凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法   作:けっぺん

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最後の夜(1)

 

 

「さて。これで予定していた買うものは全部かい?」

「うん。肉はリッカたちが買っている筈だし、これで終わりかな」

 

 イリスティーラが用意した、内部を魔法で十分に拡張した保冷用の鞄に、買い込んだものを詰め込む。

 しかし……炭か。本当に聖都には何でも揃っているなと感心する。

 火の代わりになる魔道具の使用は聖都では基本となっている。薪や炭はあまり使われないらしいが……それでもこうして大通りから外れてみれば、それを売っている店もある。

 魔法の触媒にでも使うのだろうか。そうした魔法も、もうあまり広く使われてはいないと聞くものの、愛好者はいるのかもしれない。

 現に、イリスティーラは店主と知り合いのようだったし。

 

「……いい加減聞きたいんだけどいいかしら。なんで私、買い出しに付き合わされているわけ? 荷物持ちかと思ったらそうですらないし」

「……強いて言えば、海鮮の目利きのため?」

「張っ倒すわよ」

 

 そうは言うものの、ラフィーナから苛立ちは向けられていなかった。

 アッシュを通して街を見たことがあったからか、最初はリッカの決定に戸惑ってこそいたものの、ラフィーナが聖都に馴染むのは早かった。

 

「他ならともかく、聖都で私を出したりする? 私たちとエルフの相性の悪さ、知らない訳じゃないでしょ?」

「まあ、だからこそ私たちは大通りの用事はそこそこにしてもらったんだよ。ちなみに私もいる以上、ユーリくんがいなければ満足に買い物もままならないね」

「普通に人選ミスでしょ」

 

 ――さて。ホロゥにあった楔の破壊を終えて、聖都に帰還して二日。

 ロスラウドへと向かう前の最後の休息。

 一日ゆっくりと休んだ翌朝、クイールがホープに、せっかくだから何かしたいことがないかと尋ねた。

 最後の戦いが、一体どれだけ掛かるものなのかは分からない。一日で終わるかもしれないし、何ヶ月と戻れない激戦になるかもしれない。

 だからこそ、出発前にホープのしたいことを叶えたいと、クイールは望んだ。

 その結果、ホープはこう答えた。

 

 ――それなら。みんなでご飯食べたい。

 

 そんな一言が、ことの始まりだった。

 張り切って屋敷のキッチンに向かいかけたクイールをひとまず取り押さえ、しかし良い案だからと僕たちも賛同。

 そこにナディアの、どうせだから盛大な宴にしようという提案が出され、さらに便乗したリッカが宴の形態を提案。

 あれよあれよと話は広がり、どう考えてもこの人数で買い込む量ではないというイリスティーラの指摘も空しく、総出で買い出しに出ることになったのである。

 ……僕も本来であれば止める側であったと、今は反省している。なんというか、そういう空気だったのだ。

 

 買うものが多いため、僕たちは現在、二手に分かれている。

 僕とイリスティーラにラフィーナ。リッカ、クイール、ナディアにホープ。

 ……思えば、リッカと別行動というのも滅多にないこと。

 少しだけ違和感があるが、それだけ、リッカが心に余裕を持ってくれたというのは嬉しかった。

 

「で、そんな状況で私を付き合わせたのが、エビだの貝だのを買うためって? あんたがやれば済んだ話じゃないの」

 

 不満だらけのラフィーナに頭を掴まれる。

 本人としてはあまり力は入れていないだろうが、不満が十二分に伝わってくる程度には痛みがあった。

 

「ラフィーナ、痛いんだけど」

「生きている証拠ね、良かったじゃない。私に目利きをさせるとこうなるのよ」

「だって僕たち海の魚とかよく知らないし」

「あいつなら知ってるでしょ。五千何十回と旅してるんだから。それに前世だか何だかにも海くらいあった筈よ」

 

 苛立ちからか、割と滅茶苦茶なことを言っているラフィーナをなんとか宥める。

 リッカのこれまでの旅での食事事情は詳しく知らないが……少なくとも“前世”などあてにできるものでもないだろう。

 前の世界と今の世界はまるで違うだろうし、そもそもそんなことは忘れていてもおかしくない。

 

「まあ、いいじゃないか。キミもアリスアドラについていた頃、聖都なんか来たことはなかっただろう? 実際に歩いてみて、どうだい?」

「……成金の街ね。ナイトラクサといい、ここといい、自意識過剰にも程があるわ。もう少し慎ましく暮らすこともできるでしょうに」

「ユーリくん、素直じゃなく悪ぶりたいのは彼女の趣味なのか?」

「そうじゃないかな――痛い痛い痛いっ」

 

 ギリギリと僕の頭を掴む手に力を込めてくるラフィーナに降参を示す。

 どうにか逃れて距離を取れば、如何にも怒り心頭ですとばかりの表情を向けられた。

 

「本当にあんた、図太くなったわね。魔族相手にそんな態度でいられるの、はっきり言って異常よ?」

「せめて、度胸がついたとか言ってほしいんだけど……それに、別にラフィーナは警戒するような相手じゃないし」

「信頼されているって意味なんでしょうけど、そこはかとなく馬鹿にされているというか、ナメられている気がするわ」

「理不尽じゃない?」

 

 とはいえ……僕も、最初に会った時や、魔剣として協力してくれることを知った時、このように軽口を言い合える関係になるとは思っていなかったが。

 断片的にしか知らないから断言できないものの、リッカが過去に経験した、いつかの旅路はこういうやり取りが当たり前だったのかもしれない。

 

