凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法 作:けっぺん
「あは――あは、あははははははっ!」
輝けるクイールの新たな姿を見て、我慢できないとばかりに、コッペリアは笑い出す。
その恍惚とした表情は、今にもその存在を薄れさせて消えてしまうのではと感じるほどだった。
「最高! 最高よ勇者クイール! まさかあなたにこんな可能性があるだなんて! ああ、でもこれからよね! その姿での全力、見せてくれるんでしょう!?」
憑依したコッペリアに影響されていたのか、ぎこちない動きを見せていたヨハンナが、ピタリと停止した後、右手に巨大な武装を装備する。
僕たちも戦わなければと、動こうとするが――クイールは片手で制してきた。
「今回だけ、見ていてください、みんな」
「でも、クイール――」
「大丈夫です。危なくなったら助けてもらいますし、その判断を誤るつもりもありません。けれど……」
ゆっくりと、クイールが体を屈める。
聖剣を両手で持ち、その視線は真っ直ぐ、ヨハンナへと向けられていた。
「ものすごい力が溢れてくるんです。これが、限界の向こう側。今の、今の僕は――負ける気がしませんっ!」
――その一瞬、瞬きをした自覚はない。
静かに、ゆっくりと姿勢を低くしていたクイールが、その力を爆発させると同時に、床を強く蹴った。
認識できたのはそこまでだ。気付けばクイールはヨハンナよりも向こうに立っていて、浮き上がったヨハンナから、コッペリアが引き剥がされていた。
「ひゃっ……!?」
『ポルターガイストとの分離を確認。本体を奪還する』
ただ一人、状況を認識――いや、予測していたらしい、“こちら側”のヨハンナが、落ちた本体にすぐさま飛びつき、その体を動かした。
再度コッペリアに憑依され、操られないように、距離を置くだけでも効果は十分にある。
一方で、引き剥がされたコッペリアもまた、状況を把握していない。
クイールが何をしたのか。その場の誰も、視認することは出来ていなかった。
『なるほど、制御回路に的確な衝撃を与えたか。数分停止させるならばこれが最善。よくやった、クイール』
「上手くいくかは賭けでしたけど。なんか、見えた気がしたんです。さあ、次は――――」
クイールは振り返って、魔王と対峙したかと思えば、再びその姿を消す。
――だが、魔王がダメージを負っている様子は見られない。
一体どこへ行ったのかと、辺りを見渡しても、彼女の黄金は見つけられず。
『――――まさか』
その、“想定外”を意味する言葉で、魔王が見上げている直上に目を向ければ――その暗闇に、無数の直線が走っていた。
きらめく黄金の魔力粒子を散らしながらも、そこにあり続ける正体不明の直線。
それは、まるでクイールが残した斬撃の跡のようにも見えた。
では、その目的は、と疑問を持った瞬間、翼を広げたクイールが姿を現した。
聖剣を左手に持ち直し、空いた右腕を、調子を確かめるようにくるくると振り回してから――
「これで……どうだッ!」
何もない筈の虚空に、その拳を叩きつける。
変化は劇的だった。闇の中に走っていた直線から広がるように、空間が罅割れていく。
やがて、パキン、と高い音を立てて暗闇が吹き飛んでいき――太陽が真横に見える、明け方の砂地が姿を現した。
「ここは、ホロゥ……?」
「同じ位置にある空間を壊して、わたくしたちを外に弾き出したのですか!?」
「よしっ! 今日の僕、冴えてます! イリスが来られてませんけど……あれだけ目立てば、きっと気付いてくれるはず!」
――元々、僕たちがいた迷宮は、この広大な砂の大地の地下に入り口があった。
しかし、あそこがバルハラの力によって広げられた空間である以上、物理的な位置や距離に囚われていなくても、何も不思議ではない。
同じ場所にありながら、層の違う空間。二つを隔てた層そのものを、クイールは粉砕したのだ。
そして、その目的は明白。クイールが対峙する、魔王の背後には、巨大な柱が屹立している。
僕たちが破壊すべき、最後の楔だ――!
