凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法   作:けっぺん

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『黒翼商』/魔法使いの箱庭(2)

 

 

 伸ばされた触手を、魔力障壁が受け止める。

 そこにリッカはさらに触手の使い魔を追加で呼び出して、障壁に向けて叩きつけた。

 物量による力押し――いや、リッカの意図は、触手の群れによるアデラキテラの視界の制限。

 離れたところからでもその意図を読んだようで、エヴァネスが杖を振るい、わたくしたちとアデラキテラとの間に、波紋の浮かぶ領域を形成する。

 “何をしてほしいか”を理解する。魔族と以心伝心というのも内心複雑ではあるが、仕方ない。

 

『5 - 4 - 8 >> [Accept] >> [DECODE]』

 

 左腕に装着されたのは、複数の銃身が円状に並ぶ武装。

 ずっしりと重いそれを構えて起動すれば、銃身は高速で回転し、弾丸を嵐の如くばら撒き始める。

 そしてそれが、エヴァネスが作り上げた領域を潜れば――弾丸は炎を帯びて、更なる威力をもってアデラキテラへと襲い掛かった。

 

「チッ……! 面倒だねぇ、まったく!」

 

 触手が弾丸の嵐で吹き散らされ、少しだけ申し訳なさを感じる。リッカは特に気にしていないようだが――。

 強化された弾丸が魔力障壁に叩きつけられ、瞬く間に罅を入れていく。

 そして、叩き割った直後、アデラキテラが悪態を零し、その場から消え去った。

 一瞬、彼女の周囲の空間がぐにゃりと歪んだ気がした。空間転移。本来、実現させるにはかなりの時間と魔力を要する、大規模な魔法だ。

 それを咄嗟に実現させる技術――アデラキテラの領域とは言っていたが、ここまでか。簡易的な迎撃魔法だけでなく、ここまでのものさえ、瞬時に発動できるほどとは。

 

「そら、燃え尽きな!」

 

 広場の反対側に現れたアデラキテラが、両手をこちらに向けている。

 特別な魔法で、わたくしたちを仕留めようとしている――警告に従って、リッカを抱き上げる。

 背中に装着した飛行のための推進装置から魔力を放出し、空へと退避。その直後、それまで立っていた場所が大爆発に巻き込まれた。

 

「ッ、周りの家屋共々……!? 子供たちがいるのではないのですか――!?」

 

 爆炎に包まれる家屋の中に――既に生命反応は見つからない。

 アデラキテラに躊躇いは見られなかった。中にいるのは代えの利く商品でしかないとでも言うように。

 

「はっ! “そうさせた”側に言われる筋はないね! 損失はお前さんのその鎧で取り返させてもらうよ!」

 

 背中に黒い翼を広げ、こちらに迫ってくる姿はまさにカラスの如し。『黒翼商』とは、名前の通りか。

 リッカを抱いた状態で、武装を手にしての迎撃は出来ないが、手段の一切を失った訳でもない。

 左足に弾倉を装着。迫ってくる黒ずくめの姿に対し、三連装の弾頭を射出する。

 引き起こした爆発にその姿が掻き消され、その隙に翼を広げたエヴァネスへと近付く。

 もちろん、これは咄嗟の迎撃には戦闘に慣れているだろう彼女の方が向いているという“信頼”から。ほら、来た――魔力で構成されたカラスの群れが襲い掛かってくるが、エヴァネスが広げた翼から魔力の閃光が広がり、カラスを引き裂いていく。

 

「飛ぶこともできるなんてね。空は翼を持つ者の領域だと思っていたが、時代は変わるものだ」

「あなたこそ、別に翼で飛んでいる訳ではなさそうですが」

 

 エヴァネスの足元を見れば、魔力で小さな床を形成し、そこに足を乗せていた。

 それならば翼を広げる理由もないだろうに。エヴァネスはわたくしのそんな思考が伝わったのか、どこか得意げに笑みを向けてきた。

 

「優雅な翼だろう? 翼と角はサキュバスの魂だ。手入れを忘れず、皺を残さず、常に清潔に、だよ。覚えておきたまえ、ラフィーナ」

『……ぁ……いえ、はい』

 

 突然言葉を投げかけられ、ラフィーナは困惑した様子を見せた。

 ……その辺りの身嗜み、ラフィーナは気にしているのだろうか。境遇を聞く限り、あまりそういうことに気を遣う機会はなさそうなのだが。

 それと別に、翼の美しさに見惚れていた訳ではない。一体何を勘違いしているのか、この自意識過剰サキュバスは。

 

