凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法   作:けっぺん

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その一歩を踏み出すために

 

 

 進展がないままに、一日が経った。

 ナイトラクサに戻ることも出来ず、他の町に向かうにも距離がある。

 ネシュア国跡を前にした荒野で僕たちは立ち往生しているのだ。

 

 クイールは、可能であれば土の試練に手を貸しても良いと言っていた。

 既に彼女は土の試練を突破している。土の試練は同じ内容になることはないようだが、とにかく数を相手取るものになるという。

 その試練において――勇者として相応しいか否かは別として――クイールの助力を得る選択肢が生まれたのは良い。

 問題は、僕自身。

 昨日、アリスアドラが言うには、リッカの夢の中での出来事。

 

 アリスアドラの言葉と、リッカの現状。

 それらによって最終的に行き着いた、自身の無力感という答え。

 

 それが今までのいつよりも、僕の心に突き刺さっていた。

 相変わらず眠りに就いているリッカ。彼女の苦しみは、僕が想像できる域を超えている。

 否定したかった。僕が誰より、リッカのことを理解していると言い張りたかった。

 だって、その筈だ。生まれた時から一緒で、年上だからと姉……兄面してきて、ずっと一緒にいたから。

 一緒にいない時の方が少なかった。

 リッカへの理解力は、カルラにだって負けていないと思っていた。

 

 ……嘘だと思いたい。

 アリスアドラの虚言であったと思いたい。

 だが、リッカの恐怖の最奥が分からないのに、それそのものは真実であると。

 それだけははっきりと分かってしまう、中途半端な理解力しか、僕にはなかった。

 

「……ッ!」

 

 追い打ちのように、“あの光景”が幾度も幾度も、思考の中に浮かんでくる。

 考えてはいけない。あれは夢だ。リッカだって、見たくて見ている訳ではない。

 その乱れた姿を、自分を慰めるリッカを頭から振り払う。あれもまた、アリスアドラの仕業だと、言い聞かせる。

 

 僕は、リッカの一番の理解者でいたい。そうでないといけない。

 知らなければならない。踏み込まなければならない。その先に、もう一歩。

 その勇気があれば、可能なのだろうか。

 リッカは僕に、自身のすべてを明かしてくれるだろうか。

 そんな気がしなかった。それが、怖かった。リッカに拒絶される可能性が、怖くて仕方なかった。

 なけなしの勇気では、その先へは進めない。踏み入ることは許さない。

 まるで、門前払いをされている気分だった。

 

「どしたんですか? ユーリくん」

「っ……クイール……」

 

 どのくらい、そうしていたのだろうか。

 どろどろとした思考の中。何が映っているかも定かではなかった視界に、クイールが顔を覗かせた。

 

「今日一日、ずーっと悩んでいるようでしたけど。リッカちゃん関連ですか?」

「……まあ、うん」

「やっぱり。僕が聞いて大丈夫なことであれば、相談に乗りますよ?」

 

 この一日、殆ど何もしていなかった僕たちを、クイールは責めることもなかった。

 それもまた、申し訳がなかった。本来ならば、すぐにでも自分の旅に戻りたいだろうに、僕たちの事情で立ち止まらせていることが。

 

「ありがとう……けど……これは、僕が自分で、どうにかしないと」

 

 だが、こればかりは誰かの力を借りて良いものか、とも思う。

 もう一歩、この決意だけは、自分の意思で踏み込まなければ、その先を受け入れられない。

 確信と、ほんの少しの意地が、打ち明けるのを躊躇わせた。

 

「うーん、そうですか。なら、聞かないでおきます。結構ディープな問題なんでしょうし、余計なことを言ってさらに困らせてしまうかも、ですもんね」

「……ごめん。僕の勝手に付き合わせて」

「いいんですよ。僕に出来ることがあれば手を貸しますから、なんでも言ってください」

 

 ――これを、重荷だと思ってはいけない。

 クイールの言葉に裏はない。心底からの善意で、こう言ってくれている。

 本当に、こうなっている誰かを放っておけない性格なのだろう。

 勇者らしい……僕が見習わなければならない、至らなければならない、目標のような存在。

 出会って二日足らずで、そう思わせるには十分だった。

 

