凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法   作:けっぺん

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『狂宴』/未来を創るトリックスター(3)

 

 

「な……ん……なん、で……」

 

 ヴァージニアがいなくなった戦場で、残されたネリネ。

 彼女が呆然と零す言葉は、徐々に不安と困惑に満ちたものになっていく。

 

「……なんで、それ、今の……こ、こなたの、星の子……どうして、キミたちが……」

 

 オズマは現在進行形で、リッカの領域で手を貸してくれている。

 あの存在のことを、すべて理解できている訳ではない。

 しかし、それがこの世界に落ちて幾年月。存在の影響を受けたものはいれど、それを先触れとして受け取れるものはいなかった。

 僕のつながりの力がその唯一の方法だとは思わないが、ともかく僕はそれを認識できて、協力を受けることが出来た。

 

 ネリネの周囲に転がる、干からびた触手の破片。

 そこにもう、オズマの意識はない。ただ、遥か外の領域の残滓であるというだけだ。

 

「ま、まだ、こなたの願いは刻み終えてない……他の誰かが理解できているはずもないのに。き、キミたちは……こなたを、こなたの星を、理解してくれたの?」

「キミが見ているものと僕が見ているものは、きっと違う。僕はその先に広がっているものに興味はない。ただ、目の前の障害を突破するために力を貸してもらった、それだけだよ」

「な……っ、なにさ、力を借りたって!? そんなやり取りができるんだったら、こなたは生まれてから何百年も独りじゃなかった! 出鱈目言うなよ、人間っ!」

 

 苛立ち混じりの叫びに、ネリネの本心を見た気がした。

 オズマの種族が奉仕する存在に近付くこと。ネリネに果たして、その資格があったかは分からない。

 しかし、それをすべての生命に共有することが望みであるのならば、止めなければならないということに変わりはない。

 世界の終わりまで、“こちら”と“あちら”が交わる必要はない。それが、ほんの僅かでも先を知った僕の結論だ。

 

「キミの心中願望には付き合えないし、他のみんなを付き合わせる気もない。――そもそも、キミはその先を知りたかったのか、独りでありたくなかったのか、どっちなの?」

「やめろ! こなたを理解できないくせに、こなたに踏み込むなよ! もうすぐすべて終わるんだ――それまで、こなたに共感してくれるのはアリスサマだけでいい!」

「なら、これ以上は言わない。けど、その楔があったら僕たちの望みが叶わない。だから、今度こそ壊させてもらう」

 

 ネリネの望みは真摯なものかもしれない。生まれてからずっと、自分のほかには見えていなかった景色を、どうにかして誰かと共有しようと、必死に努力していたのかもしれない。

 数えきれないほどの命を犠牲に、今ここで望みの実現に王手をかけている。

 それは――同じく数多の魔族を利用している僕たちが否定できることではない。

 だからこそ、お互いに言葉は無意味だ。結局のところ、ネリネとは相容れない。僕たちと彼女では、楔を奪い合うしか道はない。

 

「そんなことさせるもんか! たかだか二十年やそこらしか生きていない人間に、邪魔されて堪るかよ!」

「――そう。あなたがそれを言うのなら、私も言わせてもらう」

 

 苛立ちが憎悪に変わり、叫ぶネリネは、当然の権利であるようにリッカの地雷を踏み抜いて。

 しかしリッカは怒りを覚えることもなく、それを冷たく受け止めた。

 

「風の四天王が千年費やした理想を、私たちは叩き潰した。数百年くらい、大したことない」

「――――お前ぇぇ!」

 

 リッカの挑発に激昂するネリネは、へたりこんだまま、巨大な翼の指をこちらに向けてくる。

 その一本一本に灯る魔力。

 殺意は確かなものであったが――宿る威力は、アリスアドラやヴァージニアのそれよりも遥かに弱い。

 

「死ねよ! 死ね! 死ね死ね死ね――!」

「これは……」

 

