凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法   作:けっぺん

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永遠にビー・ウィズ・U/今、終点の先で(16)

 

 

 リッカが外装を形成する際にも利用していた、想像結晶技術。

 それは、リッカが有する魔法があるからこそ効果を発揮するもので、それ以上、何かに使える技術ではない筈だった。

 僕も名前を聞いたことがあるだけで、戦い以外に利用できるとは思っていなかった。

 けれどその気付きを信じるならば、皆から受け取る属性の結晶こそが、希望につながる。

 

「ク、ク……根拠もなくそのような技術に縋るか。届かぬ星を見る者はこれだから。はじめから私たちに理解させる気もないのだから始末に負えん」

 

 積まれた箱の裏から顔を出したポラリス。

 辺りにいる魔族たちに嫌悪の視線を向けつつも、彼女は片手をこちらに差し出してくる。

 

「人間……? なんでこんなところに人間がいるわけ?」

「黙れ魔族。貴様と言葉を交わしに来たわけではない」

「は? 何あんた――」

「――魔族どもと手を組む姿をいつまでも見ていたくもない。ゆえに、さっさと協力者としての義理だけ果たさせてもらう」

 

 手元に輝くのは、眩く金に輝く結晶。

 僕自身も持つ、勇者としての属性だ。

 

「ついぞ私に特異性なぞ目覚めなかったが、使い物にはなるだろう。持っていけ」

 

 結晶を僕に投げ渡すと、ポラリスは足早に去っていく。

 魔族と僅かでも共にいることは我慢ならないとばかりだが、それでも彼女は手を貸してくれた。

 そしてそれを受けて、居ても立ってもいられないと、一人大きく翼を広げる。

 

「――うむ! つまるところ、我が愛がユーリの肉体となるのだな? ようやく、お前に直接我が愛を捧げるのだな!?」

「え、いや……」

「うむ、うむ! 皆まで言うな。そう想えるだけで我のやる気も満ちるというものよ。生きがいを奪ってくれるな。無償の愛に躊躇いはないが、報いがあればなお良い」

 

 僕が何を言う前に、セイレーンは納得し、いつの間にか翼で包んでいた結晶を手渡してくる。

 それが、何よりの報酬であるかのように、彼女は満面の笑みを浮かべていた。

 ……その、彼女の愛には応えられないけれど。

 自ら離れるまでの数秒、翼を振り払うこともまた、出来なかった。

 

「……馬鹿馬鹿しい。下らない。ここまで来て仲良しごっことか、やってられない。どうせやったところで、自由になれるわけでもないし」

 

 ――この場にいる誰もが、セイレーンのように納得できる筈もない。

 僕たちに背を向けて、ポラリスとは違う方向へ歩いていくルメリーシャ。

 その手から、紫が浸み込んだような結晶が零れ落ちた。

 

「……ま、いいや。あーあ、ヴァージニアも来てくんないかなぁ」

 

 ぽつりと呟いて、ルメリーシャはいなくなる。

 

「……不器用なヤツよな。ふむ、ユーリ。あれも使ってやるが良い。我のような想いは込められていないだろうが、お前の力にはなるだろう」

「……うん。分かってる。キミも、ありがとう。使わせてもらうよ」

 

 ルメリーシャに、僕たちを支援する気持ちはない。ある訳がない。僕たちは彼女の築き上げた立場を破壊した張本人なのだから。

 それでも、想像結晶を渡してくれることには、確かな意味があった。

 彼女は口にはしないし、僕もまたそれを言及することはない。

 僕にはその気持ちが伝わってきた。それだけで良かった。

 

「……いつまでくっついてるの」

「むっ、待てりっかりか。またとない機会なのだ、もう少し――ぬおおおおおおおっ!」

 

 そして、そろそろ離れてもらおうとした矢先、リッカがセイレーンを引き剥がし、どこからか生成した新たな箱の中に押し込んだ。

 断末魔を上げて退場するセイレーン。

 彼女を収容した箱を、リッカが無造作に放り投げると、それは奈落へと落ちていった。

 

「……“りっかりか”って?」

「……知らない。向こうが勝手に呼び始めただけ。魔族の思考なんて、いちいち考えていたらきりがない」

「リッカとリッカで……いや、ないか。連中が俺を認識できていた訳がない」

 

 ルメリーシャが落としていった結晶を手に取る。

 結晶化しているにも関わらず、毒が滲み出してきそうなほどの濃度のそれは、かすかに脈動している。

 扱いを誤れば、より最悪な状況を招きかねない――そんな代物だった。

 

「それなら こなたも。 それが あなたの かがやきに なるのなら」

「にゃあ……こいつ、未定義領域の生物にゃ? 何でそんなん、こんな場所にいるにゃあ……ともかく、乗り掛かった船にゃ。想像結晶が必要だってんなら、あたしからもくれてやるにゃあ」

 

 オズマと、アンニャ。本来この場にいる筈のない二人。

 二人が手渡してきたのは、土と水の結晶。

 それから――と、アンニャは一つ溜息をついて、持っていた杖を鳴らした。

 

