凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法   作:けっぺん

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騎士の頂点

 

 

 遊撃に出ていない僕たちでさえ、それぞれ百は倒しただろうか。

 それほどの大群を撃破し、殆ど休むことなく飛び続けて、数十分。いつしか周囲の景色は一面の星空へと変わっていた。

 かつては、どこまでも続くと錯覚させるほどの長い長い螺旋階段を下りて進んだ星の海、それを、ベガという翼で駆け抜けて。

 見えてきた領域の終端たる四角い空間に向けて、ベガは一気に加速して突入した。

 

「バルハラ様――――!」

「ッ、ベガ、危ない!」

 

 しかし――敵もまたそこにいるのならば、突入してきた瞬間を狙うのは当然のこと。

 景色が切り替わり、青い光に包まれた石造りの広場に到達した瞬間、飛来してきたのは、光でできた剣。その形を認識したのは、咄嗟に取り出したバルハリオンから矢を放ってからのことだった。

 ベガの眼前で剣に矢が突き刺さり、威力を相殺する。

 今の鋭い殺気を受けたのは初めてなものの、今の輝きを忘れることはない。

 かつて、一度だけそれを見たことがある。敵ではなく、一時的に共闘関係を結んだ味方として。

 しかし、今の彼の立場は襲撃者。であれば、その光は信頼すべきものではなく――死力を尽くして打ち砕くべき脅威だ。

 

「――防いだか。こうして実感すると喜びが生まれるのは、戦士の性だな。本来、気を引き締めるべき場面だというのに」

「……リーテリヴィア」

 

 広場に降り立ち、対峙したのは、聖都の長であり残り二人となった四天王の一人。

 水の四天王、『王剣』のリーテリヴィアは、腰に提げた剣を抜いてはいない。

 口角を僅かに上げて微笑み、彼なりの喜びを見せつつも、その立ち姿には一切の隙がなかった。

 

「とはいえ、この仕事の現場でキミたちと相対するのは、あまり好ましい話ではないか。完成された勇者とは、然るべき舞台で剣を交えたかった」

 

 その笑みを崩し、僅かに嘆息するリーテリヴィアに対し、人の形へと戻ったベガが恐る恐ると問う。

 

「……バルハラ様を、どこへ……」

「この奥――これの先だ。別の(レイヤー)に隠れたらしい。混沌より分かたれた、この世界の頂点の一つ――やはり規格外な能力を有しているな」

 

 リーテリヴィアが指したのは自身の背後。よく見てみれば、空間に僅かな揺らぎが見える。

 何が起きてもおかしくない、バルハラの領域だ。空間を歪めて、別の場所につなげるなどという行為もお手の物なのだろう。

 

「――それで、キミはここでお留守番というわけだね」

 

 淡々としたリーテリヴィアの回答に、いつもと異なる声色でイリスティーラが返す。

 悪意や害意ではなく、怒りもなく、しかし冷たい声色に、リーテリヴィアは僅かに目を細めた。

 

「……イリス。俺は――」

「愛称で呼ぶなよ、リーテリヴィア。ここで相対している以上、キミと私たちは敵同士だろうが」

「――そうだな。確かに、慣れ合う場ではない。イリスティーラ、キミの言う通りだ。俺は今ここで、番をしている。暫くの間、誰もこの先に通すな、と命じられていてな」

 

 是非もない、と頷いたリーテリヴィアは端的に状況を伝えてくる。

 彼は魔族の中にあって、極めて理性的だ。必要があれば、共闘さえ可能な存在だ。

 だが、彼の立場は絶対的に魔王の側。彼が魔王の命令を受けて動いているのであれば、それの説得が不可能だというのは、あまりにも分かり切っている。

 

「あの……リーテさん。できれば通してほしいんですけど。本気のリーテさんとはいつか戦わないといけないって分かってますが……今は僕たちも急いでいて……」

「無理な相談だという自覚はあるのだろう。ならばそれ以上、口にしない方がいい。クイール、キミは愚者ではない筈だ」

 

 言いながら、リーテリヴィアは手元に一本の光の剣を生成し、背後の歪んだ空間に突き立てる。

 剣は空間に刺さったまま、そこにあった揺らぎを中和した。

 

「さて。言うまでもないだろうが、キミたちの目的を最短で実現する方法を教えよう。――――俺を倒し、押し通れ。旅立った頃ならばともかく、今のキミたちならば不可能でもないかもしれない」

 

 シンプルな結論。そして、僕たちの成長を評価した上での、新たな試練でもあった。

 あの剣が刺さっている間は、先の空間へと飛び込むことも出来ないだろう。

 そして、あの剣を破壊するというのも、彼は許すまい。

 

