凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法   作:けっぺん

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次の更新は来週の日曜日となるかもしれません。
状況次第では水曜日等の更新もありえますが、あまり期待はしないでいただければ。


アリスの不思議な町(3)

 

 

 周囲の家々は、見ていてどうにも不安を抱かせるようなつくりだった。

 曲がったり、捻じれた木を使って建てられたようで、まっすぐな輪郭をした家など一つも見当たらない。

 それが妖しくきらめく光と合わさって、凝視していれば頭がおかしくなってしまいそうだ。

 

「見事な家を建てられる技術はあっても、近くにまともな木々はないのでしょうか」

『そういう“コンセプト”にも見えてくるわね。わざわざ、どこかから仕入れてるんじゃないの?』

『拘り屋の魔族が管理している町であればあり得よう。当機もそのような場所を少数ながら知っている』

 

 呆れから思わず零れた呟きに、ラフィーナとヨハンナが返してくる。

 事情を話せば、ヨハンナも外に出てきてくれた。

 正直、このような状況での判断能力で、実戦経験の豊富な彼女たちよりも優れているとは思っていない。

 戦闘はともかく、それ以外の場面では頼った方が良いだろう。

 それに、ラフィーナが意識を表出させているアッシュに関しては、その三つの口でクイールの聖剣をくわえて、運んでくれている。

 元々、わたくしが運ぼうとしていたのだが――少しの間抱えているのならばまだしも、そのまま歩き回るのにはいささか厳しかった。

 ……魔道具以下の筋力であることに、思うところなどない。決してない。

 

「やはり、魔族が支配している場所である可能性が高いと?」

『そう判断する。元より、そのような村から繋がった場所なのだろう。この一帯に散布されている魔法も、魔族ほど時間に猶予のある存在であれば構築も出来よう』

 

 ヨハンナをして、この町の仕掛けは驚嘆すべきもののようだ。

 少なくとも、魔法においては凄まじい技量を有する相手。

 ――ホロゥへのポータルを探すのではなく、まずはこの術式が散布されている範囲の外に出るべきだろうかという考えも沸く。

 リッカが対策を整えるにしても時間が掛かるだろうが、その分のロスを受け入れてでも、今の危機的状況からは脱するべきではないかと。

 わたくしたちの戦いは、この町を抜けて終わりなのではない。むしろ、ホロゥこそが本番といえるのだ。

 

「……ふむ」

 

 しかし、軽率に町の外に出るという判断もできない。

 まだ夜深くはないとはいえ、暗くなってから行動するのにはどうしようもない危険が伴う。

 いま、ユーリもクイールもあの状態な以上、光翼がそもそも起動できない。

 一応リッカは非常時のための魔道具やキャンプ用品も揃えているようだが、それでも安全性に不安が生まれる。

 加えて、この状態のかれらも、町よりも外の方が危険であることは知っているはずだ。

 どんな理由でも、連れ出すことは難しいだろう。

 

「……それ、何……? 遠隔会話の魔道具……?」

 

 クイールに手を引かれて付いてくるイリスティーラは、未だこちらに強い警戒を向けている。

 そんな中でも、喋る魔道具に興味を持たずにはいられなかったようだ。

 それもそのはず。自立行動と会話――隣人として接することが出来る魔道具など、決して一般的なものではない。

 リヒトたちの家に受け継がれてきたという技術。ヨハンナはそれを模して、ラフィーナはリッカが手を加えたものを通して会話を叶えている。

 いずれも、一つの技術だけで実現されたものではない。イリスティーラとしても、物珍しいのだろう。

 

「遠隔会話ではなく、この中に一つの人格が入っています。ものを考え、助言をくれ、自立行動する。そんな画期的な魔道具です。まあ……わたくしが作ったのではないのですが」

「ひ……非人道的……! 製作者……心とか、ないの……!?」

「いえ、それは……まあ、うん……」

 

 大本の製作者であるリヒトはともかく、問題の発想に至ったリッカやヨハンナがその辺りの“人道”を弁えているかと言われれば、あまり自信を持って頷けないところがあった。

 わたくしはリッカの復讐も受け入れているとはいえ、そのやり方が常軌を逸したものであるというのは、真実なのだから。

 言葉に詰まり、思わずリッカに目を向ければ、幼い彼女はたちまち微妙な顔になった。

 

「……別に私がその仕組みを作ったんじゃないんだけど」

『そういえばそうだったわね。この魔道具の方から私にアクセスしてきたのよ。で、仕方ないからこの状態で協力してるってわけ』

『当機は自ら当機を構築した。本体の術式をコピーした人格につき、本体とは同一人物と定義できる』

「ど、どっちも意味分からない……っ!」

 

