凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法   作:けっぺん

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永遠にビー・ウィズ・U/シアワセに満ちた街(5)

 

 

 夜――ナイトラクサの結界が作り出した偽りのものではなく、本物の夜。

 僕たちは街を出て、ゼクセリオンの内部の部屋に僕たちは集まっていた。

 

『願いを叶える……ねぇ。アリスアドラ様が言っていたことなら、本当なんでしょうけど……それだけ聞くと、どうにも信じ難いわね』

 

 聞いた話を共有したラフィーナは、胡散臭いという感情を隠さない。

 どうやら気配を悟り、早々にアッシュとの接続を切っていたらしい。

 

「同じサキュバスからしても、信じられないことなのかい?」

『別に、私は理由もなくアリスアドラ様を妄信している訳じゃないわよ。というか、あの方は理解が及ばないからこそ、カリスマなんだから。……ともかく、どうするのよ』

 

 ラフィーナの問いは、つまるところアリスアドラの言葉に乗るかどうかということ。

 願いを叶える――彼女の言葉を借りるなら、理想の世界を創る権利。

 少なくとも、ネリネはそれを真実であると考えており、アリスアドラからそれを利用することを許された。

 ネリネの望みが何にせよ、それを実行させる訳にはいかない。

 

「……僕は、楔を使うことは考えていない。当初の予定通り、楔を壊すことを目指したい」

 

 だが、問題は皆の気持ちだ。

 魔王という目標の先で、実現させたい望み。

 それが、この街で叶えられる権利が与えられたのならば、考えが変わってしまう可能性もある。

 そんな一握りの不安を覚えつつも問うように視線を向けてみれば――あまりにも杞憂であったらしい。誰一人、迷う様子は見せていなかった。

 

「僕もですね。そもそも、途中で足を止めることは考えていませんでしたし。……ここまで来たら最後まで走り切りたいですよ。自分の望みは、その後で考えます」

「ええ――わたくしも。あなたたちがあの魔族の言葉で迷うようなことがあれば、どうしようかと思っていました。あれはネシュアの仇……ラフィーナには申し訳ないですが、許す訳にはいきません」

『別にいいわよ。私はアリスアドラ様に背くポジションにいるって自覚はあるから。それで、あんたは?』

 

 アッシュの顔がイリスティーラに向けられる。

 アリスアドラが発した、それぞれの望み――それに対して一際強い反応を示していたのがイリスティーラだ。

 一見冷静さを保っているものの、どうにも彼女が苛々しているのはすぐに分かる。

 

「……ん? ああ……私の方も問題ないよ。私は単に、あの淫魔の訳知り顔にイラついているだけだからね」

「イリス……」

「大丈夫だよ、クイール。普段の行動にも戦闘にも影響は及ぼさない。キミたちは考慮しなくてもいいことだ」

 

 イリスティーラは首を振って思考を切り替える。

 彼女がそう言うならば、追及はすまい。クイールはともかく、僕は元より、そこまで踏み込めるような立場ではないのだから。

 

『まあ、いいわ。なら、全員で乗り込むことが出来そうね。結果として、多分ネリネ様との衝突は避けられないわ。それに……少なくない確率で、アリスアドラ様とも戦うことになる』

「……」

 

 ラフィーナの口にした可能性は、考えていたことだった。

 アリスアドラは、僕たちにも願いを叶える権利があると言っていたが――それを蹴る以上、彼女ともこの街で敵対することはあり得る。

 バラルバラーズに勝てたのだから他の四天王にも勝てるなどと、思い上がることは出来ない。

 そして、冥界で戦った影はあくまで再現されたものだ。オリジナルであるアリスアドラは、比較にならない脅威となるだろう。

 他の魔族はともかく、四天王とは必ず、どこかで戦うことになる。その機会がこの街で訪れるのならば、逃げる訳にはいかない。

 魔王はそれ以上の存在だろう。ならば、四天王に打ち勝つことは僕たちの使命を果たす上での前提なのだ。

 

