凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法   作:けっぺん

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『不夜遊姫』/「たすけて」(Hazard)は止まらない

 

 

 淫魔(サキュバス)は、私たちヴァンパイアが共通して忌み嫌う種だ。

 エルフのように偏屈だったり、良い子ぶっているのではない。

 あまりに自身を曝け出すことに躊躇のない誇りの無さ。血が乱れることを気にもしない破綻した種族。

 夜の在り方を狂わせる阿婆擦れ共。

 私はあの連中を心底から軽蔑する。人間の上位種たり得る強い力を持っておきながら、何故ああも怠惰に生きられるのか。

 

 何より悍ましいのが、魔王に従う連中の頂点に立つ淫魔の女王だ。

 淫魔たちからすれば魔王よりも絶対的な存在として信じられている『狂宴』。

 かの存在は、私たちが築き上げた、運命を奪い合うこの不夜街のルーツに強く関わっている。それもまた、私にとっては腹立たしい。

 私たちが生まれる前。

 淫魔たちには禁忌の大罪として畏れられていると同時に、偉業として讃えられている国枯らし。

 傾国を超え、国の全てを熱で満たし、あらゆる欲を飲み干してみせたあれこそは、正真正銘の怪物。

 侮蔑の感情を向けてはいれど、規格外の力を有することへの、最低限の敬意も無くはなかった。

 それが――何をしているのか、他者が支配する、この街で。

 

 この場にいた三人の人間のうち、唯一、勇者ではない存在。

 先代という、『狂宴』とはまた異なるベクトルの化け物が生きていたという事態は、この際もういい。

 その衝撃を吹き飛ばしたのは、『狂宴』があの少女に目を付けたこと。

 すっかりルメリーシャのおもちゃへと成り下がっていた少女は、このまま堕ちていくはずだった。

 先代の動きによっては多少、その末路も変わっていたかもしれないが、ここまで道連れを共にしてきたらしい今代には何も出来ていなかった。

 あとはどこまで人間共に貪られ、いつまで壊れずにいられるかというだけでしかない。

 少女にとって大切なものらしい杖が彼女に戻ることなど二度とない。

 そんな当然の未来予想を、『狂宴』は台無しにした。

 

 彼女は魔王の名代として、先代が引き続き勇者でいることを認めた。

 そしてその後、少女に目を付け、盛り出したかと思えば、その力を注ぎ込んだのだ。

 『狂宴』が司るのは、当然のように狂気。人間があてられれば、一瞬で深淵まで沈んでしまうだろう夢の境地。

 それに浸ってまだ言葉を紡げることに驚き、その魔法を警戒し、未完成の術式を行使する魔法使いの風上にも置けない愚に呆れ果てて。

 

 ――その魔法が完了した結果があれだ。

 

 触手を鎧とした悍ましい姿とはまた別のもの。

 あれが不格好な獅子であるならば、これは淫魔の狂気に満ちた兎。

 全身の黒い鎧は簡素なもので、尖った赤い耳や、背中の翼、先端が五つの指の如く分かれた尾。

 巡る赤い魔力と同じ色の瞳は、以前の姿のような輝きはなく、どこかくすんで見える。

 その無機質な姿は、静かに俯き佇んでいる様子も相まって、生意気にも不気味だと、私に感じさせた。

 

「っと、動く……! ユーリくん、リッカちゃん……?」

 

 『狂宴』が私たちをも巻き込んで仕込んだ魅了による束縛。

 その効果が無くなったと最初に気付いたのは、先代だった。

 駆け寄っていく先代に何とも言えぬ苛立ちを感じながらも自身に後遺症が残っていないか、軽く体を動かして確かめる。

 問題ない。万全に動く……ああ、もう。不愉快だ。『狂宴』の淫気が残っているようで気持ち悪い。

 

「まったくもう……こういうのほんとムカつく! これだからサキュバスって嫌いっ!」

「悪かったわねぇ。もう影響ないでしょうし、自由に動けるわよ」

「わざわざ言われなくてもっ! はぁーあ……もういいよね、ヴァージニアぁ。なんか向こうも反抗的だしぃ」

「……好きになさいな。今それを持っているのはあなたでしょう」

 

 私以上に束縛を嫌うのが、ルメリーシャだ。

 相当に機嫌を損ねているらしい。手に持っている杖をいま握り潰さないでいることが奇跡の域だ。

 ただまあ、それもここまでのようだが。

 思い通りにいかなくなり、“面白い”反抗をしなくなった人間に、彼女は興味を持たない。

 その反応を引き出す格好の道具であったあの杖も、用済みだということ。

 