 まあ――ラフィーナはともかく、ヨハンナはそもそもそれが他者に理解されるものだとも思っていないのだろう。

 誰よりも常識を超え、誰にも理解されず、ゆえに多くの信奉者を集めたからこその聖女。

 自らの人格をコピーし、それを自分自身と定義することなど、普通の人間には受け入れがたい奇行なのだ。

 

「……アンデッドに、自己を改変して作った魔道具……本当に、聖都に住んでるの?」

「ええ――そういえば、エルフとしての禁忌、でしたか」

 

 今のイリスティーラに対し、その話題について踏み込んで良いものかと、少し悩んだ。

 彼女の疑問の声には、少なからず嫌悪感が含まれていた。

 聖都のエルフが共通して持つ価値観だ。

 将来的に、その価値観を真っ向から否定することになるイリスティーラだが――この頃は大多数と同じ考えだったのだろう。

 

「別に、他の種族に強制するものじゃないって、お父さんたちは言ってた、けど……」

「なら、良かったです。聖都で咎められたことはありませんが……これも、どう思われているかは気になっていましたから」

 

 本来のものは失われた、わたくしの右腕。

 生前から義手であったこれも、そして死から蘇ったアンデッドという素性も、エルフにとってはその禁忌に抵触しているのだろう。

 その上で、わたくしが聖都で暮らすことが出来ているのは、かれらが他の種族に対して寛容だからだ。

 聖都においては、騒ぎを起こさなければ人間でも魔族でも受け入れられる。

 許されないのはあくまでも、エルフという種族が自己を改変することなのだ。

 

 ……イリスティーラにどのような心境の変化があったのか、わたくしはこの先も追求するつもりはない。

 親しい間柄でも、触れてほしくない部分はあるものだ。

 

「イリス、この魔道具、きらいなの?」

「へっ……!? き、嫌いとか、そういう話じゃなくて……設計思想が、エルフの価値観と違うというか……!」

「……?」

「ぁ……分かんない、よね。そんな話、しても」

「うん、分かんないけど、イリス、楽しそう」

 

 話の内容も殆ど理解できていないようだが、クイールは楽しげににへらと笑う。

 いくら聖都の住民とはいえ、ここまでエルフに対して物怖じしないのか。

 この性格は、子供の頃から変わらない。

 ただ一つ――まともにものを食べられていないと一目でわかる痩躯だけは、この頃の暮らしに嫌な想像をしてしまうが。

 

「べ、別に、楽しいとかでも……まあ、いいけど……っ!?」

「わっ……と」

「どうしました?」

 

 その想像が確証に繋がった訳でもないのに、不快感を覚えて眉を顰めていると、イリスティーラが不意に立ち止まった。

 当然、その手を握っていたクイールも手を引かれ、転びそうになる。

 それを支えながら問いかけると、イリスティーラは立ち並ぶ家の一つに目を向けた。

 

「……そこの家、中から、誰か出てくる」

 

 その言葉を受けて、四人に背後に行くよう促す。

 リッカも最低限、使い魔を呼び出したりは出来るだろうが、主となって皆を守るべきはわたくしだ。

 扉が開かれる。中から出てきたのは、今のユーリたちとそう年齢の変わらない子供たち。

 そして、姿勢を低くして扉を潜り出てくる、ひどく長身の、黒ずくめの姿。

 

「――おや。これまた、無粋な客が現れたものだ。淫魔だけでは飽き足らず、屍までもが湧き出て、あたしの芸術を汚しに来るなんて」

「……あなたが、この町に魔法を仕込んだ魔族ですか」

「如何にも。備えがなければ魔族にも作用するのだが……とはいえ屍は別だ。そもそも、この町にまで迷い込むなどと考えてもいなかったあたしの落ち度かね」

 

 全身、ほぼ肌を晒さない黒い外套。

 おとぎ話の魔女を思わせる、尖った帽子に、カラスの如き嘴が口元についた仮面。

 腰までの長い銀髪と、聖都のエルフよりも長く尖った耳が、魔族らしい特徴を示していた。

 

「死んでなおこの世に留まる未練は哀れとは思うが、だからと言ってあたしの芸術を荒らされても迷惑だ。そしてあたしは、その未練を聞き届けてやれるほど暇じゃない」

「ッ!」

 