『……馬鹿な。勇者クイール、キミはそのような絶技まで届く存在ではない。キミの限界はもっと浅い』
「分からない魔王ですね……限界を超えたって、言ったじゃないですか」
『定められた限界を超える機能などあらゆる生命には存在しない。その状態は極めて不正だ――修正の必要がある』
「結局、自分よりも強くなってほしくないだけじゃないですか。……そういう理不尽に、僕は抗うって決めたんです!」
クイールが聖剣を強く握り込めば、それに呼応するように光が増す。
刃に灯った魔力は一振りで解放され、光の斬撃となって魔王へと突き進む。
しかし、魔王が有する障壁は未だ健在。
斬撃は障壁に吸収され、魔王に届くことなく霧散していった。
『無駄だ。確かに出力が向上しているが、キミの力は
「それなら――手が届くまで、駆け続けるだけです。限界の向こうは、限りなく広がっているんですから!」
攻撃が届かないことはクイールの想定の範囲。
魔王の冷たい宣告を一蹴し、翼を広げて飛び上がる。
その姿が消えたかと思えば――魔王を囲むように、黄金の軌跡が幾本も走り始めた。
「なんて速度……これなら!」
目で追えないほどの速度だった。
今の僕たちでは、走る軌跡によって、直前にどこにいたのかを悟ることしか出来ない。
「そこぉ!」
『予測済みだ。勇者クイール、キミの攻撃傾向はすべて読めている。キミが何を思考しようとも、
背後に振り下ろされた聖剣は、やはり障壁に受け止められる。
しかし、二つの拮抗は一秒と持続しない。無理だったと分かるや否や、クイールは飛行を再開する。
魔王を守るように、二つ、三つと障壁が展開される。ほとんど同時にそこに聖剣がぶつかり、次の攻撃へと移る。
見える軌跡は徐々に増えていく。それは、クイールがさらに加速していることの証左。
外装を纏っていなければ、人の体では耐えられない速度。しかし、そんな限界を躊躇いなく超えて、クイールは音さえ置き去りにして飛び続ける。
『――――何?』
――そして、一閃。魔王の体を光が掠め、魔力が散った。
障壁を破った訳ではない。ある意味では、もっと難度の高い攻略方法。
クイールは、魔王の演算速度を超えたのだ。
「はっ!」
『む、ぅ……っ』
立ち止まり、姿を現したクイールが振り向き、再度魔王を切りつける。
想定外の事態に
『馬鹿な。
クイールに向けて落下してきた、硝子の破片のような色彩の刃。しかし、それが刺さる前にクイールはその場から消えていた。
再度の接近を防ぐため、さらに魔王は、周囲にさまざまな色の球体を浮き上がらせる。
それらが攪拌され――巻き起こる色彩の風。
あらゆる色が掻き混ぜられる嵐は魔王を守り、広大な範囲でもってクイールを巻き込まんとする
「ッ――クイールっ」
そんな中で声を上げたのは、リッカだった。
クイールが言葉を返す前にその黄金は嵐に呑み込まれ――そして、魔王が反応するよりも前にクイールは魔王の目の前に現れ、その体を切り上げた。
『ッ――――』
「あっぶな……ナイスですリッカちゃん。助かりました」
「……油断しないで。その速度はすごいけど、避けられない攻撃には弱い」
「忠告、受け取りました。やっぱり、身を守るすべも必要ですよね」
そう言ったクイールが左手に持っていたのは、銀色の盾だった。
バルハリオン――バルハラが僕たちに渡してきた、冥界の力を有する大斧。
その可能性の一つとして持つ、大盾の力が、クイールを守ったのだ。
『――あり得ない。この結果は不具合だ。不具合は修正しなければ。不具合は理解しなければ』
「なかったことになんてさせません。僕の決意も、僕の旅路も。全部があなたの理解の内になければ駄目だというのなら、そんな理不尽こそ、修正すべきです」
『それが、
「そういう事情は、ロスラウドってところで聞くことにします。あなたではない、本当の魔王に、ですけど」
感情こそ見えなくとも、魔王から出力されているそれは――焦りのように思えた。
クイールは魔王の想定を超えた。それも、魔王の許容できる範囲ではなく、致命的な不具合となるかたちで。
『理解しなければ。理解しなければ。理解しなければ。理解しなければ――』
「理解できるといいですね。僕は、僕の思うままに駆けるだけです。本当に駄目だと思うことは、みんなが制してくれますから」
『ファイナルチャージ! スタンバイ!』
大盾を砂地に突き立て、聖剣を手放す。
聖剣は落ちることなくクイールの頭上にまでふわりと浮き上がり、その輝きを強めた。
徒手になったクイールを隙と見たのか、魔王が手元に色彩の塊を生み出し、放つが――着弾と同時、クイールは魔王に向けて踏み込み、その黄金の装甲で固められた拳を叩き込んだ。
『ぐ……ッ』
神速でもって魔王を捉えた拳は、一撃だけでは終わらない。
直撃を魔王が理解するよりも前に左の拳が叩き込まれ、魔王の想定外をさらに塗り替えていく。
反撃しようと振るわれた魔王の腕は空を切る。
気付けば背後に立っていたクイールは足払いで魔王の体勢を崩し、大きく蹴り上げた。
『マスターチャージ!』
その時、聖剣の輝きが一際増し、刃が纏う魔力が濃くなった。
クイールは聖剣に目も向けず、蹴り上げた魔王を追う。
あれは――クイール自身の出力と、聖剣の出力が共鳴しているのか。
クイールが自身の限界を超えて力を高め続けることで、聖剣がそれに呼応し、本来定められた限界を超えて出力を上げ続ける。
望めば望むほど。自分の力を信じれば、信じるほど、クイールと聖剣は無限に強くなる――!
