凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法 作:けっぺん
「頼れる仲間、あと一歩先のハッピーエンド……あなたの希望は大きくなりすぎた。その明るさに目が眩んで――あなたはそれから目を逸らさずとも、目を閉じずとも、恐怖と対峙できるようになった。たとえば、たった独りでも、魔族に立ち向かえるような……そんな勇気を、あなたは手に入れた」
「…………それの、何が悪いの」
「後ろを振り返ろうとしないこと。ここまでずっと自分の背中を押してきたものを二の次にして、未来を歩むことに喜びを見出してしまったこと。……ああ、そういえば気になっていたわね。私が、あなたの何に共感していたか」
――恐怖。
――挫折。
――失敗。
――後悔。
リッカがもう、振り返る理由にはしていなかったもの。
リッカの根幹にある復讐にさえ、大きく関与はしなくなっていた感情。
それを一つ一つ口にするアリスアドラの声色は、言いようのない不気味な熱を帯びていた。
「私はあなたに積み重なる、無数のあなたに共感していたの。理不尽に屈し、それでもまだ、次の自分の背中を押すかつてのあなた。希望なんて持たず、ハッピーエンドという言葉に縋るあなた。――次こそは、と想いながらも……どこかで、“どうせ次も”と想うあなた」
「ッ……何を。私はそんなこと――」
「想っていないって、本当に言い切れる? あなたが置いていったものが、本当にそれを感じていなかったって? 一つ前の憎悪さえ正しく視えなくなったあなたに、断言できるの?」
――アリスアドラが、リッカを見ながら、リッカそのものを見ていないことに、僕はその時ようやく気付いた。
その共感は偽りではない。本心から、アリスアドラはリッカの“積み重ねたもの”に共感している。
今の僕たちにとって、断じて無意味なものではない。
リッカの繰り返しは僕たちのはじまりと言えた。なかったことにしてはいけないものだ。
「絶望に溺れたあなた。次に託したあなた。そのすべてが、ハッピーエンドの目の前にいるあなたに想っているわ――“どうしてあなたが”って」
けれど、それは既に――かつてとは意味の異なるものになっている。
恐怖でもなく、挫折でもなく、失敗でもなく、後悔でもなく、未来を見据えるために
後ろ向きな絶望ではなく、前向きな希望。それが――アリスアドラは、許せなかった。
「いつか、どこかで失敗したあなたがね……うるさいほどに叫んでいるの。“私は失敗したのに”、“私はナディアを救えなかったのに”、“私が一緒に旅したユーリは”、“私が一緒に旅したカルラは”」
――何も成せずに、死ぬしかなかったのに。
アリスアドラが並べていく言葉は、一つ一つが怨念に満ちていた。
そんな筈はない。かつてのリッカは無念の中で死んで――それでも、次につなげる確かな意思があった筈だ。
……それでも。その度に、助けられなかった者はいた。
五千を超える繰り返しの中で、思い出したくもない失敗は何度あっただろう。
ラフィーナと和解できたことは、何度あっただろう。
ナディアを助けられたことは、何度あっただろう。
僕はきっと、例外なく死んでいた。カルラもきっと、そうだった。
その旅の一つ一つで、リッカが守りたかったものは悉くが零れ落ちていた。その旅の一つ一つが、元々はリッカにとって許容し難い絶望だった。
「あなたは平穏を手に入れる。ええ、それはきっと、かつてのあなたにとっても望外の結末よね。……だからこそ、積み上がった絶望は、怨念になるの。どうしてそれを、“今回”出来なかったのかって」
「ッ――――」
無数の失敗の一つ一つに、確かな思い出があった。
無様で、弱々しく歩くことしかできない僕を支え続けた。守ってみせると決意して、しかし叶うことはなかった。
かけがえのない旅のすべてが、“今度こそ”だった。
そんな、執念でもって次へと託したかつてのリッカ――それを、連続する一人ではなく、一つの失敗を迎えたものとして捉えた場合、それらは何を思うのか。
――九十九代目の勇者。そんなのが生きていたなんて知らなかった。
――エルフの協力者。そんな魔族を、信用するなんて。
――ナディアが、あんな風に接してくれたことなんてなかった。
――バルハラ。聞いたこともない。
――そんな風に、試練を突破するなんて。
――ラフィーナはもう、信じないって決めたのに。
――魔族を信用するな。
――魔族を信用するな。
――ユーリとカルラだけを、守れれば良かったのに。
――魔族を信用するな!
