凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法   作:けっぺん

394 / 394
果てしなき未来へ/6

 

 

 互いに意地と意地。譲れない想いをぶつけ合う。

 これで最後なのだと、自身が持つすべてを出し切る。

 ハッピーエンドに至りたいという想い。こんなところで立ち止まっていたくないという想い。

 きっとそれは、アリスアドラも同じなのだろう。だからこそ、互いにその願いを奪い合う。

 そうでなければ――百点満点のハッピーエンドなんて、決して手に入らないのだと。

 

「はあ――!」

「ッ、負けないっ……負けない負けない負けないッ!」

 

 泥を振りまきながら、駄々っ子のように喚くアリスアドラ。

 けれど、それでも身に染み込んだ技術が消えることはない。

 自然体からも即座に攻撃に移れるような、独特の攻撃技術――彼女はそれを意識せずとも出力する。

 さながらそれは瞬間移動。クイールの速度にさえ渡り合える、格闘における一つの極みのかたちなのだ。

 

「ハッピーエンド……ハッピーエンド……私だってそれが欲しい……あなたたちのそれを、私にも分けてよ!」

「分けられませんよっ! だって、僕たちの幸せの形と、あなたのそれは違うんですから!」

「キミも、誰かに影響されない願いを持てば良かったんだ――誰かを巻き込まない、自分だけの幸せを!」

「それが出来たら苦しくなんてなかったのよ! はじめからそれは、私には許されていなかったのっ!」

 

 盾に変形したバルハリオンで、クイールは真正面からの乱打を受け止める。

 しかし、それが隙になるかと思えば、また違う。

 牽制とは思えない、触手のように伸びた泥が、怒涛のように僕たちに押し寄せてくる。

 いや――事実、牽制ではないのだろう。そんな戦略なんて、今のアリスアドラには存在しない。

 すべてが全力。その攻撃一つ一つが、意地を持って必殺を期したものなのだ。

 

「リッカ!」

「わかってる――!」

『オズマリンク! イグニッション!』

 

 空いた左腕を前に突き出し、変質する感覚に身を委ねる。

 押し寄せてくるそれに負けないほどの勢いの、触手の奔流を顕現させる。

 せめぎ合う二つの力。押し負けないための魔力を注ぎ込めば、絡み合った触手は巻き込まれるように爆散していく。

 元の形に戻った腕を引き戻し、魔剣を構えて接近。

 アリスアドラの片腕を切り落とすのと、脇腹から伸びてきた触手が突き刺さるのは同時だった。

 

「くっ……!」

「それ以上は――させません!」

 

 けれど、そこで生まれた隙を、的確にクイールは突いてくれる。

 突き出された聖剣がアリスアドラに突き刺さり、その輝きが彼女を焼き払おうと強まっていく。

 

「ッ、このくらいでぇ――――!」

「わっ、わわ……っ!?」

「クイール!」

 

 熱に耐えながら、アリスアドラの体から伸びて、聖剣の刃を這うように浸食していく黒い泥。

 僕たちもまた咄嗟に踏み込んで、魔剣を振り上げる。聖剣をかち上げてアリスアドラから引き抜いてから、銃砲形態に変えてそのまま突き付ける。

 放たれる魔弾は、泥塗れの体を吹き飛ばし、瓦礫の山へと叩きつけた。

 しかし、その反動が体から抜けるよりも前に、アリスアドラは再度瓦礫を蹴って迫ってきていた。

 

「づ……ぅ……!」

 

 技術ではない。アリスアドラらしからぬ、勢いをつけただけの、力任せの殴打。

 胸の中心に叩きこまれたそれが、全身に衝撃を響かせる。

 それに怯んだ一瞬、既にアリスアドラは翼を手のように広げ、魔力の塊を形成していた。

 クイールの神速がその攻撃を妨害にかかるが――それよりも速く塊が握り潰され、膨大な魔力の嵐が周囲に吹き荒れた。

 外装を切り裂き、蝕み、押し潰そうとする無数の暴虐。それに誰よりも曝されているのは、他ならないアリスアドラ自身だった。

 それでも構わないと。僕たちさえ倒すことができればどうとでもなると、嵐の中心でアリスアドラは嗤う。

 

「痛いわよね、苦しいわよねぇ……! わかるわぁ――だって共感してしまうんだもの! そんな苦痛に曝されて、これ以上歩きたくないでしょう!?」

 

