凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法   作:けっぺん

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終天の幕開け

 

 

『とりあえず、やるべきことは定まったわね』

 

 エーアイから聞きたいことを聞き終えて、その建物を出る。

 リッカの冥界で話を聞いていたラフィーナも、あらかた状況は理解したようだ。

 結局、どうして転生領域のアクセス権限について、何かしらの記録があるのかは分かっていない。リッカが、他の転生者たちに聞いてみるとは言っていたが、望み薄とのことだ。

 とはいえ、そこの謎が残っても、僕たちがやるべきことは変わらない。

 魔王を倒す。その中で、残された謎の解答が得られれば、それでいい。

 

「目指すは、あの赤い障壁。あの先に、魔王がいるんだよね」

「『終天城ワールドコア』でしたっけ……なんか仰々しい名前ですよね。如何にも、って感じです」

「直球にもほどがあるな。一体だれが名付けたんだか」

 

 そこが僕たちの、最後の目的地。勇者の使命の終点。

 魔王の城――その響きに、“それらしさ”を感じるのは、かつてリッカが勇者になると息巻いていた頃、魔王のイメージをよく語っていたからか。

 四天王を従え、魔王の城で勇者を待ち受ける。

 それが魔王の一般的なイメージであるらしい。魔王のイメージに一般的も何もないと、僕もカルラも生暖かい目で見ていたが、恐らくはリッカの前世におけるイメージなのだろう。

 

「……リッカの世界ってそんなに魔王がいたの?」

「急に何……?」

 

 ふと考えると、ますます分からなくなってきた。

 鉄の乗り物が列を作って走り、地上だけでなく地下までも人で溢れ返り、転生者と魔王もありきたりになるほど存在している。

 リッカの前世はどれほど混沌とした世界だったのだろうか。正直、そんな世界、まともに生きていけるとは到底思えない。

 

「……なんかユーリが妙な誤解を持っている気がする」

『脈絡もなく一体何を思い出したのよ、あんた』

 

 うん――確かに、今考える話でもなかったか。

 リッカの前世については、また別の機会に教えてもらおう。時間なら、これから先にいくらでもあるはずだから。

 

「ともかく、ここで話していても仕方ありません。向かうとしましょう」

「そうだね。行こう、みんな」

 

 ここに居続けても、何も事態は動かない。

 相変わらず変化のない、満天の星空の下、黒い街並みを歩き始める。

 喧騒はない。それどころか、僕たち以外に生命の気配もしない。

 あのエーアイのような存在は他にもいるかもしれないが、この都市のどこかにいるとしても、探すのは骨が折れるだろう。

 

「……そういえば、このロスラウドはいくつかの区画に分かれているんだよね」

「僕たちがいるのは第二セクター、でしたっけ。他のセクターには行けないって話でしたけど」

「ふむ。他のセクターには誰かいるのだろうか。こうも無人の都市というのは、どうにも不気味だね」

「リッカ、あなたの使い魔では別の区画に飛んでいけませんの?」

「やってみているけど……ここと大して変わらない。人も魔族も見られない」

 

 理由があって区画が分けられているのだとは思うが……別の区画に行けば人がいる、ということでもないようだ。

 ロスラウドがどんな都市なのかと、先ほどエーアイに尋ねてみたが、返ってきた答えはやはり『アクセス権限がない』というもの。

 少なくとも、ここを建造した者たちにとって、重要かつ秘匿すべき目的があることは間違いない。

 ここは一体なんなのか。どうして、こんな天空に建造する必要があったのか……これも、魔王から聞けるのだろうか。

 

「……それよりも。気を付けて。この先に――土の四天王がいる」

「っ」

 

 リッカの一言で、一気に緊張感が高まる。

 魔王以外と戦闘しないなどと、甘い考えは持っていない。

 どこかで戦うことは必然であったが――最初に待ち構えているのが彼だとは。

 

「……ナディア」

「ええ――加減は必要ありません。あの者が邪魔をするというのであれば、撃破するまでです」

 

 ナディアに躊躇いはない。既にナディアは、オドマオズマを完全に敵と認識している。

 彼女にとって、彼との戦いは過去の清算。ネシュアの落日のきっかけとの対峙だ。

 歩みを進める。赤い障壁までまだ少し距離がある広場。

 その向こう側の建物の陰から、黒い外套の魔族は姿を現した。

 