そんなこと、思っていないなんて分かっている。
ここまでリッカが、どんな想いでその失敗に屈することなく、“次”に託してきたのか、僕は痛いほどに理解している。
だというのに。
疑う理由なんて、どこにもないというのに。
「せめてこうするべきって、学びがあった。そんな学びの一体いくつが無駄になったかしら。理不尽に貪られてきたあなたが、例外だらけの旅でハッピーエンドを迎えようとしている。それってすっごく、理不尽だと思わない?」
自分はどこまでも、最後まで、永遠に被害者でなければならないと、叫ぶ声がある。
理不尽だと知っていながら、己の目指していたものに到達しようとする自分を許せないと、叫ぶ声がある。
成功するのであれば、“自分の回”で成功するべきだったのだと、叫ぶ声がある。
捨てた旅など、一度もなかった。いつかの本命を定めていようとも、その道中さえ、リッカにとっては本気の旅路だった。
――なんでその魔法は、私の時に完成しなかったの。
――なんでそんなに、運に助けられたの。
――死んだら終わりじゃないの。なんで次に行かずに続けられたの。
――転生特典って何。それを、私の時に自覚できていれば。
――私だって復讐したかった。
――どうして私の時のユーリは、強くなれなかったの。
――そんなに強くなれるのなら、これまでの私の足掻きはなんだったの。
――どうしておまえばかり。
――どうしておまえばかり。
――どうしておまえ
「ッ――――!」
「ユーリ!?」
「ユーリくんっ!」
「……やっぱり。ユーリくんは優しいのね。リッカちゃんのために何でもできるあなたは、私の言葉を妄言だと受け入れられない。私が共感するのと同じように、あなたは過去の愛憎とさえ絆を結んでしまう」
その叫びを――感じてしまう。
幻聴ではない。耳にその叫びが届いた訳ではない。
アリスアドラを通して、“理解したい”という僕自身が歩み寄る。
それは違う、と否定しようとしても、いつか、どこかのリッカを“理解しなければならない”と――彼女の共感の先に、つながりの手が伸びていく。
「リッカちゃんのための勇者だからこそ、リッカちゃんを否定できない。とても素敵なことだと思うわぁ。普通、人間はそこまで在り方を先鋭化できない。たった一つのためにすべてを擲つなんてことができない。あなたのような勇者がいてくれて……リッカちゃんは本当に、幸せだったでしょうね」
満足に動けない僕たちに、アリスアドラが近付いてくる。
冷たい光沢に覆われた指が、外装の胸元を這う。そのつながりを肯定するかのように。
過去のリッカも、
「すべてのリッカちゃんのためのユーリくんでいてほしいの。これからを夢見るリッカちゃんも、過去に躓いたリッカちゃんも、全部、全部が幸せになる。そういう世界に、私ならできるわ」
「――けど……っ!」
「
他の
灼けるような怨嗟が、手を伸ばしてくる。
自分だって救われたい。永遠のような苦しみが報われないなんておかしい。だから、他の
悲痛なまでの懇願が、手を伸ばしてくる。
「……あなたのハッピーエンドを諦めさせる訳じゃないわ。この声の全部が救われるために、あなたたちも、私の世界を受け入れてほしいってだけ」
「…………僕は」
こんなところで、葛藤するべきではないと、僕の理性が叫ぶ。
何のためにここまで歩んできたのか。ここで受け入れたら、ここまでの旅は何だったのか。
迷う段階なんてとうに過ぎ去った――だというのに。
無数のリッカの声が、僕を引き留める。これ以上進まないでという望みが、僕を縛り付けようとする。
ここにいるリッカもまた、否定の言葉を紡げなくなっていた。過去の自分の意思はもう既に、リッカにとっては遥かに遠いもの。
僕が感じているものを、まやかしだと断言できる者なんていない。
……いいや。
いいや――――それでも。そうだとしても。
「――――――――そんなの、二人が受け入れるわけ、ないじゃないですかあっ!」
そうだ。受け入れられない。僕は決して、その過去の叫びで歩みを止める訳にはいかない。