「淫魔に同調するのも癪だが、確かに、空も随分安くなったもんだ。淫魔の面子も丸潰れじゃないかい?」

「いいや、別に? 翼は誇りではあるが、空はサキュバスに必須な訳でもないからね。ボクらが居場所を奪われて焦るのはベッドだけさ。まあ、そんなことはサキュバスすべてが滅びるまであり得ないのだが」

 

 ……下世話な話題だ、と仮面の内で眉を顰める。リッカにそのような話を聞かせないでほしい。

 

「それに、そもそもキミだって空を侵害する側だろう? アデラキテラ、キミの本来の居場所は闇市でも空でもなく森の奥だろうに」

「あたしは“文化人”なんでね。聖都のエルフどもは賢いよ。外と関わらなきゃ、生き方なんてもんはいつまで経っても変わらない。あたしはそれに嫌気がさしただけさ」

「その結果が人売りか。まったく、品がないにもほどがあるよ」

「何言ってんだい、お前さんだってやっていることは変わらないだろうに。オルト・ノーマの最高級品、だなんて吹聴して売り捌いているくせに」

「ん? ……あー、なるほど。そう捉えられている訳か。そう思われるのも仕方ないが、オルト・ノーマはそうならざるを得なくなった場所だからね……まあ、そこを話しても仕方ないか。どのみち、キミには関係のないことだ」

 

 どっちもどっちだと呆れ返る。両者とも魔族の価値観だ。

 オルト・ノーマとやらがどんな場所なのか、どんな事情があるのかはまったく知らない。人間を消耗品として使っているのは変わらないだろうと言いたいが、今エヴァネスまで敵に回すのは避けたいところだ。

 しかし……アデラキテラは無傷か。

 相手の手札は少しずつ削れているが、あとどの程度手札が残っているのか分からないのが問題だ。

 

「ああそうかい。確かに、御託はいらないね。あたしだって自分の牧場を壊して楽しい訳じゃない。さっさと片付けるとするさね!」

 

 黒翼が大きく広げられる。鉤爪がぎらりと光る。

 月を覆い隠すように現れたカラスの群れが、一度ばらけてから一斉に襲い来る。足に装着させる武装のみでは対処が難しいが――

 

「ナディア、離してっ」

「ッ、承りました!」

 

 何を言い出すのか、という驚愕は一瞬。それが最適だと判断したのなら、わたくしはリッカに合わせるまでだ。

 空中でリッカを離す。リッカは落ちながらも――戦況を変える一手を繰り出す。

 カラスたちの真下から飛来する虫の群れ。まるでわたくしが囲まれたようで、ぞわりと鳥肌を錯覚するが、それで判断を鈍らせる訳にはいかない。

 虫一匹の力は弱い。しかし、多数によってカラスを埋め尽くすことで、勝ることはできる。

 

 エヴァネスの杖による刺突を、アデラキテラは鉤爪の指一本一本で発動する防御魔法によって容易に防ぐ。

 リッカの落ちる先。真下で石畳が大口を開き、リッカを飲み込もうとする。

 それを助けることは――しない。むしろわたくしは、アデラキテラに向けて真っ直ぐ突っ込む。

 

「は――――!?」

 

 自棄になったと思うだろう。アデラキテラの驚愕に、やってやったという優越感が生まれた。

 これがリッカの望む行動なのか、正直断言はできない。もしかすると、わたくしはリッカの不意まで打ってしまったのではとさえ考える。

 それでも、止まることはない。今更行動を変えたところですべてが手遅れになるだけだ。ならば、わたくしはこれをやり切る。

 驚愕から立ち直ったアデラキテラが、開いた手をこちらに向けてくる。

 カラスの使い魔の運用、石畳の変質、防御障壁、そして飛行の実現。自身の魔法に最適化した領域であるとはいえ、この状態でさらに魔法を紡げるというのか。

 何百年、あるいは千年を超えて研鑽した技術なのだろう。そこはリッカさえ否定すまい。

 ただ――リッカが積み上げた時間はさらにその上を行く。それを知っている以上、わたくしがリッカ以外の魔法に恐れを抱く必要はない――!

