凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法 作:けっぺん
可能な限り、週一の更新は保ちたいですが、確約は出来ないところとなります。
恐らく今年の完結は無理なので笑ってください。
――はじまりは、どれほど前だったのかしら。もう忘れてしまったわ。
三千年は経っていない。その発端は、バラルバラーズ様が生まれたよりも後。
そう考えると、技術国家ネシュアの歴史が浅く感じられてしまうけど……まあ、錯覚ね。
ともかく、あの国で興った一つの信念……いえ、信仰ともいうべきものが、すべてのはじまり。
この世界を形作ったとされる混沌、そこから分かたれた、八つのうちの一つ。
冥界を創る力を持ちながらも、その使命を受け入れず、ただ自由に在ることを選んだ、八つの中の最大のイレギュラー。
ええ、そう、バルハラ。
彼、あるいは彼女……まあ、どっちでもいいか。かれは、冥界への信心が深かったかつての時代において、一際異なる畏敬を向けられていたの。
時に枯れた土地に豊饒を齎す恵みの風として。時に隆盛した都市を一夜で沈める洪水として。
とにかく自由で、その気分次第であらゆる命を引っ掻き回す、嵐のような存在だったわ。
気が向けば奇跡を施してくれるけれど、その翌日に滅びを招いたりもする。だから、基本的には近寄るべからずってのが、その頃のみんながバルハラに抱く印象ね。
……だけど、ある時ネシュアで、その大いなる災害に夢を見る者が現れた。
聖女ヨハンナ――元は、ネシュアでひっそりと活動していた、ちょっとした教えを説く立場の人間。
彼女のきっかけは、なんだったのかしらね。それは今でも不明だけれど、とにかくヨハンナは、バルハラを自分の運命だと悟り、すべてをかれに尽くすと心に決めた。
彼女の執念はそれはもう、恐ろしいものだったわ。遠目に見ていただけだけど、コッペもドン引きしちゃった。
――ぁぁ、ここらでちょっと自分語り。あまり柄じゃないけど、疑問に思ったかもしれないし。
コッペね、ヨハンナがまともな人間だった頃のネシュアで生きていたの。
全然立場は違うわよ? コッペは平民だったし、どこの派閥にいた訳でもない、平凡な人形師だったから。
はい、自分語り終わり。人形を操る者は自我なんてなくていいのよ、うんうん。
ヨハンナのその執念は、人を動かした。ネシュアに、今までになかった夢を見せた。
彼女の背中に憧憬を抱いて、その在り方に同調したのが決戦派。まあ、言ってしまえばネシュアの狂気のはじまりはここなのかしら。これがなければ、追想派も記録派も続かなかった訳だし。
え? ううん、記録派のおバカな未知との遭遇については、コッペは語るつもりはないわよ。それは魔王様に直接聞いて。
決戦派は対バルハラを掲げ、手段を択ばずあらゆる技術を集めた。その研鑽と発展は、ネシュアの技術を何世代も先に押し進めたとされているわ。
その中で、ヨハンナは決戦派の中枢たる決戦機関に、自身の人格を焼き付けることを選択した。
バルハラも最初は、それなりに面白いおもちゃ、程度の印象しか持っていなかったでしょうね。
まあ、それでも十分に異常なのだけど。その気があれば、五指で山さえ握り潰せるかれが楽しめるほどの戦いを、人間が成し遂げたんだもの。
ヨハンナの執念と、その進化を目にして、体に叩き込まれる内に、バルハラもまたヨハンナに強い興味を示し始めた。
バルハラはネシュアの近くに自らの居城を構えて、いつでもヨハンナの挑戦を受けられるようにしたのよ。
結果として……世界は平和になったと言えるかしら。
当たり前に追い詰められて死ぬ命は助からなくなったけど、その代わり、突然の理不尽によって滅ぼされる者はいなくなったってことだから。
バルハラにとって、ヨハンナがおもちゃから“好敵手”……そして“運命の相手”に変わるまで、どれほど経ったかしら。
決戦派の世代が何代も変わって、その度に決戦機関に新たな機能が組み込まれて、そしてヨハンナがそれを用いて、バルハラをまた驚かせる。
