凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法   作:けっぺん

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『王剣』/光の騎士、リーテリヴィア

 

 

 領域中で光が舞い、魔力が炸裂する。

 リーテリヴィアが戦法を変え――否、戦法を“増やして”から数分。

 彼こそは四天王の中でも最高位の技術を有していることを確信するには十分な時間だった。

 

「――そうか。これでも通らないか」

 

 飛来する光の剣に、複製した魔剣をぶつける。

 オズマによって複製された武装は短い時間しか維持できないものの、性能は同等だ。

 それを手元から離した状態で操作することにより、僕たちが操る二本目、三本目の魔剣にさえなり得る。

 尋常ならざる手数に対応するためには、僕たちも取れる手立てを総動員するしかない。

 

「ッ、ナディア! エヴァネス!」

「承りましたわ!」

「いいともさ!」

 

 満足に会話を交わしている余裕はない。

 クイールの外装の力によって、互いに意思の疎通はしやすくなっているため、言葉は最小限でも連携は成立しているものの、悠長に作戦を考えている暇などない。

 お互いに、最善だと思う行動を取るのみ。きっと、クイールがいなければ満足に行動も出来なくなっているだろう。

 

 リーテリヴィアを囲むように展開した魔剣から放つ砲撃と、ナディアの武装による弾丸の嵐。

 そして、それらを埋め尽くすほどの、エヴァネスの魔法。

 まともに直撃すれば、耐えられる魔族は少ないだろう攻撃の中心にいつつも、リーテリヴィアは動じない。

 膨大な威力に飲み込まれる前に、彼は形成した槍によって、迫る攻撃の一部に孔を穿ち――全身を光で包み、無理やり突破して見せた。

 

「ッ――――!」

 

 まっすぐこちらに向かってきたリーテリヴィアの剣を魔剣で受け、拳を叩き込もうとするが、彼は意趣返しとばかりに光を纏った手で受け止める。

 そのまま手首に手が回り、足が蹴り払われる。体勢が崩れると同時に体が浮き上がった。

 放り投げられる前に、宙に足場を作り、踏みしめる。

 天井がひっくり返ったような、慣れない状況。しかしそれに惑わされている余裕などない。

 想定外だったのか、僅かに目を見開き、動きを止めたリーテリヴィアの胸元に、振るった魔剣を叩きつけた。

 

「くっ……なるほど。どれだけの手札があるか、分かったものじゃないな……っ」

 

 しかし、それでも形勢が僕たちの優位に動くことはない。

 リーテリヴィアが纏う鎧は頑強だった。斬撃は決定打にはならず、僅かにたじろがせただけ。彼は即座に僕たちの行動を把握し、対処する。

 

「その鎧は……っ!」

「無論、ただの鎧ではない。キミたちのその外装にも劣らない強度を有していると自負している」

 

 突き出された槍を躱せば、それを追うようにリーテリヴィアの足元から何本もの槍が飛び出してくる。

 僕たちに対してだけではない。この場の全員を対処することを前提とした攻撃だ。

 そして、そうしている間にも彼の鎧についた傷は、光が縫うようにして修復されていく。

 

「かつて撃ち落とした星を鍛たせて造った鎧でな。俺が魔力を注げば、すぐに編まれて形を取り戻す。ゆえに、俺を討ちたいのならばそれでは不足だ」

「さすが……とんでもないもの持ってますね、リーテさんっ!」

 

 クイールとタイミングを合わせて同時に切りかかるも、盾のように現れた剣の群れに阻まれる。

 魔剣に魔力を通して、一息にそれらを粉砕するが――次の瞬間、リーテリヴィアが振るった槍が、光の暴風を巻き起こした。

 細い糸のような光が何条も集まり、周囲のすべてを薙ぎ払う。

 

「う、く……!」

 

