凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法   作:けっぺん

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最強を目指して

 

 

「じゃあ、始めよう」

「はい! いつでもどうぞ!」

 

 向かい合うクイールに合図を出してから、リッカに視線を向ける。

 聖都に戻ってきてから何度か行っている外装の試験。

 今日もその相手を頼んだところ、クイールは快く頷いてくれた。

 

 リッカが作る、“最強”の外装。その内、組み込もうとしているいくつかの機能の細かい調整。

 それにはやはり相手がいた方が分かりやすいと、この数日リッカはクイールやナディアに積極的に協力を要請していた。

 そして、試験にも、装備者である僕がいた方が良いものと、リッカが単独で出力を試したいものがある。

 今回は前者――外装を纏ったクイールに受け身に立ってもらう形式だ。

 

「よしっ……」

 

 クイールは聖剣を構え、万全の状態。

 本気でなければ意味がない。クイールの構えを切り崩す気概で、魔法を実行したリッカを受け入れる。

 銀色の魔力と、僕自身の魔力が弾け合い、体が見る見るうちに重くなっていく。

 

「っ――」

 

 外装として、形にはならない。けれど、それと同じように力が漲り、不自由な体の中を暴れ回る。

 早く解放しろ、敵を倒すために――そんな風に蠢く力を自在に操ることが、この力を預かる僕に求められているのだ。

 魔剣を手にして、クイールへと駆け出すために、一歩を強く踏み出す。

 

 ――次の瞬間の加速には、外装での戦いに慣れていなければ到底対応できなかっただろう。

 咄嗟に振り上げた魔剣を、クイールの聖剣が受け止める。

 押し切れない、と判断し剣を弾き、再度地面を蹴ってクイールの背後に回る。

 それを一息で出来る立ち回りが、外装を纏っていない状態で行える。まるで自分の体ではないような違和感を振り切って、こちらの動きに対応するクイールと剣を交わし合う。

 腕を動かすことすら難しいその重さも、そうあるものだと意識すれば問題は少ない。

 一歩が十歩にもなり得るこの力は、果たしてリッカの望む域に達しているか。

 そうでないならば、僕がそのポテンシャルを引き出して、至ることが出来るように。

 

「やりますね、二人とも――!」

 

 僕が生身であることから、クイールは多少なり加減をしてくれている。

 それでも、外装を纏うクイールと渡り合えている――それで満足する訳にはいかない。

 これの完成形は、僕たちの集大成になる。ただ単純に、それまでとは違ったことが出来るだけでは駄目なのだ。

 こうして戦う中で、機能の粗を見つけ出す。リッカの目的はそこにある。

 ならば、より力を込めて魔剣を振るい、限界に至ろうと歯を食いしばる。

 下手を打てば命を奪ってくる相手であると仮定し、それを必ず凌駕しようと――

 

「くっ……!?」

 

 剣を弾き、後退したクイールに向けて更なる一歩を踏み出した直後だった。

 力が抜けて、リッカと分かれる。銀色の魔力が集まりリッカのかたちを作り出すも、違う方向に投げ出された。

 重かった体が一気に軽くなり、そのまま浮かび上がってしまうのではと錯覚するほどに、体に制御が利かず。

 

「わ、っわわ……!?」

 

 思うように動かない体をクイールに受け止められる。

 投げ出されたリッカに目を向ければ、いつの間にかやってきていたナディアが同じように抱き留めていた。

 

「あっぶな……ナイスです、ナディアちゃん!」

「備えていて正解でした。リッカ、何ともないですね?」

「ん……大丈夫」

 

 あらかじめ、状況を見ていてくれたらしい。

 呆れ顔のナディアは咄嗟に駆けつけてくれたようで、腕と足のみを覆うように外装を纏っていた。

 

「ユーリくんも、大丈夫ですか?」

「うん――ありがとう、クイール。助かったよ」

 

 あのまま投げ出されていては、受け身を取ることも難しかっただろう。

 立ってみれば、異様な倦怠感が襲い掛かってくる。

 先ほどまで可能としていた動きの反動か。普段の戦いの数倍の疲労に感じられた。

 

「これまでより長時間、維持されてはいましたが……負荷が強すぎますね。単一の機能でこれでは、他の機能と組み合わせるにも無理が出るのでは?」

 

