凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法 作:けっぺん
朝、目が覚めて――リッカがいないと気付いた時、眠気は一瞬で吹き飛んだ。
そこに残されていた紙は力強く握り込めばすぐに崩れてしまいそうなほどに古ぼけているが、不気味なほどに魔力が染み込んでいる。
いくら眠っていたからといって、果たして気付かないものかと思ったが、そんなことは重要ではない。
いま、リッカがここにおらず、リッカの魔法も反応しない。代わりにこれが残されていた。
重視すべき事実は、それだけだ。
「――ッ」
「ストップです、ユーリくん」
この状況で危機感を抱かない筈がない。
居ても立ってもいられず、駆け出そうとして、クイールに腕を掴まれる。
「離して! 今すぐ行かないとリッカが――!」
「だからこそ、ユーリくんが冷静でいないといけないんじゃないですか」
分かっている。分かっているのだ。
リッカのいない状況で冷静さを欠くことが何を意味するか。即ち、無力な僕がより死に近付くということだ。
それでも――こうしている一分一秒で手遅れになる可能性が、頭を過ぎってしまう。
もう、何も知らなかった頃とは違う。
少なくとも、抗えないリッカが最悪の結末を迎えることを、既に僕は想像出来てしまうのだ。
「リッカちゃんに手を出すことはないでしょう。ネシュアの四天王……彼にも、その辺りの慎みはあるでしょうし、何よりリッカちゃんは他の試練に関わってます」
「でも……駄目、だよ。リッカが生きていることは分かる。けど、だからって何もされてないとは限らないんだっ」
「……それは……」
クイールを相手に、その話題を出すのは躊躇いがあった。
だが、何よりそれに恐怖したリッカが、アラクネに捕らえられたあの時のように、いつ“そう”なってもおかしくない状況。
僕にとって、今すぐにでもリッカのところに駆けつけなければならない理由として、それは十分過ぎる。
「――お願い。手を貸して、クイール。僕には、日暮れまで待っている選択肢もないんだ」
「……ユーリくん」
クイールが僕たちを心配してくれているというのは、痛いほど伝わってくる。
これは、彼女の忠告を聞き入れようとしない僕の我儘だ。クイールにとっては、迷惑でしかない。
「……約束してください。決して一人で突っ走らないこと。リッカちゃんを取り戻すまで、僕から離れないで。キミに何かあれば、リッカちゃんがどう思うかを、よく考えてください」
それを自覚しておきながら、僕はクイールに頼る。
頼ることしか、出来ない。
「うん――ごめん、クイール」
「土の試練をキミたち二人が健在な状態で突破することで許します。ユーリくんが曲げないというなら、今すぐリッカちゃんを取り戻しに行きますよ」
苦笑したクイールはそう言って、立てかけてあった聖剣を手に取る。
「片付けている余裕もありません。最低限の荷物だけ纏めてください」
テントを片付けている暇などない。
置き去りにされたカルラからの杖など、本当に最低限を持ち、その他殆どをその場に置いて魔除けの結界の外に飛び出すと同時――
『マスターアップ! Q-クエスター!』
クイールは黄金の鎧に身を包んでいた。
それが隣に立って、僕を抱えることの意味は、すぐに分かった。
「一応言っておきますけど……覚悟はいいですね?」
「――勿論」
耐えられるかどうかが不安……ではあったが、それは迷う理由にはならない。
不安であっても、無理であっても耐えるのだ。いち早く、リッカのもとに辿り着くために。
「では、百パーセントで行きましょう!」
「ぐ……っ!」
Q-クエスター――クイールが聖剣の魔法によって変わるこの姿は、それそのものが高水準で纏まった性能を有している。
それは攻撃力や機動力が特別抜きんでている訳ではないことを意味する。
ゆえにその、“バランスの良さ”という短所を補うのが、魔力の放出。
聖剣が有する膨大な魔力をクイール自身の属性に変化させ、出力することで加速や火力の向上を齎す機能。
背後で黄金が爆発した時の衝撃は、体が置いていかれたのではと錯覚するほどだった。
本来それは、間違っても生身で体験すべきものではない。