 それまでに行っていた剣や槍などの武器の形成ではない、この魔力を純粋に威力に変換した攻撃。

 全身に叩きつけられた熱に外装が軋むものの――僕とリッカで完成させた外装は、このくらいで限界を迎えたりはしない。

 みんなも――無事か。辺りにバラバラと、複製した魔剣の残骸が落ちていく。

 咄嗟の出力だと強度が落ちるが、みんなを守る盾の役割は行使できたようだ。

 

「驚いたな。勝負は決められずとも、形勢は傾けられると思っていたが。それだけ、俺がキミたちを侮っていたということか」

 

 本気ではない……ということはないだろう。

 ああは言っているが、彼は僕たちを侮っていない。ただ、全力を出している訳でもない。

 恐らくは、この場であまり大規模な力を行使できないから。

 魔王が戻ってくる場所でもあり、そもそも、不安定な空間だ。度を越えた力を解放して、領域そのものに不具合が起きてしまえば不測の事態にもつながりかねない。

 本来、今の規模の攻撃さえ、リーテリヴィアはするつもりがなかったのかもしれない。

 

「欲を言えば、使命も立場もなく刃を交えたいところだ。どちらかが倒れるまで、な」

「……リーテさん、もしかして戦闘狂だったりします?」

「否定はできん。このようにまっすぐと武をぶつけ合う機会は稀有だ。……力の差が大きければ、戦いは武を競うものではなくなる。キミたちのような強者は、望んでも見つからないものだよ」

 

 彼の言葉からは、偽らざる称賛と喜びが伝わってくる。

 好き好んで戦いを望む訳ではないのだろう。むしろ、リーテリヴィアは振るう剣に感情を込めたりはしていなかった。

 それでも、戦うのであれば――全力を尽くし、そして対等に戦える相手が良いと。

 魔族だろうと人間だろうと正しく評価する、リーテリヴィアの真摯さが、そこからは感じられた。

 

「……高潔な精神を持ちながら……何故、このような蛮行を……!」

 

 しかし、今の彼の行いは、ベガにとっては許しがたいもの。

 ぶつけられた怒りを、リーテリヴィアはさもありなんと受け止めた。

 

「魔王が決定したことだからだ。俺は王が振るう剣。魔王の命令は、俺のあらゆる私情に優先される。誰かに仕えるとは、そういうことだ」

「おや、これは手厳しい」

 

 リーテリヴィアが口にした、忠義の形。

 それとは異なる価値観で、僕たちに協力してくれている者がここにいた。

 苦い表情など見せず、的確な冗談でも受けたような笑みを浮かべ、エヴァネスはリーテリヴィアの前に立つ。

 そこは、彼の剣の間合いだ。それでも、彼が不意打ちで振るうことなどないと、信じてのことか。

 

「あなたから見れば、ボクの美はさぞ醜悪なのでしょうね。ボクは今、こちら側に立っていることに、なんの躊躇も罪悪感も抱いていないのですから」

「それで構わない、と言った筈だ。己が美意識を最優先にできるのは、確固たる自分があることの証。それは生涯をかけて磨いてきたキミの意思だろう。そこまで自分らしく在れるのは羨ましく思う」

「――羨ましい? これはまた、『王剣』らしくない発言を。その静かな剣は間違いなく、あなたらしさではないですか」

「かもしれん。真実、俺らしいのかと問われれば、答えは出せないが」

「ふむ……?」

 

 淡々と、しかし僅かに見えた曖昧さ。

 そこをエヴァネスは深堀しようとして、しかしリーテリヴィアに放たれた魔弾がそれを封じる。

 イリスティーラだ。冷たさに、今度こそ苛立ちを含ませながら、彼女は魔道具の引き金を引いていた。

 

「お喋りしている暇はないんだ。再開するよ。敵の自分探しに興味があるのなら、終わってからにすればいい」

「……ふふ。そうだね、そうしようか」

 

