凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法   作:けっぺん

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『巨岩獣』/徹夜マラソン配信

 

 

 オレブ山道。

 山道というには整備されていない岩場は、最初の試練が待つ聖都イグディラに向かうための最大の砦と言っても良い。

 その所以は、ここを縄張りとしているという強大なオーク。

 

 巨大で力強く、さらに凶暴であるオークは、出会ったら助からないとされる危険な魔族の筆頭だ。

 嗅覚に優れ、縄張りに入った者に積極的に襲い掛かる。

 ゴブリンのような集団戦法でも、スライムのような特殊な性質でもなく、純然たる単騎の身体能力で人間の絶対的脅威となる魔族。

 その縄張りたるここを通り抜ければ、ようやく聖都の手前の町に辿り着く。

 オークとの接触というリスクを負ってでも、僕たちはこの先に進まなければならないのだ。

 

「……よし。日が変わったね」

 

 深夜。魔除けの中での休憩が終わる時が来た。

 ここを切り抜ける方法として決まったのが、この深夜帯に一気に駆け抜けること。

 オークは個体によって性質の差が激しく、昼行性か夜行性かもバラバラだという。

 そのため、対策するにもその個体がどのような生活をしているか把握するところからという厄介さがあるが、この場所のオークは周辺の町でも恐れられている存在であるためか、それなりに情報が出揃っていた。

 主となる活動時間は昼。ゆえに、命を張ってここを渡る行商人も夜に歩く。

 この個体の凶暴性からか、他の種族はすっかり臆病になっているようで、オークのみが危険となっているこの山道は夜こそ安全であるらしい。

 

 それでもオークの聴覚や嗅覚が鋭敏にこちらを捉え、接近してくる可能性はないわけではない。

 ゆえに、戦闘に入ることを前提として考える。

 実のところ、リッカが言うにはこのオークと正面きって戦い、勝つことは難しいらしい。

 リッカの魔法があってなお、負けることさえあり得る存在なのだそうだ。

 方針としては、接触しても交戦は最低限。動きを封じて、山道を駆け抜けることを優先する。

 また強くなってから挑みたいというリッカの考えには待ったを掛けたかったが――ともかく今回のところはこれで行こう。

 

「行こうか、リッカ」

「ん。生き残るよ、ユーリ」

 

 この山道は、死んでもおかしくない場所とリッカは認識している。

 決して油断は出来ない。リッカの警戒は、度が過ぎたものではないだろう。

 休憩の跡を片付け終わり、魔道具を停止させる。

 その効果が消えるまでの間に、リッカの魔法を起動する。

 

『U-リッカ――リヴィアッ!』

 

 リッカの混乱により、想定外の実行となった初使用からまた数日。

 ようやく正式に完成した『リヴィアフューリー』は防御力に優れ、移動速度でも『オズマフューリー』の上を行く。

 いま出せる最大限の速度、かつ最大限の防御。

 その二つをもって、出来る限りこの山道を素早く駆け抜ける――!

 

「っ!」

 

 スーツを巡る身体能力の強化魔法により、およそ岩場を駆けているとは思えない速度が発揮される。

 持久力も長期戦を可能と出来るほどにまで上がっているが――それでも一夜走り続けられるほどではない。

 この山道も短い道ではない以上、無駄な消耗はしていられない。

 

 リッカの先導で歩きやすい道を選び走る。

 警戒のために周囲に目を向けてみれば、地割れの裂け目がところどころに見られた。

 いちいち調べてはいられないが、かなり深そうだ。

 

「リッカ、これって……」

「知らない。けど、落ちないように気を付けて」

 

 誤って足を踏み外したりすれば下まで真っ逆さまだろう。

 ……オークの危険から逃れられる可能性もあるが、この下にリッカも想定外な別の危険があれば困る。

 作戦通り、この山道を抜けよう。

 未知には可能な限り近付かない――死なないことを最優先とするリッカの方針である。

 

 静かに、しかし急いで走るというのは思いのほか、体力を削る。

 本当にこれで気付かれていないか、もしかしてこの先で待ち受けていないかという不安と焦燥。

 だが――きっとリッカはそれ以上に怖いに違いない。

 この姿(U-リッカ)である時、リッカは僕を守ってくれているが、この状態のリッカを守るのは僕なのだ。

 これを知れば、カルラは何を言うか。

 考えるまでもない。

 

 ――女の子は男の子が守るもの。リッカに万が一があった時、リッカを守るのがユーリの役目です。

 

 ――もう一つ言うなら、体を張ったユーリも含めて守るのが魔族であるわたしの役目なんですけどね。

 