『マックスチャージ!』
空中で自由な身動きの取れなくなった魔王を、クイールはさらに速度を高めて追撃する。
黄金の軌道は今度こそ障壁に阻まれることなく、宙に浮いた魔王をその場に縫い付ける絶技を実現させた。
「まだです! 速く、速く――誰よりも速く!」
『エクストリームチャージ!』
拳の嵐、蹴りの嵐。それらを防ぐ手立ては、既に魔王にはない。
――全方位に対してあの障壁を維持し続けることが出来れば、優劣は変わっていたのかもしれない。
しかし、それは果たされなかった。非効率を魔王が許容できなかったのか、それともそこまでバルハラの力を自在に操ることができなかったのか。
どうあれ、最善が取れなかった以上、クイールの光にも追い縋らんとする速度を魔王は捉えられない。
『オーバーチャージッ!』
限界の遥か向こうに至ったクイールが振り下ろした拳が、再び魔王を大地へと叩き落とす。
それを最後に、滑るように降り立ったクイールは、もはやその輪郭さえはっきりとしないほどに光を湛えた聖剣を手に取った。
既にその輝きは、これまでの聖剣とは別物といっていい状態。
この世界における、“輝き”という概念の究極にある存在とさえ思えた。
放つ光輝は周囲を太陽よりも明るく照らす。明け方の空で、ただ一点、この場所だけが昼間であるかのようだった。
『ファイナライズ! スタンバイ!』
高く高く聳える光の柱。それこそが、聖剣ブレダリオンの最終形態。
その光は本来、人が持つにはあまりにも不相応で――しかし、クイールの象徴としてはこれ以上ないほどに相応しい。
――かつて、ナイトラクサでヴァンパイアからの交換条件で、この聖剣を目指した苦い記憶を思い出す。
たとえあの時、僕たちが聖剣を手に入れることが出来ても、ここまでその真価を引き出すことは不可能だっただろう。
きっと聖剣は、クイールのためだけに存在していたものなのだ。
『……この……不具合を、
「受け入れられなくても、この世界に刻み込みます。僕たち――ハッピーエンド同盟が目指す、文句なしのハッピーエンドのために!」
『――――オーバー・エクストリームッ!』
両断される寸前、魔王は色彩の障壁を出現させていた気がする。しかし、それは一切拮抗することなく、輝きの内に消えていく。
宣言と共に振り下ろされた聖剣は、最後までその光を理解できなかった魔王を、そして背後にあった四つ目の楔を完全に焼き尽くした。
『Q-クエスター
【属性】勇気
【攻撃力】■■■■■■■■■■■■
【防御力】■■■■■■■■■■
【素早さ】■■■■■■■■■■■■■
【魔 力】■■■■■■■■■■
【精神力】■■■■■■■■■■■■
【マイティエクスペリエンス999
クイールの覚醒した勇者としての性質に呼応し、強化・増設された経験上限突破システム。
『
この機能の使用に求められるのは、限界のその先である未知の領域へと踏み出し、さらにその先へと駆け続ける勇気。
知性体が踏み込むことを本能で恐れる領域の先にある力は聖剣にも作用し、担い手と双方を上限なく強化していく。
【ブレダリオンアーマーZ】
光翼ゼクセリオンとの融合により強化された、Q-クエスターの鎧。
鎧そのものの防御力が変わった訳ではないが、『マイティエクスペリエンス999O』による強化倍率が向上しており、最終的な性能は大きく上回る。
【オーバリーブレダリオングローブ】
超強化されたクイールの身体能力を補うための腕部装甲。
それまでの形態に不足していた素手での攻撃力を飛躍的に高め、速度を乗せれば乗せるほどに破壊力を増す。
【オーバリーブレダリオンブーツ】
超強化されたクイールの身体能力を補うための脚部装甲。
光翼による超速度の中においても姿勢制御や体勢の安定を可能とし、キック力も大幅に強化する。
【オーバリーゼクセリオンウイング】
光翼ゼクセリオンとの融合によって発現した黄金の翼。
自在な飛行を可能とし、世界の法則を遮断する極薄のフィールドを纏うことで生命の限界を超えてなお加速し続けることが出来る。
装備者は時間感覚の操作により、超速度の中でも十全たる戦闘が可能となる。
【ブレダリオンリンクマスタリ】
聖剣ブレダリオンとの出力共感システム。
リッカが魔剣ラフィーナに搭載した経験共感システム『U-ブレイブマスタリ』と似て非なる機能であり、聖剣/担い手双方の戦闘時の出力増強を共鳴させる。
聖剣で的確に相手にダメージを与えれば、その分担い手が強化され、担い手が速度を上げて敵に有効な攻撃をすれば、聖剣に魔力が充填される。
担い手が、聖剣と真に対等になることで解放された、共に限界の向こうへと駆けだすための力。
この機能の解禁により聖剣の装備による制約はすべて解除され、他の武器を同時に装備するなども可能となり戦闘の幅が広がっている。