 エヴァネスは、追及しようとはしなかった。

 ただ、静かに笑い、開いていた手を握り込めば、リーテリヴィアの足元が大きくひび割れる。

 その亀裂から噴き上がる魔力にはいくつもの術式が込められ、リーテリヴィアを拘束しようとするが――彼は即座に跳び上がり、亀裂に向けて光の剣を数本突き刺し、その勢いを封じ込めてしまった。

 

「さすがに、通じませんか」

「良い発想ではあったが、大仰すぎるな。規模が大きくなれば、必然感じ取れるものも多くなる」

「ええ、確かに――ですが生憎、ボクは派手好きなのですよっ!」

 

 既に噴き上がっていた魔力の粒子が風船のように膨らみ、宙で爆発していく。

 爆発はリーテリヴィアを呑み込んだが、彼とのつながりからは、確かな戦意が継続して感じられた。

 位置を特定し――なおも巻き起こる爆発の中に突っ込む。

 本来であれば視界が働かないその状況でも、この外装で補正された視力がリーテリヴィアを捉えるが、振り上げた魔剣を――しかしリーテリヴィアは光の剣で受け止めた。

 

「粗削りだが、良い剣だ。最後まで戦いたかったが――時間切れのようだな」

「何を……!?」

 

 ぽつりと呟くリーテリヴィア。彼と僕たちとの間に形成された光の壁が、僕たちを弾く。

 力場を生成して勢いを和らげ、それに対処している間に、リーテリヴィアは戦闘態勢を解いた。

 まさか――と目を向ければ、魔王の向かった先、揺れる空間に刺さった剣もいつの間にか消えていて。

 その向こうから、覚えのある魔力が漂ってきた。

 

『――なんとも、賑やかな出迎えだ。やはりキミたちは、ここに来たか』

 

 体と一体化した、格子のような鎧。人の型で鋳造された、白い肉体。背負う円環と、黄金の冠。

 そして、どこまでも中庸(ニュートラル)で、感じ取れるもののない、空虚な存在。

 ムルゼの山頂で見た姿は靄のようなものだった。その姿を見たのは、これで二度目だ。

 

「魔王、ゼット……っ!」

「あれが……!?」

 

 警戒を最大級に、空いた左手に出現させた杖を握り込む。

 相変わらず、その脅威性は四天王と比べて、高いとは感じられない。

 しかし、内に在る勇者としての自分が、熱く燃える。何よりも倒すべき相手だと、心臓の鼓動を早くする。

 僕を、そしてクイールを一瞥した後、魔王の目は疑問の声を上げたナディアに向けられた。

 

『然り。初めまして、ネシュア王女、ナディア・オッドマキナ・ディアネシュア』

「ッ……」

【当機】(ワタシ)はゼット。キミたちのいう魔王とは、【当機】(ワタシ)を指す言葉で間違いない』

 

 恐らくは――ナディアの正式名称(フルネーム)

 聞き覚えのない単語を含んだその名前に、ナディアは僅かに反応するも、毅然と返す。

 

「――――そうですか。わたくしのことを知るようですが、一つ訂正を。わたくしはただのナディア。ディアネシュアを背負う訳でもない、この時代に生きる一人の人間です」

『なるほど、興味深い。その選択は、【当機】(ワタシ)の知らないものだ。キミもまた、ここに至り【当機】(ワタシ)の知るどんなキミよりも強くなったらしい』

「あなたの中にある記憶だか記録だかをもとにわたくしを語られるのは不愉快です。二度と口にしないでください。それはあなたが持つべき情報ではないのでしょう」

『それは違う。キミたちのあらゆる可能性は、【当機】(ワタシ)のもとに集まる。希望も、絶望も、ことごとく。ゆえに喜ばしい。キミという存在が、誰に依存するでもなく立つことが出来るとは』

 

