凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法   作:けっぺん

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『不夜幽姫』/(Nightmare)は終わらない

 

 

 逃げる。逃げる。

 気配を消して。魔法で囮をばら撒いて。人間共の間を縫って。

 そのように意識したことで成り立ったのではないが、高い建物が並び複雑に入り組んだこの街の路地はとにかく、逃げることに適している。

 等級が落ち切って、何もかもを失った者たちの最終手段。その後を考えずともとにかく“今”から逃げ出すという行為に成功する者も少なからずいるのは、この立地も影響している。

 あえてそれを是正することはしなかった。

 逃げられるならば逃げればいい。それもまた、搾り尽くされた者が持つなけなしの運命による可能性だ。挽回できるならば、そこから挽回して見せれば後に残るものは何もない。

 

「――はっ……はぁ……ッ!」

 

 そんな敗北者たちの如き逃走を、私が、よりにもよって人間相手にするなどと。

 悪夢と例えることすら生温い。間違いだろうと、あってはならない。

 誇りが地に落とされ、ズタズタになっていく苦痛を噛み締めながら、ただ逃げる。

 あてなどない。何処に逃げるかなど、決まっていない。ひたすらにこの街の迷路を走るだけ。

 “外”も夜であれば、この街を捨てて逃げることも出来たのに。どうしてこうも、全ての巡りが私たちに牙を剥いているのか。

 

「……『狂宴』ッ……あの女さえ……っ、いなければ!」

 

 考えるまでもない。あの淫魔だ。

 アレさえいなければ、こうはならなかった。先代がいようと、私の優位は変わらなかった。

 たった一人で、あの淫魔はこの街の全てをかき乱し、壊してしまった。

 今代の勇者に狂気を注ぎ、悍ましい力を与えてしまった。情けない――勇者が淫魔の狂気に屈し、その力を受け入れるなどと!

 魔族をも脅かそうとする淫魔。それに屈する今代と少女。惨劇を止めもしない先代。全てが異常なのだ。

 この街に来たからにはこの街に従え。どうしてたったそれだけのことが出来ない。

 私たちは、この街にとっての当たり前を貫いて、勇者たちと接していただけだというのに。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 その焦りからか、体力の消費が激しい。

 私でさえ歩いたことのない、人気のないどこぞの路地裏。周囲を見渡し、誰もいないことを確認してから、呼吸を整える。

 無我夢中で走った。ここはこの街のどの辺りだろうか。

 ……そんなことはどうでもいい。今重要なのは、あの怪物から逃げ切ることが出来たのかということだ。

 

 細心の注意を払い、周囲に目を向ける。

 静かなものだ。喧噪が遠い。私の呼吸が、この場の唯一の音と言ってもいいくらい。

 足音は聞こえない。追ってきていない――間違いなく。

 

「っ、はぁ……!」

 

 まだ、そこから先どうするかなど分かっていない。

 しかしその安堵を隠すことは出来なかった。どうせ誰も見ていないのだと、脱力する。

 ここからの動きを考えねばならない。最も現実的なのは、気紛れな『狂宴』を利用して勇者たちをこの街から追い出すことか。どう切り出せばいいものやらという問題はあるが。

 外が夜になるのを待って、街を出るのも一つの手だ。適当に潜伏し、連中が諦めをつけてこの街を出た頃に戻ってくればいい。

 取り戻しかけている平常心で確実な未来を組み立てつつ、私は何となしに空を仰いで――

 

 

 ――――闇夜の空に浮かぶ血色の双眸と、目が合った。

 

 

「――――――――きゃぁぁああああああっ!?」

 

 それが何なのか理解する前に、背筋を駆け抜けた怖気。

 思わずその場から飛び退いた直後、立っていた場所に落ちてきた怪物の拳が地面に突き刺さる。

 ほんの一秒、反応が遅れていれば……そんな“もしも”を頭が理解する前に、それは顔を上げて私を再度、視認する。

 ルメリーシャを児戯の如く叩き伏せた時のような、盾としての扱いだけではなく、あの翼の如き外装は――飛べる。

 拳を引き抜いてゆっくりと近付いてくる姿は、他に言いようもないほどに恐怖だった。

 安全な逃げ場などどこにもなくなったという真実から目を逸らす。そんな、そんな絶望を抱いている場合ではない。

 

「ぁ、ぅ、あ……!」

 

