凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法   作:けっぺん

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『天底姫』/オドマオズマの流儀

 

 

「……」

「両肩、胸、鼠蹊部、背中に二カ所。どこかを中心点にして、攻撃を調整すれば全部纏めて焼き切れる」

「容赦ないですよね、リッカちゃんって」

 

 リッカによる術式の解析。

 魔除けの魔道具を起動した上で行われたそれは、確かに必要なことだった。

 だからこそ、僕もクイールも、ナディア自身もリッカに論破され、事は行われた。

 もちろん――もちろん、僕は見ていない。ただ、後ろからナディアの助けを求める声とか、リッカの常識や倫理観を問う悲鳴を聞き続ける無力な案山子に徹するしかなかった。

 

 その仕打ちが無意味でなかったことが救いだろうか。

 一仕事終えたとばかりに手をパンパンと払ったリッカは淡々と解析の結果を説明する。

 ナディアを変貌させてしまう魔法を破壊するためにネックとなっていた、『追想機関イエスタデー』の解明。

 全貌を読み取れたかは不明だが、リッカはこれを突破するための要点に到達したらしい。

 

「け……穢された……け、研究局の人間でも、ネシュア国民でもない者に……、お父様ぁ……」

「無理やりだったことは謝る。けど、これで見通しもついた」

「そうですけど……! そうですけどっ! 謝罪の意思をまるで感じません!」

 

 リッカがごめん、とは言い出せなかった。

 致し方ないことだとは理解した上で、しかし感情は別だと悔しそうに床を叩くナディアに掛ける言葉は分からなかった。

 もう済んだこととすまし顔なリッカは相変わらず。

 それが嬉しかったからこその、ナディアへの負い目もあったかもしれない。

 

「というか、リッカちゃん。そこまで術式を読み取れるなら、ナディアちゃんからそれを引き剥がすことって出来ませんか?」

「無理」

 

 リッカは考え込みつつも、クイールの問いに短く返す。

 

「……まったく……どういう教育を受けてきたんですか……」

 

 ぶつぶつとぼやきながらようやく調子を取り戻したナディア。

 リッカにも、彼女を出来る限り助けたいという方針は理解してもらえた。

 その結果として、どうするべきかは見つけられたようだが、それを万全にこなす手段がないらしい。

 

「……」

「……な、なんですの?」

 

 暫し黙考していたリッカは、顔を上げて再びナディアに視線を向ける。

 先の一件が軽いトラウマになったらしく、ナディアは何歩か後退った。

 

「……最終手段かな」

「いま何を考えたんですか!?」

 

 何かを思いついたようだが、リッカはそれを自主的に封印した。

 時々突飛なことを提案するのはリッカのクセのようなものだが……恐らく問題のあり過ぎる内容なのだろう。

 問い詰めようとするナディアを無視しつつ、リッカは再び思考に沈んでいく。

 答えはまだ出ていない。

 だが、それは確かに、僕が何より信じられるリッカの姿だった。

 リッカならば必ず見つけられると、そんな信頼がある。その手段を、可能な限り完全にこなすのが、僕がやるべきことだ。

 

「よし、リッカちゃんが名案を思い付くまで待ちますか。安心してください、やってくる危険は全部退けますから」

「……あなたたち、いつもこんななんですか?」

「いや、そもそもクイールと会って、まだそんなに経ってないけど」

「わたくし今の人間が分かりませんわ」

 

 目眩がしたように、ナディアがしゃがみ込んだ。

 その当惑は、分からなくもない。

 しかし、その数日でクイールが勇者たる人間であり、信頼すべき相手であることは理解している。

 悔しいのは、まだ彼女に助けられてしかいないというところ。

 クイールと比べることすら烏滸がましいほどに、僕は勇者として未熟に過ぎるのだ。

 

 勇者らしく。それは、分からない。

 だけど……自分らしく。それなら――分かる。

 それはきっと勇者らしさではないけれど……どれだけ考えても、僕にとって――。

 

「こんなところにいたのか。道理でゾンビ共が見つけられない筈だ」

「っ!?」

 

 当たり前のように、その空間に入り込んできた、反響したような声。

 それまで一切感じられなかった存在の気配に振り返る直前、傍を輝きが通り抜けていく。

 

『マスターアップ! Q-クエスター!』

 

 即座に魔法を展開し、声の方向に駆け出したクイール。

 一歩遅れて振り返れば、そこには剣を振り抜いた彼女がいるだけで、声の主の姿はなかった。

 ――まさか、今の一瞬でそれを倒したのかと――

 

「――いや危ないな! いきなり斬りかかってくるとか野蛮人かキミは」

「いえ、勇者です」

 