 

『2 - 1 - 8 >> [Accept] >> [DECODE]』

 

 右腕に現れた魔法機械(マキナ)を起動する。先端に巨大な円刃の取り付けられた異形の武装。

 円刃は魔力を伴って猛回転を始め、破壊力を飛躍的に向上させる。単一の存在が武器として利用するには不適当な、『決戦派』らしい武装だ。

 これを受ければ、魔族でさえただでは済まない。少なくとも、その黒ずくめの外套の内を暴くには十分すぎる。

 

「逸ったねえ! あたしが紡げる限界はまだ――ッ!?」

 

 ――勝利を確信したような声が途中で途切れる。

 良かった……わたくしが合わせられたのか、リッカが合わせてくれたのかは分からないけれど、どうやら連携はうまくいったようだ。

 

「ッ、人間……!」

「……背後には常に気を張っておくべき。魔法使いなら、なおさら」

 

 僅かに本性を零したアデラキテラの背中から伸びていた翼が散らされる。

 いつの間にか彼女の背後にいたリッカは、自慢の杖を背中から突き刺していた。

 時の操作。リッカが持つ、あらゆる魔族の不意を打てるだろう、リッカが積み上げてきた失敗の象徴。

 攻撃の威力よりは、アデラキテラの魔力を崩すことに特化したものだったらしい。翼が散り、操る魔法が乱れていく。

 

「ははっ、素晴らしいね! 流石は勇者くんのお付きだよ!」

 

 防御障壁が乱れてしまえば、エヴァネスも劣ることはない。

 障壁を杖で突き破り、片手に溜め込んだ魔力を一気にアデラキテラに叩き込む。

 それと同時、わたくしも彼女に辿り着いた。刃の回転は十分――躊躇いなく、その腹に押し当てた。

 

「勇者、だって――――ぐぅ、ぉああ……!」

『[FINALIZE] >> [Accept] >> [DECODE]』

 

 巻き込まれる前にリッカが再び姿を消して移動したのを確認してから、デバイスを操作することで、刃の回転を引き上げる。

 武装ごとに設定された、制限解除プロセス。それは、ユーリたちの外装が持つ、勝負を決めるために使われる機構と同じもの。

 周囲の魔力をかき集め、刃を中心に巻き起こす嵐に変えて、アデラキテラに叩き込む。

 小さな嵐は黒翼を容易く掻き消して、その程度では勢いを弱めず、アデラキテラに襲い掛かる。

 刃を振り下ろせば、その体は広場の石畳に叩きつけられて、周囲に仕込まれていた術式ともども爆発を引き起こした。

 

「……ふむ? とんでもない威力だが、これは……」

「ええ。仕留めていません」

 

 ……手応えがない。呆気なさすぎる。体を切り裂いた感覚も、魔法の核を砕いた感覚もない。

 剥がれた石畳の中心には誰もいない。エヴァネスとともに広場に下りれば、その傍にリッカもやってきた。

 

「リッカ、無理はしていませんか?」

「ん、まだ大丈夫」

 

 リッカが周囲に魔力を放つ。これは――領域の探索か。

 完全無欠だったアデラキテラの領域だったが、戦闘により術式が壊れ、付け入る隙が生まれた。

 ごく小さな綻び。それさえあれば、リッカほどの魔法使いであれば干渉することもできる。相手の探索から、術式に対する浸食まで、きっと思いのままだ。

 

「いた」

 

 リッカはすぐに、アデラキテラを見つけ出した。指さした先、何もない路地へと続くその景色が歪み、黒ずくめの魔族が現れる。

 黒衣が引き千切れ、乱れているが、外傷は見られない。手札を大幅に削ることはできたようだが、まだ手は届いていないようだ。

 

「やってくれるじゃないか、お嬢ちゃん。時の操作に、あたしの魔法のジャミング。まさかそこまでやれる人間がいたとは……勇者のお付きってのは本当かい?」

「……」

「おや。もしかしてボク、喋りすぎたかな?」

「少しは黙っていてほしいと思うくらいには、ですわね」

「ハハハハハハッ! それはすまない! てっきりアデラキテラにも知られているものとばかり!」

 

 可能であれば――ユーリたちは巻き込まれただけのただの人間であると思い込んだままであってほしかったのだが。

 勇者ともなると、価値が変わる。

 アデラキテラは商人だ。勇者の試練という出来事にも、アンテナを張っているだろう。注目されるのは避けたかった。

 

「そうだってんなら……話は変わるねぇ。是非ともあの子らは欲しい。すべての試練を終えた勇者だなんて、最高の商品じゃないか」

「前から気になっていたんだが、キミのその商売への情熱は何なんだい? 借金でも背負っているとか?」

「んな訳あるかい。目的なんざないよ。長命種の動機なんて、考えるだけ馬鹿馬鹿しいだろう? 自分がそういう存在だった――理由はそれで充分さね。なあ? あんたが淫魔のくせして美に拘るのも同じじゃないか」

