凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法   作:けっぺん

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価値無き者

 

 

 意味が分からなかった。

 ルメリーシャと呼ばれた少女の言葉の意味が、ではない。

 いや、そちらの方も、全部が全部理解出来たという訳ではないのだが。

 

 それよりも、その言葉の数々がリッカを存在レベルで馬鹿にしているもので。

 今のリッカの激情が、言葉を否定するためのものではないということが、僕を混乱させた。

 

「ッ、どい、て……っ!」

「どかせばぁ? あたし全然力入れてないよ? 勇者なら教会のちょっとした祝福くらい解けないと」

 

 つまるところこの少女の言葉は、表現はどうあれリッカについて、的を射ているのだろう。

 どうしてそこまで、リッカの“運命”とか“魂”が消耗しているのか。

 この魔法の影響? イリスティーラと出会ったあの場所で、蜘蛛の魔族に何かをされた? それとも、もっと前から――

 

「ほーら、頑張れっ、頑張れっ。あははっ! 全然ダメダメ! 赤ちゃんみたい! ねえねえ、なんでもがいてるの? もしかして立ち方忘れちゃったの? こうやって足を使えばいいんだよっ!」

「ぐっ、ぅ……!」

 

 ――今は落ち着け、僕。

 彼女たちの言葉で何より動揺しているのはリッカじゃないか。

 僕までそれにつられていたら魔族たちの思う壺だ。

 今のリッカは冷静じゃない。僕が支える――違う、僕が先導しないと。

 

「――リッカ! 僕に合わせて!」

「ッ」

『ファイナライズ! アクセプション!』

 

 頭の上に立ち、リッカを煽っていたルメリーシャをとにかく引き離す。

 

『オズマ・エクスタシーッ!』

 

 ルメリーシャの力に寄らない、手足を縛り付ける強い拘束を吹き飛ばす。

 今までの発動とは違い、僕たちの周りを覆うように暴れ回る触手の嵐。

 それが少女たちを捕らえた感覚はなかった。

 ひとまず体勢を立て直す。リッカも少し落ち着いてくれたようで、体が自分の意思で動く。

 立ち上がって構えれば、二人の少女は興味深げにこちらを見ていた。

 

「こわーい、なに今の魔力! どこにそんなに蓄えてたの?」

「……なんともまあ、悍ましい。低俗な戦装束に、下賤な力。それでよく人の代表、勇者を名乗れるものです」

「……リッカが僕に用意してくれた力だ。馬鹿にしないで」

 

 嫌悪感を与えるものであるとしても、この魔法があるから僕はここまで戦えた。

 そもそも、僕の勇者としての旅路はリッカと一緒に歩んできたもので、これから先もリッカと一緒に歩んでいく。

 僕に勇者としての“価値”があるのであれば、それはリッカと共有すべき“価値”なのだ。

 

「ふーん……それじゃあ、お姉ちゃんがいなくなったらお兄ちゃんも戦えなくなっちゃうんだ」

「そうだよ。その時が僕の旅の終わりだ。だから、リッカは渡さない。この街がリッカを許容しないなら、この街の力なんて借りなくていい」

 

 この街がリッカにそういう対応をするのであれば、すぐにでも出ていく。

 試練の直前の準備。確かに重要だ。

 だが、それ以上にリッカが酷い扱いをされる方が問題なのだ。

 

「お兄ちゃんは真っ直ぐだね。お姉ちゃんとは大違い。うん、それじゃあ、そんなお兄ちゃんを評してチャンスをあげる!」

「チャンス……?」

「お兄ちゃんたちはあたしたちより弱いし、あたしたちがやろうと思えば、この街から出られなくすることだってできるの。でも、それよりこっちの方が面白そう!」

 