 ……そんな筈はないと考えてはいたが、どうやら咄嗟の回避を優先して屋上の縁から滑り落ちていたらしい。

 やや黒い外套を砂で汚したオドマオズマが、焦りの表情を浮かべながら再び上ってきた。

 

「実力の分からない相手に普通ここまで強気になれるかい? アリスアドラに会った時はもっと慎重だったと聞いたんだが」

「いやまあ、あっちはともかくあなたはそこまではっきり“無理”って感じないもので。今ならまだなんとかなりそうっていうか」

「やっぱりキミ嫌いだ。エンタメ精神の欠片もない。今の私が本領でないと気付いているならそのカードを切るまで待つべきだろうに。お約束というやつだ」

「どこの世界にそんなお約束があるんですか」

 

 そうしている間に、リッカも思考を中断する。

 気が抜ける相手だが、四天王の一角だ。僕たちが油断していい相手ではない。

 

「リッカ」

「――うん」

『トランスコード! アクセプション!』

 

 リッカが目覚めている状態での魔法の使用は、久しぶりな気がした。

 この状態でこそ、魔法は最大限の効果を発揮する。

 クイールに追いつくということこそないものの、僕の、僕たちの――勇者としての、完全な形だ。

 

『U-リッカ――オズマッ!』

 

 向き合ったオドマオズマには、その手に魔力で紡がれた枷が巻き付いている。

 あれが彼の力を抑制していることは分かる。しかし、そうでなくとも彼自身の強さは、リーテリヴィアやアリスアドラには及ばない。

 彼の本領は死体を操るリッチとしてのものだ。

 本人が戦うということそのものが不得手なのだろう。

 

「……兄様」

「ナディア、キミもそう思わないか? 真の力というのは出し惜しむものだ。そして、相手にそれがあるならば加減している間は察して程々に手を抜くもので」

「今のこの世界について、勇者たちから聞きました。かれらにそんな演劇をさせたいならば、人間に対し魔族の力が圧倒的すぎるこの世界を作り直す必要があると思います。魔族の趣向に付き合うなど、試練とやらで手一杯だと分からないのですか?」

「……ロマンがないなあ、この世界」

 

 ナディアに淡々と正論を叩きつけられ、オドマオズマは肩を竦めた。

 彼の理想はまさしく“演劇”と呼ぶに等しいものだ。

 そんな物語のような展開に付き合っていられるほど、僕たちは対等ではない。

 

「ネシュアが懐かしい。あの頃はお約束もしっかりお約束だった。上昇志向が廃れてしまったのは本当に残念だ」

「――――ど……どの口がっ! あなたがすべて台無しにしたのです! ネシュアの歴史も、誇りも……っ!」

「な、ナディア、落ち着――」

 

『――DECODE――』

 

 激昂するナディアを止めようとしたその時、それに合わせたようにノイズの混じった魔法音声が響いた。

 彼女に浮き上がった術式が魔力を放ち、近付こうとした僕を弾く。

 

「こ、これは……!?」

「気を付けたまえ、我が妹。あまり怒りに気を昂ぶらせると勝手にそれが再発動してしまうかもしれない」

 

 案じているのは言葉だけ。手遅れに過ぎるその忠告には、まるで感情が乗っていなかった。

 

「……ユーリ、離れて」

「くっ……」

 

 近くにいては不味い。彼女が変じたあの姿が持つ武器は強力だった。

 僕たちでは、近距離で彼女と相対することは好ましいこととは言えない。

 その場から飛び退くと同時、そこに回転する刃が突き刺さった。

 

「っ、ぁあ――!」

「ナディアちゃん……、それで? なんで今更こっちに顔を出したんですか?」

「勇者を裁定する四天王としては、当然のことだろう? これは試練だ。並の人間では音を上げてしまう難所でなければならない」

 

 刃は縦横無尽に僕たちに襲い掛かり、ナディアはそれに振り回されている。

 クイールは魔族を相手に出来ていたが、そもそもこの屋上は自由に戦闘が出来るほど広いものではない。

 振り回される刃を躱すことだけに注力していれば、あっという間に追い込まれてしまう。

 

「や、やだ……! 動か、ないで……っ!」

「無難に、平穏に、確実に済まされてはつまらないんだ。土の試練はもっと、混沌の中で繰り広げられるもの――」

 

 ナディアの悲鳴を聞き流し、オドマオズマは己の試練の何たるかを語り上げる。

 彼にとって、ナディアはやはり、試練のための道具でしかないのだ。

 

「っ……ごめんなさいっ、ナディアちゃん!」

「ぁぐ……!?」

 