 それを見ていたくない。もう二度と関わりたくない。

 無我夢中でそれに向けて魔力を放ち、離れるように駆け出す。

 魔法すら成立していない、純粋な魔力を放出しただけ。それで攻撃を行うなど、美学も何もない。同族が見ていれば、末代まで続く笑いの種だ。

 だが、今はそんなこと、どうでもいい。命の方が大事だと、音を立てて崩れていくプライドに言い訳をする。

 

「ぃ……ッ!?」

 

 その程度の妨害など、まるで意味を成していない。

 背後から左の手首を掴まれる。無機質で、冷たく、力強く、それでいて絶望的に熱い、矛盾しきった憎悪が染み込んでくる。

 

「ぃや、いや――イヤアアァッ! 来るな、来ないでっ!」

 

 右手を薙ぎ、左の肘から先を切り落とす。殆ど無意識だった。

 痛い……痛い。こんな痛みは、知らない。だが、屈したら駄目だ。屈してしまえば死ぬ。

 耐えて走れば、まだ生きていられる。こんな傷はすぐに癒えるし、痛みだってすぐになくなる。

 すぐさま形を取り戻していく腕を押さえながら、入り組んだ迷路を方向も何も考えずに走る。

 頭を使う余裕などない。そんなことをして、少しでも足を緩めれば捕まる。だって、奴はすぐ後ろにいる。歩いて追ってきている筈なのに、距離が離せない。

 

「――はっ、はっ――ぁ――ぁあ!」

 

 辿り着いた、見知った路地。

 かつて増長した人間が作った魔法の仕掛けが、見せしめとして残された場所。

 そうだ――ここと街の反対側を繋ぐ、一方通行の短縮路!

 

「ッ!」

 

 僅かに振り向いて、その距離が開いても、詰められてもいないことを確認し、私はその短縮路を起動して飛び込む。

 私のようなヴァンパイアの利用は想定されていない。私などが使ってしまえば、存在に耐え切れず、術式は壊れる。

 それでいいのだ。使い捨てであれば、アレが付いてくることも出来ない。

 鋭い音を立てて破壊されていく術式を抜け、その先の路地に降り立つ。

 砕けた以上術式の解析も出来ず、向こうは私を探し直しになる。物理的な距離は確かに開いた。今の内に、教会に……!

 

「…………?」

 

 すぐさま歩き出そうとして、右足に重みを感じて。

 視線を落として、腿に刺さっている細長い刃を見て、ようやく痛みを自覚した。

 

「ィ……!?」

 

 あの怪物の翼を構成していたパーツ。それを切り離して射出したのだと理解したのは、膝から下を切り捨ててから。

 当然、立てない。歩けない。私は翼も無く、飛べない。足が元通りになるまでの僅かな時間、そこからは動けない。

 

 ――そうだと思ったか。時間稼ぎにもなるまい!

 

「あ――ぁ、ぁあ――!」

 

 片足だけではない。再生したものも含めて、腕はちゃんと二本ある。

 人間であればそれほどの推進力など出せないだろうが、ヴァンパイアの膂力であれば僅かな間の足の代用としては十分に機能する。

 どうだ、これが人間とヴァンパイアの違いだ。驚け。恐れろ。

 私たちが支配する街だ。だから、そこにいる人間共は悉く、畏怖を抱かなければならない。ならないのだ。

 なのに――!

 

「……ヴァージニア様?」

「何してんだ、あのお方……血まみれだぞ」

「ルメリーシャ……様と喧嘩でもしたのかしら……?」

「手ひどくやられたみたいだな。足の折れた犬みてえだ」

 

「……く、ぅぅ……、うぁ……!」

 

 ――なんだ、この好奇の視線は。侮蔑の感情はッ!

 どうして、なんだって短縮路の先がこんな人通りの多い路地になっている。前に検めた時は、ここまで人通りはなかった筈だ。いつの間にこの街はここまで人間が増えたのか。

 一等級ならばやってこないだろう、こんな薄汚い路地。三等や四等、無様に運命を取り上げられた人間共が、揃いも揃って私を見下ろす。

 

 ……ふざけるな。あの、忌々しくも私を脅かすような怪物ならばまだしも、力も運命も足りない下等生物が。

 

「ッああ――!」

「え――」

 