 ――勿論、このまま戦うというのなら、全力で抗うつもりだ。

 だが、ベストの状態で戦って、勝ち目があるかどうかはまた別の話。

 ヴァンパイア。夜の支配者。陽光という弱点が味方しなければ、人型魔族の中でも最強とされる種族。

 当然個人差はある。目の前の二人がリーテリヴィアより強いなどということはない。

 それでも、分かった。見掛けに寄らず、あの二人のどちらも、今の僕たちより強い存在だと。

 この街に僕たちを閉じ込めようと思えば、それが出来てしまう存在だと。

 

「あたしが今から言うものを持ってきたら、お姉ちゃんに一等級の首輪をあげましょう! それから、これも!」

 

 ルメリーシャはもう一人――ヴァージニアの方に歩み寄り、その首に下げていた銀の首飾りを手に取った。

 

「……ルメリーシャ」

「これはね、この教会の祝福が詰まった首飾り! ネシュアが死に満ちていることは知ってる? これがあれば試練を簡単に突破できる……って訳じゃないけど、失敗しても生き残ることくらいは出来るんじゃないかな」

 

 死と戦う試練を前にした僕たちにとっては、これ以上ないほどに有効な保険。

 きっとそれを提示してきたとしても、彼女にとっては遊び気分なのだろう。

 これを目の前にぶら下げてやれば、従うほかないだろうという確信。

 実際に試練に役立つ確証はない。先の首輪のように、厄介な魔法が掛かっている可能性もある。

 二択だった。全力で外まで逃げる挑戦をするか、ルメリーシャに応じてこの街を利用できるようにするか。

 

「……何を、持ってくれば、いいの」

「リッカ……?」

 

 その葛藤に、先に答えを出したのはリッカだった。

 

「へえ。お姉ちゃんが乗ってくるんだ。そんなに“ぼろぼろ”扱いされたのがイヤだった?」

「……」

「あはは、まあいいや。この街の北東に、ノクトールっていう森が広がってるの。そこにね、魔王様が勇者のために用意したっていう『聖剣』があるんだって」

 

 今すぐにでも動き出したい、あの二人を倒したいという衝動を、リッカは抑えている。

 そちらの方が益が大きい。今は我慢した方がいい。それがリッカの選択だった。

 ――僕がそういう方向に、リッカを諭せれば良かったのだが。

 やはり、事ここに至って、先導するのはリッカだった。

 

「それを持って、戻ってきて。そうしたら、この街はあなたたちの味方になってあげる」

「……ユーリ、いい?」

「――うん。それであの二人の言葉を取り消せるなら」

 

 それでリッカの“価値無し”という評価を覆せるならば、僕はそれで構わない。

 聖剣なるものが何なのかは不明だが、試練の役に立つかもしれない。

 だが、それ以上に――“行った方が良い”という直感があった。

 そこへ向かうことが、何か大きなものに繋がるという予感が。

 

「うんうん、それでこそ! 一度見てみたかったんだぁ、聖剣。勇者のためにって言う割に誰も戻ってこないんだよねえ」

「……そうと決まったなら、すぐに出ていきなさい。別に残っていても構いませんが、等級無しのそちらが明日まで清い身でいられる保障はありませんよ。私たちとしては、どちらでも良いですが」

 

 ――その通りだ。すぐにこの街を出ていく必要がある。

 この街のルールにおいて、今のリッカは“何をされてもおかしくない”存在なのだ。

 であれば、外の方が万倍も安全である。

 魔族の二人に背を向けないように教会の扉まで下がり、魔法を維持したままに外に出る。

 そこから、全力で走ってこの街の結界を抜ける。それが、考えていた流れであった。

 

 ――――教会を囲むように、人の群れが出来ていたことで、それが無理であることを悟る。

 

「これ、って……」

「あ、言い忘れてたよ、お兄ちゃん」

「ッ!?」

 

 いつの間にか背後に忍び寄っていたルメリーシャ。

 呆然としていたその隙を突くような、首元への衝撃で脳が揺れる。

 息が詰まって、ほんの一瞬、意識が刈り取られる。そのダメージに、今のリッカの動揺が影響してなのか。

 魔法が解れ、リッカ諸共人々の前に投げ出された。

 

