凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法   作:けっぺん

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冥界色のエンゲージリング(23)

 

 

「やああああああ――――!」

 

 クイールによる、光の迸る聖剣の斬撃が、開戦の狼煙となった。

 魔王の絶叫が黒い魔力を飛び散らせ、斬撃を相殺する。

 

「リッカ!」

「うん……!」

 

 魔王が次の動きに出る前に、リッカが周りの時間を堰き止める。

 使ったのは接近するまでのほんの数秒。魔王がこちらに伸ばそうとしていた腕に向けて、リッカに合わせて蹴りを叩き込む。

 

『 ――――――――――――――――!? 』

 

 爆散した腕は、複数伸びる中の一つでしかない。

 加えて、そう時間も経たない内に再生してしまうだろう。

 だからこそ、これを好機として少しでも追い込む。

 それが出来るほどの手数が、今の僕たちにはある。

 

「イリスティーラ! 合わせてください!」

「任せたまえ!」

 

 ナディアが放った小さな弾丸は、魔王に届くことなく途中で停止する。

 そこにイリスティーラが放った、ドラゴンの如き熱線が吸い込まれ――威力が増幅されて魔王へと向かっていく。

 魔力に反応する特殊な薬液の弾丸か。それによって、熱線を強化したのだろう。

 魔王は素早く反応し、二本の腕で熱線を受け止める。たちまち焼け焦げ、使い物にならなくなった腕を振り回しながら、魔王は怒りに身を任せて叫びを上げる。

 

「わたしたちも接近しますよ! ラフィーナ! クイール!」

「は、はい! っとと!?」

 

 その無軌道な腕を躱しながら、二つのユニットにラフィーナとクイールを乗せて、カルラが接近してくる。

 地面も空も関係なく、超高速で駆けるカルラにとっては、その攻撃とも言えない攻撃は遅すぎる。

 たちまち腕を潜り抜けて、三人は魔王のもとまで接近した。

 

「ちょっと! 私にどうしろと!? この盾で殴れって!?」

「あ、そうだ忘れてました。はい、剣です。これだけリソースがあれば、こういうことも出来るみたいで」

「こんな雑に魔剣(じぶん)渡されることある!?」

 

 大口を開けて三人を丸呑みにしようとする魔王を躱しながら、カルラはラフィーナに魔剣を手渡した。

 当然、ラフィーナが外に出ている以上、本来有する機能のいくつかは失われているようだが――ラフィーナの望んだ通りの剣である。

 僕は十分に戦えている。あの剣は今はラフィーナ自身が持っていた方が良いだろう。

 

「一緒に行きましょう! ラフィーナちゃん!」

「あんたもたいがいな適応力ね!? ああもう、私が一体何したってのよ――!」

 

 ユニットから跳躍し、クイールとラフィーナはぴたりと息を合わせて剣を振り下ろす。

 その瞬間、魔王は単眼を覆うように闇色の膜を展開し、斬撃を防御した。

 傷はつけられなかったようだが、視界は塞がれた。

 その隙に僕とリッカは魔王の死角に移動し、手元に集めた炎熱を放り投げる。

 それをリッカが魔法で加工――炎の剣へと変貌させ、魔王に突き刺した。

 

 普段、リッカの魔法は外装を用いた戦闘で積極的に利用することはない。

 魔法には大抵の場合、下準備が必要だ。外装を即座に起動できるのは、リッカが膨大な密度の術式を体に刻んでいるからに他ならない。

 よって即効性が足りず、手札とするには難しい魔法だが、リッカがあの黒い外装を纏い、強化された杖を手に持っている間であれば話は別だ。

 リッカが有するあらゆる魔法の威力と効率を高め、素早い発動を可能とするあの杖は、戦法に圧倒的な選択肢を与える。

 このような多人数で戦う状況においては、幅広い連携にも繋がってくる。

 

「リッカちゃん、お願いします!」

「っ……!」

 

 クイールの意図が即座に伝わったのは、彼女の外装が持つ、連携強化の機能から。

 素早くリッカは魔王の周囲に鏡のような足場を複数設置する。

 飛行は出来るものの、得意分野ではないクイールの外装であの巨体相手に立ち回るのであれば、あのような足場が有効になる。

 クイールだけではない。ラフィーナもまた、それを蹴って跳躍し、魔剣を振り上げて魔王を切り裂いていく。

 

「 ―――――――……! 」

 