 叫びとは正反対の本心が、伝わってくる。

 痛い、苦しい。今ここにある苦痛が、ずっと続いてきた。耐え難いほどに、当たり前だった。

 その異常に共感してほしい。その絶望に寄り添ってほしい。そんな切実な想いが、アリスアドラとのつながりを通して僕の内に響く。

 立ち止まってほしい。せめてこの苦痛の中で、一緒にいてほしい。その縋るような訴えは、彼女がどこかで、ずっと抱いていたものなのだろう。

 

 ――――そうだとしても。

 

「……二人とも、耐えられる?」

「ん……大丈夫。この程度に屈していたら、私はこんなところにいない」

「はいっ! 僕も平気です! っ……だから、一緒に!」

 

 僕たちが進むべき道は変わらない。僕たちが前に進むという意思は変わらない。

 アリスアドラが必死に伸ばしてくるその手は、取ってはいけないものだ。

 

「せえ、の……っ!」

 

 嵐の中で、クイールと共に、大きく一歩を踏み出す。

 僕たちの魔剣と、クイールの聖剣を交差させて、同時にアリスアドラを斬り上げる。

 

「っあ――――ッ、なんで、なんで諦められないの!? こんなにもひどい苦痛に、どうして耐えられるの!?」

「決まっている――僕たちは、つながっているからだ!」

「お互いに支え合っているからこそ、このくらいで負けてられないんですっ!」

 

 思い悩んだ時に、手を引いてくれる。

 行き詰まった時に、背中を押してくれる。

 たとえ誰かがどうしようもない絶望に対面したとしても、全員でその問題に臨むことができる。

 僕たちは、そういう絆で結ばれている。

 それならば、ここで諦めることがどうしてできようか。

 諦めることがあるとすれば、僕たち全員がそれしかないという結論を出してからだ。

 そうでない限り、僕たちには止まる理由なんて生まれない――!

 

「また、それ……っ!? 仲間、絆――やめてよっ! 私が知らないもの……私が持っていないもので、これ以上私を責めないでよ!」

 

 そう――絆。アリスアドラがそういう性質を持って生まれてしまった以上、決して持ち得ないもの。

 きっとそれが、彼女とリッカを明確に隔てたもの。

 リッカは僕たちのために止まることなく歩き続けてくれた。最後の最後で、それとも異なる絆を育むことができた。

 

「今更、何を……そういうものでしょ。誰かが持っているものは、常に誰かには理不尽に映る。それとも、そんなことさえ知らなかったの?」

 

 諦観の混じった声色だった。それは、リッカが何度も何度も噛み締めてきたことだった。

 けれど、リッカはそれを受け入れてここにいる。

 たくさんのものが足りなかったからこそ、今持っているものを誇り、それをもって最後の敵を倒すのだと。

 

「ユーリくんがいなければ、諦めないことさえできなかったくせに……っ!」

「……? そうだよ。私は、ユーリがいたから諦めなかった。急に私が誇れることを褒めだして、どうしたの?」

 

 僕だってそうだ。リッカがいなければ、きっとこの、諦めの悪さだって芽生えなかった。

 お互いの、どうしようもない依存心に苦笑する。こんな時でさえ、お互いを厄介に思う感情が優先する。

 

「ああ……そういうこと。……ねえ、アリスアドラ」

「なによ――」

 

 リッカが至った結論に、身を任せる。

 それがアリスアドラとリッカの差であるならば、リッカ自身が、リッカの言葉で告げるべきことなのだから。

 

「私の隣には、ずっとユーリがいた――いいでしょ」

「っ――――が、ふ――――ッ!」

 

 その言葉で生まれた空白に、アリスアドラに拳を叩き込む。

 吹き飛んだその先に、クイールと共に跳ぶ。

 撒き散らされた泥によって形成される障壁を打ち砕き、なおもアリスアドラを守る鎧として広がるそれを剥がしていく。

 際限のない泥は彼女の否定の象徴だとしても、攻撃の一切を受け付けないわけではない。

 クイールの剣閃を縫うように、魔剣を振るう。リッカがせき止めた時間の流れによって、その神速に追いついて攻撃を重ねる。

 剥がれた泥を気にすることはない。周囲を舞うように奔る斬撃と魔法――冥界の支援を信頼しているから。

 見開かれたアリスアドラの目には、今や明確な恐怖が映っている。

 湧き出る泥が擦り減るたびに――肌を覆う鎧が剥がれるたびに、それは、色濃いものになっていく。

 