 リッカが家にこもりがちになってから、カルラが僕に言ったこと。

 冗談めいた口ぶりだったが、あれはカルラの本心だろう。

 そしてそのカルラはここにいない。つまり、適用されるのは前者のみ。

 だったら当然、命を懸けてリッカを守れと――カルラならそう言う。

 カルラの杖のように、僕もリッカを支えないと。少しでもその恐怖を拭ってあげられるように――

 

「――――――――!」

「ッ」

 

 落雷のような雄叫びが鼓膜を震わせる。

 気付かれた。そう理解する前に、自然と足が速まる。

 まだ山道を抜けるには距離がある。想定よりも、気付くのが早い。

 

「――リッカ」

「走り続けて。まだ少し距離を稼げる」

 

 動揺してはいられない。その状態でオークとぶつかれば、迎撃もままならない。

 冷静に、作戦を進める。縄張りの外に出られれば、恐らくそれ以降は追ってこない。

 十秒、二十秒と時間が経つのを、どうにも意識してしまう。

 怒りの雄叫びが上がるたびに、焦りは増す。

 やがて地鳴りのような足音が聞こえ始める。感じ取れる重さからは信じられない、このスーツで発揮できるそれにも匹敵する速度。

 そして足音は異音に変わる。まるで大岩が転がってくるような――

 

「――!?」

 

 ――転がってきている。坂の上から凄まじい勢いで、岩の如き巨体が迫ってきている。

 二メートル強はあろうかという塊が、障害となる岩を粉砕しながら真っ直ぐに僕たちに突っ込んでくる。

 

「ユーリ、回避――」

 

 リッカが言い切る前に、不可能だと悟った。

 『リヴィアフューリー』の力で全身に液体を覆い、更に前方にもそれを展開し、可能な限りの防壁を作り上げる。

 限界まで衝撃を和らげる体勢を整え、衝突に備える。

 

「ッ……っ……!?」

 

 そして直後、体中に走った鈍い痛みと共に息が詰まった。

 この姿でない状態でまともに受ければ、即死どころか体すら残らなかっただろう威力に戦慄する。

 そんな威力が受け止められれば向こうもただでは済まない筈なのに、まるで衝撃を受けていないように巨体が起き上がる。

 

 鈍色の肌の三メートル近い体躯は、正しく大岩だった。

 全身が分厚い筋肉の鎧に覆われ、猪を思わせる顔は理性が残っているかすら怪しい憤怒の表情を浮かべている。

 両の目は焦点が合っていないがそれでもこちらを認識しているらしい。

 大木のような腕が振り上げられる。次の行動を確信し、液体を操作する。

 

「――――ッ!」

「くっ……!」

 

 先の勢いほどではない。液体を集めて腕を受け止め、拘束を試みる。

 離れればこの液体は性質を失い、ただの水へと戻っていくが、それでもこれで縛り付ければある程度の時間稼ぎになる。

 前腕部がまるまる液体に沈んだオークは不快そうに大口を開け咆哮する。

 大音量を真正面からぶつけられるが、この姿であれば鼓膜を失う心配もない。

 しかし、

 

「――――――――!」

「あッ!?」

 

 液体を切り離し、その場に縫い付けようとした矢先、不意打ち気味に衝撃が襲う。

 それがオークの口から放たれた炎の塊――ブレスであると理解する。

 竜であればまだしも、オークがそんな攻撃を使えるなどと、誰が想像できたか。

 

「……こんな攻撃――ユーリッ!」

「え……」

 

 拘束の後、すぐに離れる。ブレスに気を付けつつ、全速力で。

 そんな方針を嘲笑うように、液体を千切るように腕を引き抜いたオーク。

 ほんの僅か、それに呆けたことが命取りだった。

 

「――ユーリ、ごめ――」

 

 勢いよく薙がれた腕が、横腹に突き刺さる。

 

「っ」

 

 感じたことのない痛みだった。声は出なかった。

 自分はここまで軽かっただろうかと思うほど、呆気なく体は飛んだ。

 その数秒、意識を失わなかったことで、何も出来ないまま色々なことが把握できた。

 この姿が許容できるダメージを超え、スーツは解れていく。

 痛みで先に意識が刈り取られたのはリッカの方で、目を閉じて僕とは少し離れた場所に投げ出されたリッカは不幸にも地割れの中に転がり落ちる。

 それに手を伸ばすことも出来ず、一度地面に叩きつけられ、急速に意識が遠のいた。

 直後、再度の衝撃。最後に認識したのは、僕もまた別の裂け目に落ちていくということ。

 現実逃避か、それとも本心か。ひとまずオークの危険からは逃れたのだろうか――意識を失う瞬間、そんなことを考えた。

 

