凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法   作:けっぺん

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ラフィーナちゃんのぐらぐら反省コーナー!

 

 

 グラグラと空間が揺れ、嫌でも目が覚める。

 安眠妨害だ。ようやく最近、まともに眠れるようになったというのに。

 この空間で普通に眠れるということが、一体どれほどの価値があることなのか分かっているのだろうか。

 空間の管理者様は数限りない奇跡と苦労によって今に至っているが、私だって奇跡と苦労を重ねているのだ。

 その対価ですらない。働かせる側の最低限の義務として、十全に休める環境の一つや二つ、用意しておくべきだろう。

 

「……」

 

 さして広くもない、四角い部屋。

 骨のような、或いは生気のない肌のような、白い壁と床。

 飾り気も何もあったものじゃない部屋にあるのは、扉と簡素なベッドがあるくらい。

 独房かよ、と思わないでもない。もう少し“まとも”に出来るのだが、現状その必要性を感じていなかった。

 

 ……私がリッカから、この空間におけるある程度の権限を与えられて数日が経つ。

 そんな中で与えられたのが、何もない“個室”であった。

 新手の嫌がらせかと思っていたが、あの女としては、協力者である私に休息の場くらいあるべきだと思ったようで。まったく今更だ。

 個室と言いつつも、最初は壁の隙間とかから使い魔たちが侵入してきていた始末である。

 権限の関係で、連中は既に私を襲うことはないまでも、個室と決められた場所に入り込まれては落ち着けるものも落ち着けない。

 リッカからほんのちょっぴり渡された空間内のリソースを使い、どうにか内装を整えて、壁を補修する間に、私はある程度、その権限というものを把握することが出来ていた。

 

「……」

 

 ――起き上がり、寝間着のままでいいかと判断する。

 自分の衣類にも頓着がなくなったことを自覚して嫌気がさした。

 元より私はサキュバスだ。全裸でいることに抵抗はないものの、望んでもいないのにそうしていたいかといえばまた別。

 申し訳程度の自由を与えられれば、思いのほか一糸纏わない状況というのは気になるものなのだ。

 よって、リソースの操作を学んで、部屋の補修の次に行ったのが、衣類の生成である。

 なおリッカには二度見された。そのあと、何で今まで気付かなかったのかと若干申し訳なさそうに謝られた。相変わらずあの女の情緒が分からない。

 

 ……ここの“住民”たちとの関わりは、実のところそんなに変わっていない。

 未だ理性を保っているオークがこちらに対して辛辣になったくらい。

 他の――話すことが出来る連中は、元々それぞれの立場とかには大して興味なかったようだし、絶縁してほしかったセイレーンや妖精たちも、残念ながら相変わらずである。

 ……いや、あの女に下ったと思われているのはきわめて遺憾だが。

 

「……っと。何だってのよ、一体」

 

 ぐらりと、また空間が揺れる。

 ここまで不安定になっているなど、一体何があったのか。

 あの女が精神的に追い込まれた時も、この空間は大して影響を受けていなかったというのに。

 ……あれか。彼女の支えであったアルラウネがいなくなり、その不安がこれまでとは違う形で作用したとか。

 正直、私はカルラに大した思い入れはない。押し付けられた“いつか”で共に旅をしていたからなんだというのか。

 私にとっては、ここに放り込まれて間もない頃、同じ被害者だと思って話したら、まるで理解できない思考回路の持ち主だったという悪い思い出の方が大きいのだ。

 それからは極力関わらない、話しかけられても無視するように努めてきたが、あれが多かれ少なかれリッカを落ち着けていたことには変わりはない。

 ユーリはここに入ることは出来ないし――私が代わる必要とか、あるのだろうか。

 あの女の支えとなるとか、考えるだけで寒気がするのだが。

 そんなこと必要のない状況であることを願いつつ、まずは起きていることを把握するために、部屋を出ようと扉を開けて。

 

「――あっぶな!?」

 

 一歩踏み出す、その先が存在せず、慌てて戻る。

 扉の先は断崖絶壁――そんな場所に個室を宛がわれた記憶はない。

 というか……なんだこの景色。昨日まで、こんなんじゃなかったぞ。

 間違いなく、トラブルだ。リッカが意図的に振動を起こした訳ではない。

 一方で、リッカ以外が原因であるとも考えにくい。少なくともこの空間において、リッカは絶対であり、それ以外の誰かが好き勝手に崩壊させたりなどは出来ない筈だ。

 

「……ああもう。次から次へと、なんだってのよ」

 