息が詰まり、体中が軋むようなその負荷を必死で耐えれば、ただ駆けることの何十倍もの速度で、その廃都は大きくなっていく。
土の試練が行われる舞台、ネシュア国跡。
元はナイトラクサのように、一風変わった背の高い建物が行儀よく並んでいたのだろう。
今はそれを想像できる程度の、風化した黄土色の建物だったものが散見されるばかりの、“如何にも”な風景。
延々と続く水気のない土地。そこはかつては、或いは聖都さえ凌ぐ大都市だったのかもしれない。
この勢い、この速度で突入し、数分が経過しても反対側へ抜けることさえない。
代わり映えのない景色の中で、ただ焦燥だけが募っていく。
「着きますよ」
そんな一言の直後、クイールは足を止め、真っ直ぐに続く道の名残を思い切り削りながら減速した。
今度は突然の停止に付いていけず先走ろうとした体がまたも悲鳴を上げる。
一瞬、意識を手放しかけて、それは駄目だと堪えて。
完全に停止すると同時に、下ろされる。ふらつく体で、それでも顔を上げて、ようやく開けた場所に出たと知った。
「……やれやれ、随分早いな。そこまでか。そこまで……か? ロケーションとしては日暮れがやはり好ましいのだが、いや仕方ない。アドリブとは予想外を呼ぶものだ。これもまたライブ感の醍醐味といえる。ならば受け入れようじゃないか」
広場の中央に鎮座する、見上げるほどに巨大な舞台。
襤褸切れと半透明な骨が積み上がって形成された――悪趣味としか思えないそれの周囲には色とりどりの炎が揺らめき、好き放題に踊り狂う。
舞台の上には、一人の男性。
丈の長い、黒い外套に身を包む彼は、外見だけは人間と遜色ない。
相手の警戒を解すような柔らかい笑みは、僕にはひどく、不気味に映る。
穏やかな人相とは正反対の澱んだ雰囲気は、彼がそういう姿であるだけの魔族だと確信させた。
「――やあ、やあ、よく来た、勇者ユーリ。そして久しぶり、でいいのかな。キミは勇者クイールだね。こうして二つの世代を同時に迎え入れたのは長い生……もとい、永い死でも初めてだ。これだから世界は面白い、退屈の先には常に新しい発見が待っている」
喉を通して発されているとは思えない、何かに反響したような声で紡がれる、長々とした言葉。
クイールとは、面識があるようだった。彼が何者であるかは、そこからも想像できる。
リーテリヴィアやアリスアドラほどはっきりと、強大な気配を感じられる訳ではない。
しかしそれは侮る理由にはならない。彼もまた、最上位の魔族であることには変わりないのだから。
「私は土の座を守る四天王、『天骸』たるオドマオズマ。しっかり化粧をしているから人間に見えるだろうが、これでもリッチと呼ばれるアンデッドだ。とはいえ人間として接してくれるならばそれでも結構。人間らしく振る舞おうじゃないか」
リッチ……あらゆる“死”を操るという、アンデッドを統べる頂点。
人間にしか見えない彼がそう名乗る異常性は、その場の誰が否定することもない。
四天王オドマオズマ。彼こそが、この廃都の支配者であり、あの手紙を用意した張本人だ。
「――試練を受ける。けど、それより先にリッカを返して」
ならば話は早い。何より優先すべき要求を告げれば、彼は笑みを浮かべたまま、指を鳴らす。
すると、何処からともなく舞台の上に二つの人骨――スケルトンが現れる。
ガシャン、ガシャンと硬い音を立てながら不自然に歩くアンデッドたちは、眠るリッカを抱えていた。
「リッカ!」
「安心したまえ、何もしていない。キミを確実に招くために協力してもらっただけだからね」
スケルトンたちは舞台に続く階段を統制のとれていない、おぼつかない足取りで下りてくる。
その、いつリッカを取り落とされるか分かったものでもない様子を、大人しく見てはいられなかった。
『トランスコード! アクセプション!』
「おや。せっかちだな」
届いた――術式が浮き上がり、魔力へと変わったリッカの体。
運んでいたものが失われたことで困惑するスケルトンたちから離れ、リッカはこちらに向かってくる。
『U-リッカ――オズマッ!』
リッカの意識は戻っていない。それでも、こうして一つになることで、何もしていないという言葉が真実だと分かり、僕を安心させた。
「……思いのほか、簡単に返してくれますね」
