凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法   作:けっぺん

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勇者らしく、自分らしく

 

 

 クイールと戦い始めて、一分と経たないうちに、その差を身をもって知ることになった。

 『リヴィアフューリー』は防御特化の形態だ。

 攻撃力に難はあるが、比較的安全で身軽なこともあって、戦いやすいと感じている。

 他の形態よりも、未知の相手への対応に長けているために、最初はこれで行こうと判断した。

 恐らくは――功を奏した。

 

 バランスは良いが、どちらかと言えば攻勢に出た上での妨害に適した『オズマフューリー』や、やはり攻勢寄りでトリッキーなため戦い慣れていない相手に最初から選ぶにはリスクの大きい『バラーズフューリー』で、この数十秒を耐え凌げたかは怪しい。

 クイールの言う、“程々の百パーセント”。

 これが全力全開でないというのだから、彼女はやはり、凄まじい。

 

「いいですね! よく防ぎました!」

「ッ――!」

 

 力強く、それでいて繊細に振るわれる聖剣。

 そこに殺意はない。たとえ躱せずに振り抜かれても、死ぬことはないだろう。

 だが、殺意がないことが信じられないほどに、その戦意は強く、真っ直ぐとこちらにぶつけられている。

 旅を始めた最初の頃にこれを浴びていれば、それだけで屈していたのではないかと思うほど。

 

 液体による防壁は、咄嗟の展開では受け止め切れない。

 攻撃を予測して多量の液体を使用するか、剣速が鈍った隙に回避するか。

 その二択を十秒の間に幾度も迫られる状況など、今までなかった。

 高速で、苛烈な攻撃の嵐。

 その戦闘スーツで強化されているとはいえ、彼女もまた人間である筈なのに、その速度はナイトラクサのヴァンパイアたちに劣っていない。

 

「今……!」

「おっ、と……」

 

 度重なる攻撃の中で、どうにか差し込んだ反撃。

 牽制にもならない児戯のような拳を、しかしクイールは律儀に受け止めた。

 

「こういう受け止め方も、本当は良くないんですけどね。だって、腕から毒でも出せたら一気にピンチじゃないですか」

「……確かに」

「この鎧は毒を通さないようになってますが、纏っていない状態で同じことをしたらアウトです。だから――」

 

 拳を弾いて距離を置いたクイール。

 それを追って液体の弾丸を放てば、彼女は背中に装備された翼の如き外装を操り、魔力を放つことで弾丸が届く前に吹き飛ばす。

 そして素早く翻ることで、放出を推進として接近――そこまで予測を組み立てたところでクイールとの間に防壁を展開する。

 

「ッ!」

 

 当然のように、その行動は予測されていた。

 魔力を放つ方向を変化させ、強引に軌道を変えたクイールは、あっという間に防壁を躱して回り込んでくる。

 その無茶苦茶な動きを頭が理解する前に、目の前で急停止したクイールの聖剣が付き付けられていた。

 

「――どういうことをしてくるか分からない相手なら、多少無茶をしても、相殺するなり躱すなりした方がいい……というのが僕の持論です」

「い……今の動き、目が回ったりしない、の……?」

「今はまだ。魔法解いた時に割と反動来ますよ。ですが、油断して死ぬよりマシですから」

 

 とても気軽に出来るとは思えない軌道の反動も、命に比べれば安いものだと。

 正直、それ一つ行うにも決心が必要なレベルの動きを、クイールはまるで躊躇ったりしていない。

 ……リッカと一つになったこの状態で、それを出来るかどうか、か。

 

「人間は弱いです。僕もこうして、聖剣の力を得なければ、力では敵わないし動きだって追いつけない。正直、人間では魔族に勝てないって常識は、覆しようがありません」

「……でも、クイールはその聖剣を手に入れる前から、試練を突破できるくらいに強かった」

「強かったんじゃなくて、勇気があったんですよ。勇者ですから」

 

 剣を戻し、数歩離れながら、クイールは僕の言葉を否定する。

 所詮それは客観的な評価。自身が強い訳ではないと、彼女は当たり前に受け入れていた。

 

「勇者らしく、が僕の在り方です。そこに邁進するのが、僕の勇気です。だから困っている人がいたら助けますし、勝てない相手からは逃げます。とにかく、今出来る何もかもで、勇者らしく生き延びます。死んだら世界を変えられないじゃないですか」

 

 背を向けることは恥ではない。世界を変えるいつかのために、その命を守り切る。

 その勇者らしさを躊躇わずに実行できる頑なな方針。

 自分らしさと定義した勇者らしさを守り続けるからこそ、彼女は勇者なのだ。

 たった一つの信念によって、彼女は勇者として立ち続け、如何な絶望にも挫けずにここにある。

 

「それが……クイールの強さ」

 

 片鱗を見て、言葉で聞かされて、紛うことなき本心だと分かった。

 ――倣うことは出来ない。

 それは、僕とは決定的に異なる性質だった。たとえ同じような信念を固めても、僕はクイールと同じ域には決して至らない。

 

「はい。根っこの部分で偏屈なので、変わり者扱いされますが――」

 

 再度の接近を、今度は四方に壁を展開することで対応する。

 クイールはそれらを突破することなく、唯一障害物のない一点からの攻撃を選んだ。

 即ち、上方。

 無茶苦茶な魔力の推進で体を浮き上がらせることによる跳躍は飛行にも等しい。

 

「自分の在り方を損なわない、自分で決めた通りに生きる、そんな自分勝手な生き方ってのは――」

 

