凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法   作:けっぺん

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妄執のDECODE

 

 

「無論、蓄えがあるならいくら食べても飲んでも文句は言わないとも。疲れたのなら休めばいいし、眠ってしまうのも構わない。そういう環境を作り出せるならね」

 

 身を隠せる場所は、山ほどある。

 ただ一時、ほんの僅かにかれらの目を逃れることは、難しくはないだろう。

 だが、そうしたとしてもすぐに見つかる。これほどの数が、試練の前提でしかないとは。

 

 ゆっくり、ゆっくりと迫り、手を伸ばしてくる一人。

 胴体の肉がゴッソリと抜け落ちたそれも、かつては人間だったもの。

 そう考えて、どう対処すればいいのかと手が止まり――次の瞬間その腐敗した体が魔力によって吹き飛ばされる。

 

「ユーリくん。かれらはゾンビです。死体が残っているだけって割り切ってください。じゃないと死にます」

 

 辺りに魔力を振り撒いて、一斉に爆散させるクイールに、躊躇いはない。

 もうそこにいるのは、慈悲を掛けるべき相手ですらない魔族の傀儡だと。

 

 ……そうだ。躊躇するな。

 何もせずにただ逃げるだけで、この場を切り抜けられる訳がない。

 今の僕が背負っているのは自分の命だけではない。僕が抵抗しないということは、リッカの命を差し出すことも同義だ。

 その事実を強く認識する。“リッカのために”で、止まろうとする手に喝を入れる。

 

「ッ!」

 

 腕を振り抜く。伸びた触手はその先にいた二人を捉え、脆くなった体を上下に分断した。

 大丈夫――出来る。やらないといけない。

 

「うん、うん。そうでなければ。私とて名前も知らない死体に貪られる勇者は見たくない。正直それだとそんなに楽しくないからね。ちゃんと私が用意した試練を堪能してほしい」

 

 周囲のアンデッドが一通りいなくなったところで、オドマオズマは満足そうに頷く。

 彼にとってこのゾンビたちは、代えの利く手駒に過ぎない。

 当然、試練の本質などではない。僕たちは、かれらを常に対処しながら、何かを為さなければならないのだ。

 

「……試練の内容は、なに?」

「焦るな、急ぎ過ぎは嫌われる、何事もね。さて……勇者ユーリ。キミの試練は迷ったんだ。土の試練はこのネシュアを舞台に死を相手取る。その内容を調整するのが私の役割なのだが……百代目となる今回はどうしよう、とね。秘蔵だったドラゴンゾンビは前回全て叩き切られてしまった訳だし」

「なんかすみません」

「過ぎたことは仕方ない。ああも実力を示されては認めざるを得ないとも。まあ、その勇者クイールが関わる以上、二人の勇者に対して見劣りしない試練を用意させてもらった」

 

 その言葉を合図としたかのように、オドマオズマの傍に現れたのは、長方形の箱。

 彼の背丈とさほど変わらない大きさのそれは、古ぼけてこそいれど細微な装飾が見て取れる。

 ――棺だ。

 そう直感できたのは、内部から零れる妙な雰囲気が伝わってきたからか。

 

「キミたちが対面するのは、彼女だ」

 

 棺であるのならば、中にいる誰かが生きている道理はない。

 姿かたちはどうあれ、周囲のアンデッドたちと同じ存在だともいえる。

 だが――開かれたその中で、鎖で何重にも縛られて固定されていた者は、違っていた。

 

 血の気が抜け、青褪めた肌。

 見える範囲にも複数目立つ縫合したような痕。そして、右腕の肘から先は、代わりとなるような形の魔道具が取り付けられている。

 黒い長髪の少女には命がない。だというのに……それを“死んでいる”と表すには、あまりにも違和感が強かった。

 

「命と魂は別のものだ。アンデッドの区別はおおむね、命を無くしたその者の状態に左右される。命が潰え、肉体から離れた魂はゴーストとなる。命も魂も消え果てた肉体はゾンビに出来る。では、肉体の美が維持され、魂も縛り付けられた状態はなんなのか……私はそれをマミーと呼ぶ。該当する例が彼女しかいないから区別もなにもないがね」

 