残酷だと自覚できる選択の決断と、怒りの籠ったクイールの叫びは、ほとんど同時だった。
「……今はクイールちゃんの意見は、聞いていないのだけど」
「二人が答えるまでもありません! だって――あなたなんかが、僕より二人を理解している筈がないんですから!」
「……えぇ?」
一度、そう否定の意思をはっきりと定めれば、嘘のように声は聞こえなくなる。
アリスアドラを通した、
先ほどまでの叫びとはまた別の側面から、背中を押されるようなあたたかいつながりが、僕を満たしていく。
そんなあたたかさを感じている中で――自信に満ちたクイールの断言が、アリスアドラを困惑させていた。
「……心外ね。クイールちゃん、あなたに私と同じ共感ができるのかしら」
「いいえ、できません。ですが……僕は――ユーリくんと、リッカちゃんと、ここまで旅をしてきたんです! その僕が! 二人は過去に引っ張られて未来を蔑ろにする人じゃないって知っているんです!」
ああ――そうだ。
何よりも、僕たちの歩みを肯定してくれる人が、ここにいる。
「リッカちゃんのためにどんな無茶だってできるユーリくんは! ユーリくんのために途方もない苦しみを乗り越えたリッカちゃんは! 今更そんな妥協なんてできないくらい、とびっきりの我儘なんですよっ!」
……そんな風に自信満々で言い切られても少し恥ずかしいが……何も間違ってはいない。
そうだ――この嘆きは背中を押すものだ。この叫びは、自分の失敗を悔い、それでも前へと進むためのものだ。
アリスアドラが共感しているのは、一つ一つの失敗に残る後悔だけ。それを、勝手に拡大解釈しているのだ。
「――ですよね、二人とも!」
「……うん、そうかも」
確かに、“なんで”“どうして”という想いはあるのだろう。
それでもリッカは、今いるこの場所の、一歩先を目指してきたのだ。
恨み節なんて、きっといくらでも出てくる。けれど、だからこそ――失敗してほしくないという気持ちの方が、ずっと強い。
無数の手に、少し強めに背中を押される。クイールに、手を引かれる。
このつながりがあるからこそ、僕は、振り返る訳にはいかないと、アリスアドラに向き直り、はっきりと答える。
「
「……私は、リッカちゃんに共感しているのよ」
「――僕は、リッカとつながっているんだ」
馬鹿らしい意地の張り合いだと思った。それでも、リッカの一番の理解者であるという立場を、譲るつもりはなかった。
クイールが思わずといった様子で、笑い声を零す。
そして、当のリッカもまた、落ち着きを取り戻した声で、アリスアドラを突き放した。
「……見ての通り。苦しい時も、楽しい時も……寄り添ってくれる相手は、間に合ってる」
共感など不要だと、改めてリッカは宣言する。
なにも、僕やカルラだけではない。今やリッカには、寄り添うことを選択できる者がいる。
リッカの境遇を理解し、その苦痛を知り、ハッピーエンドを共に目指す仲間がいる。
そうである以上――アリスアドラの一方的な共感など、もはや、僕たちの誰もが求めていない。
「だから――あなたは必要ない」
瞬間、体に自由が戻る。
リッカが紡いだ魔法が、周囲の空間に掛かっていた魅了を解いたのだ。
アリスアドラは目の前にいる。この状況における最適解を導き出し、クイールと同時に踏み込む。
不意の一撃。それを、反撃の狼煙にして――――
「――――そう」
――――その拳は、振るうことができなかった。
周囲の重みではない。それよりも暴力的な、何かに握り締められているかのような圧迫感で、外装が軋む。
そして違和感に気付いたのは次の瞬間。
声を出せない。体がまた、動かない。呼吸を忘れ、心臓の鼓動を忘れ、生命としての定義が忘れ去られていく。
「妬けるわね。……ええ、妬けるわ。そのつながりが眩しい。その絆が、どこまでも羨ましい」
アリスアドラの翼だ――いつの間にか手のように大きく広げられていたそれが、僕たちを、そしてクイールを握り込んでいる。
そう理解して、直後に視ることを忘れた。
人としての機能が、次から次へと失われていく。それまでが自由過ぎていたと錯覚するほどに、不自由が積もり積もっていく。