 


 

 

671:転生領域の名無しさん

スライムフォーム初お披露目回。

 

672:転生領域の名無しさん

このイッチいつも唐突に配信始まるな

 

673:転生領域の名無しさん

やっぱり大して思考力割いてなさそう。

 

674:転生領域の名無しさん

これが周回プレイヤーの精神力よ

 

675:転生領域の名無しさん

触手よりマシな見た目。

 

676:転生領域の名無しさん

水色のクリアパーツだと思えばまだ地上波でも通用する

 

677:転生領域の名無しさん

なお凌辱用のスライム

 

678:転生領域の名無しさん

勇者くんは知らない変身スーツの秘密

 

679:転生領域の名無しさん

まあ初変身は妖精たち相手にやったみたいだけどね

 

680:転生領域の名無しさん

イッチマジギレ事件

 

681:転生領域の名無しさん

未完成だったみたいだし不完全フォーム扱いよ

 

682:転生領域の名無しさん

実質初変身

 

683:転生領域の名無しさん

だけど今回戦闘目的じゃないんだよな。

 

684:転生領域の名無しさん

オークの縄張りを駆け抜ける配信

 

685:転生領域の名無しさん

地味で草

 

686:転生領域の名無しさん

これでもイッチとしては必死やぞ

 

687:転生領域の名無しさん

撮れ高は無さそう。

 

688:転生領域の名無しさん

必死に走る勇者くんが見られるなら良いや。

 

689:転生領域の名無しさん

この姿で走っているだけで面白いわ

 

690:転生領域の名無しさん

エンディングで走るアニメは名作

 

691:転生領域の名無しさん

これエンディングだったんか

 

692:転生領域の名無しさん

変身のスペックを贅沢に使った全力ダッシュ。

 

693:転生領域の名無しさん

あたかも戦場に向かっているかのような

 

694:転生領域の名無しさん

この先オークとエンカウントするのだとしたら合ってる。

 

695:転生領域の名無しさん

結構速度出るね

 

696:転生領域の名無しさん

百メートル数秒で駆け抜ける輩が跳梁跋扈しているのが変身ヒーローだからな

 

697:転生領域の名無しさん

転生者目線だと凄さがブレる

 

698:転生領域の名無しさん

気軽に音速超える世界観じゃなさそうで安心したわ

 

699:転生領域の名無しさん

インフレ極まる世界だと強くなるのも馬鹿らしくなるよな

 

700:転生領域の名無しさん

インフレ世界の敵って絶対俺らに強さ合わせてきてるからな

 

701:転生領域の名無しさん

世界最強になった一週間後に宇宙から敵が来るやつ

 

702:転生領域の名無しさん

銀河投げつけてくるのやめろ

 

703:転生領域の名無しさん

宇宙規模の戦いになったことはないですね……。

 

704:転生領域の名無しさん

そういう見方をすると強さの基準としてはまともそうなイッチの世界

 

705:転生領域の名無しさん

凌辱エロゲでそっちのパワーインフレ進んでも困るやろ

 

706:転生領域の名無しさん

いやエロゲ世界とかその辺のゲームよりインフレするぞ

 

707:転生領域の名無しさん

イッチが挫けそうだからやめてあげて

 

708:転生領域の名無しさん

インフレは凌辱方面だけで結構です。

 

709:転生領域の名無しさん

まだ推定中盤までしか知らないからどの程度終盤でヤベーのが出てくるかも不明だからな

 

710:転生領域の名無しさん

全員に敗北エロイベ用意されてるんですか!?

 

711:転生領域の名無しさん

そうだよ。

 

712:転生領域の名無しさん

知らないけど多分そうなんだろうなって気はする

 

713:転生領域の名無しさん

そうじゃなきゃわざわざイッチと勇者くんっていう男女ペアで攻略する形になってないからな

 

714:転生領域の名無しさん

カルラちゃん「あの……!」

 

715:転生領域の名無しさん

パーティから外されちゃったからね、しょうがないね

 

716:転生領域の名無しさん

ちゃんと苗床にはいるから仲間の一人よ。

 

717:転生領域の名無しさん

もしかして苗床って控えとかメンバー待機所みたいな感覚?

 

718:転生領域の名無しさん

やっぱり苗床部屋に仲間を収集していくゲームじゃないか。

 

719:転生領域の名無しさん

終盤には賑やかになってそうですね!