 地鳴りのような呻きを上げる魔王は、体中から黒い靄を滲ませながら、全ての腕を高く掲げる。

 その中心に集まったのは、膨大な“呪い”。

 オドマオズマが操るアンデッドが纏うそれを、さらに凝縮したような――巨大な呪塊が十分な大きさになったところで、魔王はそれを思い切り握り潰した。

 周囲に拡散した呪詛は無数の矢となり降り注いでくる。

 

「威力はわたくしが弱めますので、相殺は任せます!」

 

 それに対し、最初に動き出したのはナディアだった。

 上方に向けて放った薬液は飛散し、霧のような薄い膜を形成する。

 

「祝福を利用した聖水か――呪詛に対しては打ってつけの防御だね。それなら……!」

 

 呪いの矢は祝福の膜を通り、弱体化しつつも、なおも黒い雨として確かな威力を残している。

 ならば、と即座に次の一手を導き出したのはイリスティーラ。

 その魔道具の銃口はこちらに向けられ、放たれたのは銀色の魔力流。

 特定の魔族の因子を用いたものではない。ただ、冥界の属性に威力を乗せただけのものだ。

 

「頼むよ、二人とも!」

 

 意図は理解した。僕が動き出すのと、リッカが杖を振るったのは同時。

 こちらに向かってくる魔力をリッカが捉えて、球状に加工。

 そしてそれを――降り注ぐ呪詛に立ち向かうように、思い切り蹴り上げる。

 強い死の属性を持っていた呪詛だが、だからこそ純粋な冥界の力には弱い。

 炎を伴った銀色の弾は真っ直ぐ矢に飛んでいき、炸裂することでそのすべてを吹き飛ばした。

 

『 ――――――――ッ! 』

 

「っと……!」

 

 怒りに任せて大きく薙がれた腕を躱すため、リッカを抱えて後退する。

 魔王は今の攻撃に必殺を期していたのだろう。苛立ちを込めた大暴れは、流石に接近したままでは防ぐことが出来ない。

 だが、全員が離れたのをいいことに、魔王は叫びを上げながら辺りに黒い靄を撒き散らす。

 靄は徐々に四つの形を作っていき――半透明な、見覚えのある魔族の似姿となった。

 

「四天王……!」

「チッ、性質の悪いことをしてくれるね……!」

 

 魔王の狂笑が響く中で、それぞれの似姿が動き出す。

 一際巨大なドラゴンの影が翼を羽ばたかせれば、たちまち黒風が吹き荒れ始めた。

 

「アリスアドラ様……!? ど、どうすんのよコレ!?」

「やるしかないじゃないですか! きっと、本物の四天王と戦うよりは、なんとかなる筈です!」

 

 殺意も、戦意もない。ただそこに、役目を与えられて存在しているだけの影。

 ゆえに本来の四天王ほどの圧は感じない。きっと、強さも完全に同等というほどではないのだろう。

 だがそれでも、そのコピーを同時に相手取らなければならないということは、魔王だけと戦っていたこれまでと比較にならないほど危険な状況だ。

 クイールが牽制にと放った斬撃は、リーテリヴィアの影が軽く振るった、細い剣によってあっさりと真っ二つにされる。

 

「……まあ、これくらいじゃ効かないですよね。けど――!」

 

 本来ならば、絶望的状況かもしれない。けれど、乗り越えなければならない壁だ。

 これから先、必ず、バラルバラーズ以外の四天王とも戦うことになる。

 寧ろこれは――先立って戦い方を知っておく機会となり得るのだ。

 

「いくよ! 僕たちなら、絶対勝てる!」

 

 それは、虚勢ではない。今の僕たちであれば、四天王の影にさえ劣らないという絶対の確信だ。

 

『 ――――――――! 』

「ユーリ!」

 

 バラルバラーズがその宣言を嗤うように咆哮し、風のブレスを放ってくる。

 それに対し、ラフィーナが放り投げてきた魔剣を受け取り、銃砲形態へと切り替え――リッカが杖の先端に灯した魔力に合わせて引き金を引く。

 

『アドラ・エクスバスター!』

『オズマ・エクスキューション!』

 

 火と土、二つの属性の奔流が、風のブレスとぶつかり合う。

 ――返ってきた衝撃で悟った。やはり、バラルバラーズほどの圧倒的な力を感じない。

 それなら……と、駆け出そうとして、目の前に現れたアリスアドラの影の拳を、咄嗟に魔剣で受け止めた。

 