「うん! じゃあ、ぼろぼろお姉ちゃんには分かってもらわないとね。人間なんてどこまで行っても、あたしたち魔族のおもちゃでしかないってこと」

 

 わざわざ杖を高く掲げて、ルメリーシャは無邪気に笑う。焦らすように、その手に魔力を少しずつ込めながら。

 手の内の魔力の密度に耐えられなくなれば、あの杖は粉々に砕け散るだろう。

 人間用の杖であれば、私たちヴァンパイアの魔力量に対応できる訳もない。

 先代があの場から動いて剣など引き抜けば脅威ではあるが、流石に杖の粉砕くらいは間に合うだろう。

 

 ――不気味なのは、今代の沈黙。

 俯いていた顔をゆっくりと上げ、その鈍く輝く赤い瞳が静かにルメリーシャを捉える。

 先の姿の性能からして、問題ないという余裕。それと同時に、どこかに存在する、言いようのない危機感。

 後者が前者に勝る前に叩きのめし、完全な優位に立った方が良いと、本能が告げている。

 

「ルメ――」

 

 向こうも分かっているだろうが、一応忠告してやろうと口を開いて。

 その直後に、状況は“急速に”動いた。

 

「――ゴ、ッ――」

 

 淑女らしくないと、本来ならば私も窘めていただろう、無意識のままに口から空気が吐き出された音。

 ルメリーシャが対処するには十分だった距離を、信じがたいほどの速度で詰めた黒い怪人。

 その、“人間の拳”が“ヴァンパイアの腹”にめり込んだという前代未聞だろう状況が、暫し理解できなかった。

 

「へ……?」

 

 先代もまた同じ。その間抜けな声はルメリーシャが教会の壁に激突した音にかき消される。

 それを即座に追撃するでもなく、拳を突き出した状態で停止している今代。その足元に転がった、ルメリーシャが思わず手放したらしい杖。

 安否を確かめるようにそれに目を向けていた彼は、無事と分かるや否や、体勢を戻してルメリーシャのもとへと歩いていく。

 ……なるほど。警戒度を引き上げる必要がありそうだ。

 思うにあの戦闘スーツにはそこまでの速度を成立させるスペックはない。スーツに実装された何らかの魔法による機能だろう。

 

 大変に後輩想いであるらしい先代が、ひとまず杖の確保を優先したのを横目に、ゆっくりと今代から距離を取る。

 私は能力の分からない相手に馬鹿正直に突っ込む性格ではない。

 何はともあれ、観察だ。あれの目が、ルメリーシャだけに向けられている間に。

 

「っ……駄目だ、リッカ……!」

「……?」

 

 ――今代、抵抗しているのか?

 少女が変質し、今代を補強するその魔法。前回と同じように、少女の意思が優先して動かしている状況ではあるようだが。

 あの時のような意思の不一致によるぎこちなさなど、そこにはない。

 今代の意識は健在なれど、抵抗がまるで役目を果たしていないように、その歩みは無機質で、端正だった。

 

「――っざけないでよ、人間のクセにィ!」

 

 ルメリーシャの立ち直りも、また早い。

 淫魔ほど頑丈ではないが、ヴァンパイアの体にはあれらとはまた違う絶対性がある。

 無論、夜という私たちの世界にいる間のみの性質ではあるが、自然的な滅びでないならば死さえも容易く否定する再生能力。

 これがある限り、私たちは負けず、死なない。

 ダメージを受けたなら再生すればいい。癒えない傷を負ったならその部位を捨てればいい。

 高貴な戦い方ではない。これに頼るようではまだヴァンパイアとしては未熟だとも言われるが、ルメリーシャに再生を行わせるほどに、あの二人は人間の可能性とやらを見せたということだ。

 

「くっ……、……? ――ぅあ!?」

「ギ、ィ……!?」

 

 ――などという余裕は、すぐに消えた。

 怒りに任せて叫びながらも影の如く迫ったルメリーシャの鋭い蹴り。

 今代の焦りとまったく一致していないその体は、手すら動かさない。翼によって防ぎ、尾を振るって彼女の体を叩き落とす。

 まるで、飛び回る羽虫を払うかのような、小さな動作。ほんの一瞬、ルメリーシャの抵抗の余地を奪った“怪物”は、伏せた彼女の背に足を乗せる。

 

「この……っ、誰を踏んづけてるか、分かってるの!? そんな生意気なこと、人間に許されてると――」

 

 次の動きは、ゆっくりと。

 ルメリーシャの言葉が聞こえていないかのように、その黒い手は彼女の左の二の腕を掴んだ。

 

