凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法 作:けっぺん
「ぁ……あ……?」
――それは、さながら『アドラフューリー』のようだった。
リッカの衝動に従って自発的に動き、制御を受け付けないあの姿。
あれと同じように、ナディアは自分の変化を受け入れることが出来ていない。
「なに、体、勝手に……!?」
立ち上がった青い幽鬼は本人の意思など関係なく、ゆらりと動き始める。
おぼつかない、しかし確たる足取り。歩くよりなお遅い動きで舞台の縁まで寄ってくる。
「ま、待ってください……! 落ち――ひぁ!?」
軽くその縁を蹴って、ナディアは舞台を飛び降りた。
落ちたと言った方が正しいか。抵抗に従わない体と共に落下し、悲鳴を上げた彼女の混乱など気にも留めず、両足だけでなく両手も使って着地する。
「うぐ……っ、痛……!」
「……く、クイール……どうすれば……」
あのくらいの高さであれば、魔法を使用している状態なら痛みもなく飛び降りることが出来る。クイールもまた同じだろう。
だが、そうした保護が掛かっているとは思えないほど、ナディアはその着地で痛みを感じていた。
近付いてくればくるほど、こちらへの拒絶は強くなる。
――思わず、クイールに尋ねた。
少なくとも、周囲の魂無きアンデッドたちと同じように打ちのめす選択は、簡単には出来なかった。
「……さて、どうしましょうか。こういうのはちょっと、僕も分からないですけど……聞こえますか! 中の……えっと、ナディアちゃん!」
「っ、な……い、いえ、誰でもいい、助けてください! 止めて!」
その迷いは、クイールもまた同じ。
しかし悲痛なまでの懇願が返ってきたことで、力強く頷いた。
「試してみます! 痛いのは我慢してください!」
「え……ぎ、ぃ!?」
暴走する体を止めるというならば、単純明快な手段を取る。
それはよく知っている。模擬戦の中で何度か頼ることになった。
例え会って間もない、現状は敵である存在であっても、それは同じ。
兜から放たれた魔力の塊は必殺技とは遠い威力。ただのゾンビ相手ならばまだしも、一定の耐久力を持つ相手ならば決着には至らないだろう。
塊は直撃して爆発――しかしその体が吹き飛ぶことはなかった。
衝撃は確かにあったのだろう。当然、痛みも走った。
しかし、吹き飛び掛けた体を衝撃を殺しきることで押さえつけた。
大きく仰け反るも、倒れることなく、まるで時間を巻き戻すような不自然な動きで体勢を戻していく。
「うぇ……!? なんですかその動き……?」
痛みを感じ、動きが鈍ったならば出来ないだろうあまりに常識を逸した立て直し。
そして上半身が戻りきり、何事もなかったかのように再度足を進めてくる。
「決して頑丈ではないが、試練として成り立つよう作り込んでいる。勇者クイール一人に簡単に壊されても興醒めだからね」
「悪趣味な……っ」
「褒め言葉をありがとう。勿論、しぶといだけじゃない。キミたちにとって脅威となる武器も当然ある」
どちらかと言えばそれは、ナディアではなくオドマオズマの指揮によって動いているようだった。
ふらふらと歩く彼女の右腕を囲むように術式が浮き上がったと思えば、新たな外装となって装着されていく。
背中のそれと同じように、過剰な程に分厚い腕甲――というだけではない。
先端に備えられた、無数の小さな刃によって構成される楕円の剣。
防具と一体化した大型の武器の物々しい外見は威圧的だが、それでも聖剣と打ち合うには不足に感じた。
評価を一転せざるを得なくなったのは、その直後。
「ひっ……!?」
「――ッ!」
「危な!?」
その武装に送り込まれた魔力によって刃が駆動を始め、猛回転。
たったそれだけで、切断力を増すどころか、勢いで制御すら困難になったらしい暴力へと変化する。
武器の方に振り回されているような、不安定な斬撃は、“どう防御すれば良いのか”がかえって分からない。
咄嗟に後退することでどうにか躱す。振り抜かれた先で、地面に跳ね返るように再度振られた刃はクイールへと向かい、彼女にとっても読めない軌道だったようで受け止めることなく回避した。