「先に進もうとしないなら、俺もキミたちに手は出さない。一つだけ言っておくと、バルハラなる存在の身を案じる必要はない。あれは死という概念とは程遠い、世界のルールの外にあるものだ」

「……? それじゃあ、どうしてこんな場所まで……?」

「必要と感じた。それしかあるまい。例外を修正するため、例外を適用する。そうでなければキミたちの成長は制御できないと、そう判断したのだろうな」

 

 ――リーテリヴィアの言葉で、魔王の性質を回想する。

 熱を感じず、感情が見えず、機械的と表現するにも違和感のある――世界を支配しているというのに、世界において何よりも異質に感じる存在。

 魔族の王でありながら、僕たちへの敵意を抱かない。その旅路を強く評価し、その成長を歓迎する。

 最終目的など分からないが、その判断には合理性が見えた。起きた出来事には、必要な分の対処をもってあたる――そんな合理性が。

 これまで、僕たちの目に見える、具体的な行動を起こしてこなかった魔王による大きな動き。これは……僕たちの成長が理由ということなのだろうか。

 

「魔王が何を求めてこの場に来たのか。それはいずれ分かる。ここで待っていても事態は進むが――まあ、キミたちはそういう性質ではあるまい」

「……僕たちは、可能ならここで魔王を倒すつもりで来ている。……戦わないといけないのなら」

 

 言葉にして、あらためて決意を固める。魔王の不気味さなど、この意思になんの影響も与えない。

 僕たちは僕たちの意思でここに来た。魔王が何をしようとしているかなど、関係はない。

 可能ならば、これを最終決戦にさえできるように――そんな気概なのだ。

 

「それでいい。まったく、見違えるな。キミが初めて聖都に訪れた時は、どうやってここまで来られたのかと不思議に思ったものだが。今や頼れる仲間に恵まれ、世界を変えるに足る存在へとなり上がったらしい」

「ッ――!」

 

 鋭い戦意が、まっすぐと向けられる。

 リーテリヴィアから初めて受けるそれは、これまで出会ったどんな魔族よりも研ぎ澄まされたものだった。

 敵意や害意などの含まれない、純然とした、戦闘のための意欲。

 彼は今この場で、ただ戦士として僕たちの前に立ちはだかっている――。

 

「――イリスティーラ、大丈夫?」

「心配は無用だよ、ユーリくん。すべてを打倒して進むと、そう決意したのだろう?」

 

 イリスティーラは躊躇いはないのだろうか、と声を掛ければ、彼女は苦笑を返してきた。

 彼女とリーテリヴィアの関係は、曖昧に察する限りだが、簡単に倒すと決意できる関係ではないだろう。

 それでも――前に進むためには、倒すしかないと。イリスティーラは自身の感情に蓋をして、魔道具にコマンドを打ち込んだ。

 

「ふむ、ふむ。どうにも詮索したいが、ボクもそこまで野暮ではない。しかし、魔王様の前哨戦として立ちはだかるのがリーテリヴィア様とは。これは安請け合いしすぎたかな」

「アリスアドラの側近、エヴァネスか。キミまでいるというのは俺も想定外だ。アリスアドラがいなくなり、サキュバスも混乱しているとは思っていたが、まさかキミが勇者につくとは」

「あくまでもこの場限り、ですがね。彼は誠心誠意でもってボクを口説き落とした。ならば今からそちらの側に立ち直す訳にもいかないでしょう?」

「美学を重視するキミらしい行動原理だ。隷属を強要されている可能性を考えたが、かれらに限ってそのようなことはあり得ないか。であれば、キミもまた同様に、命をかけるがいい」

 

 クイール、イリスティーラ、ナディア、エヴァネス。四人と並び立ってなお、容易く勝てる相手とは思わせない風格。

 このあとに魔王との戦いがあるからと、出し惜しんではいられない。

 バラルバラーズやアリスアドラ同様、死力を尽くして戦うべき相手だ。

 

「行こう、みんな――!」

 

 号令をかけて、一歩踏み込む。その瞬間、リーテリヴィアの間合いに入ったことを直感で理解した。

 ほんの一瞬でも気を抜けば、斬られる。その緊張感で、進む足を緩める訳にはいかない。

 上段から魔剣を振り下ろす。その直後の数秒を、極めて長く錯覚した。

 

「ッ――――!」

 

 眩い光が視界を覆い、柔らかい綿に包まれたように、振り下ろした剣が威力を失う。

 その輝きの中で背筋に寒気を感じ、咄嗟に体を反らせば、胸の位置を何かが通り抜けていった。

 更なる追撃を許す前に、もう一歩踏み込み、そこに既にリーテリヴィアがいないことを確認。

 

 感じ取った戦意は――上方から。

 

