凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法   作:けっぺん

86 / 373
『極熱★戦士』/七色妖精戦隊(アイリスバスターズ)大ピンチ!?

 

 

 発動が終了し、虫たちが駆け抜けた後には、妖精たちの姿はなかった。

 しかし、倒したという確信は一切持てない。

 ……放っといてもう行こうかという思いが生まれる。絶対リッカも反対すまい。

 

「――いやぁー、すんごい魔法使うねぇ。私、びっくり」

「うぇ!?」

 

 凄まじく呑気な声は、耳元から。

 当たり前のように肩に乗っていたのは、攻撃した先に集まった筈の一人。

 リッカには見えない、小さな妖精。

 確か……リャナンシーのシェリーと言ったか。

 

「ユーリ?」

「……っ」

 

 異様な光景が、肩にはあった。

 自動防御が発動しているようで、虫たちが蠢いている。

 小さな妖精であれば、それに容易く呑み込まれてしまうだろう。

 リッカの使い魔だと知らなければ、僕も忌避感を抱くと思う。

 しかし、そんな虫たちの蠢く型の中で――少女は平然と座り続けていた。

 

「この虫たちも感じ取れるんだ、私のこと。でも、キミの中から聞こえる女の子の声の方は、私は見えないし、感じ取れない。うんうん、分かってきたかも」

「……リッカ。リャナンシーってどんな種族?」

「……よく知らない。妖精なら、碌でもないのは分かるけど」

「わぁ、辛辣。そこまで言われるほど私たち悪さしないし、そんな力もないんだけどな」

 

 魔族の知識を幅広く持っているリッカでさえ、知らない種族。

 リッカといえど、知っているのは殆どが本からの知識。それは過去の人々が伝えてきたからこそのものだ。

 あまり人間と関わりがないのか、伝えることが出来なかった種族なのか。

 どの道……この少女は、強くなくとも危険でない保証はない。

 リッカが見ることが出来ない以上、僕がどうにかしないと。

 ――もしも、リッカを害そうとしていた時、それをリッカは知ることも出来ないということだから。

 

「みんな、妖精に偏見持ちすぎだよね。いや、ピクシーやらフェアリーが百害あって一利も無い存在ってのはあるけど。でも私たちリャナンシーは恋の妖精、恐れることなんてないのに」

「……」

 

 虫が蠢く中に手を伸ばす。

 虫たちが彼女をすり抜ける中で、手で掴むことは出来た。

 ……もしかして、敵意や害意、攻撃性に反応しているのだろうか。そうであればより厄介だが、とりあえず、掴めるならばそれでいい。

 

「ん? なになに? そういうアプローチ? 積極的だ――」

「――――っ」

「ねえええええええええええ――――!?」

 

 多少、悪いとは思いつつも、少女を力の限り放り投げた。

 傷つける目的ではない、単純に“離れてほしい”という意図のもとの投擲は、効果抜群であったらしい。

 先程もレッドキャップの少女に紹介されていた時、爆発に巻き込まれていた。

 あれもリャナンシーそのものを傷つける目的が一切ない、想定外だったとすれば説明がつく。あの爆発自体が謎ではあるが。

 

「……なんとなく察した。ナイス、ユーリ」

「ありがと。ところで、残りの魔族は……」

「よくもやってくれたな! 怪人蟲野郎!」

 

 小さな少女以外の魔族の行方。

 だいぶ離れた廃墟の陰から駆けてきた赤い少女を見て、本当に何が起きたんだろうという疑問は大きくなった。

 

「名乗りを上げている最中に攻撃するな! 最低限のマナーというか、お約束だろ!」

「……そうなの?」

「お前も怪人になる前の姿があるなら分かるだろ! 変身の最中に攻撃されたことがあるか!?」

「あるけど」

「あるの!?」

 

 彼女の言うマナーが本当に存在するかは分からない。妖精独自の風習なのかもしれない。

 いや、お約束を重視していたのはオドマオズマも同じだ。

 もしかすると、ネシュア国跡というこの場所そのものに伝わるものなのだろうか。だとしたら、外から来た僕たちが納得して対応するのも難しいのだが。

 

「……ま、あるよね普通。勇者をどう陥れるかを考える魔族は多い。そういう魔法なら、本領出す前に無力化するのが一番有効なんだから、ヒヒ」

「ベル! 生きてたのか!」

「いやフレアたち転移させたの自分だし。後で費用は請求するから、そこんとこよろしく」

 