 

720:転生領域の名無しさん

結構なペースで壊れていきそうだしそこまで騒がしくもならなさそう。

 

721:転生領域の名無しさん

壊れても使えればOKよ

 

722:転生領域の名無しさん

うーん転生者

 

723:転生領域の名無しさん

一緒にしないでほしい

 

724:転生領域の名無しさん

このスレに居ついている時点で同類だゾ

 

725:転生領域の名無しさん

お?

 

726:転生領域の名無しさん

きたわね。

 

727:転生領域の名無しさん

意外と早いな

 

728:転生領域の名無しさん

変身したのがフラグだったんよ

 

729:転生領域の名無しさん

変身しなければ多分選択肢すらなく死ぬぞ

 

730:転生領域の名無しさん

勇者くん単体で戦闘力なさそうだもんなぁ

 

731:転生領域の名無しさん

やっぱりその辺危ういよな

 

732:転生領域の名無しさん

イッチのそこの方針は未だに理解できん

 

733:転生領域の名無しさん

勇者くんを依存させたいだけ説

 

734:転生領域の名無しさん

イッチは病んでいた……?

 

735:転生領域の名無しさん

病んではいるだろ。

 

736:転生領域の名無しさん

ガチ病みは生々しいのでNG

 

737:転生領域の名無しさん

このスレで生々しさにいちいち引くな、死ぬぞ

 

738:転生領域の名無しさん

イッチが?

 

739:転生領域の名無しさん

何あれは

 

740:転生領域の名無しさん

最近の世界のオークって転がって突っ込んでくるのか、凄いな

 

741:転生領域の名無しさん

無傷で済む辺りあのフォームもぼちぼちおかしい

 

742:転生領域の名無しさん

信頼できる防御力じゃないの

 

743:転生領域の名無しさん

あっ

 

744:転生領域の名無しさん

最近の世界のオークってブレス吐くのか、凄いな

 

745:転生領域の名無しさん

これ大丈夫?

 

746:転生領域の名無しさん

死んだかな

 

747:転生領域の名無しさん

まともに喰らったぞ

 

748:転生領域の名無しさん

切れたな

 

749:転生領域の名無しさん

配信終わったけど

 

750:転生領域の名無しさん

良い最終回だった。

 

751:転生領域の名無しさん

どういう状況?

 

752:転生領域の名無しさん

配信切れるのは配信者が終わらせるか意識が飛ぶか死ぬかのどれか

つまりそういうことだ

 

753:転生領域の名無しさん

誰かイッチがどうなったか分かる奴おらん?

 

754:転生領域の名無しさん

まあ次周に期待やな

 

755:転生領域の名無しさん

生きていたとしても助かりそうにないな。

 

756:転生領域の名無しさん

やっぱオークって怖いんだな……

 

757:転生領域の名無しさん

俺が知っているオークの中じゃ一番強そうだったわ

 

758:転生領域の名無しさん

イッチと勇者くんの次回作にご期待ください!

 




『U-リッカ リヴィアフューリー』
【属性】水
【攻撃力】■■
【防御力】■■■■■■■
【素早さ】■■■■■
【魔 力】■■■■
【精神力】■■■■■

【イマジナリマテリアルコーティング】
全身を包む黒いスーツ。薄く柔軟で動きを阻害しない。
想像結晶技術によって構築された架空物質により並の装備と比較にならない防御力を持つ。
各種状態異常への耐性も持つ。

【ブレイブリィブラッド】
スーツの内部に流れる強化エネルギー。
全身を循環することで装着した者に連続的な強化を行使し、万全以上の戦闘を可能とさせる。
また、状態異常回復や自動修復も行われるため、長期戦にも対応できる。
主となる魔力の属性によって色が変化する性質を持ち、血管のようにスーツに色が浮き上がる。
リヴィアフューリーの場合、色は青色となる。

【リヴィアブルリキッド】
使い魔リヴィアの性質が十分に浸透した水分を加工した特殊魔力液。
伸縮性や硬度、粘性を自在に変動させることが可能で高い応用性を誇る。

【Lリキッドコンデンサー】
頭部両側面、両腕、両足の計六部位に装着されたデバイス。
リヴィアブルリキッドを蓄える機能を持ち、状況に応じて入出力を行える。
不足分は疑似記憶空間から供給されるほか、外部から水分を入れることで短時間でリヴィアブルリキッドに変換される。
頭部のデバイスは装着者に酸素を供給し長時間の水中活動を可能とさせる効果も持つ。

【Lリキッドコントローラー】
両目の下部にある牙を模した管制装置。
装着者の思考を読み取りリヴィアブルリキッドの制御や操作を自動的に行う。
また、水中での移動の際、周囲の水分にリヴィアブルリキッドの成分を浸透させ、自身を覆うフィールドを展開することで水中での移動性を格段に向上させる。

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