 言葉が切れるよりも前に投げられた何かを、咄嗟に出力したナイフで弾き落とす。

 外装で強化されていないにも関わらず、自分がそんな動きを出来たことに驚きつつも、落としたそれを見下ろせば――黒ずんだ鈴だった。

 

「あん……? 手慰みで拵えたものとはいえ、お前さん程度の屍一つ、消せないほどの祝福の量じゃない筈なんだが」

「わたくしを祝福で滅そうというのなら無駄なことです。それよりも、わたくしたちは無為に争う気はありません。目的のものさえ見つけられれば、すぐにでもこの町を出ることを約束いたします」

「祝福への耐性か。趣味じゃないが、そういう需要もあるかね。とはいえ、あたしの商品が腐っていると思われても心外だし……ん? ああ、そっちの事情には興味がないさね。お前さんはともかく、お前さんの連れをここから出すのは今じゃないからね」

 

 駄目で元々、と敵意がないことを告げてみるも、魔族は軽く手を振り、思考の合間で返してくる。

 連れ――やはり、ユーリたちを目的にしているということか。

 しかし……子供になったかれらを町から出そうとしない。そして、彼女が連れている子供たち。

 あの子供たちもまさか、元はフェダルナからやってきた大人なのだろうか。

 

「まあ、その連れを置いていくというのなら、お前さんは好きにしてやっても構わないが?」

「それはなりません。かれらと共にここを出るというのは必須事項。何があろうとも、手出しはさせません」

「それが出来る立場かね? 腕に覚えがあるようだが、ここはあたしの領地だ。魔法使いの領地で戦うことの意味、知らない訳じゃないだろう?」

 

 彼女がこの町を支配する魔族であるのならば。

 魔法使いを自称するに相応しいほどの技量だということは、この町に仕込まれた魔法から明らかだ。

 当然、他にも防衛のための魔法があるだろう。

 分は悪い。どうにかわたくしに意識を集中させ、ラフィーナとヨハンナに四人の避難を頼むか。

 

「さて。あたしも安くない触媒を無駄にする気はない。大人しくその子たちをここに残してくれると助かるんだがね」

「……その子たちも、本来子供ではないのでしょう? どうするつもりなのです」

「屍には関係ないだろう? ……とはいえ、お前さんがその子らを売りたいってんなら話は別さね。それで後腐れなくなるならあたしも万々歳さ」

 

 ――あまりに怪しい風体だが、彼女は商人なのだろう。

 わたくしを力で排除するよりも、金銭で解決できるのならばその方がいいということか。

 ……ふざけた話だ。友を、大切な人を、金銭で手放すと思われるなどと。

 

「あなたの商売に加担する気はありませんし、無駄な交渉です。どうあれわたくしは、かれらをあなたの自由にはさせませんので」

「ああ、そうかい。金で解決できない事案というのは実に厄介だ。仕方ない、あたしの芸術を腐臭で汚されても迷惑だしね。屍退治など下働きの仕事だが、たまには自ら掃除と行こうじゃないか」

 

 彼女が連れる子供たちは、どこか虚ろな表情をしている。

 自我を奪われ、この魔族に従うしかない状態のようだ。

 フェダルナからやってきた大人がこうなっているのならば、見て見ぬふりはできまい。

 そして、四人に手を出させもしない。わたくしが守ってみせる。

 

「あまり手間取らせないでくれ。出費が嵩むからね」

「知ったことではありません」

 

 決して相容れないと言葉を返し、右手のデバイスで外装を呼び起こそうとした、その時。

 

「――そこまでにしておきたまえ、キミたち!」

 

 夜を夜と感じさせない、自信に満ち溢れた声が町に響く。

 わざと足音を大きく立てながら、歩いてくる何者か。

 その存在を知っているようで、魔族は仮面の奥でくぐもった溜息を吐いた。

 

「粋を謳うのであれば、月夜に幼子を巻き込むことこそ無粋にして無様ではないかい? 少なくとも、その辺りの慎みはボクたちでさえ持っているよ?」

「……相変わらず喧しい淫魔だね。あたしの町であたしに流儀を唱えるって?」

「キミの流儀より古いしきたりがこの町にはある。即ち、夜とは静謐なるべし、とね」

 

 ――サキュバスだ。ユーリたちのように幼くなっていない、成熟した魔族。

 紺色の髪と、これまでに目にしたサキュバスの中でも最も無駄なく、磨かれた金色の角。

 自らの存在に一点の曇りもないと確信している堂々とした佇まい。

 美の確約されたサキュバスの最高位にあるかのような存在感であった。

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