凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法 作:けっぺん
これで、どうして自分がリッカを誰より理解していたと言えるだろう。
積み上がった絶望で変わり果てたリッカの、その要因さえ今の今まで掴めなかった僕が。
リッカは魔族を極度に怖がっていた。
当たり前だ。ほんの一歩を間違える度に、体も心も徹底的に穢されてきたのだから。
――イリスティーラが話してくれた、敗北した勇者の末路。魔族の手に落ちた人間の扱い。
それをリッカは、この世界の誰よりも多く味わってきたのだ。
それでも、やり直すたびにぐしゃぐしゃになった自分を精一杯かき集めて、次こそはともう一度立ち上がる。
何かが零れ落ちても気付かずに、手で集めきれたものだけを持って、歩き出す。
ここは駄目だった。では、次はこうしたらどうだろう。よく調査して危険がないことが分かった。けれどやっぱり躓いた。
決して絶望に屈さない、トライアルアンドエラーの日々を真に理解する者なんて、誰一人いない。
共有できない秘密を抱えて、失敗して、秘密はまた大きくなって、足取りも余計に重くなる。
リッカの孤独の旅路は、ただ、その連続だった。
どうして自分が歩けているのかを、いつからか考えなくなった。意識すればもう歩けなくなってしまいそうだから。
「……」
「だから言ったのに……おい、大丈夫か? 自分がちゃんと戻ってきたこと、自覚できてるか?」
――目の前には、ラクガキの手があった。
秘密を無造作に暴き、巡るだけの回想は、いつしか終わっていた。
どれだけ時間が経ったのだろう。この真っ白な空間だと、それを把握することも出来ない。
いくつもの結末を、早送りで見ていた感覚だった。
リッカが躓いた絶望の中を、駆け抜けた。
もうやめてほしいと、何度思ったか。多分、これを実際に歩んできたリッカよりは、少ないけれど。
込み上げる吐き気をぐっと堪える。氷のように冷たくなった頭で、涙も流すなと必死で命令する。
「あんたはあいつほど強固な魂を持ってない。多分、回想する途中で擦り切れるかと思ったんだが。よく耐えたよ」
受け入れられなかった。嘘だと叫びたかった。
逃げようとする本能が口を動かそうとするのを、唇を噛んで我慢していた。
ふらつく足で、確かではないものを支えにしながら、止まらずに歩み続けたリッカを――ほかでもない僕が否定することなど、出来ない。
嘘ではない。妄想ではない。その絶望は、真実、リッカが経験してきたものだ。
「他者との感応、いや、共鳴か。特典級の能力だな。人間が根拠なしに得られるようなもんじゃないし、普通は相手の深部まで辿り着けない……なんであいつが勇者にならなかったのかって疑問だったが、納得だわ」
他者の心が分かるなんて、思ったことはない。
リッカの感情の向きだって、なんとなく読み取れるようになったのは、こうして旅を始めてからだ。
自由に使える気はしない。やり方だって、判然としない。
ただ、リッカを強く想っただけ。
――普通ではないらしい。当然だ。誰かとここまで深く繋がるなんて、あり得ないと分かる。
それが僕に出来たということの理由など知らない。その由来は、今の僕にとって、重要ではない。
僕はリッカを、ようやく知った。それが全部ではないかもしれないけれど、ここに至るまでの道のりを見た。
今、僕にとって重要なのは、これを受けての答えだ。
「……ねえ」
「なんだ?」
「動いても、いいかな。リッカのところに行きたいんだ」
「……」
見えない糸で縛られていたような窮屈な感覚が、瞬時に消えた。
地面も何もないような空間で、“立っている”というのは実に不思議だった。
足を動かし、見えないものを踏みしめて、歩くことが出来る。
この場所の理屈なんて、僕には一生かかっても理解出来ないかもしれない。どうでもいいことだ。こうして、リッカに近付くことさえ出来れば、なんだっていい。
「っ……こないで、ユーリ」
リッカを縛る拘束も、また解かれたらしい。
その場で蹲るリッカの拒絶は、先程よりも強く突き刺さった。
何より知られたくなかったその秘密に、無遠慮に踏み入ったのは、僕自身だ。
振り返れば、その罪悪感に押し潰されそうになる。けれど……それは、僕が耐えなければいけない重みでもある。
その上で、リッカの背負っていた重荷を抱える――実際にできなくても、そうする意思くらいは、僕は持っていなければならないのだ。
「こないで……みないで……おねがい、私に、ユーリを拒絶、させないで」
今ここで、僕がリッカの懇願に応じてしまえば、きっと、リッカはこの“結末”から目を背けて、次を目指そうとする。
今ここで、僕がリッカを否定してしまえば、きっと、リッカは今度こそ、その足を止める。