「……驚いてはくれないか。察するに、既に斥候を回していたな? まったく、それではサプライズの魅力もあったものじゃない」

「オドマ、オズマ――」

「ここはキミたちの運命の終着点だ。キミたちが諦めない限り、いくつもの驚愕が待っている。私がすべての脚本を書いた訳ではないが、その一つ一つを楽しんでもらいたいな」

 

 片手に持った杖を弄びつつ、彼は落胆を隠さずに言う。

 喉から出ているとは思えない何かに反響した声は、周囲の閉塞的な景色に響くように、脳を揺らす錯覚を生む。

 ……あくまでも錯覚だ。強く意識してはいけない。

 相手は、魔族の一つの頂点だ。これが何かの悪影響に作用する呪いの類である可能性は否定できない。

 

「――あなたの道楽に付き合う暇はありません。道を開けなさい、四天王オドマオズマ」

「結局、キミも来たんだね、ナディア。友を想うその気概は大したものだが、やはり愚かだ。生を謳歌するのであれば、聖都で大人しく暮らしていればよかったものを」

 

 毅然と告げるナディアに対し、愚行だと嘆くオドマオズマの言葉は――意外なことに、本心だった。

 それが一体どんな感情によるものか。

 察する前に、彼は気持ちを切り替えてしまう。ナディアがそう選択するのであれば、仕方ないと。

 

「わたくしは、かれらとハッピーエンドに辿り着くと決意したのです。一人だけのうのうと暮らす? それこそ愚か――友のために命を張れないなど、生き恥にも程がありましょう」

「そう息巻いて何も成せず、無様に死ぬことほどの恥もないだろうに。――いいだろう。それがキミの選んだ道であれば、私が相応しい終わりを用意しようじゃないか」

 

 その言葉とは裏腹に、オドマオズマはこちらに戦意を向けることなく、数歩下がって指を鳴らす。

 すると、辺りから灰のような魔力が集積していき、一人の騎士が現れた。

 罅のような赤い紋様が全身に入った黒鎧。首元を隠す襤褸のような布切れ。

 透き通った髑髏の内側に炎が燃える異様な頭部。

 両手にそれぞれ剣と盾を持ち、戦闘態勢の整った騎士は、オドマオズマを守るように、前に立った。

 

「全員が会っている訳ではないようだから、紹介しておこう。彼はエコー。私が仕立てた統一騎士(デュラハン)だ。今のキミたちと対等とは言わないが――戦える程度には調整(チューンアップ)してある」

 

 エコー、と呼ばれた騎士は、反応を見せることはない。

 だが、一瞬――その大きな感情を、より昂らせた。

 方向性の定まらない感情は全体がオドマオズマに向いて、しかし、それが嘘であるかのように、再び取り留めのないものになる。

 

「こんな局面でまで他人任せとは、当たり前に持つべき誇りさえ失いましたか」

「武闘派だと驕るつもりなどないからね。私はリッチ。死を支配し、死を踊らせるもの。ゆえに、私は数多の死をもって、キミたちの運命の果てを彩ろう」

「そういう割には、ここには碌に死体もないようだが。空の上なんて、最も死体漁りに相応しくない場所だろうに?」

 

 イリスティーラの煽りに対し、オドマオズマは肩を竦める。

 ここにはそもそも、彼が操れるような死者がいない。ネシュアのように、彼に適した戦場ではない。

 それを、オドマオズマ自身も否定するつもりはないようだった。

 

「確かにそうだが、そこらの死体を使ったところでキミたちの相手にはならないだろう。試練の頃ならばともかく、今のキミたちに向ける手先ならば、相応の質がなければ」

「その結果が、騎士一人ですか。それなら、すぐに突破し、先を急ぐまでです」

 

 あの騎士――エコーは確かに、強い力を持った魔族だろう。

 しかし、僕たちが力を合わせれば、十分に突破できる障害だ。

 ……彼が本当に、単独の騎士だったのであれば。

 

「――だそうだ。侮っている訳ではない、妥当な戦力評価なのだろう。……だからこそ、裏切り甲斐ががある。そうだろう?」

「……敵を欺く趣味はない。私は私に与えられた(きのう)をもって、与えられた命令(きのう)を完遂するまで」

「ッ――!」

 