「……勝てる確信はありませんけど、戦うのなら勝ちますよ。僕たちは勇者ですから。ね、ユーリくん」

「うん。ラフィーナ、キミも手を貸してくれるとありがたいんだけど……」

『……期待はしないで。今の私が何を考えていても、あの方を前にしてそれを貫けるかなんてわからないんだから。“私無し”で戦うことを前提にしてちょうだい』

 

 僕の武器である魔剣は、ラフィーナのサポートがあって初めて、僕にとって最適な武器となる。

 ラフィーナがいるといないとでは、僕たちが発揮できる力に大きな差異が出てくる以上、力を貸してくれることを期待したいが――サキュバスにとって、アリスアドラという存在は、意識だの決心だのでなんとか出来るものでもないのだろう。

 

「ユーリの剣に変わる武器であれば、わたくしが貸与することも出来ますが……」

「ネシュアの技術で造られた奇妙な武器の数々か。強力なのは分かるが、慣れていない状態で扱うのは難しい代物ばかりじゃないか?」

「そうだね――ナイフならともかく、それ以外を渡されて使える気がしないよ」

「そうですか……どれも良い武器なのですが」

 

 正確に言うと、魔剣も形態の変化が存在する複雑な武器ではあるが、ナディアが外装を装備した上で扱う武装の数々はあまりにも僕たちの常識とはかけ離れたものだ。

 ネシュアが滅ぶ前の技術による、火力に秀でた大型武装。

 ナディア以外が扱える構造になっているのかがそもそもの問題だが……それがクリアされたとしても、まともに使いこなせるまでには時間が掛かると思う。

 

「……魔剣が使えない状況についての考えはある。これ」

「リッカの杖?」

 

 外に出ているとき、リッカが肌身離さず持っている、カルラから受け取った素材を使って作られた杖。

 リッカが外装を纏う際に変化し、魔剣のようにリッカの武器となるものだったが――あれを?

 

「ラフィーナが介在できないから、精度の補正は出来ないけど……経験共感システムを、魔剣と同調させておいた。外装の状態なら、魔剣ほどじゃなくとも使えるようになるはず」

「それって……魔剣みたく、その杖が、僕に合わせて出力を向上してくれるってこと?」

 

 リッカは静かに頷いた。

 魔剣には、僕の成長に合わせてその出力を向上してくれる機能が備わっている。

 そのため、常に僕にとって最適な武器となるとのことだったが――それと同じものを、リッカは杖に搭載したらしい。

 もちろん剣と杖では扱いが異なる。慣れている魔剣と同じように扱うことは出来ないだろうが、最大限、僕に合った武器にしてくれたということだ。

 

「助かるよ、リッカ。ありがとう」

「まあ……あくまで予備。魔剣が使えるのなら、それに越したことはないし……むしろ“両方使うこと”を想定して杖に同調させたんだけど」

「両方……? 剣と杖の二刀流ってことですか?」

「それは……可能なのですか? わたくしの場合、ヨハンナから譲り受けた経験を通して、武装を同時使用する技術は学んでいますが……勝手の違う武装を振るうのは、普通一朝一夕で出来るものではないでしょう?」

 

 違う武器を一つずつ、同時に扱う。その難しさは、実感はなくともなんとなく分かる。

 魔剣の形態切り替え以上に、扱いには気を遣うことになるだろう。

 しかし、リッカが無意味にそのような機能を追加するとも思えないが……。

 

『リッカ。あんた、そんなことさせようとしてたの? 悪いこと言わないから、やめておきなさい。ユーリには度々言っているけど、あの剣は片手で使うようなものじゃないの』

「分かってるけど……選択肢の一つに含められるくらいには、仕上げておきたかった。それに、杖の方の“独立”も考えていない訳じゃない。戦いの幅は、広げられるだけ広げておきたい」

『使いこなせない手札なんて、邪魔なだけよ、まったく……。少なくとも、今回はそんな選択に手を出す機会じゃないわね。私が使い物にならないんだから。それであんたが本番で血迷うことがなくなったのは不幸中の幸いよ』

 