 そうは言いつつ、魔王に喜びの感情はない。言葉を発しながら、揺れ動くものは何一つとして存在しない。

 それでも語り続ける姿に、ナディアだけでなく――僕もまた不快感を抱く。

 あの時のような不気味な恐怖は、今はもう感じない。今の僕たちは決して劣る存在ではないと確信が持てている。

 驚異としては、リーテリヴィアの方がずっと上だ。

 

「……ここに、何をしに来たんだ」

『当然の疑問だ。【当機】(ワタシ)はキミたちに対し、大きな期待と共に危機感を抱いた。【当機】(ワタシ)の定めた法則から外れた概念を呼び込むのは構わないが、キミたちが【当機】(ワタシ)の想定を超えて成長する以上、法則にも改定が必要となる』

「ふぅん? つまるところ、ユーリくんたちが強くなりすぎたことで焦っている訳かい?」

『その推測は間違っていない。この世界を支配するものとして、想定外は織り込まなければならない。キミたちを上回る存在として』

 

 そして、それは魔王自身も理解している。

 ゆえにこそ、最強の魔王として僕たちの前に立ち塞がるべく、力を求めに来たと……?

 

「バルハラ様を、どうしたのですか……!?」

『あの存在は今、この揺らぎの向こうで眠っているだろう。【当機】(ワタシ)はあの存在から力を奪った。かつて創世さえ成し遂げた、混沌の欠片を』

 

 魔王が片手に掴んでいるそれは――色鮮やかにきらめく石を削り取ったような塊だった。

 半透明な塊からはバルハラと同じ気配が感じられる。

 あれは、つまり――バルハラの力の源。あの圧倒的な存在が持っていた、全能性を抽出したものなのか。

 

『これが魔王という存在に馴染むことで、魔王は真実、この世界における最強となる。キミたちの使命の最後に待つ存在として相応しい存在と』

「……それなら、ここが最後の場所だ。僕たちはここで、お前を倒す。何を考えていたとしても、これ以上好き勝手はさせない!」

「ッ――その通りです、ユーリくんっ!」

 

 クイールと並ぶ。魔王に馴染むことで最強となるのならば、あれを手に持ったままの魔王はまだそうなっていないということ。

 あの魔王は、楔から出力された存在――いわば、冥界で戦ったあの怪物と同様のもの。

 僕たちが死力を尽くせば、倒し得る存在だ。

 

『ふむ。自由度は高いに越したことはないが、ここは決戦の舞台と定めた場所ではない。なれば、ここでキミたちの試練となるべき存在も、別の存在であるべきだ』

 

 僕たちの宣言に、やはり魔王は動じた様子はなく。

 手に持っていた塊を自身の胸に埋め込みながら、空間の揺らぎの前を開けた。

 

『今のキミたち――究極に近しき勇者たちに相応しい存在がいる。さぞ、キミたちにとって高い壁となるだろう』

 

 一体なにを――と尋ねようとして、揺らぎの向こうから出てきた存在を目にした。

 二人……そのどちらにも見覚えはあった。一人は味方として、一人は敵とも味方とも違う、奇妙な関係として。

 後者については、この場で出会うなどとは、まったく考えていなかった存在だが――ああ、そうだ。確かに、魔王に従う者として、役割を負っていた。

 ただ、彼女の力が、“ここまで”だとは思っていなかった。

 

「――はぁい。勇者ユーリに、勇者クイール。久しぶり。すっごく強くなったみたいで、コッペも嬉しいわ」

「……コッペリア」

 

 かつて出会った妖精たちの劇団、七色妖精戦隊(アイリスバスターズ)における人形遣い。

 劇団の一員として協力したハローネの町で出会った、教会の人形たちすべてを管理するポルターガイスト、コッペリア。

 そして、彼女の前に立っているのは――

 

『―――――――』

「紹介するわ、といっても、もしかすると知っているかしら? コッペの新しいお人形、かつてのネシュアの最高傑作――本当の意味での勇者にして聖女、ヨハンナよ」

 

 自身を複製し、僕たちに力を貸してくれた、人間の頂点たる少女だった。

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