「やめ――ぅぁあアアア!?」

「――――、ぇ……?」

 

 嘘だと、思いたかった。

 人間の手管でこのような現実が引き起こされるなど、考え難い。

 ルメリーシャを中心に辺りに飛び散った赤は、ヴァンパイアの内を流れる高貴な血。

 いとも簡単に、怪物はルメリーシャの左腕を肩から引き千切ったのだ。

 大した感慨も持たれず、ゴミのように投げ捨てられる左腕。離れた部位は灰化していき、すぐにまた、新たな腕の再生が始まる。

 

「ぁ、ぐ……ぉ、覚えて、なさいよ……っ、あんたたちじゃ、あたしを殺せないっ、あたしをここまで、バカにしたこと……! 絶対後悔させてあげる……ッぁ!?」

 

 ――初めて、恐怖というものを感じた。

 怒りの方が勝っているルメリーシャは気付いていない。今代のことが頭に入っていない、あの少女の理性無き狂気を。

 『狂宴』は手段と材料を与えただけ。あの黒い姿を動かしているのは、少女の憎悪に他ならない。

 

「ま……待って、リッカ。こん、なの」

 

 ……今代の制止は届かない。届いて、くれない。

 彼は意識を失うことも許されず、あの狂気の“実行者”となることしか出来ない。

 あれは“二人で一人”を実現する魔法であるゆえに、纏った彼が、自身の言うことを聞かない体を動かすしかない。

 少女がどれだけ、理性でこの衝動を抑え付けようと努めていたとしても、その努力さえ意味がない。

 その本能、その欲望を前面に引き出し、“解き放っても良い”と唆された状態。

 

「……暴走、ですか」

「っ……先代。あれを止めなさい、あの姿は、勇者たる人間のものではない」

 

 声が震えていることを自覚しつつも、先代を差し向ける。

 『狂宴』は動くまい。あの碌でもない災厄によって齎されたこの惨劇。

 私は……関わりたくない。先代が動くほか、ないのだ。

 

「そう、ですね……確かに、勇者らしくは、ないかもです」

「なら……!」

「でも、止められないですよ。リッカちゃんの憎しみは、そうなる理由があってのことですもん。止める権利があるのは、ユーリくんだけです」

「くっ……なんて役に立たない……!」

「ごめんなさい」

 

 手を出す気はないだと。本気で――正気で言っているのか。

 先代が動かないのだとしたら、ルメリーシャはどうなる。私は、どうなる。

 

「ぁ……ぐぅっ……ふ、ひゅ……っ」

 

 ただ殴っているだけであれば、その程度かと、ルメリーシャにも笑う余裕があった。

 ……これは違う。今の彼女は甚振られている。“こうしても死なない”と、あの少女に知られてしまったがために。

 拷問に精通していない、相手を苦しめる技術も知らない者による、乱雑極まりない“作業”。

 しかし、それが誤ってルメリーシャを殺してしまうことはない――その程度では、ヴァンパイアは、死ねない。

 

「や、めて、リッカ……もう、やめて」

 

 脳のない獣ですら、こうも雑に肉を食い荒らすまい。

 四肢を引き裂いても、その腹を貫いても、臓腑を引きずり出しても、獲物が死なないことを怪物は覚えた。

 一手、一手、制止を聞かず、静かにこなしては、再生を待って次の行動に移る。

 厳かな教会に魔力に満ちた灰が溜まっていく。

 いくらそれが増えても、本体の命は尽きず、逃れられない。

 私が手を出す……? ……馬鹿な。二の舞になるだけだ。そんなこと、認められるものか。

 音を立てないように、扉に向かって歩く。気配を殺し切り、あの怪物に気付かれないように。

 

「――ヴァ、ジニ、ぁ……」

「っ……!」

 

 ――それを台無しにしたのは、ルメリーシャだった。

 

「たすけて、よ……こんな、の、おかしいよね、この街は……あたし、たちが、支配してないと、いけない、のに」

「……ルメリーシャ」

「しに、たくない、しにたくないよぉ……っ、たすけて、ヴァージ、ニアぁ……!」

 

 同じ時に生まれたのではなく、ただ偶然にこの街になるべき場所に、辿り着いた者同士。

 二人の支配地としてこの地を選び、それからどれほど経っただろう。

 ナイトラクサは私とルメリーシャの街だ。これまでも、これからも、ずっと。

 

「……安心してください、ルメリーシャ。ヴァンパイアはその程度では、死にません」

「え……?」

 