 ……なんだかんだと、魔族との戦いのぶっつけ本番で試すことになった戦い方は多い。

 これまでにリッカが構築した外装の殆ど、そして他でもない魔剣も、慣らす暇もなく命の危険と隣り合わせで初めて手に取ったものだった。

 ラフィーナは慎重な性格だし、“魔剣を片手で使わないこと”も重ねて注意を受けてきた。

 リッカが想定していた、杖の使い方も――渋るのは当然というものだろう。

 

『ともかく。その杖を使わせたいなら、多少は慣らしておきなさい』

「わかった……明日、か」

 

 あの杖は、魔剣と同じように様々な状況で性質を変えて使い分けられるものであった筈だ。

 魔法を出力する、杖本来の使い方だけでなく、リッカは杖先から魔力の刃を放出して、鎌のようにして使っていた。

 同じ近接武器でも、剣と鎌では大いに立ち回りが異なるだろうし、外装以外の魔法を使った戦い方も慣れてはいない。

 ナイトラクサに再び入る前に、少しリッカに借りて使ってみた方が良いかもしれない。

 ラフィーナに頼れない戦い――少なからず、不安はある。

 しかし、元々ラフィーナは僕たちの勝手に付き合ってくれているだけだ。無理をさせる訳にもいかない。

 

 可能ならば、リッカの言う通り、杖を魔剣が使えない時の予備ではなく、もう一つの武器として選択肢に含められるほどに練度を高めておきたい。

 明日、明後日で出来るようなことではないが、これからの戦いで重要になってくるだろう。

 ラフィーナの言うように、使いこなせないままの手札にしておくつもりはない。

 リッカが外装の構築をはじめとして、出来る限りのことをしてくれている以上――それを十全に使いこなせるようになるのは、僕の役目なのだ。

 

「そうだね、本番は明日の夜だ。ユーリくんの武器をどうするかは、明日考えよう。今日はしっかりと休んで、備えようじゃないか。私も今夜は――」

 

 ともかく、明日の戦いで楔を壊すことが出来なければ、リッカの想定する形さえ実現しなくなってしまう。

 いま考えるべきは、明日のことだ。

 ひとまず話し合いを締め括ろうとしたイリスティーラは、なんとなしにゼクセリオンの窓から外に目を向ける――

 

「……? どうかした?」

「……何故、ナイトラクサから人が出てきている?」

 

 怪訝そうに外を見るイリスティーラ。

 ここはナイトラクサから少し離れた場所で、ゼクセリオンは結界機能を使用して不可視の状態となっている。

 いくつか、サキュバスたちの住む建物があった、ナイトラクサの入り口はここからでも見える。

 外は暗がり、加えてこの室内の明るさで、目を凝らさないと様子ははっきりと分からない。

 だが、建物から零れる明かりに照らされて――確かに見えてきた。

 

 まばらに、慌てた様子でナイトラクサから出てくる人影。

 一人二人というのであれば、都合が悪くなったゆえの夜逃げということも考えられるだろう。

 だが、かれらに“こっそりと逃げる”ような慎重さは見られず、遠目にも逃げるに必死であることが窺えた。

 

 そしてその上を、弄ぶように飛び回る、翼を広げた魔族たち――。

 

「……流石にこの街でも、あれを普通だと思いたくないね。どうする?」

「――行こう。少なくとも、事情を知らないと、見過ごせるような状況には見えない」

「ですね……ナディアちゃん、夜更かしとか大丈夫ですか?」

「クイール。前も言いましたが元々わたくしに睡眠は不要です。それに、あれを見てのんびり眠るなど、今のわたくしが許せる筈もないでしょう?」

 

 リッカもすぐさま杖を手に立ち上がる。

 この状況で、誰一人見過ごすつもりはないということなど、リッカも分かり切っていた。

 僕たちもまた、それぞれの準備を整えて、ゼクセリオンを飛び出す。

 

 ――アリスアドラの宣言よりも一日早いその日。

 僕にとって、それまでの生涯で最も長い一夜は幕を開けた。

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