「理解、できない……っ、そんな、あたたかい感情、私は、知らないッ!」

「ぐっ……!」

 

 衝動的な拒絶だった。攻撃をした瞬間に泥が爆ぜたかと思えば、その中をアリスアドラが踏み込んできていた。

 その両腕に宿っている害意は、尋常なものではない。

 黒い泥が燃え上がる。彼女の体を焼きながら、それでも燃え尽きることなく、僕たちへと放たれる。

 

「っあ――!」

 

 外装が許容できる衝撃を超えた、痛みがあった。

 焼いて刻まれるかのような感覚は、きっとクイールも同じだと思う。

 僕たちを包むその熱から感じられるのは、やはり純粋な拒絶でしかなかった。

 認められない、認めたくないという、アリスアドラの羨望。それは“手に入れたい”という想いさえ、手放さざるを得ないものになった。

 

「燃えて、燃えて、なくなってしまいなさい! 灰になって混ざってしまえば、ほら――もっと一緒になれるでしょう!? そうなりたいんでしょうっ!?」

 

 命を――自分のすべてを力に変えて、アリスアドラは僕たちに抗っている。

 その自覚などアリスアドラにはないのだろう。僕たちを倒して、そこから先で生まれる後悔など、考えていない。

 これで僕たちを倒した後、彼女には何が残るのか。理想をもう叶えられる力が、果たして残っているのか。

 外装が軋む。僕たちを守る魔法に、罅が入っていく。

 それは衝動の……彼女の駄々の、極致であった。

 

「思い通りにしてあげるわ――いま、ここでッ――――!」

 

 全身の泥を燃やし、白くなった炎に包まれるアリスアドラ。

 その狂喜が、炎の向こうに消えていく。胸の内で燃える輝きが、すべてを解放しようとしている。

 一秒後に踏み込んでいる余裕はなかった――できることは、大盾となったバルハリオンを、僕たちとアリスアドラの間に展開させることだけだった。

 

 

「――――――――――――――――――――――――――――――――ッ!」

 

 

 ――絶叫と共に、視界一杯を拒絶の白が埋め尽くす。

 

 バルハラから出でた生命が、そのすべてを燃やし尽くして放つ輝き。

 自爆にも等しいそれが、感じられる熱の限界を超えて、僕たちを消し去ろうとする。

 この世のものとは思えない熱は、逆に冷たく感じるほどだった。

 ――先ほどの、私欲に満ちていようとも、僕たちを理想の向こうへと昇華させようとしたあたたかさとは、正反対だ。

 

「ぁ……ッ――――!」

 

 バルハリオンが白に呑まれて消えていく。衝撃は、熱に遅れて襲ってきた。

 外装が限界を超えて解れていく。そのダメージがフィードバックしたのか、砕けて指から離れていく指輪を、気にしている暇はなかった。

 分かたれて、背後に吹き飛ばされようとするリッカの手を、咄嗟に掴む。

 

 ――炎に曝された体が、燃えて消えることはない。

 

 ごく僅かな間の加護なのだろう。僕たちを、銀色の膜が覆っていた。

 次第に罅割れていくそれを展開している、僕たちの幼馴染――その信頼が、進めと背中を押す。

 

 リッカを引っ張り上げて、二人で前を向く。

 

「――ユーリくん! 使ってください――――っ!」

 

 その叫びには、絶対的な自信があった。

 もしかすると、吹き飛ばされる前のほんの一瞬で、クイールはたった一つの好機を見出したのかもしれない。

 背後から聞こえてきた声に促されるように、目を開く。

 

 ――――床に深く突き立てられた聖剣。そして、その傍で白い炎に纏わりつかれながらも、佇み続ける魔剣。

 

「ッ」

 

 リッカと視線を交わすことはなかった。頷き合う時間も、惜しかった。

 ただその一瞬、僕たちがやるべきことは、通じ合っていた。

 

 冥界の加護が消える前に駆け出す。

 どうせどこにいても、これが消えれば一瞬だ――ならば走れと、本能が体に命じる。

 