 次々と放たれる魔弾は外装を傷つけるには及ばず、毒などの厄介な性質が含まれている訳でもない。

 はっきり言って、今の僕たちにとっての脅威となるものではなかった。

 他の、アリスアドラに見初められていないサキュバスでも、もっと強い力を持つかもしれない――それが、ネリネの正真正銘の全力だった。

 

「っ……はぁ……はぁ、くそ……ッ! なんで、効かないんだよ……! そんなのズル、だろ……!」

 

 魔弾を受け始めて十秒経ったかどうか。

 ネリネはもう息を切らしており、それ以上攻撃してくる様子はない。

 体力の限界のようだ。翼から力も抜けて、立つこともできず、どうにか腕で体を起こしているのみだった。

 

「所詮あなたは誰かを利用するだけ。あなただけじゃどう足掻いても、私たちには勝てない」

「この、人間……! っ――集合! 集合ぉ!」

 

 冷たく宣言するリッカに、ネリネはやはり、自分で仕返すことは出来ない。

 彼女が頼れるのは味方のみ。気を失っているアリスアドラ以外にも、この街にはまだ、彼女の手駒が存在している。

 ネリネが手元に出現させた魔道具を起動すると、辺りに転移する無数のサキュバスたち。

 当然、彼女たちは状況が掴めていない。

 どころか、アリスアドラが放った高濃度の淫気に侵され、あっという間に異常をきたしていく。

 

「な、なに!? 突然――!」

「これ……アリスアドラ様の淫気!? や、やば! みんな息止めて――!」

「あは……あはは――! やば……あたま、おかしくなる……っ」

「えへへ、へ……アリスアドラ、さまぁ……」

 

 ここが街の大通りであっても、狭く感じられるほどのサキュバスの群れ。

 そのすべてが顔を紅潮させ、もはや正常な判断が出来なくなっている。

 そんな状態で、戦力になどなる筈もないが――ネリネは気にすることなく魔道具を叩き壊す。

 瞬間――ぷつりと糸が切れたように、サキュバスたちの混乱が収まり、一斉にこちらを向いた。

 

『……呆れた。あれで戦力になると思っているとか、敬意を抱くのも馬鹿らしくなるわ』

「――ラフィーナ。あれ、同族だけど、いい?」

『私に聞くんじゃないわよ。あんたたちの選択なんだから、あんたたちが責任取りなさい』

 

 味方である筈のサキュバスたちを当然のように駒として使うネリネの暴挙を前にして、ラフィーナも見下げ果てた様子だった。

 ラフィーナの許可が出たならば、とリッカは僕に促してくる。

 迷うこともない。これがネリネの最後の手札だというのなら、それを潰すのは自分だと――そう望む声を、僕は感じていた。

 右の指輪――外装を纏う前から、僕の右手にはめられていた指輪に手を添える。

 自己主張する絆を呼び起こす。それは、これまでの僕たちには出来なかった、限界の先にまで手を伸ばせる可能性。

 

『グラトニーリンク! アクセプション!』

 

 目的のために手段を択ばず、多くの命を手にかけてきた。それは僕たちだって同じだ。すべてを否定はできない。

 だが、その放埓に巻き込まれて死んだ者が、とっておきの意趣返しを求めている。

 ネリネがヴァージニアを利用したように、僕たちは彼女の協力を受ける。そのための力が、今の僕たちにはあった。

 

『――――』

「え……は……?」

 

 僕たちの頭上に現れた、もう一人のサキュバスは、ネリネの呆けた声を無視して大口を開ける。

 たったそれだけだが、この戦場に起きた変化は劇的だった。

 まるでその喉の奥底が地面になってしまったかのように、サキュバスたちを魔力の粒子に変え、轟々と吸い込んでいく。

 抵抗らしい抵抗はなかった。正気を失ったサキュバスたちに、突然起きた変化へ対応する判断力は残っていない。

 

「ッ、な、なんで……!?」

 