跳ね返るまでの僅かな時間で、地面はしっかりと抉り取られている。
当然ながらあの魔力で刃自体の補強も行われているのだろう。
刀身は派手な音を響かせながら回転を続け、止まる様子すら見せない。あれでは触れるだけで脅威だ。
「
「ユーリくん……っ、あの詠唱の意味、分かります――かっ!?」
「全然ッ!」
注意すべきはナディア
どこにいるのかも分からない、どこにでもいるゾンビたちは、それぞれの気配が小さすぎるからか、或いはナディアやオドマオズマの気配に霞んでいるのか、接近を悟れない。
気付けばすぐ傍まで迫っているそれの対処に手間取っていれば、今度は空気を削るような轟音が襲い掛かってくる。
ただ倒せばいい、それだけならば単純だっただろう。
だが――その選択をさせない試練だ。
「や……っ、いや、と、止めて……!」
僕たちは、彼女からすれば正体不明の敵だろう。
だが、彼女は少なくとも、このように戦うことを望んでいない。
その精神は紛れもなく人間だ。魔族の価値観の一切ない、オドマオズマに操られていると言ってもいい存在。
「止めたいのは、山々なんですけどね……! もう少し痛いの、耐えられますか!?」
「っ!? ま、待ってください! 無理っ、無理ですっ!」
僕も、クイールも、攻め切るという判断が出来ないのはそのためだ。
今の状況から脱したい、しかし先のクイールの攻撃で、“それ以上”は耐えられる気がしないと認識してしまった。
彼女のあの外装を破壊することが、土の試練の内容。
それでも、そのためになんの躊躇いもなく彼女を攻撃するというのは――
「……勇者、ではないですよねぇ」
理由の根底こそ違えど、僕の考えていることはも概ね、クイールと同じ。
彼女に相対した人間として、そういう選択は出来る限り後に残しておきたい。
「とりあえず……動きを止めないと!」
「ですね。それから、彼はこれ以上邪魔しないとして、ゾンビたちが茶々入れに来ても面倒ですし……」
試練は既に開始された。それ以上、オドマオズマが新たな干渉をしてくることはない。
そんな確証はないが、とにかく今の、全方位を常に注意しなければならない状況では対策も考えられない。
ナディアの動きを止めること。それでいて周囲のゾンビたちの襲撃を出来る限り抑える、もしくは遅らせることの出来る場所への移動。
後者の叶う場所は、周囲を見渡しても幾らか見つかる。
未だある程度の背丈を残している、建物の残骸。
その上であれば、ある程度態勢を整える猶予が確保できるか。
少し離れた場所にある、一際大きな残骸。そこが適当かと判断し、クイールも同じ見解に至ったようで、頷き合う。
「うぁぁ――!」
「おっと、大人しくしていてくださいね!」
まずはその暴走する右腕の凶器をどうにか抑えつける。
振り下ろされた刃をクイールが聖剣で受け止め、ギャリギャリと普通の剣同士ではあり得ない音を立て続ける競り合いに持ち込む。
そこから離させはしない。すぐさま膂力で勝り、攻めに転じたクイールがナディアをその場に縫い止める。
「ユーリくん!」
「わかった――!」
僕たちが使えるどの形態をもってしても、戦闘能力においてクイールには決して及ばない。
そもそも、リッカが用意した形態はいずれも、“正直な戦い”をするためのものではなかった。
身を守り、相手を妨害する。動揺させ、人間が持ち得ない特性で敵の得手を封殺する。
この『オズマフューリー』から一貫して、リッカの魔法はそういうスタイルに特化している。
ナディアの背後に周り、触手を放つ。倒すという目的ではなく、拘束するために。
あの刃が特別、自立したりするようなものでもなければ、右腕の動きを封じてしまえばいい。
「きゃああぁぁ!? や、やっぱり人型ローパー!? やめてくださいっ! わ、わたくしの体、苗床には向いてないと思うので――!」
「なっ……そ、そうじゃなくて! キミをひとまず止めるために――」
「止めることだけを目的にするのに粘液まみれの触手を使う必要がどこにあるんですかっ!」