 防壁を飛び越えて落ちてくるクイールに放った弾丸は、魔力で簡単に相殺される。

 僅かに速度を鈍らせただけだが、それで十分。

 『リヴィアフューリー』が操る液体は、僕自身の動きを阻害することはない。

 四方の防壁を走り抜けて、空っぽとなった内部にクイールが飛び込んでくれば、水の檻に早変わり。

 もう一度飛び上がる、ないし檻が切り裂かれる前に、液体を一斉操作。

 内部の空間を一気に狭めんとするその指令が完遂される前に、全方位に放たれた勇気の魔力はその全てを吹き飛ばした。

 そして同時の動き出しにより、既にクイールはこちらに踏み込んでおり――

 

「――最っ高に、気持ちいいですよ――ッ!」

 

 直撃させるつもりのない輝ける斬撃は、光を伴う衝撃となって襲い掛かる。

 この範囲は『リヴィアフューリー』では躱せない。

 考え得る回避方法は、クイールと同じように上空を選ぶことだが――『バラーズフューリー』への変化を、躊躇った。

 模擬戦もここまでか、と判断した矢先、

 

 

『――U-リッカ――アドラ――』

 

 

「ッ、リッカ!?」

 

 急激な勢いで体が浮き上がり、望んだ通り飛翔する。

 それまでとは比較にならない窮屈さ、全身を鎖で締め上げられているような痛み。

 固定されている視界を無理くり動かせば、全身に走る赤い魔力が目に映る。

 

「違う、駄目……! リッカ! これは模擬戦なんだ! 相手は、魔族じゃない……っ!」

 

 リッカに意識が戻っている様子はない。しかし、『アドラフューリー』は制御をまるで受け付けない。

 ――もしかするとそれは、僕の危機をリッカが察知してのものかという推測が生まれる。

 いや……今はそれを気にしている場合じゃない。

 

「ごめん、クイール! 離れて!」

 

 ナイトラクサでこの姿になった時、不自然なまでに人間を躱していた。

 だが、今回は違う。実際にそれまで戦っていたからか、碌に動かせない視界は完全にクイールを捉えている。

 このままでは――思い出されるのはルメリーシャやヴァージニアへの、壮絶なまでの攻撃。

 駄目だという抵抗はあまりに空しく拒絶される。意思通りに動かなくなった体は、真っ直ぐに黄金の勇者へと向かって行く。

 

「当事者になっちゃいましたか……っと!」

 

 矢の如き一撃を一旦、飛び退いて躱したクイール。

 地面に突き刺さった拳を引き抜くと同時に、武装として伸びる尾が彼女を狙う。

 

 危なげなく回避していくクイールは、逃げ出す様子を見せない。

 

 つまりそれは、彼女の信念に照らし合わせると、全力で逃げるべきではない場だと判断しているということで。

 

「速くて、攻撃の鋭さも抜群――けど、代わりに強度に大きく難あり、か。……よし、決めました!」

「なに、を……!?」

「模擬戦ここまで! 力尽くで止めます! 痛いですけど、我慢してくださいっ!」

「……え?」

 

 ――魔力を纏い全身凶器の如くとなったクイールは、可否を返す前に思いっきり突っ込んできた。

 真っ直ぐな攻撃であったからか、盾のように前に出てきた翼が防いだことで衝撃は吸収される。

 しかし、その勢いを完全に殺し切るまでには時間が掛かった。

 尾を地面に突き刺して踏ん張り、体勢を立て直す。その間にクイールは――その後の行動を組み立てていた。

 

「聖剣で斬るのは流石に……ですね。間違いがあってもいけませんし」

 

 聖剣を鞘に納めながら、ぶつぶつと呟く。

 何もかも、完璧にこなす印象から、頼れる半面……妙な不安があった。

 

「――荒療治ですがご安心を! しっかり一撃で決めますので!」

『ファイナライズ! スタンバイ!』

 

 ――模擬戦は終了した。

 つまりそれは、そのコードの実行が解禁されたということ。

 しかしクイールがそれを使用したのを見たドラゴンとの戦いでは、全力以上でもって聖剣を振り抜いていた。

 あんなものを受ければ只では済まないという危機感の中で、体は衝動のままに駆けていく。

 

 聖剣は既に納められた。

 クイールはこちらに拳を向けるでもなく、ただ体勢を低くして待ち構える。

 疑問と危機感は一歩ごとに大きくなっていく。

 これ以上踏み込めば、クイールですら対処するのは難しくなるだろう。

 それでも、クイールのことだ。きっと何か考えがあると信じ、突き出される腕に無意味な抵抗をする中で――

 

『マスター・エクストリームッ!』

 

「え――――」

 

 ――輝きを放ったのは、ドラゴンの開かれた口を模したような兜の額。

 聖剣による一撃ではない。まるでそれは、ドラゴンのブレスだった。

 射出された巨大な光弾は、微妙に直撃を避ける形で、真っ向から突っ込んだ僕たちを襲う。

 

 爆発によって巻き起こる風圧と衝撃で、頭が真っ白になる。

 吹き飛ばされ、勢いを殺しきれずに幾度も転がった先で魔法が解ける。

 当て方を工夫する形で、相当加減してくれたのだろう。

 痛みは耐えられないというほどではなく、意識が飛ぶこともなかった。

 そして、何よりも。

 

「くっ……り、リッカ……!?」

「ん……っ」

 

 リッカのダメージもまた、最小限に抑えられていたようだ。

 相変わらず、意識は朦朧としているようで、またすぐに眠り込んでしまう。

 ……こういう形で、クイールが力を貸してくれた模擬戦が終わるとは思わなかったが、ひとまずリッカが無事であることに安堵した。

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