凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法 作:けっぺん
よくわかりませんが、なぜか皆さん、上記のタイトルを
この話が更新されたタイミングで投稿が反映されているかは不明です。どうかお手柔らかに。
『っ……お待ちください、エヴァネス様。アリスアドラ様は、サキュバスです。人間ではありません』
絶句していたわたくしたちの中で、はじめに問いを投げることが出来たのはラフィーナだった。
それが現実だとして、最も受け入れられないのもまた彼女である筈なのに。
「その通りだ。アリスアドラ様は、ボクたちサキュバスの長。他ならないボクたちが、何よりもそれを否定してはいけない」
問いに対して、エヴァネスはさもありなんと頷く。
「――というか、ボクたちも信じている訳じゃないのだがね」
『え……?』
「あれがアリスアドラ様だと言っているのは、アリスアドラ様だけさ。真実なのか、いつもの常軌を逸した共感なのかなんて、ボクたちの知ることじゃない」
あのサキュバスの性質は、決して理解できないものだった。
他者の在り方に土足で踏み込み、勝手に共感を示す。
敵でしかない存在がそれをしてくることの恐ろしさは、近しいことの出来るユーリの力の真髄を知っているからこそ、より如実に感じられる。
ユーリのように、相手を想うからこそ歩み寄ろうとする優しさではない。
踏み込んでから、その境遇に同情しているような、真逆の印象を受けたのだ。
「まあ――今やその真実は闇の中、なのだろうね。キミたちが殺ったんだろう? ネリネ共々、さ」
「っ……」
ナイトラクサでの一件から、それほど日が経ったわけでもない。
それでも、自分たちの長が消えたことくらい、側近であれば伝わっていない筈もないだろう。
「はっきり言って今も半信半疑だ。ネリネの計画などいつか崩壊するとは思っていたが、アリスアドラ様まで死ぬなんてね。だが、ここにキミたちが来たということは、そうなのだろう?」
『……はい。アリスアドラ様も、ネリネ様も……私たちが倒しました』
「――ハハハハハッ! 大したものだ! その分ではムルゼの御大を仕留めたというのも真実らしい!」
サキュバスたちが例外なく信奉しているアリスアドラ。
彼女を倒したことが、エヴァネスとの敵対に繋がる可能性は高かった。
警戒を強めるものの――エヴァネスから敵意は一向に感じられなかった。
「……わたくしが言うのもなんですが、“その程度”なのですか?」
「ん? ああ、涙を流して弔うのがサキュバスの流儀だと思うかい? 覚えておきたまえ。特にラフィーナ、キミはね。サキュバスはこういうとき、酒を飲むなり夢に浸るなりして終わりなのさ」
『……酒に、夢、ですか』
「そうさ。先日、イルミナとそうした。ジルが死んだ時もそうした。何日も悲しむなどナンセンスだよ。いいね?」
『……覚えておきます』
サキュバスの価値観は理解できないが……ユーリたちへの恨みもないということだろうか。
問答無用で戦闘になることがないのであれば、こちらとしては都合が良いが。
アリスアドラよりも、初めて会ったばかりのラフィーナを気にかけているようなエヴァネスは、その返答に満足したように頷き、話題を切り替えた。
「ともかく、重要なのはここがアリスアドラ様の屋敷であるということ。アリスアドラ様は長らく訪れていないが、ボクたちがここを管理する理由としては十分だろう?」
『……はい』
「ここは、この町で唯一、安全だと言い切れる場所だ。内部には無粋な術式の力は及ばない」
……サキュバスの長たる存在の生家が、この町で最も安全な場所とは。
それだけ、あの魔族は凶悪な存在なのだろう。
もっとも――相対しようとすると、子供という力のない存在になってしまうというのが、理由として大きいのだろうが。
「……そういえば、あなたはどうして幼い姿となっていないのですか? サキュバスにはあの魔法が及ばないと?」
「いいや? 効果を受けないのはそれこそ、過去へと巻き戻るのに“死”という隔たりのあるアンデッドくらいさ。サキュバスも例外じゃない――このボクを除いてはね」
『エヴァネス様、だけ……?』