「さっきのやり取り、この街のみんなが知ってるよ。聖剣を取ってくるまで、お姉ちゃんがどんな状態なのか。ノクトールの森まで、二人で辿り着けるかなぁ?」

「――――! 返し、っ!?」

 

 わざとらしく首を傾げたルメリーシャの手には、リッカの杖。

 カルラから託された、リッカにとって、特別な杖。

 リッカが咄嗟に取り返そうとして、背後から伸びた手に掴み取られた瞬間――急激な喉の渇きと、感じたことのない熱が、僕を襲った。

 

「ルメリーシャ様。本当にこの女、“等級無し”なんですかい?」

「うん、そーだよ。なーんの価値もない、あなたたち未満の存在」

「っ、ふざけ……離して! やだ!」

「そうですか。そんならまあ、好きにして良いっつうことで……」

 

 今までの、何よりも。あの二人の妖精のいたずらよりも。

 ルメリーシャの決定によって向けられた、人々の“欲”に、リッカは恐怖していた。

 魔族への怒りも憎悪も忘れたリッカが数分後にどうなるかなど、何より容易に理解できる。

 そして同時に――理解できない。

 果たして今目の前にあるものが、本当に人々の姿なのかと。

 

「――やめろ!」

 

 混沌とした感情の中で、僕は叫んでいた。

 かれらがやろうとしていることは許容できない。未遂だろうと、抑えきれないほどに、腹立たしい。

 “抱いてはいけない”想いを、人間に対して抱きかけていることを自覚しながらも、注目を集めるように僕自身の首輪を掲げる。

 

「僕のものなら、みんなは手出しできない。違う?」

「ユー、リ……」

「――あははっ! そうだね。ここにいる人間に他に一等級はいないみたいだし……お兄ちゃんがお姉ちゃんを“自分の所有物”と断言するなら、守れるんじゃない?」

「ルールを破ったら?」

「あたしの目があるし、“おいた”しようとしたなら止めないとねー」

「ならそれでいい。リッカを連れていくけど、いいよね」

 

 キリキリと胸の奥を痛ませる罪悪感の中で、リッカの手を取って引き寄せる。

 最悪この状態でもリッカと共に、この街に居続けることは不可能ではない。

 だが、耐えられる気がしなかった。

 リッカが人とも取られない目で見られることが、リッカと平等ではないことが、堪らなく不快だった。

 魔族の少女が発端であり、そもそもの話で言えばこの街に入った僕たちに原因があるとも言える。

 いや、だからこそ――同じ人間に対してこの気持ちを抱いてしまう事実に、吐き気がした。

 

「あたしの気まぐれで変えられるルールなんだけど……まあ、いっか。それじゃあお兄ちゃん、頑張ってねー!」

 

 遠くなっていくその声が、気持ち悪かった。

 喧噪が、気持ち悪かった。

 辺りからなおもリッカに向けられる情欲が、気持ち悪かった。

 勢いのない、ふらついて足取りのリッカを引っ張るようにして、小走りで街を出る。

 

「ッ、ぁ、うぇ……っ!」

 

 結界を出て、当たり前の明るさを浴びたと同時、再び込み上げてきたものを堪え切れず、地面にぶちまける。

 こういう世界を、こういう人間を、僕は知らなかった。

 “自身より下の者は道具でしかない”という考えを、受け入れられる気がしなかった。

 リッカの危険が、怖かった。自分が抱いた感情が、怖かった。

 

「はっ……っ、く、ふっ……」

「――リッカ……、リッカ!」

 

 落ち着いていない状況で、休みもせずに走ること。

 それは生まれつきさほど体の強くないリッカにとって、些か以上の負担であった。

 今の嫌悪感を全て放って、蹲るリッカに駆け寄る。呼吸を整えるリッカのポケットからハンカチを取り出して、リッカの口元に当てる。

 呼吸がつらくなるのは一瞬。このハンカチもまた、リッカがカルラに貰ったもの。

 カルラの葉の香が心を、そして呼吸器を落ち着かせる。昔からのリッカの愛用品だ。

 