 レッドキャップのフレアという少女に続いて姿を現したのは、眼鏡を掛けたグレムリン。

 そしてブラックドッグも程なくして駆けてきた。

 背中にはリャナンシーの少女を乗せている。結構遠くまで投げた筈なのに早くも仲間と合流したらしい。

 

「……ちなみに。費用ってどのくらい?」

「このくらい」

 

 ベルと呼ばれたグレムリンは、フレアの恐る恐るの問いに対し、手に持っていた板状の魔道具に映し出されている何かを指して答える。

 

「たっか!? ちょ、ちょっとお友達価格とかで値引きされないの!?」

「お友達だから命助けたんだが?」

「勘弁してぇ! せめて次のアルラウネ島での公演まで待ってよぉ!」

「うーむ……まあ返済日を延ばすのもいつも通りだからいいんだが、やはり誠意というものは必要じゃないか? 自分もこうして命張ってる訳だし……」

「なんでもするからぁ! 次のお給金までギリギリなの――」

『バラーズ・エクスタシー!』

「わああああああああああああぁぁぁぁぁっ!」

 

 本能的に、必殺技のコードを実行していた。

 対等なのか、対等じゃないのか分からないが、妙に生々しい空気のするその関係をあまり前にしていたくなかった。

 直撃した実感はない。それがグレムリン――ベルの仕業であるならば、その技術は油断できない。

 

「ヒヒ、本日は大儲けなり……いいね、あの勇者気に入った。容赦のなさにノリがあるところがいい。九十九代目とは大違いだ」

「いやあああああああああああ! 借金がああああああああああっ!」

 

 ほら、やはり避けていた。“次”を撃つ準備をしつつ、まったく別の場所から姿を現した彼女たちに再度向き直る。

 フレアは出てきた時の強気さは何処へやら、自身に降り掛かる負債に頭を抱えて崩れ落ちていた。

 ……なんだろう。

 僕たちの立ち位置がすごい邪悪に見えるというか、子供をいじめている気分になる。

 

「ぁぁぁぁ……ん? 勇者?」

「気付いてなかったのかフレア。勇者だよ勇者。大方オドマオズマの試練に来たんだろう。さっきの魔力の嵐は彼らとは違うし、あれを生き延びたっていうんなら結構凄い筈だぜ」

「勇者だったんだあの子。ふーん、へー……」

 

 違和感に気付いたように、フレアは顔を上げる。リャナンシーのシェリーも、感心したように視線を向けてきた。

 アッシュと呼ばれたブラックドッグは分からないが……残る三人で、僕が勇者だと分かった者はベル一人であるらしい。

 ……ある程度の力がある魔族は、見ただけで分かるのだったか。

 それを一つの基準とするならばあの二人は、やはり持つ力は小さいのだろう。

 

「……つまり人間なの? 巨大芋虫(クロウラー)とかの人型化魔法とかじゃなくて?」

「人型に化けるとしてあんな怪人に変わる理由なんてないだろ。いや、なんで勇者があんな格好してるかは知らないけど」

「つまりあれか! 悪しき魔族に改造されてそんな姿になってしまったんだな! 悲劇の勇者だ!」

「リッカ、何言ってるか分かる?」

「今の内にもう一回攻撃してほしいって」

 

 聞いてみれば、リッカは心底からげんなりした声で返してきた。

 あのきわめて独特な世界観を持っているらしいレッドキャップの少女の言葉は分かるが、意味合いが殆ど伝わってこない。

 ……方向性こそ違うが、こちらの大陸に来るための船旅で出会ったセイレーンに近しいものを感じる。

 リッカの翻訳は的確ではないのだろう。しかし、“そうした方が賢明だ”ともまた感じる。

 少なくとも、今は試練の最中だし、僕としては考えなければならないことが山ほどあるのだ。

 正直、付き合っていられないというのが本音だった。

 

「……よし」

「だあああああ! 止まれ勇者! 早まるな! あたしたちは言葉が通じない訳じゃないだろ! これ以上されたら今日の夕ご飯もままならなくなる!」

「容赦ないね勇者って」

「ヒヒ、次の攻撃を避けることになったら転移機構の費用総額はざっと……」

 

