凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法   作:けっぺん

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『勇蝕写本』/聖都を蝕むもの

 

 

 夜、再び外に出たのは、異様な騒がしさを聞いたからだった。

 聖都に来てから色々と情報を集めているが、何か祭りがあるという話もなかった。

 それに、その喧騒には悲鳴や怒号が混じっていた。

 明らかに異常な騒ぎが外で起きていて、何もしないという訳にもいかない。

 ――というよりは、状況を把握しないと、どう動くべきかも分からなかったため、とにかく僕たちは宿の外に出た。

 

 外はとにかく、慌ただしい。

 人もエルフもその他の種族も、何かから逃げるように大聖堂へと走っていく。

 

「お、落ち着いて避難するでありますよ! 押さないで、こ、転ばないように! 大聖堂の中は、安全であります!」

 

 自分が落ち着いた方が良いのではというほど動揺を隠さないルークがかれらを先導している。

 辺りを見れば、鎧を身につけたエルフの騎士たちがそこかしこで走り回っている。

 騎士たちが総動員するほどの事態――かれらが逃げてくるあちらの方向に、何があるのか。

 

「……ものすごい魔力」

「なにか、魔族の仕業?」

「多分」

 

 その魔力は、僕でも感じられるほどの濃度だった。

 これほどの魔力が離れていても伝わってくるということは、それを放つ何者かは更に強烈だということだ。

 

「勇者どの!」

 

 外に出た僕たちに気付いたのか、ルークががしゃがしゃと鎧と大槍を鳴らしながら走ってくる。

 兜で顔が半分隠れたその姿はいつも通り――ながら、それ以上の焦燥が感じられた。

 

「お、お、お二人も避難を! 大聖堂に逃げるであります!」

「何があったの?」

「ゆ……ゆ、『勇蝕写本』……最後に目覚めかけたのも、僕が生まれる前の出来事であるゆえ、話を聞いただけでありますが……か、かつての勇者が、魔族に変じた存在だとか。それが完全に目覚めて、暴れているでありますよ!」

 

 人間が……魔族に変じた?

 そんな話は聞いたことがなかった。ルークの様子からして、ゴーストやアンデッドのような意味合いではなく、本当に、人間がまったく違う種族に変わり果てたということらしい。

 それも、かつての勇者が。何代前なのかは分からないが、そんな存在がいたのか。

 

「その時はリーテリヴィア様がどうにか本に封じ込めることが出来たようでありますが……と、時折目覚めかけているという話を聞くであります。あんなものがどうしてイリスティーラの工房に……!」

「――え?」

 

 その、『勇蝕写本』の説明以上に聞き捨てならない言葉に、暫し、思考が止まった。

 僕の理解が正しいならば。合っていてほしくはないが、正しいのだとすれば。

 今起きているこの騒ぎ――騎士たちが総動員し、かつてはあのリーテリヴィアが直接対応したという存在が目覚めた、その震源地は。

 

「……リッカ」

「――行くの?」

「リッカもあの子が……ホープが心配でしょ?」

「……」

 

 いつもより、リッカの意思が固まるまでは、早かった。

 とてもではないが、放置しておける話ではない。勇者として――それに抗うことができる者として。

 

「力を貸して、リッカ」

「――うん」

「お、お二方、何を……ちょぉ!? ま、ままま待つでありますよ! そっち行っちゃ駄目でありますっ!」

 

 今回は、いつもと違う。

 自分の身を守るためではなく、助けられるかもしれない者に手を伸ばすため。

 それ以上の、難しいことなど考えてはいられない。

 ここまで関わった。助けられたこともあった。リッカが楽しそうにしていた。

 だから行くべきだと、戦うべきだと、決心が体を突き動かす。

 

「勇者どのぉ! 一旦おちついて、と、止まるでありますぅ!」

「リッカ。あれ、使える?」

「使える……ぶっつけ本番だから、使い方に気を付けて」

「よし――トランスコード、U-リッカ!」

『トランスコード! アクセプション!』

 

 一刻も早く工房に辿り着かなければならない。

 そんな状況で、走って駆け付ける他の選択肢があるならば、使うべきだ。

 リッカは試練での秘策になると言っていたが、今この場で扱うことを否定しなかった。

 

 それは、これまでの二つの形態とはまた大きく特性が異なる姿。

 リッカが魔力へと分解され、僕を覆っていく。

 そしてリッカに呼び出され、走る僕を追うように飛び、駆ける小さな命たち。

 詳細は聞いていない。教えてはくれなかった。

 あの山道の下の世界で、アラクネから貰ったという新しい力。それを、魔族を一切信用していないリッカがどうして受け入れようと思ったかは定かではない。

 それが少しだけ不安だが、リッカ曰く、使い魔として完全に支配できている、と。

 ならば信じるのが僕の役目だ。

 