 あの女は本当に、トラブルを起こさずにはいられないのだろうか。

 そんな悪態を胸に仕舞い込みながらも、翼を広げて今度こそ部屋を出る。

 

 見渡してみれば――なんだ、これは。

 新しい魔族を捕えたり、使い魔が増えるにつれて、リッカはこの空間を拡張していった。

 大小さまざまな鉄の部屋で構成されたそこは、使い魔や苗床となる魔族たちでどこもかしこも悍ましい様相ではあるものの、規模としてはまるで小さな町の如くといっても過言ではない状況であった。

 大きな一部屋のみであった最初の頃から、必要に応じて拡張を続けて、襲ってくるそこらの魔族から強大な魔族まで、見境なく放り込んできたリッカの復讐の証明。

 そうだ――リッカはこれまで、必要があったから拡張をしてきた。

 何処に行っても狭苦しく薄暗いこの空間の一角に、私の個室は特別に構築していた筈だ。

 

「……なに、これ」

 

 それが、一体なんの冗談なのか。

 前を見る――果ては見えない。いくつもの部屋で構成された空間の名残なんて、どこにもない。

 上を見る――低くもない天井のてっぺんまで使い魔が埋め尽くすことで余計に感じていた狭苦しさと別れを告げて、銀色の空はどこまでも続く。

 下を見る――翼がなければ部屋を出ることさえ出来なかった。何百メートル続いているのか分からない奈落が、真下にある。

 振り返る――私の個室は、異変から守られたように健在。個室だけが、健在だった。最早、単に空間とも言えないその場所で、個室はぽつんと浮いていた。

 

 横に広げていくだけだった今までの拡張とは違う。立体的な拡張。

 そこにあるのは、数えきれないほどの箱だ。

 大きな箱から小さな箱まで、そこら中に乱雑に積み上がり、くっ付いて、見たこともない不気味な地形を形作っている。

 そして、その地形から離れた場所に、ぽつぽつと箱が浮いていた。

 黒地に銀色の奇妙な模様が刻まれた、四角い箱。恐る恐る近場にあった一つに近寄ってみれば、おかしなことにその内が透けて見えてきた。

 

 ――――ぉ、ぁ……ぁあ……っ。

 ――――ヒ……ひへ、ヒヒ……。

 ――――うぁ……こ、ろして……!

 

 蠢く触手に呑まれ、鳴き声なのか懇願なのか分からない呻きを上げる何人かの苗床。

 箱の大きさは以前の小部屋と大差がないものの、他の部屋と繋がっておらず、完全に密閉されていることから、客観的に見ても前より遥かに狭く感じる。

 苗床の魔族たちは、見覚えがある。ムルゼ霊山に向かう最中、に退治したやつだ。

 やはりここは、リッカの内にある空間で間違いないようだが……一体どういう趣向の変化なのか。

 

「……」

 

 監獄の類ではなく、足場として想定されているのだろう、適当な箱の上に降り立つ。

 箱の中に哀れな被害者はいないようだが――スライムの“住処”であるようで、内には液体が滴っているのを見て、軽く鳥肌が立つ。

 詰み上がっている小さな箱にも、よく見れば数匹の虫が収まっており、それぞれに与えられた“巣”であることが窺えた。

 実体は変わらないまでも……より管理が徹底されたイメージがあるな。

 今までのこの空間は、どちらかといえば使い魔たちに任せており、リッカ本人が何かすることは殆どなかったのだが。

 

 ……再び振動。

 流れてくる魔力は、あの女のものだ。

 それを伝うように歩き始める。時折空間に罅が入っては修復され、使い魔が零れ落ちている。やはり、かなり不安定なようだ。

 考えなしに広げたとあれば、あの女らしくない……そう思いながら歩き、やがて箱の陰になっている場所に、リッカと、新参者の姿があった。

 

「――見事じゃないか。寂しい刑務所が、たちまち監獄の領域に昇華された」

「……」

 

 衣服も健在であれば、凌辱を受けた様子もないその女。

 耳は尖っているが人間だ。先日、リッカが受け入れたという、人間だ。

 私は魔剣越しに見ただけだが、まさか本当に招いているとは。

 

「……その新入りに何かさせたワケ?」

「……ラフィーナ」

「む……? 魔族か。それも……淫魔だな。自由を許されている辺り、この領域における例外。お前の協力者か」

 

 向いた視線から、ひりつくような憎悪が伝わってくる。

 常日頃からリッカのそれと一緒にある以上、さして動揺もしないが……彼女以外にこれだけのものを抱ける人間がいるのか。

 

