凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法   作:けっぺん

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アリスの不思議な町(1)

 

 

 ホロゥにほど近い森で、ゼクセリオンを停止させる。

 あの地帯には鍵がないと入ることが出来ず、入ったら入ったで、魔道具の出力が制限されたはずだ。

 魔力障壁によって、外から中を覗くことも不可能な以上、何が待ち受けていてもおかしくない。

 この辺りから歩いていき、万全の体制で臨んだ方が良いだろうという判断からだった。

 

「あの柱の向こうが、ホロゥなんですよね。確か、広い砂漠のようになってるって」

「うん。障壁で中の様子は分からないけど、あの先は満足に歩くことも難しい場所だ」

 

 あの時に使った鍵は、まだリッカが持っている。

 だから、フェダルナの人を使うという――“正しい”入場方法も、使う必要はない。

 

「さて、何が待っているやら……行くよ、四人とも」

 

 慎重に、ホロゥを囲む柱へと近付いていく。

 フェダルナの近くにある一本の柱。前回も、あの場所から入っていったと記憶しているが……。

 

「……あれ? リッカ……ここだったよね?」

「ん――鍵穴が塞がれてる」

 

 以前来た時に、鍵穴が開いていた場所は、まるで最初から鍵穴などなかったかのように塞がれていた。

 当然、持っていた鍵も使えない。それどころか、これでは他の魔族たちも入ることが出来ない。

 

「――どういうことでしょう? 既にここに入る必要もなくなったとか? 楔がここから持ち出されたとか……」

「だとすれば、そもそもこの魔力障壁を維持している理由がありません。恐らくは、入口を移したのでしょう」

「中への転移は……無理か。そんな簡単な対策、してない訳がない。それなら、障壁そのものへのクラッキングは――」

 

 ……そうなると、少し困ったことになる。そもそもホロゥに入る手段から探し直しとは。

 障壁や柱を解析するリッカ。しかし良い結果は得られなかったようで、暫く柱を杖で叩いた後、お手上げだと肩を竦める。

 しかし、障壁の解除はできずとも、リッカは一つの道筋を見つけ出した。

 

「別の入口を探すしかなさそう。多分、どこかから内側に直接転移するためのポータルがある」

「ふむ。ひとまずそれに頼ってみるしかなさそうだね。そんなものがありそうな場所というと――まあ、手掛かりとなりそうなのは、あの村かな」

 

 イリスティーラが目を向けたのはフェダルナ。あまり厄介になるつもりもなかったが、そうもいかないか。

 確かに、そもそもこの付近に、リッカのいうポータルがあるという保障もない。

 なんの手掛かりもなく探し回るよりは、これまでホロゥに関わってきたかれらに話を聞いた方が良いだろう。

 

「よし、行ってみようか」

 

 前に訪れた時、かれらは自分たちの事情についても簡単にだが話してくれた。

 外から来た者と一切関わろうとしない訳ではなく、知っていれば教えてくれるかもしれない。

 ――そして、それよりも気になってしまうのは、あの村が魔族にとって都合の良い、“牧場”だという話。

 今回はあまり関わらない方が良いと思っていた理由だったのだが――もしもかれらが、そんな立場からの解放を求めているのならば。

 

「……あらかじめ言っておくが、あまり変な気は起こさない方がいいよ。私たちの目的はあくまで楔だ。それをどうにかするまでは、他のことは極力後回しだ」

 

 しかしそんな考えを見越してか、やや呆れを含んだ声色でイリスティーラは忠告してきた。

 クイールも同じ思いだったようで、難しい表情で立ち止まる。

 

「……そうだね、分かってる」

「けど、もし助けてほしいって望んでいるのなら、助けたいですよね」

「仮にそれを求めていたとして、解放してからどうするんだという話だよ。そういう目的で手を出したのなら、ナイトラクサのようになあなあで終わらせることなんて出来ないんだから」

「むぅ……」

 

 ナイトラクサ――大半の住民がサキュバスたちによって命を奪われたあの夜、逃げた人々はどうしたのだろう。

 自分の村に戻るという人はいた。しかし、辿り着けるかは運次第だ。

 かれらがどうなったか、見届けることはなかった。もしも、助けたいという思いで手を出して後を放置したのならば、それは無責任というものだろう。

 見て見ぬふり。それが一番の方法だと分かっていても、もやもやした気持ちはあった。

 そんな気持ちを抱えながら、フェダルナへと近付いていく。

 