 ごくり、という嚥下の音が、不思議なほどはっきりと聞こえた。

 楔にしがみつき、どうにか吸い込まれることを免れたネリネは、自分の秘策が崩されたこと以上に、その実行者の姿に困惑していた。

 それも当然だ。ネリネからすれば、彼女はもう顧みるべき存在とさえ判断していなかった。

 だからこそ、静かな憎しみはここでネリネに牙を剥いた。

 

『アリスアドラ様――いや、もういいか。役目を全うできなかった私じゃあ、もう一度その声を聞く権利もない』

「なんで……なんで、そんなところにいるのさ!? ジル!?」

 

 絆からその“意思”を呼び起こし、この場に仮想体を構築することによる、ほんの僅かな共闘。

 僕のつながりの力を込めて、リッカの魔法と組み合わせたこの指輪であれば、それが叶う。

 

『別に私も詳しくは知らない。けど、今この場で、強いて言うのなら――』

 

 サキュバスたちをすべて呑み尽くして消えていくジル。

 最後に彼女は、ネリネを見下ろしながら――その混乱を鼻で笑う。

 

『――――ネリネ、ざまぁ』

 

 そんな一言を残して、ジルの姿は消えた。

 協力はこれだけだと言わんばかりに、つながりもまた解れた感覚がある。

 本当に、ネリネへ仕返しをしたいということだけが心残りだったのだろう。それを果たした今、ジルは今度こそ、正しく冥界で眠りにつけたのかもしれない。

 

「は……ぇ……な、にを……今の、なに? こなたは、ジルに馬鹿にされたの? だっ……誰のおかげでアリスサマに会えたと思ってんのさ! この恩知らずっ!」

『……良かったわね、リッカ。あんたより傲慢なヤツがこの世にいて』

「別に嬉しくない」

 

 リッカとラフィーナの軽口を聞きながら、魔剣と杖を手放し、バルハラが残した大斧を手に取る。

 ネリネの混乱が恐怖に変わる。未練があるように楔に目を向けてから――その視線は気を失ったアリスアドラに移った。

 

「た……助けて、アリスサマ……っ! こんなところで、こなたの夢が……! これじゃあ、こなたが生まれてきた意味、なにも無いじゃん!?」

「――――――――」

 

 ネリネはアリスアドラに縋ろうとするも、体力はもう限界で、楔の前から動くこともできないでいる。

 アリスアドラは目を覚ます様子がない。大斧の一撃は、それほど凄まじいものだったのだ。

 戦闘と並行して、リッカが大斧をある程度解析していた。

 この武装は起動後に魔力炉から湧き出した魔力を専用のカートリッジに溜め込み、それを消費することで爆発的な威力を発揮する。

 現在溜まっている魔力は、先ほどアリスアドラに叩き込んだ際よりも多い。

 これならば、あの楔も問題なく破壊することが出来るだろう。

 

「――やるよ、リッカ」

「ん……これでやっと、この街からも離れられる」

 

 大斧を変形させる。元より幅広だった刃がさらに大きく展開され、巨大な弓に変貌する。

 齎す破壊の範囲は狭く、その分威力を集中させた“矢”を放てる形態へと。

 

『ファイナライズ! エクストラ!』

 

 カートリッジに残された魔力のすべてを注ぐ。

 暴力的な重みのあるトリガーを引いて、その魔力を光り輝く銀矢へと浸透させていく。

 ネリネはまるで庇うように、楔に抱き着く。それが、彼女にとってせめてもの抵抗だったのかもしれない。

 ――逃げるのであれば、この場で無理に追うつもりもなかった。けれどその選択をするのであれば、僕もまた、彼女を巻き込むことに躊躇いは持たない。

 どうあれ、あのネリネの願いは、壊さなければいけないものだから。

 

『――バルハライズ・ビッグバン!』

 

 放たれる銀矢が、衝撃で地面を抉り砕きながら突き進んでいく。

 それを躱す余力も、防ぐ手立ても、ネリネには残っておらず。

 この場で介入ができるとしたら――それは、ただ一人。

 

「――――あぁ、でも。それはかわいそうねぇ」

「ぇ……?」

 

