凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法   作:けっぺん

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目覚めの時

 

 

 ――最初、それは“もしも”の景色だと思った。

 

「ああもう馬鹿姫! それやめろって何度言わせるんだよ!」

「止めないでくださいリッカ! これがわたくしが見出した、皆様に貢献できる最大の力なので……いだ!? 熱いっ!? り、リッカ、その杖でつつくのやめてくださいっ! 蒸発しますからっ!」

「……確かにアンデッド相手なら有効なんだろうけど、その度にナディアが死にかけてたら釣り合いが取れてないよ」

「うぐ……し、しかしですね、この思想はネシュアにおいて由緒正しきものなのです! 曰く、芸術は爆発だ、と……」

「“もう死んでますから”って自虐ネタ使わなくなった辺りは成長だけど。芸術じゃなくて命がけの旅してるのよ、私たち。ってか、アンデッド相手ならカルラでいいじゃないの。それかリッカの杖」

「あ、いえ。わたしまだあの力大して使えないので。ナディアが自爆特攻を毎回してくれるならそれでいいというか」

「この杖で殴れと? カルラが用意してくれた一品物なんだが?」

「とにかく、ナディアはそれ禁止……マキナ使ってくれる方がずっと頼りになるよ」

「そ、そんな! わたくし渾身の必殺技が!」

 

 使えば自らを傷つける刃となった、癒しの魔法。

 彼女はその、正反対となった特性をそれでも活かそうとした。

 結論として行き着いたのが、祝福によって焼ける体を使った自爆とも言っていい手段。

 当然、仲間たちはそれを断固として反対し、使うことを禁止する。

 少女が持った技術は、こうして封印される――筈だった。

 

「ねえ、ナディア。キミのその魔法、僕たちが使うことって出来るかな?」

「ユーリ様たちが……? ……術式をお見せすることは可能ですが……かなり複雑ですよ? 把握するのにもかなり時間が掛かると思います」

「俺は問題ないと思うけど……ユーリたちはなぁ。ってか術式理解する必要ある? 最終的な効果だけ分かってりゃいいじゃん」

「リッカ? 自分が何を言ったのか理解していまして? まさかそんな態度で魔法使いを選んだのですか?」

「あ、はい、ごめんなさい」

「リッカはあとで分からせるとして……この魔法を皆様に伝えるのは吝かではありません。ですが、必要でしょうか」

「絶対、必要になる。自分以外が倒れても、残った誰かが治して、逃げられる……そんな態勢は、出来る限り万全にしておきたい」

「まっ、ユーリの言う通りではあるわね。私たち魔族がネシュアの技術を学ぶってのもどうかと思うけど。そうよね、カルラ」

「どちらかと言うと癒しの魔法より妨害の手札を多く持っておきたいのですが……」

「やっぱりカルラ危険じゃない? 方針というか思想が」

 

 その光景、その世界で、少女は自身の毒でしかなかった癒しを、共に旅する皆に授けた。

 術式に込められた意味一つ一つを理解しながらだから、短い道のりではなかった。

 それでも、旅を万全にするために。誰も死なないために。

 

 

 相変わらず、希望は大きくないものの、眩しい光景。

 

 

 それが見えたのは、完成した魔法を発動させて、対象たるリッカに触れた時。

 

 まるでリッカから流れてきたかのような光景は、靄の向こうであろうとも確かな形が見て取れる。

 決してそれは、空想ではない。

 そう判断した理由は、たくさんある。ナディアのことも、ネシュアに伝わる魔法のも、知らないということなどもあるが。

 何より――あたたかい実感に満ちていた。

 

 万全な旅路を思い描いた“もしも”ではなく、彼女にとっては、どこかにあった“いつか”。

 誰にも否定できない眩しさに満ちた――その他の全てが嘘であっても、捨て去りたくない、いつよりもきれいだった“いつか”。

 何があったのか、リッカを縛っているからくりの一歩前まで、無意識のままに踏み込んで、それを見た。

 扉の前で、僕はリッカの目覚めを悟る。

 自身を包む癒しが、信じられるものであると分かっているかのように、リッカの心は魔法を受け入れる。

 

 ああ、やはり、そうだ。

 リッカは――この魔法を知っている。

 

 

 手元から零れていく魔力。

 魔法がリッカに浸透していくのを感じる中で、ようやく周囲を気にかける余裕ができた。

 隣には、呆れた表情のナディアがいる。

 

「……完成して、その子に使うまで躊躇が無さすぎでは?」

「……そう、だね。信じられた理由は、説明できないかも」

 

 確信があった。その魔法が悪いものではなく、ナディアに悪意がないと。

 胸の奥の何かが、ナディアを信じていた。

 

「あ、終わりました? ナイスタイミングですね」

「うん、ありがとう、クイー……ル……」

 

 ちょうど戦闘を終えたらしい。

 クイールの方を見れば、彼女が魔法を解く寸前――普段の彼女とはまるで違う、魔族と見紛うほどの巨躯が見えた気がした。

 しかし、戻ってきたのは普段通りのクイール。

 ……幻覚、だろうか?