「そう。何故ならば――ボクは、美しい」
「…………は?」
なんの迷いもなく、わざわざ注目を集めるように言葉を溜めた後、恥ずかしげもなく彼女はそんなことを宣った。
言葉の意味を理解するのに数秒。たった一言、反応を返すために数秒を要する。
今度はラフィーナよりも反応が早かった、と何となしに思った。
「何かおかしなことを言ったかい? 厳然たる事実だろう?」
『……えっと……エヴァネス様。その、何故この町の魔法を防げるのか、を伺ったのですが』
「……? だから、言っているじゃないか。ボクは美しい。ボクという存在には一片の瑕疵すらなく、完全であるボクは、“変わる必要”がない」
……もしかすると高度なジョークなのだろうかと、思わずリッカの方を見た。
リッカもまた同じく、こちらを向いた。どうやらリッカと感性は同じであるらしい。
わたくしたちの反応を見て、エヴァネスは首を傾げる。
「分からないかい? 美とは絶対だ。ボクの意思以外でボクを変えることなど許されないのだよ」
「……え? それだけ、ですか?」
「それだけだが? ボクが何より重んじるのは、ボクの美だ。その自信は心も体も侵させない。そういう話さ」
この魔法はそういう、気持ちの問題なのだろうか。
今の自分に絶対的な自信さえ持っていれば防げる――確かに、そんな存在は少ないだろうし、ユーリたちもそうは思っていないだろう。
そんな効果の魔法など、紡ごうと思って紡げるものでもないと思うが……。
「しかし、キミは違うのかい? どうやら体はともかく、心までは侵されていないようだが?」
「……」
釈然としないこちらの理解を待たず、エヴァネスの興味はリッカに動いた。
リッカの理屈は、間違いなくエヴァネスとは違う。そしてそれを、彼女に伝える道理もない。
「……あなたには関係ない」
リッカからの短い拒絶。
エヴァネスはそれに気分を害した様子も見せず、むしろ愉快げに笑う。
「フフ……まあ、いいさ。さて、キミたちの目的はホロゥへのポータルだったね。キミたちさえよければ、ボクが連れていってあげよう」
「……なにが目的ですか?」
これまで親しい関係などなかった魔族が、なんの見返りもなく、勇者の味方をするとは思えない。
一体何を求めているのかと問いを投げてもエヴァネスは笑みを浮かべたまま。
サキュバスという種族の中で、まともな存在とはラフィーナくらいであり、後はすべて何を考えているか分からないもの。
そんな前提から、強い警戒を持ったままでいれば。
「ボクたちとしてはね、この町が下賤な人売りに支配されているのは面白くない」
「……もともと、栄えていた“牧場”だったのでしょう?」
「過去は過去さ。ボクはこの町の景観に感じる、アリスアドラ様の狂気の残滓を肴に飲むのが好きなんだ。景気の良い人売りに汚されていく町なんて見ていたくなかった」
「……つまり」
「大人を“加工”し、幼子にして売り捌く悪趣味な『黒翼商』アデラキテラを、この町から追い払うこと。その協力と引き換えでどうだい?」
――アデラキテラ。それはフェダルナでも聞いた名前だった。
イリスティーラ曰く、森のエルフ。あの黒ずくめの魔族がそうだったのか。
『黒翼商』という異名に聞き覚えはない。だが、あの纏う雰囲気は“やり方”を熟達した商人の顔だった。
ともすれば、人間を必要とする多くの魔族に対して影響力を持つ存在なのかもしれない。
「わたくしたちであれを倒せ、とは言わないのですね」
「それはあまりに無責任というものだよ。ただでさえ戦力が万全でないキミたちを送り出して見物というのは情けないじゃないか」
……驚いた。ずいぶんと自意識過剰な魔族だとは思っていたが、それなりの誇りを有しているようだ。
自身の矜持を語るのであれば、その言葉が真実であると、ユーリでなくとも伝わってくるものはある。
少なくとも――この場において彼女は利用できると判断しても良いくらいには、彼女はこちらを信用している。
「アリスアドラ様がいなくなったのなら、ボクには無軌道な同胞たちを束ねる義務が生まれる。アリスアドラ様の怠惰に散々苦言した身だ。いざ自分の番が来たら怠けるなどまるで美しくないからね」
「……」
その特有の美意識と価値観までには、理解が及ばないものの。