 ネリネの側に立ち、その頭に手を置いたアリスアドラ。

 矢に対して何をする訳でもない。ただ、ネリネに寄り添っただけ。

 銀の輝きが強まり、二人の姿は見えなくなる。強力無比な矢は楔を跡形もなく粉砕し、吹き飛ばした。

 そうして、辺りが静寂に包まれる――その直前。

 

 

「……どう、して? なに、してんの?」

 

「だって……怖がっていたじゃない。楽しめば良いのよ。私たちは、サキュバス。それができるんだから」

 

「――――そんなこと言うために、()()()に付き合うとか。アリスサマの、ばぁか」

 

「えぇ。昔から、よく言われるわぁ」

 

 

 聞こえてきたその会話は、二人がこの場から消え去った後も、残響のように耳に届いていた。

 破壊され尽くされた大通り。そこにはもう、かつて主であったヴァンパイアも、この街で夢を実現させようとしたサキュバスも、因縁のあった火の四天王の姿もない。

 どころか、辺りには知らない命の気配さえなかった。

 外に逃げた僅かな人々。ジルが食らい尽くしたサキュバスたち。それ以外の大半は、僕たちが来る前にサキュバスたちの犠牲になった。

 なおも残っている者たちでは、すぐにナイトラクサは復興できないだろう。

 今度こそ――支配者はいなくなり、この街に終焉が訪れたのかもしれない。

 

「……終わったね」

「ん。初陣にしては上出来。もう少し手応えが欲しかったけど」

 

 リッカの冗談か本気かわからない一言と共に、外装が解かれ、クイールたちを結界のように囲んでいた領域も解除される。

 内側に破壊は及んでいない。三人とも、怪我こそ残っているが、リッカの回復魔法が効いているようだ。

 

「ユーリ! リッカ!」

「っと……!」

「――っ」

 

 “向こう”と“こちら”の境界がなくなって早々に、ナディアが駆けてきた。

 飛びついてくる彼女の安心と喜びはこれ以上ないほど突き刺さってくる。

 ずいぶんと、心配をかけてしまったようだ。

 

「良かった――よか、った……! ――いえ、良くありません! 何があったのか、全部、説明してもらいますから!」

「……ユーリ」

「諦めて、リッカ。この流れで、説明しないとかないから」

 

 涙を拭いながら一転、怒り始めたナディアの剣幕に、リッカは物怖じしていた。

 とはいえ、その追求から逃れることは出来まい。

 ナディアだけではない。クイールもイリスティーラも、聞こうとしない選択肢はないだろう。

 

「落ち着きたまえ、ナディア。……二人とも、細かいことは後でいいが――本当にキミたちは、ユーリくんと、リッカくんなんだね?」

「うん、間違いなく僕たちだよ。心配かけたみたいだね……ごめん」

「……まったく。これきりにしてほしいものだね。だろう、クイール? ――クイール?」

 

 見れば、クイールはその場にへたり込んでいた。

 リッカと顔を見合わせ、走り寄る。もしかしてまだ深い傷を負っているのではないかと。

 

「クイール、何が……」

「ぁ……いえ、違くて……嬉しいんです。ふたりが、生きてて、嬉しい、のに……なんで、だろう、力が抜けて、涙、止まらなくて……」

「……ごめん、クイール」

 

 改めて、謝罪を口にする。

 それでようやく安心感を得られたように、クイールは力なく、手を握ってきた。

 震えるその手は、クイールとは思えないほど弱々しくて。

 どれほどの絶望を抱いていたかを、痛いくらいに伝えてくるものだった。




『冥斧バルハリオン』
【概要】
自身の根源を受け入れたリッカ、狂気を手にしたユーリへの手向けとしてバルハラが送った特殊武装。
リッカについてきたバルハラの有していた名前、『絶対なる審判(マリカ)』『深苦の詩(ミク)』『自由の守り人(ヘルメス)』が持つ力の断片が組み込まれている。
主体となる力を変更することで冥斧形態の『モード:マリカ』、冥弓形態の『モード:ミク』、冥盾形態の『モード:ヘルメス』の三形態を切り替えることができる。
膨大な冥界の力を宿しているが、所有者がユーリ及びリッカに固定されているわけではなく、かれらが権限を委譲すれば誰でも使用可能。
ただし、バルハラが自主的に設定した、リッカの冥界への転送機能は、二人が使用している時にしか発動しない。