「――いつまで隠れてるにゃ。ここまでの話は聞いていたにゃ? お前も役に立てるんだから、出てくるにゃあ」

 

 誰に言っているのだろう。ここに第三者がいるとすれば、リッカが気付くと思うが、と。

 そこでようやく感じ取ったつながりは、失われた筈のもの。

 いつの間にか彼女は、アンニャの背後に立っていた。

 

「――別に隠れていた訳じゃない。顔を出す必要性を感じていなかっただけ。勇者たちと慣れ合う気もないし」

「……ジル?」

「名前を呼ばれるほど仲良くなったつもりもないけど」

 

 彼女は、風の試練の最中に命を落としたサキュバス。

 最後の最後に、ほんの少しだけ通じ合えた、風の試練の案内人――ジル。

 

「ジル、様。どうしてここに……?」

「このスフィンクスに連れてこられた。何、この空間」

「安寧を選ばずに付いてきただけにゃ。ま……理由が理由だから、ちょっとくらいならにゃあ」

「理由って……?」

 

 アンニャが冥界まで連れて行った筈の魂。だが、ジルはそのまま眠ることをよしとしなかったらしい。

 その理由を問えば、面倒そうに頭を掻いた後、不承不承とばかりに答えてきた。

 

「――ネリネが痛い目見るまでは、死にきれないってだけ。そっちも、あいつの放埓に巻き込まれたんでしょ。どこで勇者が死のうがどうでもいいけど、それだけは腹立つ、から」

 

 ネリネ――そういえば、その名はジルからも聞いたことがあったか。

 二人の間に何があったかは分からない。だが、その苛立ち――並大抵の恨みではないのだろう。

 相応の報いがあるまでは、安心して眠れもしないと、ジルは少しの間安息を突っ撥ねたのだ。

 ジルは手元に自分の属性――風を集め、結晶にして、面白くなさそうにそれを弄ぶ。

 

「これがあればいいんでしょ。他には? ネリネを倒すのに、なにが必要なの」

「……今は、それだけで大丈夫。ありがとう、ジル」

「――そう。なら、いい。さっさと終わらせてきて。私も早く休みたいから」

 

 ……こんな形で、もう一度協力を受けることになるとは思っていなかった。

 ネリネという魔族は、よほど周囲の迷惑を省みずに、己の目的に打ち込んできたのだろう。

 どうあれ……そんな風に支援を受けて、また敗北するなど、あって良いことではない。

 

「……集まるもんだな。ユーリの人徳というか、何というか」

「仕方ない。ユーリの貢がれ体質は天性のものだから」

「人聞きが悪いんだけど」

「自覚がないなら相当ね。将来が怖いわ」

 

 必要な結晶は、あと三つ。それを補える者は、ここに集まっていた。

 あまりにもその物言いは失礼だったが……まあ、いつものことだ。

 そんな風に当たり前に言い合える日常を、僕たちは求めている。これまでも、そして、これからも。

 

「ま、いいわ。これで数は合うでしょ。早く問題解決しちゃいましょう」

 

 ラフィーナから手渡されるのは、夢の属性が込められた結晶。

 

「……私たちも」

「ああ。……いいよ、もう悪足掻きはしない。“俺”が諦めていないんだ。俺だけが足を引っ張るなんて、出来ないよな」

 

 そして、リッカたちが手元に形成したのは、冥界と時――リッカが持つ二つの特異な属性。

 本来、この設計図(レシピ)の上では、使える想像結晶は一人につき一つだけ。

 だが、リッカたちはその唯一の例外。“リッカ”と“リッカ”――二人は、一人であって二人でもあるがゆえに。

 

「ありがとう、みんな。これで創れる――リッカと共に歩む希望、その道の続きを」

 

 胸の内から魔力が零れる。鉄を錬つための炎のように、集まった結晶を溶かし、束ねていく。

 なんでもかんでもを創れるようになった訳ではない。これは、あくまでもリッカのための力。

 たった一つの、存在の方向性を見定めて、そのために必要なものを悟り、そこまでの道を創造する力。

 であれば、今必要なものは何か。考えるまでもない。リッカと再び歩むための――生きて進むための、ほんの些細なやり直しを。

 

「……どこまでも、“俺”のため、か。本当に、これだから。おい――手放すんじゃねえぞ」

「……自分に言われるまでもない。ユーリは離さない。これから先も、何があっても」

「離れないよ。歩けなくてもいい。僕が背負って連れていく。だから、諦める必要なんてないんだ」

 

 一歩も歩けないのだとしても関係ない。旅の始まり、リッカに手を引いて、村から連れ出してもらったように、僕がリッカをハッピーエンドまで連れていくだけ。

 リッカがそれほどまでに消耗してしまったならば、それは僕の役割だ。

 けれど――二人は首を横に振る。

 

「はは……その必要はないよ、ユーリ。“俺”も、分かってるだろ?」

「ん……自分の底も知らないで、勝手に限界だと思ってた。でも、違う。私の限界はまだ来ていない」

「ああ。けど、その代わりに、今まで忘れていたもの、背負っていなかったものを背負うことになる。必要のなかった重荷だ。それでも、いいんだな?」

「いい。元々は私のもの。だったら、一緒にハッピーエンドまで連れていく」

 