 そう思っていた私も、まだまだ未熟だったということだろう。

 この日、この街は変わる。『狂宴』の気まぐれに巻き込まれて変革する。それは嵐のようなもの。抗いようのない天変地異だ。

 天変地異には抗うのではなく、逃げることが賢い選択だと、私は理解している。

 

「まって、ヴァージニア、待って! やだ! そんなのやだ! たすけてよ!」

 

 ――無機質な赤い瞳が、こちらを向いていた。

 怖気が走る。アレの意識を向けられることが、こんなにも悍ましいとは。

 その隙に逃げ出そうとしていたルメリーシャを、しかし手の如き尾は逃がさない。

 蛇に睨まれたように、動けなくなった私に見せつけるように、その尾はルメリーシャを掴んで持ち上げる。

 

『――ファイナライズ――アクセプション――』

 

 鷲掴みにした尾へと集束していく、膨大な魔力。

 その中心にいるのは当然、ルメリーシャだ。集束が限度を超えれば、彼女を巻き込んで爆発するのは容易に想像できる。

 

「は、はなして! 杖なんていらないし、欲しいものがあるならあげるから! なんでもするっ! そ、そうだ、一緒に付いてってあげる! き、きっとあたし、頼りになるから――」

 

 そんな言葉に耳を貸しているようにも見られない怪物は、尾の魔力を高めながら、こちらに歩を進め始めた。

 ごうごう、と唸りを上げる尋常ならざる魔力を操り、ルメリーシャに更なる恐怖を与えつつも、既にあの瞳は私だけを見ている。

 

「ひっ……!」

 

 無理やり目を閉じれば、体が動いた。

 最早扉など気にしていられない。手近な壁に向かって駆け出し、魔力を叩き込んで粉砕する。

 そこらにいて、巻き込まれた不幸な人間などどうでもいい。教会を出て、とにかく逃げる。

 その背後から。

 

「たすけ――」

『――アドラ・エクスタシー――』

 

 聞こえてくる爆音。それに、街を共に運営した、死なない筈の片割れの“終わり”を悟った。

 ……知るものか。私はまだ死なない。終わらない。

 あのような化け物に喧嘩を売る愚など、犯してなるものか……!




『U-リッカ アドラフューリー』
【属性】火
【攻撃力】■■■■■■■■
【防御力】■■■
【素早さ】■■■■■■■
【魔 力】■■
【精神力】■

【イマジナリマテリアルコーティング】
全身を包む黒いスーツ。薄く柔軟で動きを阻害しない。
想像結晶技術によって構築された架空物質により並の装備と比較にならない防御力を持つ。
他の形態と異なり、このスーツ自体には各種状態異常への耐性は備わっていない。

【ブレイブリィブラッド】
スーツの内部に流れる強化エネルギー。
全身を循環することで装着した者に連続的な強化を行使し、万全以上の戦闘を可能とさせる。
主となる魔力の属性によって色が変化する性質を持ち、血管のようにスーツに色が浮き上がる。
アドラフューリーの場合、色は赤色となる。
この形態では強化エネルギーは攻撃力への変換に特化しており、修復能力は失われている。

【オブセッションプリズンイヤー】
アドラフューリーの頭部を鷲掴みにする両手のような形状の外骨格と、ウサギの耳を模した補助デバイス。
標的を決して逃がさず、確実に仕留めるため、視聴覚の強化と各部への連動補助を行う。
対象の動きを詳細に観察し、理想の対応を実現するための機能。

【リジェクションチェイサー】
アドラフューリーの背部に装着された翼型ユニット。
魔力による細かい制御を自動的に行い、自在かつ高速の飛行を実現させる。
先端は鋭利な近接武器としても機能し、分離して射出することで対象の自動追跡を行う。

【テンプテーションウィザーマニピュレーター】
アドラフューリーの主武装となる長い尾の形をとる外装。
先端が指のように開き、伸縮自在の第三の手として機能する。
魔力の放出による攻撃を行えるほか、掴んだ相手の魔力や精気、果ては種族としての能力までもを吸収し動力に還元する性質を持つ。

【アドラウィスパー】
構成する術式を改竄するバッドステータス。
装着者の意思によるスーツの操作権が制限され、魔法そのものが持つ攻撃的衝動による半自動操作に切り替わる。
その後は攻撃対象に徹底的に襲い掛かり、手を緩めることはない。
発動中、装着者の意思は失われず、状況を正確に把握することが出来るが、制御することは不可能に近い。

【オートアリスアーツ】
アドラフューリーの自動戦闘補助システム。
戦闘の状況に応じて各部に加速や攻撃力の強化などの効果が付与される。
静と動の急激な切り替えにより実現する敵の不意を突く戦法を、技術が無くとも実現するための機能である。
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