「――おや、誰かいるね」

 

 小さな村であれば、住民を見つけるのは簡単だ。

 向こうも外からやってくる人間など珍しいだろう。青年はすぐにこちらに気付いたようで、目を丸くしていた。

 

「あ……あなたたち、一体どうしてこの村に……?」

「ホロゥに入りたいんだけど……」

「――ああ、怯えなくていい。キミたちを“使う”つもりなんてないよ」

 

 僕たち人間に対してもそうだが、彼はイリスティーラやナディアに対して警戒を見せていた。

 目的を告げれば、彼は怯え、後退ろうとしたが、イリスティーラが続けて危害を加えないことを宣言すれば、目を瞬かせた後安堵の様子を見せた。

 

「そ、そうですよね。驚きました……ついこの前、もう誰も鍵になる必要はないと、アデラキテラ様が仰ってましたもんね」

「……アデラキテラ、だって?」

 

 肩を撫で下ろす青年が口にした、聞き覚えのない名前。

 その名前に対して、今度はイリスティーラが警戒を抱く側になった。

 

「知り合いなの?」

「私が一方的に知ってるだけだろうさ……いけ好かないヤツだよ。私たち聖都のエルフとは本来交わらない――“森側”のエルフだ」

 

 ――聖都のエルフは、種族としては異端だという話は聞いたことがある。

 本来は深い森の奥にひっそりと暮らす種族で、外との関わりも最低限に済ませているというが……この辺りにそれほど深い森はなかったはずだ。

 それほど遠くから、この村にやってきている、ということだろうか。

 

「……? えっと、あなた様も、エルフ、なのですよね?」

「そうだよ。まあ畏まる必要はない。それよりも、ホロゥに入るにはどうしたらいい? キミたちは、何か聞かされているのかい?」

 

 おずおずと尋ねてくる青年に、イリスティーラが聞き返す。

 辺りを見れば、不思議そうに首を傾げてこちらを見る人がちらほらといた。

 不審なものに向ける目はあれど、極端な恐怖や、救いを求める感情は見られなかった。

 少なくとも、平穏な暮らしのできている村ではあるようだ。

 かれらの視線も気にしつつ、青年は村の反対側を指さした。

 

「は、はい――向こうの、村のはずれに池があるのですが……夜、そこの水面に映る月に向けて飛び込むと、ホロゥの内に行ける場所に繋がっていると、アデラキテラ様が……」

「随分とまどろっこしい方法だね……別のどこかを経由しているってことか。とはいえ、そのおかげで、キミたちから“鍵”が出ることはなくなった訳だ」

「ええ……俺たちは、元々そのために生まれてきたので、急に言われて、今はどうしたら良いのか分からず生きているばかりですが……」

「……」

 

 ――鍵になるため。そもそも、それを存在意義と教え込まれて、この村で生かされていたということか。

 今はもうそれが必要ない。この村が“牧場”として扱われなくなったというだけならば、良いことかもしれないが……。

 

「それでもう、ここから住民が魔族の事情でいなくなることはなくなったのかい?」

「……えっと……いえ」

 

 しかし、イリスティーラの問いに、青年は首を横に振った。

 

「まとめて何人か、池の向こうに、連れられていくようになりました。五日前にも、三人」

「……ふむ」

 

 ……ただ、ホロゥへの道が変わっただけということではなさそうだ。

 この村に求められる目的そのものも、変化している。その答えもまた、この先の池にありそうだ。

 

「――ひとまず、行ってみよう。どのみち、ホロゥへ行くにはそれしかなさそうだ」

「そうですね……ありがとうございます。夜って、今夜でも良いんですよね?」

「え、ええ、そのはずですが……」

 

 青年は別れる時まで、僕たちの事情を聞こうとはしてこなかった。

 村の外から、魔族と一緒に人間がやってきたことに関しても、疑問を持つ様子さえなかった。

 この村にも行商が来ていて、人が来ること自体はさほど珍しくはなかったのか……あるいは、人でも魔族でも、かれらからすれば変わりないのか。

 ――どうあれ、それを聞き出そうとして、不安を覚えさせてもよくない。

 あまり追及せず、この先に向かってみるべきだろう。

 