 声が響くのと同じように、魔力が辺りに拡散し、建物に当たって跳ね返る。

 魔力の反響としか喩えようのない奇妙な現象が、エコーの魔族としての特異性を発現させた。

 跳ね返った魔力が彼の体を複製し、新たな騎士を構築する。その騎士が、さらに周囲に自身の魔力を拡散させる。

 一人が二人に、二人が四人に――騎士はたちまち、軍勢へと変わっていく。

 

「そら。最上位の魔族には及ばずとも、これだけいればキミたちの準備運動にはなるだろうさ」

「――みんな!」

 

 それがあの騎士の特異性であるのならば、悠長に見ているのは悪手でしかない。

 警戒度を引き上げる。彼もまた、四天王の側近に相応しい能力の持ち主だ。

 

「やれやれ、これだからアンデッドという連中は……!」

「今のわたくしたちなら押し切れる相手です! 出し惜しみはしないように!」

「はい! 最初っから全力で行きましょう! 目の前で立ち往生なんて嫌ですから!」

 

 鞄からゼクセリオンが飛び出し、クイールの手元に移動する。

 黄金の翼が聖剣に装着されたことに続いて、僕とリッカは互いの指輪を合わせた。

 

『マスター! マックス! エクストリーム! オーバー!』

『インフィニティリンク!』

『エタニティリンク!』

 

 そして、イリスティーラとナディアが、それぞれの魔道具に独自のコマンドを打ち込む。

 これが僕たちが万全な戦いを行うためのすべ。言うなれば、僕たちというパーティの象徴だ。

 

『トランスコード! イグニッション!』

『ブレイブコード! オーバーロード!』

『シークレットコード、レディ』

『7 - 4 - 1 >> [ACCEPT] >> [DECODE]』

 

 てんでばらばら、好き放題に鳴り響く魔法音声が、騎士たちが拡散させる魔力とぶつかり合う。

 

『オールリンク!』

『キメラスタイル、インストール』

 

 しかし、その過程がばらばらであっても、その決意は同じもの。

 こんなところで立ち止まってはいられない。どんな障害も乗り越えて、ハッピーエンドに辿り着く。

 その意思が一つになり、僕たちの外装を形作る。

 

『パーフェクトユニゾン! ビー・ウィズ・U-リッカ!』

『オーバーアップ! Q-クエスター! 超・究極(Overly)ッ!』

『I-スティーラー、ショー・タイム』

『[Complete] >> [D-RIKKA]』

 

 リッカと存在を一つにして、外装が成立すると同時に、呼び出した魔剣を握り込む。

 クイールたちの個々の得物と動きを合わせて振り下ろせば、巻き起こった魔力の爆風が騎士たちのいくらかを吹き飛ばした。

 

「ふふ……そうでなくては! 信念と力ある勇者たち、であればこそ私の舞台も栄えるというもの!」

 

 その様子に危機感を抱くことなく、オドマオズマは両手を広げて歓喜を示す。

 彼が襲い掛かってくる様子はない――むしろ、僕たちから離れるように一歩下がり、騎士たちに隠れた。

 

「さあ! 『世界門』は目の前だ! キミたちの運命をかけた戦いの幕開け(プレリュード)――存分に演じるがいい!」

 

 それだけ言い残して、僕たちに背を向けたかとおもうと、オドマオズマは霊体のように透けて、消えていく。

 あとに残るのは、消し飛んだ数を補填するように増殖を再開する騎士たちのみ。

 どういう理屈の転移なのかは分からないが、今から追おうとしても無理だろう。僕たちにできるのは、目の前の騎士たちと戦い、その道を拓くことだけだ。

 

 開幕を宣言したことが引き金となったのか、騎士たちが剣を構え、こちらに駆け出す。

 みんなと視線を交わす必要はない。それぞれが、それぞれの最適だと思うように戦う――そうすれば、自ずと連携は成立する。

 魔剣を振り上げ、刀身に属性を宿す。

 込められた火の属性は、大爪の如き斬撃となり、派手に爆発を引き起こす。

 そこに向かって、怖じることなく突っ込んでいくクイールに続き、僕たちも駆け出す。

 

 さあ――僕たちの運命を決める戦いの始まりだ。

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