「くっ……!?」

 

 ゆっくりと拳を自然体に戻したと思えば――次の瞬間、横腹に蹴りが突き刺さった。

 息が詰まり、更なる一撃を許しかけたところで、リッカの防御壁が僕たちとアリスアドラの影を隔てる。

 

「ユーリ、大丈夫……!?」

「うん、まだいける――けど、あの速さは……!」

「っ、アリスアドラ様のこれは、速度が本質じゃないわ!」

 

 防御壁をじっと見ていたと思えば、目にも止まらない速さで再度突き出された拳がそれを叩き割る。

 そして次の一撃を、間に入ったラフィーナが左腕の盾で防御した。

 

「あんたもあの外装で知ってるでしょ! あれに備わっているのはアリスアドラ様の格闘術の疑似再現! 誰もの不意を的確に打つ技術なのよ……ッ!」

 

 『アドラフューリー』――あの外装に、敵の不意を突く戦闘補助機能があることは知っている。

 あの外装自体、リッカが作ったものではない。当然、リッカが意図した機能は、あの外装には存在しない。

 アリスアドラの干渉によって与えられたあれには、彼女の力が備わっている。

 あの機能は、彼女の技術が元になっているのか。

 

 だが、それが彼女の速度だけで成り立っているものでないとすれば、一つの打開策が思いつく。

 

「だったら……カルラ!」

 

 ――即ち、速度は彼女に勝る存在が、この場にはいるということ。

 その名を叫ぶとほぼ同時、アリスアドラの影に結晶の刃が突き刺さった。

 

「っ、申し訳ありません、アリスアドラ様っ!」

 

 それで力が抜けたところを、ラフィーナが謝罪しつつ盾で弾き返し、体勢を崩す。

 そして隙を見せたアリスアドラの影に向けて、カルラと時間を加速させたリッカが連撃を叩き込む。

 僕たちはその傍を通り抜け、オドマオズマの影へと駆けた。

 大量の怨念を操り、ナディアを襲う影に、砲撃を一発。怯んだ隙にラフィーナへと炎熱を込めた魔剣を手渡しつつ、一気に接近する。

 

「ナディア、平気!?」

「ええ――このまま押し切ります、ユーリ! ラフィーナ!」

「もうやれるとこまでやってやろうじゃないの!」

 

 ラフィーナの一振りが辺りに炎を巻き上げ、オドマオズマの影が生み出していたスケルトンたちを焼き払う。

 放たれた黒い魔力を躱して接近、影に拳を打ち込むが、まるで土塊を殴ったかのように脆く崩れてしまった。

 しかし、足元に沈んだ影は素早く僕の背後に移動し、たちまち元の姿を形成する。

 振り向いた時には怨霊を滲ませた手が迫り――僕を貫く寸前で停止した。

 

「即効性の麻痺薬……便利なものが作れますね、この外装は」

「助かったよ、ナディア――!」

 

 背後から撃ち込まれた薬によって動きを止めたオドマオズマの影。

 今度こそ回避出来なくなったそれに向けて蹴りを叩き込めば、先程とは異なる手応えをもって影は爆散し、靄となって消えていった。

 それも束の間、オドマオズマの影と入れ替わるように、暴風を纏いながら、バラルバラーズの影が迫ってきた。

 大口を開くその影を躱そうとして――牙が届くよりも前に、その影の動きが止まる。

 

「ハッ……所詮は影、なんとかなるものね……!」

「ラフィーナ、もしかして……」

「ええ。()()()()外装なんでしょ? あんたは嫌いみたいだけど、私は使うわよ。影相手なら、遠慮もないしね!」

 

 ラフィーナが使ったのは、あの外装の盾を介した催眠能力――!

 強靭な精神を持つ相手であれば効き目の薄くなるそれだが、そもそも意思さえ感じられない影であれば束縛するのは容易いこと。

 大人しくなったバラルバラーズの影に対し、ラフィーナが命令を出せば、影はその巨体を翻し、その暴風を僕たちにとっての追い風に変える。

 

『 ――――――――――――!? 』

 

 大きく腕を払えば、風が巨大な刃となって魔王に襲い掛かる。

 さらに左腕をリーテリヴィアの影に向け、その手を握り込むと、囲むように竜巻が巻き起こり影を拘束した。

 ……十全に戦うことが出来れば、これほど自由に風を操れたのか。

 改めて、バラルバラーズが年老い、弱っていて助かったと感じた。

 