何度も何度も繰り返されたわ。バルハラもヨハンナも決戦派の連中も、よく飽きなかったものよね。
ネシュアにとってそんな戦いは当たり前になった。バルハラ以外に何かを夢見て、異なる研鑽を積み上げる派閥も増えた。
多くの技術が生まれ、潰えていく中で、常にヨハンナは最先端にいた。
いつの頃からかしらね。
まるでおとぎ話のように、ヨハンナは人々に“勇者”とも呼称されるようになった。
巨大な存在に立ち向かう小さな姿。そういうのは、いつの時代だって憧れの目で見られるものなの。
そして、勇者が立ち向かうのであれば、バルハラは当然“魔王”ね。かれは人々がいつか到達し、乗り越えるべき頂として、語られることになったのよ。
この、ネシュアで後世まで続くことになる風習が、今を形作っている……というのは、もう知っているかしら。
“魔王”はバルハラがいたからこそ魔王になった。“勇者”はヨハンナがいたからこそ勇者になった。
それらのルーツをもとに、あなたたちの使命は構築されている。
では、その目的は一体、なんなのか。
流石に想像がついていると思うけど、別に勇者っていうのは、魔族たちの娯楽とするために百代も続いている訳じゃないわ。
結果的にそうなってしまっただけ。いえ、それももしかすると、目的の一つではあるのかもだけど。
大きな理由は二つあって、その内の一つは、これも魔王様から聞くべきね。
コッペが教えてあげるのはもう一つ。
これまでの勇者が、出自も性別も年齢もばらばらで、これといった共通点なんてなかったのは何故なのかって話。
勇者たちに試練を突破して、魔王様のもとに至ってほしいのなら、勇者は狭い出自から出し続けた方が良いでしょう?
そうすれば、勇者たちは経験を少しずつでも残していけるかもしれないし、少しずつでも、確実に前に進んでいけるはず。
はっきり言って、そっちの方がシステムとしても都合がいいのよ。ランダム性なんて、極力ない方が、不都合だって起きにくい。
でも、魔王様はそうしなかった。勇者のシステムにはランダム性を残して、可能な限り共通点が出ないようにした。
バリエーションが欲しかった? ええ、大正解。
要は、魔王様は勇者たちに、一つに縛られてほしくはなかったの。
百人いれば、百通りの考えがある。それが人間ってものでしょう? 魔族だって変わらないけれど、人間の多様性ってのは本当にすごいもの。
少しずつノウハウを蓄積して、最適解を見出してっていうのも、魔王様は嫌いじゃないわ。
けれど、あなたたちにはそう在ってほしくなかった。あなたたちには、とにかく一人ひとりの可能性を見せてほしかった。
その期待の通り、あなたたち勇者はそれぞれ違った道を歩んだわ。
まあ、大半が諦観に満ちた投げやりなものになってしまったのは事実だけど。
試練に積極的に挑もうとする者もいれば、最後の旅なのだからとせめて多くの新鮮な光景を見ることを重視する者もいた。
魔法を得意とする者もいれば、剣を得意とする者もいた。力自慢な者もいれば、すばしっこさでは魔族にも負けない者もいた。
魔族と極力出会わず、こそこそと逃げ回るように旅をする者もいれば、血肉の味に強く惹かれて、魔族よりも残忍な怪物になってしまう者もいた。
勇者としてそれなりの成果を上げつつも、人間の在り方を放棄してしまった者もいれば、勇者として試練を果たせずとも、その過程で多くの人々を救った者もいた。
未練を残して死んだ者もいれば、満足の中で死んだ者もいた。
素晴らしいと思わない? なんて色鮮やかな人間模様。
どれだけ怖くても。何もなせなくとも。あなたたち全員が、自分にしか出来ない旅をしてきたの。
コッペはそんな子たちが彩る人生が大好きなの。だから、教会で支援する立場にも、喜んで立候補させてもらったわ。
そうすれば、教会に辿り着く度に成長する勇者を目にすることが出来る。少しずつ“自分らしく”なっていく勇者を、人形を通して肌で感じることが出来る。……ぁぁ、いえ、コッペはポルターガイストだから肌はないのだけど。
コッペが見てきた勇者はみんな、素晴らしい人間だった。
真の勇者として覚醒しなくても、“自分らしさ”を強く己の内に燃やす子たちばかりだった。