「……」

 

 その次代、僕は、こんなにも個人的な事情で立ち止まっている。

 だからこそ、今の無力感をどうにかしようとして、この考えに至るのは、当然だったかもしれない。

 

「……クイール、頼みがあるんだ」

「……! はい、なんですか!?」

 

 妙に力強い反応が返ってきたことに一瞬面食らった。

 これほどまでに待ちくたびれていたのかと逆に困惑しつつも、それを伝える。

 

「……僕たちと、戦ってほしい。勇者としての戦い方を、教えてほしい」

 

 リッカの同意を得た訳ではない。それに、リッカは眠っている状態だ。

 二人の意思がある分の、戦いにおける有利さはない。状況としてはアラクネやオークの時と同じ。

 勝てないことは分かっている。迷走していることは分かっている。

 それでも、今の無力感をどうにかしたかった。自分なりに、手掛かりに辿り着きたかった。

 対話ではなく、こういう形であれば、自分で何かを見つけられると、そう感じた。

 

「……僕は構いませんけど、リッカちゃんは? 起きられますか?」

「……分からない。だから、僕たちとしては不完全だけど」

「そうですか。それがユーリくんの選択なら。早速始めます?」

 

 頷けば、クイールは魔除けの結界を展開している魔道具を操作し、範囲を広げていく。

 外で戦うのは良くない。ネシュア国跡も近いこの場では、相手に筒抜けだ。

 そもそも、四天王を前にして意味のある結界だとも思えないが――どの道、リーテリヴィアやアリスアドラと接触していることを考えれば、あそこにいるだろう四天王にも僕たちの力は知られている可能性が高い。

 そういう風に、自分に言い訳して、眠るリッカに目を向ける。

 

「……お願い、リッカ。手を貸して。答えを見つけたい……僕の我儘に、少しだけ付き合って」

 

 僕一人で勇者ではない。僕たち二人で、一人の勇者。それを否定する理由は、どこにもない。

 だからいつだって、リッカを頼る。

 そうでないと、僕の悩みも、リッカの苦しみも、全て否定してしまう気がした。

 

「……ん……」

「リッカ……?」

 

 言葉に反応したのか、少しだけ身じろぎしたリッカが、僅かに目を開く。

 目が合っていたのはほんの数秒。またすぐに目蓋が閉じていく、その寸前。

 

「……、いいよ。ユー、リ、使って」

 

 掠れた声で、リッカは言葉を紡いだ。

 そうしなければ、戦えない。リッカだって、それは分かっている。

 そのままいつも通り、目を覚ましてくれれば心強かった。だが、リッカはまた、深い眠りについてしまう。

 

「――頑張りましょうか。リッカちゃんのためにも」

「うん」

 

 両手で自身の頬を叩く。頑張らないと、僕が成長せずにいられる時期は、とっくに過ぎ去っているのだ。

 いつまでもリッカに手を引っ張られているだけでは、何にもならない。

 そうして甘え続けてきた結果がこれだ。僕はリッカに負担を掛け過ぎていた。

 例えばこれが疲れて眠っているだけなのだとしたら、安心して心を休められるくらいにはならないと。

 

「あくまで模擬戦という形なので、必殺技は無しで。それ以外は……まあ、その場のノリでいいですかね」

 

 体を解しつつ、クイールは最低限のルールを決める。

 命を懸けた戦いではない。しかし、普通の人間では出せない力を使っての模擬戦だ。

 お互いに想定外を引き起こしかねない過剰な威力は制限した方が良いのは当然だろう。

 

「それじゃあ……後輩に胸を貸すつもりで行きましょうか」

「うん……じゃあ、お願いします、先輩」

 

 どうも、話を受ける側とは思えないほどに楽しそうなクイール。

 少しだけ乗ってみれば、彼女はより目を輝かせた。

 

「おぉぉ……最高ですね、頼られてるって感覚……っと、落ち着け落ち着け、先輩らしく、先輩らしく……!」

「……」

「……こほん。始めましょうか」

 