 リッカが組んでいる魔法の実態を、僕は知り得ない。

 構築者であるリッカを除いて、この場で最もその構造を把握できるのはナディアだ。

 ナディアが分析した感想を端的に告げれば、リッカは複雑な表情で頷く。

 

「分かってる……今のままじゃ、外装として構築することが出来ない。私の体を変換するにも、ユーリに纏わせるにも、限界がある」

「……その手段が、意味あるものだとは分かっていますが――同じ戦い方を続ける以上、その限界とは向き合い続けなければなりませんよ」

 

 リッカが自身の肉体を変換し、外装とする。

 それは、これまでずっと続けてきた、僕たちの戦法だ。

 けれどその変換の中でリッカの肉体という限界が存在し、纏う僕の方にも、僕の肉体という限界がある。

 どれだけ高度で、強大な魔法を紡ぎ上げたところで、その限界が負荷に耐えることが出来なければ実用には適さない。

 

「……はっきり言って、今ある外装が限界。これ以上の外装を構築するのは現実的じゃない。それでも……やらなきゃいけない」

「そこまで、ですか? わたくしは……今の二人の力が劣っているとは思えません。何をもって、不足と感じているのですか?」

 

 ナディアの疑問に、少しの間リッカは黙り込む。

 自分も戦う力を得られた以上、もっと頼り、そして気を楽にしてほしい。

 その気遣いを、リッカもまた理解している。しかし――だからこそ、リッカは足を止めたくないのだ。

 

「……これで十分だって、思いたくない。中途半端な気持ちで足を掬われて、取り返しがつかない事態になるなんて、もう嫌だから。魔王に向けて、出来る限りの――ううん、出来る以上のことをしたい」

 

 リッカにとって、次はない。これが最後の機会だと、リッカが一番分かっている。

 ここまできっと、幾つもの油断があったのだろう。その度にリッカがどれほど後悔をしてきたか。

 だからこそ、リッカは次の外装にベストを尽くしたいのだ。

 リッカが至ることが出来る、最高の性能を実現させることによって。

 

「……それでも、あなたたちの限界を超えてしまっては、意味がありません。わかっていますか?」

「……」

「もっと他者を――わたくしたちを、頼ってほしいです。リッカ、あなたは色々と、自分で抱えてしまうようですから」

 

 冥界での一件を機に、ナディアはリッカにより深く、歩み寄るようになった。

 それに対して、リッカはあくまで一定の距離を置こうとしているが……ナディアの意思は固い。

 

「……他者(ひと)を頼るつもりは、ある。そうじゃないと、これは完成できない」

 

 あまり話すつもりはなかったのかもしれない。

 だが、ナディアの態度に圧され、リッカは仕方なくといった様子でそう明かした。

 

「そうですか――“例の方”のように、頼れる者がいるのなら、それで構いません。ですが、無茶はしないでください。過度になれば、わたくしが止めますからね」

「ナディアちゃん、なんかお母さんみたいですね」

「もう“先祖”のレベルで過去の人間ですけどね、わたくし」

 

 クイールとナディアが軽口を言い合っている間に、下ろされたリッカのもとまで歩いていく。

 

「今日は、これ以上は無理だね」

「ん……調整は、引き続きやってみる」

「うん、お願い」

 

 構築の段階で、僕が手を出せることはない。

 精々が、こうして完成へと向かう機能の試験を手伝うくらいだ。

 だからこそ、リッカの“それ以外”を支えることくらいはしたい。

 

 ……まあ、今回は僕もへとへとだが。

 本来、あれは外装を用いて身体を強化した上で発動される魔法だから、負荷が掛かるのも当然だ。

 外装となった暁には、更に出力が引き上げられたものになるだろう。どのように体を動かせるようになるか、あの感覚は覚えて、慣れるようにしなければ。

 

「ところで、イリスは……」

「相変わらずですわ。そろそろだとは言っていましたが……」

 

 ひとまず、今日の試験の終了を宣言すれば、話題は目下のもう一つの問題に移る。

 イリスティーラによる、この屋敷の防御の強化。

 留守にしている間、ホープを守るためにもそれは必須事項で、この数日イリスティーラは碌に眠りもせずに打ち込んでいる。

 睡眠を疎かにして研究に打ち込むのは珍しくもないとクイールは言っていたが……相当の術式を用意しているようだ。

 