「まあ、それは確かに」
半ば錯乱しているとは思えないほどの正論に、クイールまでもが頷いた。
『オズマフューリー』が齎す恐慌をより強めるためだと、そう考えているが……こうではない触手を用意する手立てがないのだから、仕方ない。
納得させられる言葉がなくなり、黙ってその体を縛り上げる。
「や、やだ!? 犯さ、れ……っ、た、助けて兄様ぁ!」
「そ、そんなことしないってば!」
「――その機構を極めようとする者は比較的多くてね。実は仕組み自体は効率主義の者からも評価されていたんだ。しかし機構そのものを大型化する考えが纏まったところで『それをする意味が分からん。お前らは天に穴でも開けるつもりか』って見切りをつけることになったんだ。かくしてドリルと呼ばれたその魔法機械は――」
「……まだ続いてるんですか、あの詠唱」
「この異端! 薄情者! なんでこんな人がネシュアを滅ぼせたんですか!」
どこを向いて喋っているのかは知らないが、早口のよく分からない解説は延々と続いていた。色々な意味で、ナディアがかわいそうになる。
……妨害をしてこないなら、構わない。ナディアの腕を固定し、引き寄せる。
後はクイールの出番。この状態で形態を変化させる訳にもいかないため、再び彼女に頼る。
「行きますよ、三人とも! 舌を噛まないように注意してください!」
「な、何を!? 三人!? なにするつもりなんで――」
このネシュアにやってきたのと同じ、クイールが有する加速手段。
その魔力の爆発による推進力は、体を浮き上がらせ飛行の真似事さえ可能とさせる。
ネシュアを無数に這い回るゾンビたち――かれらがかつて普通の人間であったというならば、空を飛ぶための翼はない。
安全と見られる地帯に向かうための、安全な道のり。それは空路。
「――――――――――――ッ!?」
既に理解の範疇を超えていたナディア。きっと彼女は、こうして空を飛ぶ――高速で跳ぶともいう――経験もなかったのだろう。
声にならない叫びを聞きながら、クイールに連れられて広場を離れる。
やはり――攻撃や妨害が飛んでくることはない。
外にさえ出なければ、ネシュア全域が試練の舞台として認められる。これもまた試練のために絞った知恵と、判断されたのか。
十秒と掛からない、最高速度の飛行。
あっという間に高さを残した建物のてっぺんに辿り着く。やはりというべきか、そこにゾンビの姿はなかった。
「到着です!」
「ふぎゃ!?」
「くっ……!」
一時であろうとも、安全地帯。そこまでは想定内。
予想外だったのはその直後。着地は落下と言った方が正しく、床に罅を入れ砂埃を巻き起こす。
ともすれば魔族の攻撃よりも強い衝撃。加えてクイールが着地と同時に手を離したことで、危うくそのまま建物から滑り落ちかける。
それをどうにか踏ん張り、同じく想定外の衝撃を受けたナディアの無事を確認する。
――不適格かもしれないが、潰れたような声を上げたと同時、それまで奇跡的に保てていた意識が遂に飛んだらしい。
「……ふゃぁ……」
破壊ではないゆえ、試練の完了とはみなされない。
しかし、ナディア自身の意識が魔法の主軸であったのか、気絶によって物々しい外装が解けていく。
目が覚めたらどうなるかは不明だが――こちらも、一時的に脅威ではなくなった。
気を失った彼女の拘束を解き、寝かせる。周囲を見渡し、小休止できると判断し――僕とクイールも魔法を解いた。
【人型ローパー】
狂乱する少女の動きを封じて苗床堕ちを示唆したうえで拉致った。
【新種のドラゴニュート】
恐怖に震える少女に不意打ちブレスをぶちかまして脅しをかけたうえで拉致った。
【オドマオズマ】
見よ この爪! この牙! チェーンソー!
【ナディア】
グロい姿に強制変身させられてブレスをぶちかまされたり猛回転するチェーンソーに振り回されたり人型ローパーによってグルグル巻きのべったべたにされたりその状態でぶっ飛んでジェットコースターした挙句着地の際に受け身に失敗した人型ローパーの巻き添えを喰らって遂に気を失った。