単に砕け散る脆い剣は、砕けると同時に内側からその威力を放出する。

 そして、怯んだと同時にさらに一歩踏み込んで、右手に生成した不格好な槍を突き出せば、巻き起こった爆発がネルガルを吹き飛ばした。

 

「ぬぅ……! 流石は我が娘の力、といったところか」

「わたし()()の力です。わたしが外の世界で手に入れた、絆の力です!」

 

 誇らしげなカルラのやる気に応じるように、外装の力が強まる。

 いつもの二人の力を超えた、三人の力の合一。

 カルラの潜在能力をも含めた僕たちの絆は、決してネルガルにも劣らない。

 それに――今ここにいるのは、僕たち三人だけではない。

 

「わたくしたちのことも――忘れないでもらいましょうか!」

「ぐぉ……!?」

 

 体勢を立て直したネルガルに向けて叩き込まれる、一撃の威力に特化した魔力砲。

 一人で扱うにはあまりにも巨大な大砲を右手に構えたナディアによるものだ。

 さらに、暴れ回るケルベロスの牙をクイールの聖剣が抑えたところで、巨体の真下を潜り抜けたイリスティーラがネルガルに向けてドラゴンのブレスが如き閃光を放つ。

 

「冥界の主にケルベロス。本来はまともに戦うことも難しい相手だが……キミが私たちの土俵で戦ってくれている限り、勝ち目はある。それなりに場数は踏んでいるからね」

「――ふっ。“何でもできる”とは退屈なものよ。ゆえに、余は戦士として受けて立った。楽しい――楽しいぞ、今を生きる者たちよ!」

 

 心からの喜びを打ち明けると同時に、ネルガルの体が弾け飛ぶ。

 それは、決して限界が訪れたからではない。

 瞬間的に、ネルガルの気配は辺り一帯に広がった。先程の、剣による攻撃と同じように――結晶の外装が、次々と地面から出現する。

 

「さあ――そなたたちの可能性を見せてみよ! 異なる種族、異なる生命同士が紡いだ絆とやらを!」

 

 現れた外装が一斉に剣を構え、襲い掛かってくる。

 もちろん、ケルベロスは健在。そしてあの外装は分身したことで個々の力が弱まったなどということはない。

 すべてが同一の力。自身の広げた根から新たな自身を芽吹かせるだけの、力あるアルラウネの権限。

 冥界の主としてのこの領域における絶対性を放棄した彼女が、なおも有する強大なアドバンテージだ。

 

「くっ……!」

「イリスティーラ、下がりなさい! 私じゃ大して持たないわ!」

 

 近接攻撃の手数が大幅に増えたことで、一気に対処が厳しくなったのはイリスティーラだ。

 外装のない彼女は、魔道具による射撃が主となり、接近されれば追い込まれるしかない。

 振り下ろされた剣を防いだのはラフィーナだった。虫の甲殻を用いた手甲を盾にし、それを砕きつつもサキュバス特有の“頑丈さ”を持つ腕で剣を受け止める。

 その隙に、ゼロ距離での射撃でイリスティーラが外装の頭部を撃ち抜く。

 頭が砕け、力の抜けたそれから、ラフィーナは結晶の剣を奪い取った。

 

「礼だ。武器が欲しかっただろう?」

「言ってる場合か……! ああもう! なんでこんな戦いにまで駆り出されなきゃならないのよ!」

 

 ラフィーナの剣術は、僕やクイールのものとは違う、基本を徹底的に叩き込まれたもの。

 だが、基本だからこそ、ネルガルの――クイールから学んだような実戦仕込みのそれとどうにか渡り合えている。

 後は、この数の問題。こればかりは、イリスティーラとラフィーナではどうしても、攻撃力が足りない。

 

「クイール! ナディア!」

「はい! いきますよ!」

「承りました!」

 

 複数を対応できるほどの火力を実現できるのは、外装を持つ僕たちだ。

 ケルベロスの一撃を防ぎつつわざと吹き飛ばされて、こちらに合流するクイール。

 聖剣を輝かせる彼女と、再び大砲に魔力弾を装填したナディアに合わせ、左右のユニットに魔力を充填する。

 