冥鏡石ノ刃(ブリュンヒルデ)
想像結晶とも異なる、魔法で解明されていない架空物質の鉱石によって形成された刃。
驚異的な硬度を誇り如何なる運用をしても傷一つつかない。

戦乱ノ巡炉(エインヘリヤル)
未曾有の威力を実現させるための増幅装置。
理解の外にあるエネルギー効率を誇り、注いだ魔力を何十倍にも増幅させる。

聖銀ノ冥域(ヴァラスキャルヴ)
エネルギーの出力を管理する制御装置。
余剰エネルギーにより武装全体を自動的に修復し、万全な状態を保つ機能も持つ。

乙女ノ禁弾(ワルキューレ)
バルハリオンの出力に一定の単位を定め、直感的に使用するための魔力カートリッジ。
『戦乱ノ巡炉』によって生成されたエネルギーを一定量ごとに圧縮し、待機状態で『聖銀ノ冥域』に収納する。
このカートリッジを起動状態にすることで、各形態の真価を発揮することが出来る。
カートリッジは最大八個まで保存され、複数を同時に使用することも可能。



『ネリネ』
【属性】火/夢
【攻撃力】■■■
【防御力】■
【素早さ】■
【魔 力】■■■■■
【精神力】

【種族】サキュバス種
魔族が人間の上位者である所以とは基本的に単純な魔力量や体のつくりの差である。
だが、サキュバスは違う。勿論強い力を持っている事は同じだが、何より彼女たちは人間の欲望を貪ることを生きがいとする生き物だからだ。
夢から生じたサキュバスは人間の心に敏感である。
相手の欲望を刺激する段階も彼女たちにとっては大変な栄養であり、一度目を付けられれば長い時間をかけて精気を吸い取られていくだろう。
また、サキュバスは精神体に近い存在ながら肉体が非常に丈夫なことでも知られており、過度な負荷にも耐えられる。
物理攻撃が効きにくい性質も相まって、真正面から打ち倒すのは困難をきわめる魔族だ。

【『狂障』ネリネ】
ネリネという魔族は、生まれたその瞬間から、サキュバスとして――否、この世界に在るべき生命として破綻していた。
その瞳に星の先触れ――Nの向こうに在る存在の輝きを宿し、他者には見えない何かが見えていた。
幼い彼女は当然、誰もが同じ景色を見えているものと思ったが、この世界に存在しない概念を理解できる者など、いる筈がなかった。
自分だけにしか見えていない光景でも構わない、仕方ないのだと、その異常性を“後ろ向き”に受け入れていれば、この後に積み上げられる屍などなかっただろう。

ネリネは、自分の視界が異常であるのならば、それを正常にしたいと考えた。
引力のような誘惑の導くままに、星の子を見つけ出した。自分と同じ異質からなる存在は、彼女にとっての拠り所となった。
十歳にも満たぬ、運命の出会い。サキュバスとしては赤子も同然である頃に、星の落ちた地へと独り赴いたのだ。

それからネリネの生は、狂ったものへと変わった。
誰にも理解されないならば、理解できるようにすればいい。すべてが自分と同じようになればいい。
そうすれば、皆とこの素晴らしい光景を共有できる。皆にとっても、それは幸せな筈だ。
正常を知らないネリネにとって、“前向き”に、誰もの幸せを思う――それは善意でもあり、必死な願いでもあった。