「――はぁ――はぁ――、大丈夫、ありがと、ユーリ」

 

 程なくして、落ち着きを取り戻したらしい。

 胸に手を当て、いつも通りの呼吸に戻ったリッカ。

 その表情はひどいものだった。何もかもの感情が混ざって、行き場を無くしていると、目に見えて分かる。

 リッカが何より大切にしていたものが、奪われた。こうなった以上選択の余地はない。あの少女の言う通り、聖剣なるものを持ち帰り、リッカの杖を取り戻さないといけない。

 だが――

 

「……? ユーリ?」

「……」

 

 リッカに掛ける言葉が見つからなかった。

 忘れようとしてなお、忘れられない、沸々と自分の中で煮えるような感情。

 自分にとってのそれは、今まで魔族に向かうことさえなかった。

 蜘蛛の魔族に対してだってそうだ。あの時はリッカを取り戻したい一心だった。

 なのに、こうして旅に出てから、初めてそれを抱いた相手に――魔族だけではなく、人間も含まれているなど。

 

「……」

 

 リッカを案じないといけない。それが最優先なのだ。

 あの首輪が証明したリッカの“今”について、話してくれるなら聞いておきたい。

 そうしないとならないのに、自分の考えがはっきりと纏まらない。

 

 こういう時、カルラならば何を言うだろう。

 分からないが、僕に対しても、リッカに対しても、今の助けとなることをピタリと言い当てるに違いない。

 なにかと察しの良いカルラが当たり前のようにいた頃が恋しくなるほどに、今の状況は苦しかった。

 リッカの苦しみの根本が分からない。僕の気持ちの方向性が決まらない。その迷いに勝る原動力がはっきりとしない。

 苦悩の行き先を指し示す誰かのいないつらさを、初めて僕は味わっていた。




【サキュバスネキ】
「祝福自体は掛かってるっぽいわ。貰えるなら貰っといた方が良さそう」

【ふみなぺでぃあ】
「ついでに解析してたけど特に魔法は掛かってないしまともな装備品だよ。貰えるなら貰っといた方が良さそう」

【スレ民】
「俺たちの知ってるネキじゃない」
「辞書公認の良装備なら貰っとこうぜ」
「イッチボッコボコで草」

【不夜街ナイトラクサ】
今話の怪人枠ルメリーシャとヴァージニアが支配する、眠らない夜の街。
聖都とは違う方向で人間と魔族が共存する都市であり、全てが等しく“階級”という制度で支配される。
“運命”の奪い合い、“魂”の削り合いが人間同士で日常的に行われる。

あえてゲーム的に言うのであれば、やろうと思えば現時点の店売り装備を三段階くらいすっ飛ばして暫く無双できるギャンブル街。
ネシュア国跡付近にこれ見よがしにある大都市だが必須イベントはない。ただし一度でも入ると必須イベントが生えてくる。
落ちぶれるところまで落ちぶれてからセーブすると詰む。
まともな人間が多いこの世界で、ほぼ全員がまともじゃない貴重な街なので、人間相手のCGの九割くらいはこの街で回収できる。

【リッカ】
そういう時期だ。存分に曇れ。
初めてやってきた街に今まで踏んでいなかった人間相手のバッドがアホみたいに眠っていた件。
秘密を暴露されるわ精神の拠り所の一つである杖を奪われるわレイプ未遂だわでただでさえ不安定だった情緒が爆散した。
この世界ではオリチャーを行くとはこういうことであり、未知に挑むとはこういうことである。
カルラのハンカチは愛用品。ミント草の魔力を縫い込んでおり、呼吸器の苦痛を和らげ精神を落ち着ける効果がある。

【ユーリ】
そういう時期だ。いいから曇れ。
試練の一つを突破し、肩書だけなら一人前の勇者。二つ目の試練は目と鼻の先。
ならばそろそろ、身をもって認識すべきだ。
この世界の歪さを。大切な者の歪さを。勇者としての自身の弱さを。
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