「今――!」

「ちょ、バカ、あんたら……!」

「落ち着きたまえ。動かなければ巻き込まれないよ」

 

 発射した魔力の束に、大した狙いなど付けていない。

 イリスティーラやナディア。スフィンクスが誘導した獅子に乗って移動したリヒトとトーカにさえ当たらなければ問題ないと、無軌道にばら撒いていく。

 

「 ――――――――! 」

 

 しかし、その魔力の奔流の中でも気にしないとばかりに、ケルベロスは突っ込んでくる。

 クイールとナディア――二人と言葉は交わさない。やるべきだと考えたことは、ピタリと合った行動に反映された。

 

「させません――!」

「この……!」

 

 聖剣と、武装を切り替えて出力された、円形の刃物。

 それぞれが、二つの頭部が持つ牙を抑え、残る牙が僕を捉えるよりも前にその真下に潜り込む。

 そして、ケルベロスが動き出すより早く結晶の槍を腹に突き立て、ユニットの魔力を放出――その巨体を持ち上げた。

 

「ほう……! 飛ぶか、勇者!」

 

 槍が限界を迎えて爆発し、より高くケルベロスを打ち上げる。

 如何に強大な膂力を持つ魔族であろうとも、地面から引き剥がしてしまえば、その全力は発揮できない。

 さらに追撃を行おうとして、両手に剣を形成する。しかし――僕たちを追って、ネルガルの外装が一斉に剣を高く掲げる。

 瞬間――森の木々から無数の剣が飛び出し、大挙して押し寄せてきた。

 

「ユーリ……!」

「行けますよね、ユーリ。このくらいのピンチ、幾らでもあったでしょう!」

「そんなことはないけど――!」

 

 けれど、きっと大丈夫。

 この外装は、苦難の先へと飛び立つためのもの。

 今までの外装のどれとも違う、その特異な性質。

 主戦場は空中であり、その持味は速度――ただ、僕たちを狙ってくるだけの剣であれば、僕たちは乗り越えられる。

 

「全力でいくよ、二人とも!」

「うん……!」

「ええ――!」

 

 全方位からの弾幕の如き刃の中を、ユニットからの魔力放射によって飛ぶ。

 躱し、躱し、躱し――時には急停止して剣同士を激突させて道を拓き、時にこちらも結晶の武器をもって相殺する。

 そしてケルベロスのもとまで辿り着き、槍を突き立てつつもその巨体を通り過ぎれば――僕たちを追ってきた無数の剣はかれによって受け止められる。

 

「 ――――――――!? 」

 

 そしてケルベロスを見下ろし、なおも飛来する剣の群れに向けてユニットを構え、魔力による散弾を浴びせる。

 真下の状況が分からないほどの爆発――その中から、同じように結晶のユニットから魔力を放出し、ネルガルが飛び出してきた。

 

「お母様……!」

「実に見事だ、勇者たち! よもやアルラウネと手を取り合い、得た力が空を征するものとは!」

 

 振り下ろされた重い剣に、形成していた槍をぶつける。

 その威力の爆発に、今度はネルガルも怯みはしない。この戦いを楽しみながらも、決して譲るまいとする意地があった。

 

「だが、所詮偽りの空だ! 冥界からは出られず、青空を駆けることは叶わない! そなたたちの自由の範囲は、この暗がりが関の山であろう!」

 

 こちらの速度にも、当たり前のように追いついてくる。

 初めて目にした性質に順応する早さは凄まじいかった。それは、ネルガルが持って生まれた“才”なのかもしれない。

 (カルラ)が経験した現実とは思えない出来事を受け入れ、そこに救いを見出すことは――たとえアルラウネであっても簡単には出来ないだろう。

 

「たとえそうだとしても、ここから先はどうにでもなる。諦めないことで、僕たちは前に進んできたんだ!」

「ん……部外者にとやかく言われることじゃない。何があっても立ち止まらないって――私はずっと前に、決意した」

「幼馴染であるわたしが保障します。二人の諦めの悪さは誰よりもすごいですよ、お母様。そして、わたしの意地だって、ちょっとしたものです」

 