『――キメラ・エクスプロージョン』

 

 そして、動けなくなったリーテリヴィアの影を、イリスティーラが放った光弾が消し飛ばす。

 これで三人の影は打ち倒した。残るは魔王のみだが――この戦いを、ただ見ていただけではないらしい。

 魔王を敵と見定め、襲い掛かろうとしていたバラルバラーズの影が細切れに裂かれる。

 多数の腕に剣を作り出し、怒りのままに振り回したのだ。

 

 続く狙いは、僕たち。

 いや――狙いなど付けていないだろう。闇雲に振るわれるそれに対して、やるべきことは一つだった。

 

「あまり……長持ちはしない。走って……!」

 

 一秒を五倍にも十倍にも引き延ばす時の操作。

 リッカはそれを、僕やカルラだけでなく、この場の全員に行使した。

 どの道、あの腕を恐れていては近づけない。それに、四天王の影を呼び出すなんて手段も、一度で打ち止めなどということはないだろう。

 ならば、次の小細工をされる前に決着をつける。

 時間を堰き止めれば、刃の群れも回避が叶うものになる。僕たちは一斉に駆け出した。

 

 四方八方から襲い来る剣。

 それらをいち早く潜り抜けて、魔王に辿り着いたカルラが、ユニットからゼロ距離の砲撃を放つ。

 魔王を倒すには至らない。だが、ただでさえ遅くなった剣を鈍らせた。

 さらに、魔王の腹部の中心に、クイールが放った聖剣が突き刺さる。

 

「イリス!」

「ああ――行きたまえ!」

 

 腕から翼を伸ばしたイリスティーラが、抱え上げたクイールを力の限り投げ飛ばす。

 そこからクイールは体勢を変え、右足を突き出して刺さった聖剣へと突っ込んでいった。

 

『――究極(Xtreme)・エクストリーム――!』

 

 その圧倒的な輝きは、こちらに伸びていた多数の腕諸共魔王の体を半壊させた。

 崩れ落ちる魔王は、しかしまだ滅んでいない。

 靄をあちこちに撒き散らしながら、怨嗟の絶叫を上げ――飛び上がっていた僕たちを見上げた。

 

『 ――――――――――――――――ッ! 』

 

 クイールも、イリスティーラも、それで決着とは確信していなかった。

 だからこそ自分たちの行動を、僕たちを動きやすくするための支援にした。

 ならばそれを無駄にしない。こちらに戻ってきたカルラが、ユニットによって操る魔力の流れで僕たちを捉え、まとめて飛んだ。

 僕、リッカ、カルラ、ラフィーナ、ナディア。

 五人で合わせて、決着のための必殺技を実行する。

 

『ファイナライズ! アクセプション!』
 
『ファイナライズ! アクセプション!』
『ファイナライズ! アクセプション!』
『ファイナライズ! アクセプション!』』
『ファイナライズ! アクセプション!』

 

 誰が合図を出した訳でもない。

 それでも、全員揃って、これで決着だと確信をもって行動していた。

 突き出した右足の一点に残る全力を込める。五つのまったく異なる属性が、バラバラのまま一つに交わる。

 魔王の大口から吐き出された魔力の奔流は、もはや僕たちの勢いを弱めるに至らない。

 

 それは――決して、いつかの無念を晴らすことにはならない。

 あくまでも、いつかはいつかであり、今は今でしかない。

 そのいつかを体験したのはリッカだけであり――僕も、カルラも、ラフィーナも、それを知り、感じているだけ。ナディアは知る由もないだろう。

 

 けれど確かに、こんな五人で旅をしていた。もしかするとリッカには、感慨があるのかもしれない。

 僕たちが抱けるのは、感想だけだ。だから僕たちにできる全力で、リッカの経験に共鳴し、寄り添い、共に歩むのだ。

 

『ユーリ・エクストライクッ!』

『リッカ・エクストライクッ!』

『カルラ・エクストライクッ!』

『セプテニファ・エクストライクッ!』

『フィルミナイ・エクストライクッ!』

 

 魔王の巨大な単眼をぶち破り、突き抜けていく。

 五人全員の力を使い切った威力の結集は魔王を繋ぐ楔へと響いていき――

 

『 ――――――――――――――――――――――――――――――――ッ! 』

 

 初めて悲鳴とも取れた絶叫と共に、楔は爆発の中へと消えていった。




劇場版と銘打った冥界編は次回までとなります。
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