「でもね、やっぱりかわいそうだなって思うの。その苦しみも……戦いの成立しない障害が最後に待っている理不尽も」
いつしか、外装が解けている気がした。
確信はない。ただ、リッカとのつながりが、離れてしまったような気がしただけ。
それさえ断言できないほど、“自分”というものが――“つながり”というものが曖昧になってしまっている。
込み上げる不安から、叫びを上げようとした。
喉が震えないどころか……紡ぐべき言葉さえ、解れていった。
「でも、いいわ。あなたたちの拒絶も否定はしない。ただ、受け入れてくれれば、それで私は満足よ」
――この声は、誰のものだっただろうか。
敵だった気がする。けれど、どうして敵対していたのだろうか。
『――ファイナライズ! アクセス!』
「絆はいらない。勇気はいらない。決意もいらない。苦痛もいらない。愛もいらない。希望もいらない。全部、全部、私が創る世界で、得られるんだもの」
何もかもが遠ざかっていく。
その声だけが、自分の中で響く。
響いて、響いて、限りなく広がって、満ちていく。
「ゲームオーバーよ。おやすみなさい、三人とも。安心して――目が覚めた時、あなたたちは幸せの中にいるわ」
『――オール・エクスタシー!』
救いのように、慈愛に満ちたその声は、自分の存在に染み込んでいった。
『魔王外装A
【属性】火/勇気/狂気
【攻撃力】■■■■■■■■■■■■
【防御力】■■■■■■■■■■■■
【素早さ】■■■■■■■■■■■■
【魔 力】■■■■■■■■■■■■
【精神力】■■■■■■■■■■■■
【
守護の象徴。如何なる世界においても、最も終焉を打開し得るもの。
大女神アズが定義した、あらゆる世界における、救済の共通規格『
架空属性『勇気』を持ち、個々が内に秘める可能性を自覚し、能力を発揮すればするほど、装備者を危険から遠ざける。
アリスアドラが装備したことで、圧倒的な防御力と修復性能を獲得している。
【
平等の象徴。万物を注視せず、ゆえに万物を平等に扱うための、無貌の面。
視覚に対する補正はなく、闇を見通す力を与えることがなければ、取り込む光を否定することもない。
この面は、装備者が持つ精神的な感受性の効果範囲を極限まで広げ、視覚によらない外界への感知能力を強調するものである。
【
完成の象徴。この世界におけるあらゆる事象を記録・保障する記録機関。
アカシックレコードに集積された記録をダウンロードし、外装の動力として利用するための変換装置たる、金銀の冠。
世界が完成に近付き、参照可能な記録が増えれば増えるほどに外装の各性能にブーストがかかる。
【
生命の象徴。装備者たるアリスアドラの性質に応じて外装に発現した吸精器官と双角。
八つの尾は本来のアリスアドラの尾を超える自由性を発揮し、狂気の属性を持った魔力を放つ武装としても機能する。
さらに、サキュバスとしての夢を操る能力と、性に関する攻撃の威力を極限まで高め、強い耐性を有する魔族でさえ快楽の底へと沈めることが可能となる。
【
大女神アズの性質が、外装化したことで攻撃的に解釈された、世界観調整機能を有する、翼にして腕。
羽根の一枚一枚が世界のすべてを映す鏡であり、これを持つことは、装備者がその世界における世界観の中心であることを意味し、世界の
この絶対性を保障するため、外装のあらゆる数値的な性能が、“その世界における理論上の最大値”に自動的に調節される。
さらに、何らかの不具合により、本来の最大値を超えたステータスを持つ存在が確認された場合、そのステータスにマイナスの補正が掛かり、最大値-1の数値に固定される。
その上で、自身よりもステータスの合計値が低い存在に対し、あらゆるバッドステータスを付与する正当な権限を獲得する。
これにより、自身が存在する一個の世界において、およそすべての存在に対して絶対的な優位性を持つ。
――仮に世界観の外より何らかの例外が降臨したとしても、その例外の“この世界での存在”が確定した時点で効果の対象となるため、影響から逃れることは不可能となる。