『ルーク? 悪いが今は――』

「ふぇ、フェン先輩ぃ! 緊急でありますっ! 勇者どのがそっちに向かってるでありますぅ!」

『……っ、ええい、止めておけ。このデカブツは勇気喰いだぞ、近付かせるな!』

「止めたいのはやまやまでありますが……現在進行形でそっちに走りながら虫に集られているであります!」

『お前は何を言っている!? 意味の分からん報告をしてくるな!』

 

 無数の虫たちの羽音が重なった不協和音は、今回は味方だ。

 薄命の群れは少しずつ、僕に集まっては結合し、スーツの上の装甲に変わっていく。

 虫たちは、弱い。ただの人間でも簡単に潰してしまえる命たちだ。

 だが、それらが集まり、結合することで一つ一つに確かな強度を持った鱗の鎧となる。

 そして体中を巡るエネルギーは緑色に変化する。

 リヴィアフューリーのように、それは僕やリッカの魔力ではない、風の属性。

 魔法が成立すると同時、僕に移った使い魔の命令権によって、全身の鎧が翅を広げた。

 

『U-リッカ――バラーズッ!』

 

 鎧となった無数の虫たちの協力によって、僕の体は浮き上がる。

 その感覚は、不思議なものだった。

 決して快適ではない。翼も持たない僕が、持ち上げられることによって空を飛ぶのは、言いようのない不安があった。

 それでも――これは、僕とリッカが得た、初めての飛行手段である。

 

「ゆ、ゆ、勇者どのが変身して……飛んだであります! 体中から翅をたくさん生やして飛んだでありますっ!」

『ルーク、お前狂ったか!? 私は忙しい、冗談は後にしろ! っ、そこの二人、逃げ遅れたか! そこを動かず――』

 

 飛べるということは、建物などの障害物を無視できるということ。

 背の高い家屋よりも上まで飛べば、それは見えた。

 

「あれって……」

「――ローパー」

 

 一瞬、巨大な山のように見えたそれは、蠢いていた。

 黒く輝く、触手の群れ。今まで――味方として、武器として使ってきたことしかなかった、リッカの使い魔の元になったという魔族。

 ただしその規模はオズマフューリーによって扱うそれとは比較にならない。

 近付くにつれその魔力の大きさも、より如実に伝わってくる。

 

「ローパーって……あんなに大きくなるの?」

「普通はない……と思う。元勇者っていうのが、関係しているのかも」

 

 かつての勇者が変じたという魔族であれば、何か特別であってもおかしくない。

 寧ろ、ローパーは強力な個体になるのも稀という話も聞く。どの道、あの巨体であるというだけで、油断できる相手ではない。

 

「と、というか勇者どのぉ! それ駄目であります! 試練の最中に戦闘用の魔法は駄目であります!」

 

 ――そんなルークの、遠くなった声を聞いて、試練の最中であったことを思い出す。

 この魔法は僕たちの戦闘態勢の証。当然、これを展開したことで、試練の制限時間を管理する魔道具の砂は減り始めるだろう。

 それでも……止まるべきではないと体は動く。

 

「リッカ。一時間以内に、終わらせよう」

「その調子」

 

 程なくして、イリスティーラの工房近くに辿り着く。

 既に館を隠していた魔法は消え去っていた。

 敷地から溢れ出し、手あたり次第に周囲に手を伸ばす触手の群れ。

 齎すのは破壊、のみではない。

 

「……あれは」

「見ちゃ駄目、ユーリ。一刻も早く、コレを止めて、被害を抑えることだけを考えて」

 

 逃げ遅れて捕らえられた、恐らくは騎士ではないエルフ。

 その惨状が視界に入っていたのはごく僅か。

 今は気にするなというリッカの叱責は、正しい指摘かは分からない。

 被害を抑えることと、今捕まっている者たちを助けること。その両者を手っ取り早く遂行するためには、元凶たるこの巨大ローパーを仕留めればいい。

 

 ローパーの進撃を止めるため、エルフの騎士たちが囲むように展開されている。

 かれらが協力して発動している防壁の魔法で触手を止めつつ、残った騎士たちが被害者の救出と攻撃を行っているらしい。

 ただ、防壁でローパーの攻撃全てを受け止められている訳でもない。

 ローパーの側が考えて攻撃しているということではないようだが、偶然にも数十の触手が同時に突き刺さった箇所の防壁が砕け散った。

 