 だが――彼女はどこまでも、“観客”なのだ。

 誰かの紡ぐ物語に感情移入すること。その結末に救いを齎したいと思うことと、自分自身の物語を歩むことは、まったく違う。

 彼女が齎す救いはカルラの――僕たちのためのもの。だからこそ、僕たちは負けていられないのだ。

 僕たちの物語の結末は、僕たちが創るものなのだから。

 

「――そなたの意地……とな?」

「はい。二人のためなら、世界だって敵に回しましょう。どんな理不尽だって、引っ繰り返してやりましょう。魔王様なんて、少しも怖くありません。わたしにとっては、二人との未来が失われる方が、ずっと――ずっと怖いんです!」

 

 両手の剣をぶつけ合わせ、巻き起こった爆発。

 その中で――再びネルガルの剣が作り出されるまでの一秒間が引き延ばされて、その隙にネルガルのユニットに突き刺さった槍が、飛行機能を喪失させた。

 それは、ネルガルがどれだけ憧れ、求めても手に入らないもの。

 リッカが足掻いて、リッカが積み上げた時間。それが、彼女と僕たちの決定的な差になった。

 

『ファイナライズ! アクセプション!』

 

 バランスを崩したことにネルガルが気付いた時には、僕たちは最後の一撃の準備を整えていた。

 高まった勇気を、二人の力を、右足の一点に。

 左右のユニットが魔力の渦を巻き起こし、その中心にネルガルを捉えて蹴りを叩き込む。

 

『カルラ・エクストライクッ!』

 

 ユニットから放出された膨大な魔力が、速度という速度を超えてその一撃の威力を引き上げていく。

 ムルゼ霊山で、ミツカイが操った強大な“ソロ”――その性質によって降り注ぐ星のように。

 

「はあああああああああああぁぁぁぁ――――――――ッ!」

 

 あっという間に近付いてきた地面。

 こちらの様子を見ていたのだろう――クイールたちは既に退避していた。

 

“――ユーリ、分かってますね?”

“――うん、任せるよ、カルラ”

 

 そんなやり取りは一瞬。次の瞬間には、一筋の流星は冥界の地面に着弾し、辺りの木々を吹き飛ばしていた。

 木の上にいたアルラウネたちが悲鳴と共にどこかへと飛んでいき、着弾の中心で、外装は砕けるのではなく、粒子となって散っていく。

 今までのように、どうせ外装には限界がなく、またどこからでも現れる。

 こうして彼女と戦う以上、僕たちはいずれ息切れするしかない。

 

 ――たった一つの手段を除いては。

 

「……大したものだ、勇者たち。だが、そこまでよ――――?」

 

 目の前の地面から、再び外装を纏ったネルガルが現れた時、僕たちは反対に既に外装を解いていた。

 何もせずにその場に立っている、僕と、リッカに当然ネルガルは困惑する。

 では、その困惑は何に対するものか。

 無防備な僕たちに対してか。或いは――そこにいない、カルラに対してか。

 

「――はい。ここまでです、お母様」

 

 戦いによって滅茶苦茶になった戦場。

 その中で、決して壊れることなく、当たり前にそこにあったもの。

 

 そこから声がしたと、ネルガルが認識したと同時、その外装が解れていった。

 

 目を見開いたネルガルの視線の先――

 

 

 ――――冥界の主が座すべき玉座の上。

 張り巡らされた蔦に、自分の蔦を絡ませながら、薄い笑みを浮かべたカルラは腰掛けていた。




【U-リッカ カルラフューリー】
その能力は超高速飛行と、結晶による武器の生成。
結晶の武器は脆く、相手も武器を持っているならば実用に耐えるものではない。
しかし、相手に強く叩き込むことで炸裂し、内に秘めた魔力を爆発させて更なるダメージを与えることができる。
スーツは一種の苗床の役割を持っており、周囲の魔力を取り込むことで表面に結晶が生成されていく。
言わば歩く再生爆弾。触る者みな吹っ飛ばす、手段を択ばない三人の絆である。絆かなぁ。
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