 駆け抜けるその勢いのままに、聖剣を引き抜いた。リッカもまた、咄嗟の魔法で膂力を確保しながら、魔剣を手に取った。

 

 

 ――聖剣から、なにかが流れ込んでくる。

 

 

 僕とは決定的に違うもの。けれど、根本は同じ、人が持つ可能性をその手に掴むための力。

 はじめに認識したのは、クイールの勇気だった。それを確信すれば、残る輝きも理解できた。

 それは勇気だ。クイールが、その聖剣に預かっていた、過去の勇者たちが持っていた可能性の輝きだ。

 

 理想の世界という計画のためにその存在を造られた勇者たち。

 目覚めている力もあった。未だ眠る力もあった。共通して――そのすべてが、決着を望んでいる。

 ならば――共に行こう。

 その勇気のすべてをつなげて、束ねる。僕という存在を中心にして、聖剣の刃から出力する。

 これがすべての希望の清算だとすれば――もう一振り。ずっと僕たちを支えてくれた剣は、すべての絶望の清算。

 

「リッカ――――――――!」

 

「ユーリ――――――――!」

 

 だからこそ、どちらもこの場で果たさなければならないと。

 

 

 ――僕たちは同時に、その刃をアリスアドラに突き刺した。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

TS被検体少女による模範的曇らせ(作者:鰻重特上)(オリジナル:現代/ノンジャンル)

▼「はじめまして!わたしはニーナ!被検体027番だからニーナだよ!」▼ 享年15歳、病気で死んだ曇らせ大好き男が違法な人体実験の被検体の少女に転生して本当の『愛してる』を理解するまでの話。▼※なお関わった人間の情緒と精神状態は考慮しないものとする。▼


総合評価:19368/評価:8.99/完結:8話/更新日時:2023年12月12日(火) 19:00 小説情報

【完結】腐血のサルヴァトーレ:TS悪役外道転生(作者:WhatSoon)(オリジナル:現代/冒険・バトル)

鬱ゲーの世界に転生してしまった元男が、世界を守るために主人公を痛めつける話。▼この世界で『異能』の力を持つ者は『精神的苦痛』によって強くなれる。▼だから、大切な貴方を守るために……その貴方を傷付ける。▼例え、恨まれて、憎まれて、殺されるとしても。▼毎週更新!一クール小説杯の参加作品です。▼全12話。▼毎週日曜日:23時に更新予定。▼表紙はめあり愛子さんに書い…


総合評価:16248/評価:9.04/完結:21話/更新日時:2026年09月01日(火) 20:21 小説情報

架空原作TS闇深勘違い学園モノ(作者:キヨ@ハーメルン)(オリジナル:ファンタジー/戦記)

 前世でプレイしてたゲーム世界に、人工不死者のプロトタイプとして生を受けた、皮肉とお喋りが趣味のTS少女が、ボロボロになっていく話。▼ なお周りは曇る。▼ 言うまでもないハーメルン特有のTS闇深勘違いのアレ。誰も書かないなら私が書く理論&どうしても暗い世界観でお喋りクソ女を喋らせてボロボロにしたかったので書いた。反省はするが後悔はしていない。▼ ※お喋りクソ…


総合評価:17237/評価:8.82/連載:39話/更新日時:2024年06月06日(木) 19:50 小説情報

TS衛生兵さんの成り上がり(作者:まさきたま(サンキューカッス))(オリジナル:ファンタジー/戦記)

TSしたFPS廃人が、異世界ファンタジーな戦争に巻き込まれる話です。▼残念ながらチートとかは貰えなかったので、雑兵としてコツコツ努力していきます。▼KADOKAWAファミ通文庫様より書籍版を発売しています。▼電撃コミックNEXT様より、コミカライズ版も発売中です。▼次にくるライトノベル大賞2023年度の単行本部門1位に選ばれました。▼応援してくださった読者の…


総合評価:79060/評価:9.52/完結:224話/更新日時:2026年07月29日(水) 12:00 小説情報

TSメスガキ鬱ゲークラッシャー(作者:WhatSoon)(オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル)

鬱ゲー世界に転生してしまった男が、メスガキになりつつ鬱要素を破壊しようとする話。▼尚、周りの人間は彼女を見て曇る物とする。


総合評価:15510/評価:8.86/連載:16話/更新日時:2024年04月08日(月) 01:16 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>