 追い込まれるままではいけない。

 ひとまず拘束を試みようとしたとき、同じタイミングで対処を決定したクイールがナディアを僕たちから引き剥がす。

 剣の腹を当てる形で、出来る限り傷つけず――そこから魔力の放射を行うことで、彼女を吹き飛ばした。

 しかし、開いた距離を詰めることなく、ナディアの腕は飛んだ先で振り上げられる。

 

『――FINALIZE――』

 

 ノイズ混じりで聞き取りにくいが、それは僕たちも知っている単語。

 魔法音声の直後、回転する刃の群れに凄まじい魔力が供給され、暴れ狂う青黒い嵐が形成される。

 

「――試練らしく、もっと混乱し、盛り上げたまえよ。そうでなければ面白くない」

「オドマ、オズマ……っ!」

 

 事態を混乱させるためだけに、この場に来たのだろう。

 言いたいことを言い終えて、輪郭を解れさせたオドマオズマが立っていた場所は、程なくしてナディアが巻き起こす嵐に巻き込まれる。

 あの、僕たちにおける必殺技に該当するほどの攻撃は、近くにいてどうにかなるものではないと確信できる。

 ここから離れ、全て躱し切るほかないが――恐らく広範囲に渡る攻撃だ。

 たとえクイールでも、纏めて受け止めることは難しいだろう。彼女もまた、“自身が生き残るための”努力が必要だ。

 

「づ、ぅ……ああ、もうっ! 三人とも! 離れなさいっ! 巻き込まれますわよ!」

「――クイール!」

「ええ、こっちも一旦集中します! そっちも何とか生き残ってください!」

 

 これに対する判断は、クイールと一致した。

 ナディアは自身が発動を止められないと分かり、僕たちに退避を促す。

 仕方ない……今は、生き残らなければ。

 

「ユーリ!」

「うん――逃げるよ!」

 

 聖剣に魔力を込めながら、まったく違う方向に跳ぶクイール。

 “向こう側”に逃げることは出来ない。即座の合流が出来るかは分からない――まずは、僕たちもこれから逃れないと。

 

『トランスコード! アクセプション!』

 

 屋上から跳びながら、形態を切り替える。

 地上に降りればゾンビの群れで離れることも困難だ、ならば。

 

『U-リッカ――バラーズッ!』

 

 空を使って離れるしかない。

 呼び出された虫の群勢が体に張り付き、それまでとは別の外装を形成していく。

 そこから伸びた、大小さまざまの翅によって、落ちる筈だった体が支えられ、高度を上げ、その場から離れる。

 それを追うように――

 

『――Y-EXTINCTION――』

 

 嵐が肥大化し、あっという間にその建物を呑み込んだ。

 轟音と共に辺りを削るあの刃の群れが、そのまま巨大化したような破壊力。

 周囲の被害など度外視し、破壊を齎すことだけを考えた、魔力を惜しみなく使った“兵器”。

 それが巻き起こした風に煽られた次の瞬間には、円状の刃が無数に迫ってくる。

 何を狙っているとも思えない、何を狙う必要もない、嵐の中で掻き混ぜられるだけで何もかもを切り刻んでいく破壊の群れ。

 

「ユーリ、躱せるものだけ躱して」

「分かった――!」

 

 使い魔たる虫たちは風で飛ばされかけつつも、僕たちから分離しては固まって盾となる。

 受け止めたものを削り切って破壊する刃を弾き返すことこそ出来ないものの、障害物となった盾のおかげで、無理な角度から飛んできても回避が叶った。

 ――『バラーズフューリー』が操る虫たちは、膨大な数だ。全てを完全に統制することは不可能だと、リッカは言う。

 ゆえに基本的な行動指針として定められているのが、装着者の自動防御。

 特別な命令を受けていない虫たちが、僕たちを危機から守るべく、装甲の強化や分離による防御を行っているのだ。

 

 躱す、躱す、受け止める、躱す、受け止める――

 どこまで逃げたのか分からないが、それなりの距離を飛行し、ようやく風が穏やかになる。

 嵐の中心、つまり僕たちが先程までいた場所は、まだ滞留している霧のような魔力の向こう。

 すぐにあの場に戻るのは不可能か、と判断する。リッカもまた、同感だった。




【ナディア】
全部剥かれたうえで隅から隅まで解析されたあとまた変身させられた。

【リッカ】
全部剥いた。

【オドマオズマ】
持論を熱く語っていて気付いたら誰もいなくなっていたので様子を見にきた。
つまらない攻略しようとすると主催者特権でテコ入れに来るタイプのエンターテイナー。

【バラーズフューリー】
初登場42話(現在84話)、これまでの使用回数二回、一回は移動要員、残り一回はリッカ主動。
ようやくユーリ主動のうえ戦闘に起用された不遇虫フォーム。
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