確証なんてない。ただ、そう思うだけ。
リッカは忘れ物をしながら歩き続けてきた。もう残っているものなんて露ほどにしかなくて、“次”は恐らく無理だなんて『管理人』が言わずとも分かる。
「……話を聞いて、リッカ」
「――やだ」
「教えてくれなかったから、勝手に覗き見した。僕のしたことは、そういうことなんだと思う」
口にして、最悪だと思った。
無意識にうちに心の中を検められるなど、誰だって嫌悪するに決まっている。
隠し通したかった秘密であれば、なおさらだ。それはリッカにとって、“知られたら絶交もの”の禁忌だった。
「無遠慮な僕から、リッカが今、離れようと……“次”に行こうとしていることも、分かっているつもり」
「…………」
リッカの奥底にあったものが、それほどのものだったなんて、ほんの僅かにでも想像できただろうか。
……できる筈がない。今の今まで、魔族に敗北することの本当の意味を、理解していたつもりでまるでしていなかったも同然なのだから。
そうして、本当の恐怖なんて知らないままの僕の“子守”をしていた結果が、あの数々の絶望なのだ。
何一つとして、僕が知っていたリッカの顔なんてない。
恐怖のその先……“今回の生”を取り上げられたも同然の姿になって、次を待っているだけのリッカを、何十何百と見た。
僕であれば、ただの一つとして、耐えられたとは思えないそれをひたすら繰り返して――それでも、まだリッカは諦めない。
そんなリッカの足を、今、僕は止めかけている。
「だけど……――リッカ、今からすごく、格好悪いこと、言うよ」
知ってしまって、言葉一つでリッカの全ては台無しになる。そんな状況でも僕は、言葉を選べるほど器用じゃなかった。
自分自身の、自覚した弱さを――受け止めてくれるリッカを、手放せなかった。
「僕を……僕を、見捨てないで」
「――――ッ」
リッカが、顔を上げた。泣き腫らしたような、ひどい顔だった。
耳を――見たところ耳はないが――そばだてていた『管理人』が、視界の端で頭からずっこけた。
口にした通り、自覚はある。すごく……ものすごく、格好悪いと。
どれだけ自分が弱いと分かっていても、今この場で言うべきことの中では、下の下も甚だしい言葉だと、理解している。
それでも、これは偽らざる僕の本音だ。
「リッカのここまでの選択は、殆ど僕のためだったんだよね。ありがとうって……いくら言っても、足りないくらい、僕はリッカに助けられてきた」
「っ……ちが、ちがう……たすけられて、ない……だからまだ……」
「今、僕は生きてるよ。生きて、“二つ”の試練に挑んでる。リッカに何度も助けられて、ここまで来て――そしてまだ止まるつもりなんてない」
リッカのために。そんな一心で、僕は歩いてきた。
それはこれからも変わらない。リッカがそうやってこられたように、僕だって、リッカのために歩き続けることなら出来る。
この思いを抱いている限り、諦めないと約束できる。
「だから、さっきのことは許さない」
「ぁ……」
「僕がリッカの秘密を覗き見たことを、リッカは一生許さなくていい。代わりに僕は、リッカがさっき、“今回”を諦めようとしたことを、絶対に許さない」
「……メチャクチャじゃねえか、あんた」
思わずといった様子で、『管理人』が口を挟んだ。
理屈にすらなっていないのは分かっている。こんな状況で、理屈を立てた物言いなんて僕にはできない。
心のそのままを言葉にする。どれだけメチャクチャであってもいい。
この場で僕がリッカを繋ぎ止める方法なんて、それしかないのだ。
「リッカはもう、僕を見限ったの?」
「……そん、な、こと……」
「――もしも。もしも、リッカが知っているこれまでの僕に、同じことを言った僕がいるなら、信じられないのも当然だと思う。けれど……今までリッカは、自分から諦めたことなんて、一度もなかった」
リッカが“今回”を諦めるほどの秘密を知った僕が、リッカにとっても初めてだというならば、まだこの先がどうなるか分からない。
可能性なんて不明瞭だ。
なんの心配もないなんて言えないけれど、乗り越えられないと決まった訳でもない。
「お願い、リッカ。まだ、見限らないで。僕を最後の最後まで信じて」
――少なくとも、これまでのどんな僕よりも、リッカを深くまで理解して先に進める。
だから、諦めないでほしい。何もかもを捨ててしまうのは、まだ早いじゃないか。
「……なんで……おかしい……おかしいよ、ユーリ……」
胸が痛かった。リッカが困惑を、否定を、拒絶を口にする度に、胸が痛んだ。
けれど、その疑問が何であれ答えを出そう。
そうすることでリッカが、もう一度、僕たちの世界で立ち上がってくれるならば。
「見たんでしょ……? 全部、ぜんぶ……私が、なにをされたかも、なにをしてきたかも……」
「――そうだね」