「多少、興が乗りそうになったことは否定しない。私の好みではないが、そうした嗜好を持たない死体はそれこそ山のようにいる」
しかし、一歩間違えば、オドマオズマがリッカに手を出していた可能性は存在していた。
彼はなんでもないように言うが、決して冗談ではない。
途中まで、間違いなく彼は“そのつもり”でいたのだ。
「ただ、それでは試練どころではなくなってしまう。私はこれでも試練には真摯に向き合うタイプだからね。勇者ユーリの試練にはその子が必要だし、その子を使えば確実に勇者ユーリはやってくる。その子を攫っただけ、という行動の理由は以上だ」
「……少し、意地が悪くないですか?」
「自覚はあるとも。そして望ましい評価だ。私が性格の悪いサディストでも性欲旺盛でもないことには感謝してほしいな。ちなみに風のジジ……四天王はその手合いだから気を付けたまえ」
「はぁ……」
「まあ、それも勇者ユーリにとっては私の試練を突破出来れば、の話だが」
ここから、逃げられはしない。
リッカのことはまだ何も解決していない。正直なところ、他の試練に集中できるコンディションではなかった。
だが、今から逃げることは不可能だ。
どうあれ僕は、リッカとの問題を抱えたままに、この試練に挑まなければならない。
「まずはじめにだが、勇者クイール。キミは既に私の試練を終えている。その自覚はあるかい?」
「ええ、勿論」
「その上で、再度この場所で、私に関わると。同時に存在するキミの次代に付き添う形で」
「そうですね、その理解で合ってます」
「物好きだね。変態とも言い換えられる」
「変態じゃありません! 勇者です!」
「え、あ、うん。ごめん」
――緊張感が消えかけて、集中し直す。
オドマオズマに意識を向け過ぎていたせいで、突如声を荒げたクイールの方に驚かされた。
思わずといった様子でオドマオズマの方も謝っていた。
「……さて。続いて、だ。勇者ユーリ。これより始まる土の試練は、このネシュア全体を舞台とする。必要と感じればどこを、どのように使っても構わない。キミたちに課す制約は、たった一つだ」
首を振って、元通りの雰囲気を取り戻したオドマオズマ。
彼が軽く手を振り上げれば、周囲の空気が変貌する。
乾いた空気。そこに生がないことを、より如実に感じられるようになった。
どうしてこれを吸って、僕たちが生きていられるのか不思議なほどに、この土地は枯れている。
「……それは」
「ネシュアを出ないこと。迫る死から逃げることは許されない。キミたちがすべきは死の否定だ。試練を果たすか、リタイアを宣言するか、もしくは生きるための蓄えが尽きるか、或いは――」
――十、百、それ以上。
オドマオズマが一度言葉を切った理由は、すぐに分かった。
感じ取れる気配が増えた、いや……増え続けている。
囲まれたという域ではない。周囲に現れたのは、数を数えることすら馬鹿馬鹿しいと思うほどの、かつて人だったもの。
その頂点であるオドマオズマを除いて、完全な肉体を保っている者は一人もいない。
腐敗し、失われ、それでもなお、魔族としての存在を許されたアンデッドたち――
「かれらに沈むか。勇者クイールから話は聞いているかな? 個々の気配は感じ取りにくいからね、油断しないことを勧めるよ」
土の試練の大前提たる、亡者の群れ。
オドマオズマの手の一振りで、生者を否定せんとするかれらは起動した。
【ユーリ】
冷静になれずにクイールを頼る選択肢を取れないとバッドエンド。
【リッカ】
ネシュア誘拐イベントが起きた時にリッカの好感度が80未満もしくはカンストしてるとバッドエンド。
そうでなければ意外と普通に返してくれる。
【変態クイール】
百メートルを一秒でぶっ飛ぶことが出来る。制御は出来ない。
【オドマオズマ】
アンデッド系バッドエンドなら何でもござれなエンタメ四天王。
試練の前提はネシュア国跡から出られないこととエンカウント率大幅増加。
食料やら回復アイテムを補充できないため準備不足のまま突っ込むと詰む。
【ゾンビーズ】
ネシュア国跡で無限湧きするモブ魔族の皆さん。ぉぅぃぇ。
ダメージ床感覚でエンカウントするし戦闘中にガンガン乱入してくるタイプ。
かれらを仲間にして教会に入ると自動的にロストするぞ!