誇らしいわ。コッペは、それがすごく誇らしい。うまくいかなくともいいの。みんなが、勇者らしく輝くことが出来たのなら。
ええ、人でなしな価値観だってのは自覚しているわ。
とはいえ、仕方がないの。コッペは勇者たちの輝きを……その生きざまを、例外なく愛しているんだから。
……ふふ。また自分語りになっちゃった。今日はどうやらそういう日みたい。
やっぱり勇者の前だと、口が軽くなっちゃうのかしら。まあ、それならそれで構わないけど。そっちの方が、コッペの素を見せているみたいで心地が良いし。
それよりも……ええ、分かっているわ。あなたたちの秘密、よね。
さっき見せたこれ、あなたたちはその本質を知っているわね。
属性を一つの解釈で纏め上げて結晶化する技術……ここにあるのは、絶対に理由なく発現することのない属性よ。
これ単体だと、なんの力も持たない。個々に根付いて、その成長に呼応して、他に類例のない唯一の力として覚醒する、勇者たちが等しく持つ可能性の証明。
勇者は、勇者としてその啓示を受けるよりも前から勇者なの。生まれたその瞬間――命として確定したその瞬間から、眠れる勇気を持っている。
何故ならば、この結晶を胸に秘めて、あなたたちは生まれてくるから。
生命っていうのは、確定する前はとても曖昧なものでね。やろうと思えば好きなように干渉できる。
――つまりね、勇者っていうのは作れるのよ。いいえ、ちょっと語弊があるわね。
勇者っていうのは、作るものなの。既にある命に宿すものではなくて、この結晶を素体に組み込むことで、新たな命を生み出すの。
そうして、はじめから勇気を持った“命の素体”を、世界のどこかで生まれる肉体と融合して、定着させる……そうすることで、やがて使命を背負うことになる勇者は産み落とされることになる。
この工房の、一番大きな役割はそれ。
勇者の“命の素体”……まだ肉体を得ていない命を作るための場所。
ここには多くのものがあるわ。魔力の想像結晶だけじゃない。肉体以外の命のすべて……魂を含めたすべてを作るための材料が。
……察した? まあ、察してしまえるわよね。
コッペとしては、それは歓迎すべきことなのだけど……喜ぶのはもう少しだけ我慢して、真実だけを告げることにするわ。
――あなたたち勇者は、定義の上での
この工房で生命として成立してから、あなたたちはそれぞれの“生まれるべき場所”へと送り出された。
勇者として完成された生命になるにはいくつもの関門が存在する。ここで作られる大半は、工房を巣立つことさえ出来ずに朽ちてしまう。
あなたたちは、たった百人の成功例。コッペのもとから無事に旅立ってくれた愛し子たち。
……ふふ。こうして打ち明けるの、なんだか恥ずかしいわね。
コッペは人であった頃に、子供なんていたことがなかったから。それに、こうして真実を知った子たちを前にするのは、本当に初めて。
別に、コッペをお母さん、なんて呼ぶ必要はないわ。
みんなにはみんなの両親がいる。生まれた故郷、生まれた家族を、コッペは否定しない。
ただ、ここがあなたたちのルーツであるというのは、紛れもない真実なの。
……呆然としているところ悪いけど、紹介させてくれる?
この子たちが何なのか、気になっていたでしょう?
もしかすると想像がついているかもしれないけど……あなたたちと深い関わりのある子たちだから。
この二人はね、あなたたちという勇者の記録をもとにして生まれた、勇者の完成形。
もう間もなく、魔王様によってこの世界は完成する。この二人は、完成された世界で永遠に戦い続ける運命を背負った、“百一代目”の勇者。
……もちろん勇者になるのはどちらか一人だけ、だけどね。
もう一人……
ともあれ、その瞬間まで、どっちがどっちを演じるかはわからない。
だから、少なくとも今は二人とも、勇者の卵。
――女の子の方は、“始原”を秘める者、『イヴ』。
――男の子の方は、“終焉”を掲げる者、『キリカ』。
千年の歴史を紡いだ、百人の勇者の次世代。
言ってしまえば……あなたたち全員の子供、ってところかしらね。