 命無き魂が魔族になるのであれば、ゴーストのように肉体を持たず、彷徨う存在になるのが普通らしい。

 そして周囲のゾンビたちには、ゴーストにある魂がない。オドマオズマの統制に従う、動く死体というだけだ。

 だが、棺の中の少女はそのどちらにも該当しない。

 肉体は健在であり、魂もそこにある。

 しかし、その二つを繋ぐ命がない。

 その時点で少女の存在は矛盾している。オドマオズマが“マミー”と定義した、独特の状態が、違和感の正体であった。

 

「……つまり? 揚々と説明するような内容ではなかったんですが」

「キミも中々にせっかちだな、勇者クイール。もう少し勿体付けさせてほしい。十年前の試練より、演じ甲斐のある舞台になる筈さ」

 

 言いながら、オドマオズマは棺を指先で撫でる。

 その動きに合わせて棺は上から解れていき、鎖も形をなくしていく。

 立った形で固定していたものが消えたことで、当然のように少女はその場に崩れ落ちた。

 ――それだけではない。

 

「……――」

 

 その少女は目蓋を開いた。

 目覚めはごく自然で、違和感を感じられない。

 だからこそ、おかしい。命のないその体が目覚めることは、本来あり得ないのだから。

 

「……っ……ここ、は……?」

 

 砂が混じったように掠れた声。

 少女はゆっくりと体を起こし、黒い瞳を揺らして辺りを確認する。

 そして、こちらに目を向けた少女は、一瞬で表情を恐怖へと変えた。

 

「ひっ……ま、魔族……人型ローパー……ッ!?」

「っ、ちが――」

「ち、近付かないでっ! ま、まだ分からないのですか!? わた、わたくしは、ネシュアの誇りは、魔族になど屈しません!」

 

 明らかな誤解を受けている。

 思わず魔法を解こうとして、寸でのところで冷静になった。

 いま、それをする訳にはいかない。周囲のゾンビたちに付け入る隙を与えたら、元も子もない。

 どうするべきか、そもそも彼女は何者なのかと考えていると、クイールが一歩前に出る。

 

「落ち着いてください、僕たちは――」

「近付くなと言ったはずです! な、なんですのあなた……この見たことのない魔力属性、新種のドラゴニュート……!?」

「新種のドラゴニュート!?」

 

 この姿では当たり前かもしれないが……僕たちが人間であると認識されていない。

 恐怖を堪え、気丈に敵意を向けてくる少女の言葉に、思わぬダメージを受けたようで、クイールは大きく後退った。

 

「……く……ふふ……人型ローパーに新種のドラゴニュート……! いやあ、相変わらず頭の回転が速いものだ……!」

 

 そのやり取りとも言えないやり取りを寸劇か何かと見たのか。

 肩を震わせ笑いを堪えているオドマオズマに、こちらを警戒したままの少女は視線を向ける。

 

「――――にい、さま……?」

「……え?」

 

 同じように恐怖を示すだろうという推測とはまるで違う反応。

 

「ああ……そうだとも。覚えていてくれて嬉しいよ、私のかわいいナディア」

 

 対するオドマオズマも、平静を取り戻すように一呼吸したあと、少女の疑問を肯定した。

 にいさま……兄様?

 

「忘れるものですか! 魔族に魂を売った国賊! あなたこそ……あなたこそ、何をしたのか覚えていてわたくしの前に現れたのですか!」

「勿論覚えているが……既に知る者などいない歴史の話だ。それに、無知と興味ゆえの行いであって、悪気があった訳ではないのだし水に流してほしいな。建設的じゃない」

「歴史……? 訳の分からないことを……っ、兄様……あなた、魔族に……」

 

 彼が何者であるか分かるや否や、困惑は怒りと憎しみへと変化した。

 兄と呼ぶ彼がそうした負の対象であることは間違いないらしい。

 しかし、少女は彼を暫し見つめた後、再度の困惑を示す。

 

「一応今の身分を明かしておこうか。魔王に仕える四天王、土のオドマオズマ。それが今の私だ、ナディア」

「……、恥を知りなさい。あなたは我が一族の、我が国の汚点です。あなたさえいなければ……!」

「やれやれ。キミをアリスアドラから庇ったのは正真正銘の愛からだったんだけどな。一方的な愛情とはかくも虚しい」

 