 

「ブラックドッグは逃げました。結構痛手は与えたと思うので、すぐ戻ってくることは無いと思います」

「そ、そっか……うん。こっちも、終わった。これで……」

 

 気のせいだったと片づけ、リッカに向き直る。

 魔法は確実にリッカの内へと浸透していく。アリスアドラが残していった“毒”を解きほぐしていく。

 抵抗はない。不思議と手に馴染むその魔法は、程なくしてリッカからアリスアドラの残滓にあった“悪意”を消失させた。

 

「――――」

「リッカ……? ――リッカっ!」

 

 ゆっくりと……ゆっくりと、リッカが目蓋を開く。

 目覚めている時間が著しく制限された、この数日間のリッカとは違う。

 ようやくリッカは、正しい目覚めを迎えてくれたのだ。

 

「……ゆーり」

「うん……おはよう、リッカ。よかった……起きてくれて、よかった」

「ん……おはよ、ユー、リ」

 

 ずっと眠っていた訳ではない。だが、起きていても夢うつつな状態だった。

 そんな状態で数日。リッカとここまで話していないなんてこと、今までなかった。

 どれほど情けないと思われようとも、僕にとってリッカはそこまで大きな存在だった。

 リッカが起きた。たったそれだけ。だけどそれは、今の僕が何より望んでいたことだったのだ。

 

「おはようございます、リッカちゃん。気分はどうです?」

「……」

 

 ほんの僅かに、リッカの様子には落ち着きが見えた。

 クイールの言葉に逡巡した後、小さな頷きだけを返し、次にナディアに視線を向けて。

 ……目を見開いた瞬間の驚愕。

 そこに、魔族に対して抱く恐怖が無かったことが、僕の中である種の裏付けになった気がした。

 

「――――」

「……敵地での目覚めにしては、随分とのんびりですわね。こうして死体が傍に立っている状況だというのに」

 

 いつもであれば、すぐさま飛び起きて、魔法の発動に取り掛かる。

 ナディアがアンデッドであることをすぐに悟って、彼女を“人間である”と判断した?

 違う――リッカは確かに、ナディアという少女を――。

 

「……、……だれ」

「ナディア・ディアネシュア。……あなたに必要なのは状況の把握からでしょうし、それだけで良いでしょう。少なくとも、あなたの寝首を掻くような野蛮な魔族ではありません」

 

 きっとナディアは、リッカの目を見て“どんな子なのか”薄らと理解したのだろう。

 名を名乗るだけに留めたナディアを、じっとリッカは見つめていた。

 

「……そう……、ユーリ、杖……」

 

 リッカの反応もまた、大きくはなかった。

 たった一言で誰何を終え、辺りを見渡し、手元に杖がないことに気付く。

 半身の如く大切にしているリッカの杖はこの期間、僕が預かっていた。

 内部拡張の掛かった鞄から取り出した簡素な杖を渡せば、リッカはそれを丁重に、両手で受け取る。

 

「……っ」

「当たり前のようにとんでもなく危なっかしい気配のする代物出さないでくれます?」

「……」

「――いだ!? 熱いっ!? なにするんですかいきなり!? あなたも常識外なんですか!?」

 

 そして、杖に何を感じたのか顔を引き攣らせたナディアを、リッカは杖の先端で軽くつついた。

 ――先程の、一瞬の夢で、見たような光景だ。

 じゅうじゅうと煙を上げる、つつかれた部位を押さえながら離れるナディア。

 カルラがリッカのために作ったあの杖。

 あれは……リッカの魔法を補助するためだけのものではないらしい。特段、リッカが魔力を通さずとも、ナディアを僅かながら傷つけられる何かがあるようだ。

 

「ユーリ、今の状況を教えて」

「えっ、あ、うん」

「待ってください今のくだり必要でしたか? わたくしなんでつつかれたんです!?」

「まあまあ、落ち着いてくださいナディアちゃん」

 