 正直なところ、これで逃げてくれた方が助かる。

 リッカがこれまで、魔力の限界を訴えたことは少ないが、それでも限界がない訳ではない。

 こうして……試練に関係のない妖精たちを相手に、無駄打ちの自覚のある必殺技を繰り返すのは望ましくはない筈だ。

 

「そっちのキミの言う通り、試練の最中なんだ。構わないでくれればそれでいいんだけど」

「そ……それは出来ない! オドマオズマは知らんがあたしたちにはあたしたちの正義がある! ね、ネシュアを脅かす蛮行、許すまじ――」

『ファイナライズ! アクセプション!』

「ひっ……いや、いいや! 脅しには屈さないからな! レッドキャップの諦めの悪さを舐めてもらっては困る!」

 

 舐めていないし、もう既に十分厄介だと思っている。

 どうやら、これでも諦めてくれないらしい。リッカも既に嫌気が差しているが、倒すにしても懸念点がある。

 グレムリンが主動となっているらしき何らかの回避手段。クイールとも戦うことが出来た、強力な魔族に当たるブラックドッグ。そして、リッカが視認できないリャナンシー。

 つまるところ、あのレッドキャップの少女以外は警戒すべき存在なのだ。

 ――間違いなく、より面倒なことになるので口には出さないが。

 

 ブラックドッグも飛行は出来ないと見える。

 であれば、もう無視してこちらが飛んで逃げるのが正しい選択だろうか。

 

「あたしたちが協力すれば、決して負けることはない! 五人の絆でいつだって頑張ってきたんだ!」

「一人欠席してるけど」

「コッペリアだって気持ちは一緒の筈だ! あたしたちがピンチになったらきっと人形を寄越してきてお前なんて簡単にやっつけられる!」

「本人来る気ないのはフレアも認めてるんだよな。ぶっちゃけ自分よりアイツのが付き合い悪いだろ。いや、多分あいつ本当に来る気ないよな」

 

 なんだかかわいそうだが、フレア以外にやる気がない。

 これに関しても、ブラックドッグだけは感情も読み取れないが。

 ……そもそも何故、あの獣は彼女に付き合ってるんだろう。それが一番不思議な気がしてきた。

 

「……はぁ」

 

 リッカの溜息。魔族同士の微妙な関係など知りたくない。

 彼女たち……もとい、フレアは諦めていないが、もういいだろうか。

 まだリッカも本調子ではないだろう。

 これ以上、頭の痛くなるような魔族に関わって、無理をさせてもいけない。

 

「いくぞ怪人虫野郎! 覚悟――」

『バラーズ――』

「散開! 転移無しで逃げろみんなぁ!」

 

 発動の兆しを見せ、慌ててフレアが逃れようと動き出したところで、必殺技を中断して地面を蹴る。

 翅を広げ、羽ばたかせ、飛行が成立するまで彼女たちが反応できなければそれでいい。

 

「――あ!? 逃げるなお前ぇ! 卑怯だぞ! ベル、超重力フィールド!」

「あー、ギリ範囲外。アッシュが追い付けなきゃ無理だわ」

「 ―――― 」

「……んー……勇者、勇者かぁ。男の子が勇者なら、女の子は……面白いかも、これ」

 

 こちらに駆けてきたブラックドッグだが、不意を突いたのが功を奏したか、追いつけないと判断したらしく途中で足を止める。

 ……忘れようかな。うん、忘れよう。

 一体なんの時間か分からない、謎の出来事ではあった。

 しかし、忘れてはならない。試練の最中だ。気持ちを切り替えろ。

 僕たちが関わるべきは彼女たちではなく、ナディアたちなのだ――。




【キャプテン・フレア】
ヒーロー業も楽じゃない。

【ベル】
機械弄りの妖精グレムリン。水をかけると増える。
金銭について妥協するつもりはないが期限の延長は条件次第で承るタイプ。

【アッシュ】
墓荒らしの妖精犬ブラックドッグ。実質イヌブラザー。
この中では持っている力は大きく、場違い感が漂う。

【シェリー】
恋の妖精リャナンシー。不可視の妖精とかいうクソ要素の塊。
なんか合体してる勇者と連れの女に「ふーん、おもしれーCP」ってなってる。

【コッペリア】
有休。

【ユーリ】
この魔族たちすごく面倒臭い。

【リッカ】
頭いたい。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。