「それよりも……ラフィーナは、何かないの? 食べたいものとか。まだ余裕があるけど」

「……」

 

 勇者の旅のために、教会で提供される資金は、旅の仕方にもよるがそれなりに多く渡される。

 僕たちの主な利用先は、旅の中での危険を減らす魔道具の類だったが、それもゼクセリオンを手に入れてからは買い込む頻度は減っている。

 クイールと出会ってからは二人分受け取れるようになり、ある程度自由な用途に使える程度には溜まっていた。

 

「…………アイス、あいつが買っているんだっけ」

「そうだね、リッカたちの方のリストにあったはず」

 

 アイス、食べたかったのだろうか、と意外に思うも、悟られたらまた頭を締められそうだったため顔に出さないように努める。

 ラフィーナの好き嫌いとか、そういえば知らなかった。

 もしかして甘いものが好きだったのだろうか。

 

「……貰うわよ」

 

 ラフィーナはまたしばらく黙り込んだ後、取り出していた銀貨を何枚か摘まんで、近くにあった酒屋へと歩いていく。

 残った僕とイリスティーラは、思わず顔を見合わせ、なんとも言えない空気に苦笑を零した。

 

「……随分とストレスが溜まっているようだね、彼女」

「うん……負担をかけている自覚はあるよ。それでも、ラフィーナにも手伝ってもらわないとならない」

「それが嫌だとは思っていないだろうさ。まあ、これはキミにわざわざ言う必要もないことだろうが」

 

 ラフィーナが向けてくれる信頼を、自覚はしていた。

 文句を言いつつも、ラフィーナは僕たちに付いてきてくれている。

 リッカから協力を持ち掛けられた時の印象は、きっと最悪だっただろう。

 そこから、奇妙な共闘関係になって、今はもう、僕たちにとってなくてはならない存在。

 彼女もまた、共にハッピーエンドに辿り着くべき仲間なのだ。

 

 しかし、ラフィーナ……お酒を飲めたのか。

 僕たちの村では、成人するまでは禁止されていた。聖都ではどうなっているのだろう……別に飲もうとは思わないが。

 ラフィーナは見た目の年齢は僕たちと変わらずとも、僕たちと会う前は普通に嗜んでいたのだろうか。

 ……ラフィーナって、何歳なのだろう。

 恐らく実際に聞いてみれば後悔することになるだろう疑問を抱いている内に、手早く買い物を済ませたらしいラフィーナが店から出てきた。

 両手にそれぞれ、異なる色の瓶を持っている。

 それを無造作に鞄に突っ込みながら、ラフィーナはイリスティーラに目を向けた。

 

「……付き合いなさいよ。飲めるんでしょ?」

「……そこまで強い訳でもないが、それでいいのなら」

「二人とも、飲めるの?」

「魔族は人間と代謝が違うのよ。一晩眠れば影響だってなくなるから、安心しなさい」

 

 ――そう、僕たちは明日、聖都を発つことを決めている。

 ロスラウドに向けた最後の旅路。あとはもう、魔王を倒し、勇者としての使命を終えるまで、戻ることはないだろう。

 きっと、これまでよりも激しい戦いが待っている。

 今夜の宴は、その前の最後の思い出を作る目的もあることを、僕たちの誰もが理解していた。

 しかし、それを口に出すことはしない。

 まずは今夜のことだけを考える。そうでなければ、心から楽しむことが出来ないから。

 

「さて、買い物終わったのなら帰るわよ。ただでさえ、こんな面々で集まっていたら注目されるんだし」

「そうだね。少し早いが、火の準備はしておくかい?」

「その前に、食材の下処理とかを済ませないと」

 

 リッカたちが調味料や果物を買っていたはずだ。

 肉の下味はそれでいいとして……海のものはどうすれば良いのだろう。

 

「……ふむ。私にはあまり力になれそうにないな。ラフィーナ、キミは?」

「それなりには。……っていうか、あんたもいい加減覚えたら? ホープの成長に障るでしょうが」

「む……それを言われると弱いのだが……食事は腹が膨れればそれでいいと思っていたからね。キミたちと旅を会うまで、久しくまともなものを食べる思考がなかったというか……いや、最低限、作れはするが……」

「これだからマッド気質は……せめて今夜くらいはたらふく食べさせてやらないと……」

 

 あの屋敷での食事は、基本的には大量に買い溜めてある、保存のきくパンやレトルト食品なのだったか。

 確かに……それでは味気がないし、必要な栄養価もとりにくいだろう。

 クイールが料理に挑戦し始めているが、まあ……あんな調子ともなると、成長にはもう少し時間が掛かると思う。

 むしろホープの方が、身に付けるのが早いような気さえする。この辺りは、得意不得意だろうか。

 僕やリッカも、別にそこまで実力がある訳ではないものの、ホープのためにも、僕たちに教えられることは教えた方が良いのかもしれない。

 

「……仕方ない。下処理とやらは手伝おう。ホープに大きく育ってほしいというのは、私も望むところだ」

「うん、お願い。量が多いから、とにかく人手も増やした方がいい」

「あんたたちが変なノリになってここまで買い込まなければ良かっただけの話なんだけど」

 

 大本の話題に戻り、責任の所在は誰かなどと不毛な会話をしながら、屋敷へと戻る。

 食材の量は多いが総出で挑めば十分に終わるだろう。

 全員で行う準備というのもいいものだと――村にいた頃の祭りをふと、思い出す。

 大人たちが狩ってきた獣や行商から買った食材をみんなで料理して、広場で囲む、年に二回の祭り。

 あれと同じ空気とはならないだろうけど、今回の宴も、また楽しいものとなるだろう。

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