「……この女に、何かさせた訳じゃない。ラフィーナみたいな権限もない。ただ、ここを自由に動けるだけ」

「それだけでも破格だと思うけど。……それじゃ、これは一体何事?」

「……」

「彼女は自覚しただけさ。自分の力の使い方を」

 

 不敵に笑いながら、新入りは手頃な箱の上に座る。

 私が言えた話じゃないが、よく座れるな。その中、触手が蠢いているぞ。

 

「……自分の力?」

「使えるものを使わないのは愚かだ。持って生まれた異質は、自覚さえすれば刃になる」

「これがこいつの力だってのは分かるわ。けど、あんたが一体なにを唆したら、こいつがそれを自覚するってのよ。こいつのことを、あんたがどこまで知っているっていうの?」

「深奥まで知り得た訳ではない。ただ、私と彼女には共通点がある。私が己に感じた異質を、詳しく彼女に伝えた――それだけだよ」

「共通点……?」

「復讐。憎悪。そして――生まれた時から内に宿す、混沌のかけら、その根源」

 

 喉を鳴らすように笑いながら、新入りは自分の胸を抑え込む。

 リッカの混沌なんて、前からお馴染みだ。それに注目したことなんて――すっかり慣れてしまってからは、なかった。

 その根源が何処にあるか。

 ……リッカが取り込んだ、あの怪物だ。

 これだけ冥界に関わることがなければ、おとぎ話であった存在。遥か昔、分かたれた八つの内の一つ。

 

 千年前のネシュアの滅び。その際に、封じられたバルハラから飛び散った、その破片。

 ……リッカの誕生に、その破片が関わったというのは……話に聞いた。

 彼女自身は大して気にしていなかったようだが、その世界を変えんとする力の一端となっていることは、多分間違いない。

 そんな異質の具現を……この新入りが?

 

幼獣の星(ネガポラリス)――私がしたのは、この名を伝えただけさ。私は使命を、魔族を憎んだ果てに、己に溶け込んだ名を自覚し、私は変じた」

 

 ……『勇蝕写本』。人が魔族に変じた、聖都最大の事件。

 その魔族の元となる勇者がこの人間だったようだが、それが真相か。

 あの怪物の破片がどこまで心身を変質させるのかなんて想像もつかない。だが、少なくともただの勇者を、巨大なローパーに変えるほどのものではあるらしい。

 

「その根源が何者か、など私は興味がない。だが、こうしてお前の内に在ればこそ、如実に分かる。私のそれと共振する、お前の存在――お前は根源に至りつつある」

 

 ――では、それと同じところにリッカが近付いているとして。

 

「……リッカ」

「……何?」

 

 名前を口に出してみると、今でも抵抗がある。

 それでも、釘を刺しておくべきだと感じた。もう既に私は、こいつらと手を切れない関係なのだから。

 

「あんたがその人間に唆されて、どう動くつもりかは知らない。けど、そいつの成れの果てみたいになるのはやめなさい。ユーリのためにならないわ」

「っ……分かってる。別に、そんな風になるつもりはない」

「そう。ならいいわ。身の程は弁えておくべきよ。どれだけ変人でも、人間であるのなら」

 

 相変わらず……何を考えているか分からない。

 けれど、ユーリの名前を出せば、この女は短慮には動かない。

 “化け物”であるのは、内側だけであるべきだ。外見までそうなるなんて、私だって求めちゃいない。

 

「……それよりも。頼みたいことがある。ラフィーナ、それにあなたにも」

「……何よ」

「聞こうじゃないか。お前は私に、何を命じる?」

 

 リッカの今にも死にそうな瞳には、それでも信念がある。

 その選択が何かへと繋がると、強く確信した目だ。

 それならば……破滅へと向かわないためにも、付き合ってやらないこともない。

 腐れ縁だ。今更、多少のことなら渋らないとも。




【リッカ】
大小さまざまな箱は、監獄であり巣。
好き放題に積み上がり、飛び回るその空間は、それまでのものとはまるで違う。
指先が、その深奥に触れた気がした。

【ポラリス】
自身の深奥を告げるだけでここまでリッカが力を広げられるのは想定外だった。
うれしい誤算だ。あと一歩、その勇気さえあれば、世界は変わるだろう。

【ラフィーナ】
最近空間内における権限の行使に慣れてきて複雑に思っている。
こんな空間任せられても困るっつの。

【バルハラ】
空間の最下層で「この状況で出て行ったらめっちゃ面白いよね」とか考えている。
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