 これ以上煽るとよくないことは十分に分かった。

 どうやら、そういう立場が憧れだったらしい。

 しかし、正直なところ今の僕が盛り上がったクイールに対処できる気がしない。色々な意味で。

 向ける視線の温度がやや下がったことを理解したようで、調子を戻したクイールは聖剣を引き抜く。

 出会った時は、勇者の聖剣の担い手と逆に戦うことになるとは想像すらしていなかったが……頼んだのは僕だ。

 何かを掴むために、その力を真正面から見なければならない。

 

「先輩勇者らしくです、聖剣ブレダリオン! 全力全開禁止で!」

「――トランスコード、U-リッカっ!」

 

 聖剣がひとりでに増そうとしている輝きを抑えているようなクイールの言動。

 あの聖剣そのものに意思があるみたいだと思いながらも、眠るリッカの力を借りて魔法を起動する。

 

『ブレイブコード! スタンバイ!』

『トランスコード! アクセプション!』

 

 偶然とは思えないほどに似通った魔法音声がぶつかり合う。

 リッカの力を、聖剣の力を、お互いに身に纏う。

 

『マスターアップ! Q-クエスター!』

『U-リッカ――リヴィア!』

 

 魔法で成立した、眼前の勇者の姿は、眩しいまでに輝いた金色。

 ドラゴンを模した鎧が持つ力強さと威圧感は、とても模擬戦とは思えないものだった。

 ――その威圧感の大半は、聖剣そのものから向けられている気もするが。

 ……気にするな。これはあくまで、“勇者”を知るためのもの。

 見るべきは聖剣ではなくクイール。輝ける聖剣を持ってなお劣らない、黄金の勇者だ。

 

「よし! ここからの僕は百パーセントです! が……、魔族との戦いではないので、程々に百パーセントで行きましょう!」

 

 何を言っているのかいまいちわからないが……とにかく、加減はしてくれるらしい。

 そこに安堵をしていてはいけない。“程々に百パーセント”のクイールを相手に、何処まで出来るのか。

 決して今の僕では辿り着けない高みを、僕は知らなければならないのだ。




『Q-クエスター マスターブレイブリー』
【属性】勇気
【攻撃力】■■■■■■
【防御力】■■■■■■■■■
【素早さ】■■■■■■
【魔 力】■■■■■■■■■
【精神力】■■■■■■

【マイティエクスペリエンス99】
勇者としての力が装備者に悪影響を与えないための制御システム。
培った経験を強制的に励起させ、高速でスーツ内部に循環させることにより、装備者の弱体化を補い十全な戦闘能力を発揮できる。
ただし、勇者の力の制御と保護に特化しているため、この機能が駆動している間、出力は常に百パーセントに固定されており、瞬間的な過剰エネルギー供給なども行えない。
可能なことを万全にこなすためのシステムであり、不可能に手を伸ばすことは管轄外なのである。
そのため必殺技の使用時などはこの機能を停止する必要があるが、その場合、容量を超えた経験による体への負担が掛かる。

【マスターレジェンダリーアーマー】
Q-クエスターの全身を覆う“勇者の鎧”。
聖剣の祝福により、魔力が高ければ高いほど受けたダメージを減衰する。
表面を勇気の魔力の粒子が覆うことで状態異常を防ぐ役割も持ち、相手の妨害を気にせず万全な戦闘が可能となる。
さらに攻撃強化魔法が付与されており、格闘による攻撃は相手の“ダメージの割合カット”効果を無効化する。

【マスターブレダリオンウィング】
Q-クエスターの背部に装着された翼状の補助外装。
勇気の魔力を放出することによる加速のほか、周囲に魔力を散布することで攻撃に反応させ追加ダメージを与える。
攻撃力、素早さの二点を補う機能だが、魔力放出による推進はやや過剰かつ強引であり、繊細な制御には向いていない。

【マスターブレダリオンヘルム】
Q-クエスターの頭部を覆うドラゴン型の兜。
『マスターレジェンダリーアーマー』と同等の防御力を持ち、目元を覆うゴーグル状の視覚センサーは嵐の中でさえ敵を逃がさない。
額には開いたドラゴンの口を模した魔力砲口が存在し、遠距離攻撃が可能。
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