 そうか――今までリッカが限界だと思っていたものは、あくまでも自分の認識の範囲だった。

 だが、リッカの限界はそこではない。リッカが忘れていた自分が、今目の前にいる。

 

「……キミは、どうなるの?」

 

 その事実をリッカたちが共有していることを理解して、ふと不安になった。

 今、リッカたちが考えているそれを実行したとき、彼はどうなるのか。

 そんな不安に、彼は苦笑して――僕の頭に手を置いてくる。

 

「心配すんな。消えたりしない。あるべき状態になるだけだ。俺はずっと、“俺”の中にいる」

「……そっか。それなら……一緒に行けるね。僕たちの、ハッピーエンドまで」

「――おう。頼んだぜ、ユーリ。“俺”は臆病にしかなれない。お前の勇気が頼りだ」

「うん、任せてよ」

 

 もしかすると、兄がいれば、こんな風な触れあいがあったかもしれない。

 頭に置かれていた手が離されることに、少しだけ名残惜しさを感じた。

 それに彼は気付くことなく、リッカへと近付いた。

 

「……もう、折れるなよ」

「……そのつもり。だから、安心していい。ここまで、長い間、迷惑をかけた」

「いいんだよ。自分のことだ」

 

 リッカたちの会話は素っ気なくて、それでいて互いへの信頼に満ちていた。

 自分自身だからこそ――もう心配はいらないと、彼は笑って。

 二人は示し合わせたように、手を重ねた。

 

「辿り着けよ。“俺”とユーリの……ううん。俺たちのハッピーエンドまで」

 

 その言葉を最後に、彼はリッカの内に溶けていく。

 それは別れではない。彼の言った通り、あるべき形へと戻っただけ。

 多くを忘れる前の、この世界で当たり前に生きていた頃のリッカへと。

 彼の残滓が風のように、リッカの髪を凪ぐ。無言のままの、自分に対する激励だった。

 

「……リッカ、大丈夫?」

 

 それきり、俯いていたリッカに声をかける。

 数十秒。ようやく顔を上げたリッカは、戯けたものを見たような苦笑を浮かべていた。

 体中に広がっていた罅は嘘のように消え去っていて。

 どういうわけか、少しだけ伸びた髪には、ほんの一房――彼の黒が残されていた。

 

「……忘れていたこと、多すぎ。あんな、大したものなんて残っていないって口ぶりで。本当、天邪鬼なところは昔から変わってない、か」

「リッカ……? 何か、思い出せたの?」

「色々なことを」

 

 リッカが纏う雰囲気は変わっていた。

 元通りというわけではないけれど、いつかのリッカに近しいものに、少しだけ近付いたような。

 リッカ自身も自覚していて、それがおかしいと肩を竦める。

 

「手間を掛けさせてごめん、ユーリ。私はもう大丈夫」

「本当に……? もう、諦めたりしない?」

「ん……だって、そんなこと、もうユーリは許してくれないでしょ?」

「うん。絶対に」

 

 ――長い試練は、終わりを告げた。

 リッカはもう諦めることはない。今度こそ、ハッピーエンドまで共に歩いていくことが出来る。

 

「……一件落着、でいいのかしら? ユーリもあんたも、死なずに済むのよね?」

「目途はついた。ラフィーナも、色々とごめん」

「今更よ。さ、戻れるんなら戻るわよ。クイールたちも、あんたたちを心配してるはずだから」

 

 僕が、外に出る算段はついた。それに、リッカもこれ以上僕をここに留めることはない。

 きっとクイールたちも心配している――いや、もっと大きな事態になっているかもしれない。

 

「――リッカ」

「ん。いつでも行ける。……けど」

 

 リッカはすぐに頷くことをせず、少しの間考えこむ。

 今の自分に出来ることから、最適解を選び出している、そんな様子から。

 

「……ただ行くよりも、もう少しだけ、みんなを驚かせよう」

 

 かつてのいたずら好きな側面を、早速とばかりに見せてきた。




【オレブ】
本人が納得していないので出禁。

【バラルバラーズ】
使い物にならなくなったので出禁。

【ルメリーシャ】
本心。

【イピカ】
本当はユーリを抱き締めて接吻して交わりその子を宿したかったがそれを察したリッカにより強制退場させられた。

【ジル】
風の試練の案内者であったものの、その最中に死亡したサキュバス。
別にユーリたちに協力する気もなかったし、どこで野垂れ死のうがどうでも良かったが、ネリネの好き勝手に負けることだけは我慢ならない。

【リッカ(真)】
失っていたものと相互理解し、取り戻したことで在るべき状態となった。
元通りではない。けれど、限りなくそれに近く、かつての自分と今まで歩んできた自分、その両方が合一したもの。
ようやく、乗り越えるべきものを超え、取り戻すべきものを取り戻した終盤仕様のリッカ。
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