「はじめから美があるのと、後から商売に出会うのとでは違うと思うが……まあ、いいか。在り方を語るというのなら、それ以上は問うまい」

「それでいいんだよ。あえて問うのは野暮ってもんだろう。あたしは商人。目に映るすべてはビジネスだ。あの中に勇者がいるってんならさっさと出しな。相応の値段で買い戻させてもらうよ。あるいは、そうだね――この町の子ら、全部と交換でどうだい?」

 

 聞いているだけで気分が滅入るような言葉だ。

 これでユーリやクイールに対し、特別な執着があれば、許せはせずともまだ分かる。

 だが、彼女にとってはこれはビジネス。それも、さして重要ではない部類で、偶然“儲け”の種を見つけたというだけの。

 

「ううん……ボクは美食家だからね。あまりそそられないなぁ。……さて、このくらいでいいかな」

「……? なんの話だい?」

 

 とはいえ、気分の悪い話を聞いた甲斐もあったというものだろう。

 ――アデラキテラを見つける前に、ぼそりとリッカは一言だけ呟いた。

 

 一分だけ、集中させて。

 

 わたくしでは途中で手が出ていたかもしれないが、エヴァネスはそれをやり遂げた。

 わたくしも、エヴァネスも、リッカが何をしようとしていたのかは分からない。分かる筈もない。

 ただ、それを聞いた時にわたくしは、“やっと来た”と思った。リッカらしい、とんでもないサプライズを巻き起こす準備が出来たのだと。

 リッカは動くことはない。口も開かず、静かに状況を動かした。

 

「ッ、が……!?」

「――だから言ったのに。背後には気をつけろって」

 

 胸から突き出た、赤い刃。それはあまりに突然で、止まっていた時が急に動き出したかのようだった。

 そう――リッカの時間の中で動けるのは、なにもリッカだけではない。

 もちろん、無駄遣いは厳禁なのだが、リッカはその世界を、共有することもできる。

 アデラキテラの背後に立っていた人影が掻き消えて、気付けばリッカの隣に立っていた。

 もはや見慣れた魔剣を持った、“いつも通り”の姿の少年。

 

「……えっと。状況が掴めないんだけど、結局何が起きてるの? ……リッカ、だよね?」

「……あとで説明する。とにかく、助かったよ、ユーリ」

「――ハハハハハハハハハハッ! やっぱり面白いねぇ、キミたちは!」

 

 リッカの並行作業による、退行魔法の解呪と、対策の行使――恐らくは、時間の関係でまずはユーリだけ。

 そんなところだろう。まさか、戦いの最中にそんなことをしていたなんて。やはりわたくしのお友達は、規格外であるらしい。




【ナディア】
外装に備わっている武装は、ナイフ以外やたら取り回しの悪い武装ばかりなので、タイマン性能はそこまで高くない。
超火力を気前よくぶん回せるような戦場でこそ輝く、決戦派の技術の結晶。
「ハンマーだのパイルバンカーだの……もう少し軽くて振りやすい武装を多く揃えてほしいのですが」
『決戦派が求める先は大型化と火力だった。間が悪かったと諦めていただきたい』
「……ちなみにヨハンナ。あなたはこれらをどうやって使うんですの?」
『慣れれば自身の手の如く振るえるようになる。慣れよ』
「……」

【ユーリ】
リッカが冥界内の時間流を調整し、並列思考を駆使して数日かけて幼児化の解除と対策を施した。
ナイトラクサでの復活前、『ビー・ウィズ・U-リッカ』の完成までの間にラフィーナと特訓を重ね、生身での魔剣の扱いに慣れた。
とはいえ、能力は魔族と戦うには不足。魔族の背中に迫ることはできても「アデラキテラ――獲った」みたいなことは出来ない。
いつもの状態に戻った後、なんか昔のリッカみたいな女の子にいきなり「魔族をぶっ刺して」と魔剣渡されて戦場入り。いつものりっかりかクオリティ。

【クイール&イリスティーラ】
時間がもったいないので放置中。

【ラフィーナ】
リッカの能力により遅くなった時間流に巻き込まれて数日保育士をしていた。
リッカ曰く、「これ以上なく適任だった」とのこと。万能サポーターラフィーナちゃん。

【リッカ】
まだ幼女のまま。
辞書「解除と対策、俺がやろうか?」
リッカ「いいからこっちにリア凸しようとしているゲーミングサキュバスを抑えておいて」
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