 嘆息したオドマオズマは僕たちに向き直った。

 

「この子はナディア。かつてこの辺り一帯……ネシュアを統治していた一族の生まれだ」

「かつて……? なにを……ここがあの、美しく活気のあった、ネシュア……?」

 

 ナディアの困惑はオドマオズマから離れ、辺りに広がる寂しい風景へと向けられている。

 かつて、ここが紛れもなく人々が住む場所であった頃……彼女はそこで、生きていた。

 この、痕跡しか残っていない、アンデッドたちの巣窟。

 ナディアはネシュアという国の、唯一の生き残りだった。

 

「この子を死体と見るか人間と見るかはキミたち次第だが、それはどちらでもいい。試練は彼女と、これを使う」

 

 まるで、少女――ナディアを単なる物としか見ていないような言葉と共にオドマオズマが取り出したのは、手のひらに収まるほどの棒状の魔道具。

 目を凝らさないと分からないほどの小さなそれを手で弄びながら、彼は続ける。

 

「これに入っているのは魔法だ。とある一人の、とんでもなく歪んだ女の子から拝借した技術を基にして作った、面白い魔法が入っている」

「っ……まさか――」

「楽しかったよ。楽し過ぎて、この古都の遺物まで詰め込んでしまった。だがそのおかげで、相応しい代物になった」

 

 感じ取った、途轍もなく嫌な予感。

 彼の思う通りにしてはならないと、体が動いた。

 伸ばした触手は、しかし彼と僕たちの間に突然現れたスケルトンが受け止める。

 クイールもまた動こうとして、気付けばすぐ傍に迫っていたゾンビの対処を余儀なくされた。

 防壁となって砕けた骨に大した感慨も持たず、オドマオズマはゴミでも捨てるかのような軽い手の動きで、その魔道具を少女に放る。

 

「ぃ……ッ!?」

 

 細い魔道具は、少女の首元に突き刺さる。

 小さな悲鳴はすぐに途切れる。一瞬の空白の後、その表情は限度を超えた恐怖に引き攣った。

 

「ぁぁあああああああ――――ッ! や、やだ、気持ち悪いっ! なんなの……!? なんなの、これ!?」

「ネシュアが妄執した“昨日”、女の子が有する過去への憎悪と未来への渇望。それを受け入れるのはネシュアの生き残り……死に残りと言うべきかな。ともかくこの子が相応しい」

 

 

『……DECODE……』

 

 

 ノイズまみれの、地の底から響くような低い魔法音声。

 それは、絶叫する少女の首の中へと吸い込まれていった魔道具によるものか。

 体表に浮き上がった術式を、その体を、覆い隠すように細い布が巻き付いていく。

 少女の抵抗など一切配慮しない薄汚れた布は夥しい魔力を帯び、傷つけてはならない“本体”を守るべく、全身を包みきる。

 

 その上に出力され、固定されていく装甲は、血を感じさせない薄暗い青色。

 各部を守る簡素な装甲は、背中に背負う大型の外装とコードで繋がる。

 頭部の装甲は不完全で、赤く輝く単眼と白い不揃いな牙が剥き出しになった不気味なもの。

 

「ナディアの状態は問わない。破壊して見せてくれ。それが勇者ユーリに向ける、私の試練だ」

 

 とても、先の姿と結びつかない怪物的な姿へと変わり果てた少女は、ノイズの彼方から聞こえる軋むような悲鳴を響かせながら、ゆっくりと立ち上がる。




人型ローパーユーリ】
頭部の『オズマクラウン』により相手の恐怖心を煽る効果を持ち、強化装甲『テンタクルスフレーム』は相手を威圧し精神を揺さぶる。

新種のドラゴニュートクイール】
ドラゴンを模した鎧と兜、そして勇気の魔力はその者が勇者と分からなければもちろん怪物に見える。

【ナディア】
青肌継ぎ接ぎ義腕出オチお姫様。

【D-RIKKA】
DECADEではない。
土の試練にぴったりのボスを用意しました。
中の人なんて気にせず容赦なくぶっ壊してください。
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