 激情のままに、腕を振るった。

 こちらに嘲笑を向けていた身の程を知らない有象無象の何人が弾けたのかは知らないし、興味もない。

 汚らしい血飛沫と私の魔力による斬撃が刻まれた壁に寄り掛かり、そこを改めて殴り付けて、生き残りの注目を集める。

 逃がすことなどしない。やろうと思えば、もうひと振り。それでお前たちもこの路地の染みに出来る。

 

「……全員、決めなさい。私に殺されるか、私のために命を賭すか」

 

 無論、選択肢を与えてはいても、選ばせるつもりなどない。

 所詮人間、魔族の怒りの前には屈するしかないのだ。

 侮蔑が瞬時に反転したことを感じ、ほんの僅かに心が落ち着く。落とした足が再生し、立ち上がる。

 

「今この街に、黒い“人型”の怪物がいます。手段は問いません。捕まえて、処分なさい。手を貸した者には、望む褒美を与えましょう」

 

 それでざわつく、欲深な人間共。

 これでいい――あの怪物を構成する魔法を停止させられる可能性がある。

 勇者の意識が維持されたまま、あの惨劇を行うならば、自らを妨害しようとする人間にも同じように魔手は向けられるだろう。

 守るべき人間を手に掛け、壊れてしまえばいい。それで今代が発狂すれば、少なからずあの魔法にも影響が出る筈だ。

 

「黒い怪物って……?」

「……もしかしてアレ、か?」

「ッ!?」

 

 立ち止まり過ぎた――人間の一人が指さした先にゆらりと顔を出す、暴虐の化身。

 飛ばした翼のパーツを追ってきたのか、或いは先の感情に任せた魔力の放出で位置を特定したのか。

 どちらにしても、速すぎる。加速の術式まで、組まれているのか。

 

「――――、ええ、あれです。捕えなさい!」

 

 だが――だが! ここで動くのがナイトラクサの人間、ここで動くのが不夜街のルールだ。

 欲には逆らえない。あの怪物が人間共にとって脅威に見えようとも、この街において最大の恐怖とは私たちだ。長い年月をかけて、そう教え込んできた。

 私こそが絶対。逆らう選択などさせない。

 目の色を変えて迫る“死”に殺到する人間共。

 期待などしていない。だが、その玉砕には確かに意味がある。お前たちの命がこの街の未来に繋がったなら、気が向いた時にでも顧みてやってもいい。

 

「は――は、はは……っ!」

 

 絶望や無念の中ではなく、欲望の中で死ねるのはナイトラクサでも一握りだ。そんなことを許されない下等な者たちにその権利が与えられたのだから、光栄に思うべきだ。

 そう、お前たちが――人間が、今代の勇者を終わらせる!

 

「……は……?」

 

 希望にもなっていない人間共の希望。それをメチャクチャにしてやる。他でもない、人間の手によって。

 獣の如き暴走の末路を思い釣り上がっていた私の口角が引き攣ったのは、その直後。

 

「――馬鹿な」

 

 集まり、手を伸ばしてくる人間共に、指一本触れることなく。

 躱し、或いは軽く体をよろめかせる程度の魔力の風圧で切り抜け、一切の危害を加えることなく。

 狂っているほどの繊細さで、怪物はかれらを拒絶していた。

 人の波を右に左にと退けながら迫るその姿は、私やルメリーシャに向けた暴虐とはまるで違う。

 

 何故、狂い切らない。何もかもをその憎悪に巻き込もうとしない。

 邪魔する者であっても人間だけは手に掛けてなるものかとでもいうような。“人間を殺す”機能を喪失させているかのような。

 あれだけの魔族への憎しみ。手段を択ばず、勇者さえも振り回す執念。それが、この期に及んで、超えてはならない一線だけは守り続けているような。

 ……狂っている。

 割り切るでも、割り切らないでもなく、大前提として考慮に入れていない。

 そんな無感情な判断、人間が出来る訳がない。人間とは思えない捻じ狂った運命、掠れ切った魂を持っていようと――

 

「ッ、か、ふっ……」

 

 混乱の中で、腹部に受けた衝撃。

 いつの間にか眼前にあった赤い輝き。肉を破り、腹を貫いた拳。

 駄目だ――逃げ切れない。こんな狂った化け物、制限された夜の檻の中で、逃げ切れる訳がない。

 

「ぁ……」

 

 腕が引き抜かれるのと、怪物の尾に捕えられるのは、殆ど同時。

 周囲の動揺が聞こえてくる。この街の恐怖である私を追い詰めるほどの怪物。その力を見れば、下手に手出しは出来まい。本当に……役に立たない。

 