「僕は魔法についてはさっぱりだから任せっきりですけど……どんなことやってるんですか?」

「種族を判別した上で適した迎撃を行う機構を用意していたのは把握していますわ。少々過激とは思いましたが。後は、ホープの身の安全を確保するものが大半ですわね」

「そこは僕もお願いしてました。……留守番させないことが出来れば一番なんですけど」

「留守を任せることになっても、ここが一番安全であることは間違いないのですよ。あなたたちはあと少しだけ、身の危険に自ら飛び込まねばならないのですから」

 

 そう――もう少しだ。

 まずはナイトラクサへと向かい、それからホロゥへ。一つずつあるという魔王の力の一端である楔を破壊する。

 そして、最後にネシュアのどこかにある『ロスラウド』へ赴き、魔王を倒す。

 それで僕たちに課せられた使命は終わる。僕たちが目指す場所まで、あと少し。

 ホープをこれ以上巻き込む訳にはいかないし、危険に陥らせることも避けたい。

 屋敷に仕込む防御をより徹底するべきだという判断にはリッカも賛同し、イリスティーラに対して一つ力を貸していた。

 ある意味では、リッカが他者を頼った選択だともいえよう。……押し付けただけとも言うが。

 

「――――――――」

「あ、イリス」

 

 見た目ほど重くはない筈の屋敷の扉が、ギィと異常な重さを感じさせる音を立てて開かれた。

 心なしかここ数日でやつれたイリスティーラがふらふらと、リッカに向けて歩いてくる。

 

「……リッカくん。私はキミに礼を言いたい。この屋敷の防備、私一人では納得できる段階に仕上げるのは無理だっただろう」

「……」

「とはいえ、とはいえだ。あれの著者に文句を言う権利は私にもあると思うんだ。キミ、あれの中身を読んだかい?」

「読んでない」

「どういう訳か、屋敷の機構を隅から隅まで把握した上で、それぞれの術式に対して執拗なまでの改良案が記されている。以前のものにも増して辛辣にこき下ろしていると丸わかりな内容でね。ギリギリ人格否定に当たらない程度に配慮されているのが実に小癪だ」

「一体どんな内容なんですか……」

 

 ――そう。リッカはイリスティーラに対して、“協力者”から受け取った術式の改良案を渡した。

 以前にも手を貸してくれた、あのウサギ耳の男性である。

 数日前にリッカが彼に依頼し、それをリッカが転写した結果、辞書のような分厚さになったそれは、やはりイリスティーラにとって革新的なものであったらしい。

 だが、前回と同じく、決して性格の良い内容ではなかったようで――実のところイリスティーラがこうしてリッカに詰め寄ったのも、この数日で一度や二度ではない。

 どうどうとクイールがイリスティーラを抑える。

 イリスティーラはすっかり貫徹のテンションのようだった。

 

「待ちたまえクイール。まだリッカくんとの話は終わってない」

「イリスが一方的に文句言ってるだけじゃないですか。リッカちゃんも忙しいんですから、迷惑かけちゃ駄目です」

「第一その協力者というのは誰なんだい。まさかとは思うがキミの想像上の――」

「はいはい、戻りますよー」

 

 相当参っているようで、外装を纏ったクイールに碌な抵抗も出来ず、イリスティーラは屋敷へと戻っていく。

 ……あれは暫く休まないといけなさそうだ。

 機構が完成するよりも先にイリスティーラが倒れなければ良いのだが。

 

 

 ――屋敷の防衛機構の構築が完了したのは五日後のこと。

 それまで結局、リッカの外装は完成しなかった。




【イリスティーラ】
深夜テンション。

【ふみなぺでぃあ】
イッチに頼まれてイリス邸の防衛機構を改良した。暇な時期だったらしい。
付き合いが良いのも、改良案が妙にねちねちしていて人を腹立たせるのも、彼の性格の素の部分。
転生後は大体どの世界でも現地民の印象はツンデレで通っているとか通っていないとか。

【リッカ】
イリスの満足いくまで機構の改良させていたらいつまで経っても終わらなさそうだったので辞書に頼んだ。
思いのほか辞書の仕事が早くて新規外装はやっぱり間に合わなかった。
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