「ッ」

「ちょっ、ユーリ――」

『U-リッカ――リヴィアッ!』

 

 そうなれば、次に捕らえられるのはそのすぐ前にいる騎士。

 決断までは早かった。

 飛び降りると同時に形態を変更。

 着地しつつリヴィアフューリーの液体を前面に展開し、触手を押し止める。

 

「なっ……スライムの化け物……!?」

「化け物って」

「は……? その声……ユーリ殿か!?」

 

 奇抜な格好であることは否定しないが、化け物とまで言われるとは。

 聖都に来た時に出会ったフェンの心外な言葉を受けつつ、触手を押し戻す。

 あのローパーの武器は力よりも物量か。このくらいの数であれば、リヴィアフューリーの防御力が勝るようだ。

 

「ルークの報告、まさか冗談じゃないのか……? い、いや、それはともかくだ。何をしているユーリ殿、試練の最中であるあなたがこの場で戦うことが、何を意味しているのか分かっているか?」

「だからって、何をしない訳にもいかないよ」

 

 理解しがたいという表情のフェン。

 当然だろう。これは試練を捨てるにも等しいことだろうから。

 

「一時間以内に倒しきる。そうすれば、何の問題もないでしょ?」

「いや、その分あなたが試練に費やせる時間が減るのだが……」

「――では。一刻も早く片付けねばなりませんね」

 

 再度迫る触手の山が、切り刻まれて勢いを失う。

 その剣の冴えには覚えがあった。

 魂さえ切り裂くその騎士は、いつの間にか隣に立っていた。

 

「オリヴィエ殿……!」

「リーテリヴィア様は現在、魔王様への報告を行っています。自分が辿り着くまで、侵攻を押し止めよ、とのことです」

 

 彼――オリヴィエによって切られた触手は、すぐさま再生していく。

 あの再生速度を見る限り、攻撃するにも呑気にしている暇はなさそうだ。

 であれば、触手を相手していても仕方ない。

 目指すべきは、ローパーの弱点たる、あの肉の山の奥。

 唯一再生能力を持たないという中心の核だけ。

 

「ユーリ殿は……」

「彼が戦うというならば、止めはしません。手を借りるとしましょう」

 

 ――協力はするなと、リッカが無言で圧を掛けてくる。

 つまるところ、僕は勝手に戦えと、そう言っているのだろう。

 彼らが侵攻を止めている間に僕たちが核を仕留める。それが方針となるだろうか。




『U-リッカ バラーズフューリー』
【属性】風
【攻撃力】■■■■■■
【防御力】■■■■
【素早さ】■■■■■■
【魔 力】■■■
【精神力】■■■■■

【イマジナリマテリアルコーティング】
全身を包む黒いスーツ。薄く柔軟で動きを阻害しない。
想像結晶技術によって構築された架空物質により並の装備と比較にならない防御力を持つ。
各種状態異常への耐性も持つ。

【ブレイブリィブラッド】
スーツの内部に流れる強化エネルギー。
全身を循環することで装着した者に連続的な強化を行使し、万全以上の戦闘を可能とさせる。
また、状態異常回復や自動修復も行われるため、長期戦にも対応できる。
主となる魔力の属性によって色が変化する性質を持ち、血管のようにスーツに色が浮き上がる。
バラーズフューリーの場合、色は緑色となる。

【バラーズバグ】
バラーズフューリーによって統制される使い魔の総称。
疑似記憶空間から召喚される大小さまざまな虫型の使い魔であり、群体での戦闘を得意とする。
虫たちは複数体が結合することで互いのリソースを共有し変質することが可能。
これにより群れが合体し巨大な虫に変形するなど、幅広い戦法を取ることができる。

【AGクラスタースケール】
無数のバラーズバグが集合し、結合することで成立するバラーズフューリーの外部装甲。
集まれば集まるほど際限なく強化される特性により、状況に合わせた防御力・素早さを実現する。
また、装甲に使われているバラーズバグは分離でき、防御を捨てて攻撃に転用が可能。
装甲は基本的には、全身を覆う鱗のような形状を取る。

【ポロサスジョーズⅡ】
腕に装備する、バラーズバグの集合によって成立する攻撃機能。
鋼鉄をも砕くワニの大顎を模しており、相手に噛みつくと同時に付けた傷から超小型のバラーズバグを侵入させる。
侵入させたバラーズバグは使い魔としての機能を失い、対象への毒に変転。
単純な攻撃力のみならず、状態異常による弱体化を可能とする。
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