「――リッカ――もうだめ――にげて――」

「……」

 

 最早今代の制止もうわ言だった。

 壊れまいとするせめてもの自己防衛か。殆ど意識も残っていまい。人間共に手を掛けていても、結果は変わらなかったか。

 どちらにせよ、もう逃げられない。ならば、やることなど一つしかないだろう。

 

「お、ねがい、たすけて……いのち、だけは」

 

 今の私に出来ることは、命を乞うことだけ。

 破滅願望などない。であれば、助かりたいと思うのは当然だ。

 死にたくない。ルメリーシャと同じ末路など、辿りたくない。

 受け入れられる筈もない懇願を、ひたすら無機質な怪物に向けて吐露する。その一つでも、届いたら、と。

 

「……?」

 

 その時だった。

 赤い魔力に包まれたかと思えば、体から急激に力が抜けていく。

 尾を通して、私の力を吸収しているのだと悟った。ヴァンパイアの力を取り込めるとは思わないが、魔力への単純変換ならば可能なのだろう。

 殺す前に、その“資源”を無駄にしないために。つくづく、魔族に対しては無情になれるようだ。

 それでもなお、命乞いは続ける。諦めきれず、そうすることしか出来ないから。

 

「そう、だ。この、首飾り。ネシュアに、行くのでしょう? ほかにも、たくさん、あるんです。すべて、持っていって、構いませんから」

 

 やがて、自力では立てないという確信を持てるほどに、体力という体力がなくなった。

 ヴァンパイアでなくなったかのようだ。漲る膂力の欠片さえも、湧いてこない。

 言葉は届かない。人間にも劣るほどに力を吸われた私に、怪物は価値を見出さない。このまま、死ぬだけ――

 

「あっ……」

 

 突然に体を縛り付けていた窮屈さから解放され、地面に放り出された。

 何が起きたのかと、把握する前に、黒い怪人の体から魔力が分離する。

 ――魔法が解けたのだ。解放された今代はやはり、意識が朦朧としているようで、その場に力なく蹲る。

 そして、全ての元凶。狂気に押し潰されそうなほどに、存在感の薄弱な白い少女は、私を見下ろし、ふらつきながらも歩いてくる。

 その澱みきった瞳は、今までより大きな絶望に満ちていた。

 

「――ひっ」

 

 伸びてきた手に、思わず目を瞑る。

 今の私に、抗う力はない。手を持ち上げることすら億劫で、魔力もすっからかんな、無力な存在。

 この幽鬼のような少女にすら及ばないことは、分かっている。

 首に伸ばされた手は、私に喰らい付くことなく。首飾りを外して、また離れていく。

 

「……あとは、好きにすれば」

 

 残された私に、少女はそれだけ言って、今代を支えて去っていく。

 これ以上私に手を出す様子もなく、茫然自失な今代に寄り添って、ゆっくり、ゆっくりと歩いていく。

 ……助かった、のか。どういうわけかは知らないが、私は、あの少女の興味から外れたのだ。

 再三の安堵は、抱いて良いものかという疑問と共に。

 二人が視界から消えて、ようやく――実感となった。

 

「……、……っ」

 

 ああ、生きている。生きている――。

 まだ私は生きているのだ。死なずに済んだ。死んでいないならば、また始められるし、まだ続けられる。

 この街となるべき土地にやってきた時と同じだ。私は諦めずに、この地に辿り着いた。

 全て受け入れて、ここからまた立ち上がればいい。あの怪物の所業など気にならないほどに、再び成り上がればいい。

 

 怪物に八つ裂きにされた誇りも積み上げ直すのだ。私は、ヴァンパイア、夜の支配者なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なあ、好きにしろって」