「じゃあ、おもうでしょ……気持ち悪いとか、きたないとか、こわい、とか……も、もっと、引いたり、おこ、怒ったりしないと、おかしい……よ……」
「……そう、かもね」
旅の最初の頃、リッカは言った。
あの魔法は、倒した魔族を殺すことはないと。
嘘ではない。殺してはいない。リッカは倒した魔族を資源として、利用し尽くしていた。
リッカは被害者であり、加害者でもある。それは疑いようのない事実だ。
この、僕が歩んできた旅路を――“今回”のみを考えるのであれば、リッカはただ、かれらの記憶にない憎悪を根拠に生きたまま全てを奪ったということになる。
“今回”のかれらがリッカに何をした訳ではないのだから。
ここで僕が、答えを出さない訳にはいかないのだ。
リッカがされた凌辱。
リッカがしてきた凌辱。
なあなあで済ませるつもりはない。
目を背けることなんて許されない。そんな逃げ道を選ぶなら、僕は僕を許さない。
だから正直に、すべて打ち明けよう。
「――嫌だなって思った」
「……じゃ、ぁ……」
「リッカが教えてくれなかったことを、嫌だと思った。僕が無意識に加担していたことを、嫌だと思った。何より、カルラについて、隠していたことは……ふざけるなって思った」
一緒に必ず魔王を倒して、生き延びて。
村に……カルラのところに帰ろうって――それが僕とリッカの至上の目標だって、ずっと僕は思い込んでいた。
それをリッカも肯定した。あの頃は、ここまでリッカのことは分からなかった。
あんな嘘、間違っても吐いてほしくはなかった。今でもなお、リッカがカルラを強く想っているからこそ、僕を騙していたことは腹立たしいと思う。
リッカが命を投げ出そうとした先程のことと同じくらい……もしかしたら、それも超えるくらい、僕はこのことを許せそうにない。
それこそ、一生……もしかしたら、死んでも、ずっと。
けれど――――
「……カルラ、そこにいるんだよね?」
「ッ――」
リッカと同じ目線までしゃがんで、震える体を抱きしめる。
リッカがどんな方法を使っているのかまでは分からないけれど、僕たちが倒した魔族は、リッカが管理するどこかの空間に存在している。
そこに、最初に引き込まれたのは、僕たちにとって一番大切な魔族だ。
その空間を見ることはできない。だけどこうして、リッカを通し、その奥底に――あたたかな存在を感じる。
あたたかいのだ。カルラは――リッカのことを、ほんの少しも恨んでいない。
……カルラにしたことについて、僕はリッカを許さない。
けれど、カルラが……リッカに、僕に“力を貸せる”ことを心の底から嬉しく思っていて。
こうして感じ取っただけで、向こうが気付いて、またも背中を押そうとしてくるくらい――おかしいならば。
「僕は、リッカを止めないよ」
「……あ……」
「リッカがこれまで歩いてきた道を否定したくない。リッカが歩けなくなったら、僕がリッカを背負って進む。リッカがやってきたことも、これからしていくことも――僕はリッカのためなら、共犯になれる。だから、“今回”まででいい……僕を信じて」
リッカのおかしさ。カルラのおかしさ。
それらに比べたらどうしようもなく平凡な僕だけど、二つを受け入れて近付くことなら、僕にもできる。
リッカのこれまでを受け入れて、これからを支えよう。カルラの助力を受け入れて、とことんまで先に進もう。
この自覚の仕方は、これはこれで“おかしい”のかもしれないけれど――
――今なら分かる。“だれか”があってこそ、僕の内にあるものは輝くのだと。
「何もかもを乗り越えて――リッカ、一緒に行こう。リッカが望む、ハッピーエンドまで」
「――ゆー、り……っ」
これでいい。誰がなんと言おうと、これが“僕”の、“僕たち”の在り方だ。
もう、次なんてない。次など認めない。
リッカはこれ以上死なないし、リッカの前で僕も死なない。
何があろうと、一緒にハッピーエンドに辿り着くのだ。
【管理人】
……本当なら、「めでたしめでたし」を願って送り返してやりたい。
俺だってそういうのは大好きさ。ハッピーエンドが転生領域の常なんだからよ。
だけどまあ……しょうがない。ユーリの力を考えれば今後も無意識なアクセスが続くってことになる。はぁ……悪者じゃんよ、俺。
……ん? なんだ? また強行アクセス?
わかった、わかったから、あとで見るからもうちょっとだけ大人しくしてて、ほんと。
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よぉぉっし、エリア9侵入成功!
あとは噂の四〇四最終障壁ただ一つ、休んでいる暇はないわ相棒! 全力で行くぞぉ!
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たすけて。