 

 


 

 

 

 夜まで足止めを受けて、わたくしたちはようやく、村の者が言っていた池の前に辿り着いていた。

 どうにも……きな臭い場所だ。フェダルナの村も、この池も。

 水場に魔法を仕込み、別の場所とを繋げるというのは、わたくしの時代でも少なからず見られる技術だった。

 高度な魔法で見栄えも良い。自尊心の高い者が率先して学ぼうとし、転移魔法の複雑さに心を折られるというのはよくあることだという笑い話を聞いたことがある。

 今回のそれは――どうやらその“高度な魔法”を実現させた例であるようだ。

 

 それも、ただ池とどこかを繋げるだけではない。

 空に浮かぶ月は半分ほど欠けているというのに、水面に映っている月は少しも欠けていない真円だ。

 これだけで、ある程度、これを仕込んだ者の性質は見えてくる。

 本来、満月の日にしか機能しない仕掛けにしたかったのだが、利便性に欠けると指摘されて渋々妥協。せめて、外見だけは意地を通し、かつ指摘した者への不満を表した……というところか。

 いつも通りの仏頂面で、リッカはこの池に仕掛けられた魔法を解析している。

 あの月に向かって飛び込めば良いというのは分かるが、それ以外に厄介な魔法など掛かっていないか。

 

「……無駄に外観を飾っている以外は、普通のポータル。これを潜ること自体で、悪影響はないと思う。けど……」

「移動した先で、何が待ち受けているかは分からない、ってことだね」

 

 この仕掛けの先がどこに繋がっているのか。曖昧に、北東の方向だとしか判明していない。

 これを施した者が、村の者の言うアデラキテラだというのなら、その縄張りであろう森の奥にでも繋がると思っていたが……地図を見る限り、そちらにも深い森はない。

 ポータルに頼ることなく、光翼でその座標に赴いてみるという選択肢もあるにはあるが、問題はその目的地も魔法で隠匿されている場合。

 もしもそうだとすれば、光翼で時間を掛けて向かった先で、もう一度謎解きに挑む羽目になる。

 急がば回れとはいうが……どちらが正解であるか。

 

「……外装を使った状態で行くのも良いが、普通にあの先が町だったりすれば、余計な混乱を生みかねないな……仕方ない」

『シークレットコード、レディ』

 

 何より万全な備えは、全員が外装を纏った状態で赴くこと。

 しかし、それで混乱を呼んでしまってもよくない――そう判断して、イリスティーラは魔道具を腕に当てた。

 

「私が備えておこう。キミたちも、何かあればすぐに戦える状態にはしておいてくれ」

『キメラスタイル、インストール。I-スティーラー、ショー・タイム』

 

 無機質な魔法音声と共に、術式を撃ち込んだイリスティーラの体が変化していく。

 夜に紛れる、黒い外装――それに変わった直後、再び彼女が腕に術式を撃ち込めば、その姿は周囲と同化していった。

 

「あまり長いこと維持はできないが、この後すぐの状況くらいには対応できる。思い切り飛び込んで、そこからは臨機応変といこうじゃないか」

「イリス、結構僕たちのやり方に染まってきてますよね」

「人聞き悪いこと言わないでくれないか」

「そんなに人聞き悪くないんですけど!?」

 

 備えはするものの、あまり躊躇うことはない。それは多分、イリスティーラ本来の性格なのだと思う。

 とはいえ、少々逸っている様子はある。アデラキテラという魔族が関わっている可能性を考えてのことなのだろうか。

 一体どのような因縁があるかは不明だが――わたくしも、有事に備えておくべきだろう。

 クイールとイリスティーラの痴話喧嘩を聞き流しつつ、右腕に取り付けられたデバイスに手を置く。いつでも外装を構築できるよう、コマンドだけは打ち込んでおこう。

 

「ほら、言い合いは後になさい。行きますわよ」

「っと……そうだね。それじゃあ、先に行くよ。ついてきたまえ」

 