種族の行く先を重んじる、責任感の強さは本物であると信じても良いだろう。
「――――リッカ」
「……正直、私には信用できない。けど……ナディアが信じられるっていうのなら……任せる」
「ええ、では、そのように」
一歩間違えば、敵になるかもしれなかった魔族。それも、人間の大敵の筆頭として挙げられることも多いサキュバスだ。
きっとリッカにとって、思い出したくもないほど苦い経験もあるのだろう。
エヴァネスを信じることなど、到底不可能なはずだ。
だからこそ、わたくしが前に立たなければなるまい――リッカの信頼を受ける、友として。
「話は決まったようだね。良い信頼関係だ。キミのような人間が何故アンデッドと絆を紡げたのか……気になってくるじゃないか」
「っ……」
『……エヴァネス様。その……彼女は――』
「分かっている。詮索はここまでだ。その子とのやり取りにはキミやナディアを介せば良いのだろう? ……え、彼女も戦うのかい? 記憶はあるようだが、他の子らと一緒に隠れていた方が良いのでは? 身体能力とかも巻き戻っている筈だよ?」
思わずといった様子で、エヴァネスは真顔で心配してきた。
……もちろん、上位のサキュバスたる性質はあるのだろうが、彼女もラフィーナ同様、面倒見が良いところがあるのかもしれない。
「……魔力の出力は問題ない。体の術式が消えているから、外装は使えないけど……補助ならできる」
「ん? 今、体の術式って言った? どんな魔法の使い方してるんだキミたちは?」
『話せば長くなりますが……その、エヴァネス様。彼女の思考は少し特殊なので、話半分に聞き流していただいた方が精神的に負担がないかと』
「キミ、その子の味方じゃないのかい?」
……そうか。リッカが外装を構成するための術式は、リッカがその肌に刻んだものが基礎となっている。
うん、忘れていたけど、この旅が終わったらリッカには一度強く言っておかなければ。
自分の体を蔑ろにすることに躊躇している余裕がなかったのは理解するが、それはそれとして、だ。
ともかく、幼い体となってしまった今のリッカの体には、外装の術式が存在していない。
基礎がなければそもそも外装を構築できない――戦闘能力の大部分が失われた状態だ。
「……可能ならば、ユーリたちと同じように隠れていてほしいのですが」
「……足手まといになる気はない。あの魔族の武器が魔法なら、一番それを把握できるのは私。違う?」
「ふむ。魔法使いか。それは頼もしいが……この町はアデラキテラの領域だ。キミがどれほどの術者かは知らないけれど、この町で彼女を上回るのは難しいと思うよ」
「ええ……彼女の言う通りです。普段ならともかく、万全な状態でない今のあなたでは……」
「やりようはある。……ナディアを知らない魔族と二人にはしておけない」
――――――――、と、複雑そうな表情でぼそりと呟かれた言葉を受け止めるのに、数秒を要した。
当然、本調子とは言えない状態ということはリッカ自身が一番わかっている。
それを押してでも、戦いに参加しないとならない理由が、それだと言われれば。
「……仕方ないですね、リッカは」
「折れるまでが早すぎないか、キミ」
『……その。すみません。こういう面々なのです』
「……いや、キミもずいぶんと苦労していそうだね、ラフィーナ。これほどまでに我の強い子たちじゃないと、勇者の仲間は務まらない、ということか」
本当に仕方がない。今のリッカが足手まといになる筈もなし。
きっとまた、わたくしたちの想定外なことを仕出かしてくれることだろう。
「分かった、何も言うまい! 期待させてもらおうじゃないか、勇者のいない勇者パーティ……ふふ、どれほどボクを驚かせてくれることか!」
妙に楽しそうな様子で、エヴァネスは杖を持って立ち上がる。
背中を預けるような信頼は向けられない。だが、今の状況ではとても強力な助力となるだろう。
窮地を乗り越え、そして目的地に辿り着く。これらをユーリたちがいない状況でも成し遂げる。それが出来ずして、『ハッピーエンド同盟』の仲間などとは言えまい。
むしろ、元に戻った時にユーリたちを驚かせるくらいの気概で挑めば――わたくしたちに敗北などない筈だ。