この世界のすべてに、“こなた”を理解してもらう。その願いのために、あらゆるものに手を出した。
すべてを“こなた”とするために、他の生命を“こなた”に近付ける実験に明け暮れた。
後に、同じアリスアドラの側近となるミツカイ――ジルもその犠牲者である。
ジルに呑ませたのは、己の心臓。それほどまでに、ネリネはミツカイの性質に期待をかけていたのだ。
それ以降、ネリネは簡素な模造心臓によって生きてきた。
サキュバスが生きるのにはその機能はあまりにも不足しており、まともに行動することは出来なくなり。それでも構わないと、ネリネは導きのままに進み続けた。

――ネリネの先天性の異常は、先触れが中途半端に開花したもの。
それは、自身を“こなた”の存在と認識し、Nの生命体『オズマ』と出会うまで至ったものの――それとコミュニケーションを取るまでは出来なかった。
自分だけが理解していると信じていた、星に満ちた世界。
最後まで、誰かと共有するための前提が不足していると気付かなかったことは、壊れ切った彼女にとって唯一の救いだったのかもしれない。

【ラフィーナの評価】
「性への衝動も初めからなかったんでしょうね。アリスアドラ様に気に入られるはずだわ」

【アリスアドラの評価】
「放埓に振る舞って、望みに近付いていると信じること。それが、あの子が孤独を忘れるたった一つの手段だったのよね。あの子の世界に一度とて寄り添ってあげられなかったのは、心残りだわぁ」



『アリスアドラ』
【属性】火/夢
【攻撃力】■■■■■■■■
【防御力】■■■■■■■■■■■■
【素早さ】■■■■■■■■■■■
【魔 力】■■■■■■■■■■
【精神力】■■■■■■■■■■

【種族】サキュバス種
魔族が人間の上位者である所以とは基本的に単純な魔力量や体のつくりの差である。
だが、サキュバスは違う。勿論強い力を持っている事は同じだが、何より彼女たちは人間の欲望を貪ることを生きがいとする生き物だからだ。
夢から生じたサキュバスは人間の心に敏感である。
相手の欲望を刺激する段階も彼女たちにとっては大変な栄養であり、一度目を付けられれば長い時間をかけて精気を吸い取られていくだろう。
また、サキュバスは精神体に近い存在ながら肉体が非常に丈夫なことでも知られており、過度な負荷にも耐えられる。
物理攻撃が効きにくい性質も相まって、真正面から打ち倒すのは困難をきわめる魔族だ。

【『狂宴』アリスアドラ】
要求された『狂宴』に関する記録の読み込み中にエラーが発生しました。
検索結果は、1件です。■■との会話を再生します。

――『狂宴』たるアリスアドラ。世界の結論、完成の果てに、何を望むか。

――知っているでしょう? “私”に望む世界なんてないわぁ。誰かの宿願が叶った世界……見初めた誰かが、それを叶えられなかったのなら、その時は……。

【ユーリの評価】
「色々と、前に進むことになったきっかけだけど……あの性質は、最後まで理解できなかった」

【リッカの評価】
「共感、か……ふざけてる。私に共感してくれるのは、私が信じた相手だけでいい。あいつは違う」

【ラフィーナの評価】
「私が何よりも尊敬するお方。ほんの少し前までは、いつかあの方の力になりたいって思ってた。……まさか、こんなことになるなんてね。今更後悔とかは、しないけどさ」

【リーテリヴィアの評価】
「あの自由さは、程々にしてほしいと何度思ったか。彼女は言うなれば近付くものを侵す病巣だ。我々エルフとサキュバスの折り合いが悪いことは承知しているが、感情を抜きにしても聊か目に余る。今後は悪影響を受けるエルフが減れば良いのだが」

【バラルバラーズの評価】
「バルハラの行いなど理解するものでもないが、最たる奇行はあの小娘を産み落としたことよ。愚物どもはあれの本質を分かっておらぬ。今のこの世界の在り方は、あの小娘が振り撒いた災厄の末路……リトラのせがれも、ディアネシュアの小僧も、あれが狂わせたのだろうに」

【オドマオズマの評価】
「これも……思惑通りなのか。いや、彼女に思惑などない。彼女の行動はすべて、共感からくる衝動だ。では……彼女は、本当に、配下に寄り添うためだけに死んだのか?」
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