 手に光を握り込むことで形成されたリーテリヴィアの剣を受け止めたのは、僕の真上に跳んで躍り出たクイール。

 そして、それに合わせてリッカが魔法を紡ぐ。僕の腕に魔力の力場を形成し、それをクイールの足場とした。

 

「せやああああああああっ!」

 

 しっかりと魔力の足場を踏みしめて、振り払われた聖剣の輝きは、リーテリヴィアの持っていた剣を容易く粉砕する。

 しかし、それで届く相手でもない。砕かれる前にリーテリヴィアはその剣を手放し、光を纏った手をクイールに軽く当て、その魔力を解放した。

 

「くっ――!」

 

 吹き飛ばされそうになるクイールの体を支え、体勢を立て直す。その隙を補う手段は僕とクイールにはないものの、既にそれを見越して動いてくれている者がいる。

 

『2 - 8 - 8 >> [Accept] >> [DECODE]』

 

 僕たちとリーテリヴィアの間に割り込んだ、魔力の刃を回転させる、円盤状の武装。

 それは薄く半透明な魔力糸によってナディアの右腕の魔法機械と繋がり、腕を振るうことで送られる命令に従って戦場を暴走する、やはり僕たちの常識にはない武装だ。

 奇妙な軌道はリーテリヴィアの僕たちへの追撃を封じ、対処に移させる。

 そして――回転する円盤に向かって飛ぶ、イリスティーラの放った魔弾は反射してリーテリヴィアに向かい、しかし彼は動揺することなくそれを容易く切り払う。

 そのうえで、彼を狙ったベガとエヴァネスの挟撃を、両手それぞれに握り込んだ光の剣で受け止めた。

 

「ッ!」

 

 両手が塞がった彼に向けて踏み込み――今度は背後から感じた冷たさに、振り返って魔剣を盾にする。

 そこにいたのは、リーテリヴィアによく似た、身軽な女性騎士。その剣を受け止め、状況を把握するよりも前に足に炎熱を込め、魔剣を軸にして振り上げる。

 叩き込んだ蹴りで、仕留めたという感触はない。光の粒子になって消えていったそれは、リーテリヴィアの“分身”か。

 

「なるほど。今のを防ぐか」

 

 感心したような呟きを零しつつも、リーテリヴィアは他の攻撃を対処している。

 エヴァネスが生み出した石の礫と、ベガが周囲に発現させた魔力の眼から放たれる光線。

 そのすべてを捌きつつ、手元に形成した光の剣――その刃を一際肥大化させ、振り下ろす。

 

「クイール!」

「任せてくださいっ!」

 

『マスター・エクストリームッ!』

 

 巻き起こった光の嵐を、クイールが聖剣から放つ輝きで相殺する。

 そう――相殺だ。圧倒的な威力を持つあの聖剣の一撃でも、その光を押し切ることは出来ず、威力を殺し切ることが精一杯だった。

 さらに、聖剣の力の解放という隙を狙い、リーテリヴィアは光の嵐の中を突っ切って、クイールに迫る。

 驚異的な速度は僕たちの対処を許さず、光の剣は躱そうとしたクイールの肩に突き刺さった。

 

「ッ、まだまだぁ!」

 

 解放しきった聖剣の輝きを再度発現させ、クイールは追撃を許さない。

 飛び退いたリーテリヴィアに向け、加速するクイール。その次の一手を理解して行動を合わせる。

 

『オールリンク!』

 

 このままでは良くてジリ貧、一つ見誤れば一秒後に胸を貫かれていてもおかしくない。

 リッカと意識を一つにする。纏う外装の熱さを超えて、内なる勇気を燃え上がらせる。

 

究極(Xtreme)アップ! Q-クエスター!』

『パーフェクトユニゾン! ビー・ウィズ・U-リッカ!』

 

 外套をはためかせ、より重厚な鎧に身を包んだクイールと共に、一気にリーテリヴィアの懐へと踏み込む。

 魔剣と聖剣。力を尽くした二振りは同時にリーテリヴィアの剣を叩き割り――彼の体を守るように、盾の如く現れた新たな光に阻まれた。

 そのまま光に包まれ、彼は瞬きの内に僕たちから距離を離す。

 互いに息を整えて、体勢を立て直す。クイールの肩に手を置き、リッカが治癒魔法を行使する。リーテリヴィアが妨害してくる様子はなかった。

 

「これだけ集まって有効打はなし、ですか。まさに剣の極み。イルミナが敬意を払うのも当然ですね」

「そうであるのならば光栄だ。とはいえ、俺と彼女の剣は根本的に異なるがな」

 

 エヴァネスの軽口にこたえつつ、リーテリヴィアは自身の周囲に光を集める。

 形成された剣は浮き上がり、こちらに刃を向けてきた。

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