「俺たちに言ったのか? あれ」

「……まあ、いいだろ。避けられたけど、手は貸したんだし」

「望む褒美をって、言ったもんな」




『ルメリーシャ』
【属性】水/毒
【攻撃力】■■■■■
【防御力】■■■■■
【素早さ】■■■■■■
【魔 力】■■■■■■
【精神力】■■■■

【種族】ヴァンパイア種
人型魔族という括りにおいて、ヴァンパイアを最強種とする見方は強い。
種としての歴史は古く、現在では詳細は失われているが各地にある教会と密接な関係があるとも。
ヴァンパイアは陽の光に弱く、ただ浴びているだけで存在が徐々に灰化し、失われてしまう。
しかしその弱点を受け入れることで、闇の中においては魔族の中でも上位の力を手に入れた。
ゆえにかれらは自らの種を“夜の支配者”と称し、その存在に絶対的な誇りを持つ。
同時に、人間および他の人型魔族を下等と見なす差別主義も強く、非常に排他的かつ閉鎖的な種族といえる。
特に再生能力に長けており、夜闇の下にある限り、受けた傷はみるみるうちに癒えていく。首を断たれても再生する凄まじい生命力は対峙する相手にさらなる絶望を与えるだろう。
ただし、そのプライドの高さゆえに、再生するとしても傷を負うことはヴァンパイアにとって好ましいものではないらしい。

【『不夜遊姫』ルメリーシャ】
ルメリーシャがやがて不夜街となるべき土地にやってきた理由は定かではない。
その頃、そこはネシュアから移り住んだ者たちの子孫が集まっていた集落のようなもので、賑わいなどなかった。
本来、その家系の在り方を損なうべからずという価値観の強いヴァンパイアが生まれた土地を離れることは極めて稀で、そうした特殊な個体が二人出会ったのはまさしく運命だった。
彼女たちはヴァンパイアの中でもはぐれ者であったが、それゆえにその土地を“二人で”始めようとした。
落ちぶれ、潰えることなく、運命に打ち勝って二人が手に入れた街は、やがてはぐれ者たちの集う場所になった。
重視されるのはその運命。他者とそれを奪い合い、勝ち続けることさえ出来れば何もかもが手に入る不夜の街。
ナイトラクサは、彼女たちの存在そのものの具現化であった。

【ヴァージニアの評価】
「妹分のような存在……血の繋がりがあるよりは気楽でした。道を分かつ選択も、気楽に出来た――それだけです」

【ユーリの評価】
「今まで出会った魔族の中で……一番、許せそうにない。けど……」



『ヴァージニア』
【属性】風
【攻撃力】■■■■■■
【防御力】■■■■■
【素早さ】■■■■■■
【魔 力】■■■■■■■
【精神力】■■

【種族】ヴァンパイア種
人型魔族という括りにおいて、ヴァンパイアを最強種とする見方は強い。
種としての歴史は古く、現在では詳細は失われているが各地にある教会と密接な関係があるとも。
ヴァンパイアは陽の光に弱く、ただ浴びているだけで存在が徐々に灰化し、失われてしまう。
しかしその弱点を受け入れることで、闇の中においては魔族の中でも上位の力を手に入れた。
ゆえにかれらは自らの種を“夜の支配者”と称し、その存在に絶対的な誇りを持つ。
同時に、人間および他の人型魔族を下等と見なす差別主義も強く、非常に排他的かつ閉鎖的な種族といえる。
特に再生能力に長けており、夜闇の下にある限り、受けた傷はみるみるうちに癒えていく。首を断たれても再生する凄まじい生命力は対峙する相手にさらなる絶望を与えるだろう。
ただし、そのプライドの高さゆえに、再生するとしても傷を負うことはヴァンパイアにとって好ましいものではないらしい。

【『不夜幽姫』ヴァージニア】
不夜街ナイトラクサはルメリーシャとヴァージニアによって運営されている街である。
実際のところ細かい取り決めや不測の事態の対応はヴァージニアが主として行っており、ルメリーシャは街に繰り出して上位存在の恐ろしさを住民に刻み込む役回りであった。
その場の気分でルメリーシャは法を捻じ曲げ、己の思うがままに人間を叩き落とす。
ゆえに住民はルメリーシャのご機嫌取りを最優先し、とにかく彼女に嫌われぬように振る舞う。その時だけは、等級の上下もなく住民たちは協力する。
そうでなければ、その場で破滅する人間が一人や二人では足りなくなるからだ。
築き上げたものを奔放に台無しにするルメリーシャの蛮行を、ヴァージニアは呆れつつも容認する。
それが彼女の支配の形。それが彼女の誇りの形。それは、この街を共に成立させたヴァージニアが否定出来る筈のない、ルメリーシャの自尊心だったのだから。

【ルメリーシャの評価】
「よく姉面してくるんだよねぇ。うざったいのなんの……まあ、本当に困った時が来れば頼ってあげてもいいかなって」

【クイールの評価】
「多分、相手を想う気持ちはこの子の方が大きかったと思いますよ。自分の方を優先してしまったってだけで」
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