 さほど大きくない池の、月に向けて。イリスティーラが飛び込む。

 それに続いて、ユーリとリッカが同時に。クイールも躊躇いなく続き、最後にわたくしも、意を決して落ちていく。

 四人とも、もう少し怖じる気持ちとか、あっても良いのではと思うが……旅ももうすぐ終わり。この程度で怖じる弱気さなど、既に捨て去ったのだろう。

 ならば、そのパーティの――ハッピーエンド同盟の一員として、どこまでもそれに付き合おう。

 

「――――っ」

 

 冷たい感覚は、一瞬だけ。上と下が入れ替わるような“揺れ”が、体を震わせる。

 踏みしめた足場は硬く、まっすぐだった。土の上ではなく、整備された石畳のようだ。

 それを認識した後、目を開ければ――

 

「……ここは?」

 

 ――月に照らされることで輝いているような、星空色の町並み。

 ナイトラクサほどではないが、あまり品があるとは言えない明かりで、連なる屋敷の数々は艶やかに彩られている。

 この光景を眺めていると、これが夢なのか現実なのか、分からなくなってしまいそうだ。

 また、こんな町なのかと呆れてしまった。

 正直あまり、この輝きに良い感情は抱けない。ユーリたちの言うホロゥとやらではないことでは明らかだし、ここが中間点であるのならば、早く出て行きたいところだ。

 

「早くホロゥへのポータルを探しましょう。あまり長居したくはありません」

 

 ひとまず、転移して早々に罠が仕掛けられているなどの待ち伏せがなかったことに安心しつつ、町の探索を始めようとして。

 

「ん……私も同感。なんか、嫌な感じがする」

「……?」

 

 その、返ってきたリッカの声に、違和感を覚えた。

 はて。わたくしの大切な友人の声とは、ここまで高かっただろうかと。

 

「……? 私の声ってこんな――」

 

 リッカ自身も同じ疑問を感じたらしい。

 どうしたのだろうかと振り返る。いつの間にかリッカは背後にいたようだ。

 

「……へ?」

「……待って、これって」

 

 そこにいた四人は、友人たちの面影を残す、見知らぬ四人だった。

 おかしい。わたくしの知っている四人は、もっと背丈が高かったはず。

 それがどうだ。みんな、“いつもの”ユーリにさえ及んでいないではないか。

 ……そう、いつもの、ユーリだ。つまるところ、いま目の前にいるユーリは“いつもの”ではない。

 

「……リッカ。この人たち、誰……?」

「っ――ユーリ……!?」

 

 目を瞬かせるリッカは、知っている姿よりずっと背が低く、白い髪は腰ほどまで伸びている。

 おどおどと辺りを見渡し、不安げにリッカにくっついている子は、まさかユーリなのか。

 

「ここどこ? ママ? パパ? ……?」

 

 怯えはないものの、不思議そうにきょろきょろと顔を動かす子。

 大きさの変わらない聖剣を傍に転がす、髪は痛み、肌に潤いもなく、骨と皮しかないほどに痩せ細ってしまっている彼女は。

 信じたくはないが――クイール、なのか?

 

 わけの分からない状況の中で、視線は残る一人に動いた。

 お願いだから、この異常をわたくし一人に抱えさせないでほしいと、そんな願望を込めて。

 

「ひっ……」

 

 ――目が合ったと同時、その子はビクリと体を震わせ、後退った。

 他の三人を見た後だという状況がなければ、わたくしの知っている彼女と同一人物だとは、決して信じなかっただろう。

 彼女の浅黒い肌は後天的なものだと、聞いたことがある。

 白い肌の少女には、実験に傾倒した結果に混ざったものは、何一つない――純粋なエルフ。

 

「あ……アンデッド……やだ……り、リーテ、助けて……っ」

「――――――――」

 

 今にも泣きそうなほどに怯える彼女は、本当にイリスティーラだとでもいうのか。

 夢であると信じたいが、頬を抓ってみても、この景色が消し飛び目を覚ます様子などない。

 

 つまるところ、認めるしかないらしい

 ――わたくし以外の全員が幼子になってしまったという、認め難い現実を。




Q.最強フォーム販促のための無双期間とかないの?
A.ないよ。
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