 それでナディアとの接触を打ち切ったリッカに、ひとまず状況を伝える。

 殆ど意識がなかっただろうから――ナイトラクサから、ここまでについて。

 ここがネシュア国跡であり、土の試練が始まっていること。

 ナディアに起きていることと、今彼女がいる理由、試練の方針。

 そして、制御できない『アドラフューリー』について。これを話した時、どうでもいいと聞き流している風を装っていたナディアが流石に口を挟んだ。

 

「いや、いやいやいや……魔族に制御出来ない魔法を押し付けられたって……クラッキング対策とかどうなってますの?」

「……万全。それに……押し付けられた訳じゃない。私がそういう風に組むように、誘導されただけ」

 

 頭を押さえて、俯きながらナディアに答えたリッカは、自身に起きたことを再確認しているようだった。

 

「……わかった。“これ”は、私がなんとかする」

「リッカちゃん、そんなこと出来るんですか?」

「……考えはある。それに、始まったなら、試練をどうにかしないと」

 

 具体的にどうするのかは、リッカは口にしない。したとしても、魔法の話だ。僕にはきっと理解できない。

 しかし、特段リッカが大きな問題と考えていないならば、それでいい。

 リッカなりに対策がある。僕はそれを信じるまでだ。

 

「あなたに刻まれた術式、見せて」

「見せて、すぐに理解できるものでもないと思いますが」

 

 言いつつも、ナディアはオドマオズマによって刻まれた魔法の術式を浮き上がらせる。

 あれは――リッカの魔法を元にして作られたものだ。

 当然そこには彼の手が加えられており、如何に元がリッカのものだとしても、簡単に読み取ることは出来ない。

 それでも、ノウハウがある分、僕たちや、ナディアが自分で解析するよりはマシかもしれないが……。

 

「……」

 

 青い肌に浮き上がった術式を、指先からなぞるように見ていくリッカ。

 その目つきは、真剣だった。

 かつてのリッカだ――今勉強していることにのめり込んで、眠るのも忘れていた時のリッカの目だ。

 

「っ……」

 

 無意識だろう。やがてリッカは腕に走る術式に沿って、自身の指を這わせていく。

 くすぐったそうに動いた腕を掴んで止め、反対の指で再度なぞり始める。

 

「いや……あの?」

「……」

 

 あれは、邪魔してはいけない時のリッカだ。

 目が覚めて早々に、リッカは状況を理解して、自分に出来ることを始めている。

 その様子を見ていれば、リッカが起きてくれたという喜びで立ち止まるなんて選択を出来る訳がない。

 リッカは、先へ先へと進んでいく。何もかもに蓋をして、僕を引っ張ってくれていた。

 それにいつまでも甘えていれば、またリッカはどこかでこういう目に遭う。

 もう躊躇うな。どんな扉も、リッカのために開けなければならない。

 そうしないと――いつまで経っても、僕はリッカに並べない。

 

「……運動補助と起動から継続的に出力を上昇させていく強化機構……ここが呼び出している、その魔力を確保するための処理は……」

「……あのう、もし?」

「……ここか……ここから繋がってる……完全を仮想して連続的に魔力を供給させる機構……要所はもっと中心の方かな……多分複数個所……」

「あの! 聞こえてますか!?」

「脱いで」

「は?」

「脱いで」

「はぁ!?」

 

 ――並ぶより前に、とりあえず今は有無を言わさずナディアの服に手を掛けるリッカを止めるべきか。




【ユーリ】
辿り着くべき場所に辿り着きつつある百代目勇者。

【リッカ】
お目覚めりっかりか。この数日間、起きている間も意識ははっきりとしていなかった状態。
たっぷり睡眠取ったからかちょっとだけマイルド。
どのくらいマイルドかというとクイールに悩んだ末に首肯を返せるくらいマイルド。
起き抜け早々状況を把握してその辺にいたアンデッドの姫様を引ん剥くくらいマイルド。

【純潔の杖】
カルラお手製のリッカ専用装備。冥界属性を強化する。
死属性に対し圧倒的な有利を持つ属性のため、ナディアはつつかれるだけでダメージを受ける。じゃれ合いみたいなものである。

【クイール】
どっちかと言うと現時点でナディアよりこっちのが知らん女。

【ナディア】
△起きたら知らん女が増えていた。苗床にしなきゃ……。
○起きたら知ってる女が増えていた。脱がさなきゃ……。
◎たすけなきゃ、今度こそ、たすけなきゃ。
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