凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法 作:けっぺん
それはリッカにとって、救いとなる言葉ではなかったと思う。
どちらかといえば、僕はリッカを縛ったのだ。
逃げないように、見捨てられないように、僕と一緒にいてくれるように、と。
最後まで格好悪かったと思うが……それで、リッカを繋ぎ止めることができたならば、僕はそれで構わない。
リッカが離れていくことなんて考えられない。絶対に離すものかと――
「……ゆ、ユーリ、ちょっと痛い……」
「あ……ごめん」
気付けば、強く抱きしめすぎていたらしい。
リッカのくぐもった声の訴えに微妙な気まずさを覚えながら離れる。
少しだけ未練のようなものを感じて……しかし、リッカの表情から自暴自棄が薄れていたのを見て、胸に仕舞い込む。
「……告白、みたいだった」
そう冗談めかして、ほんの僅かに、リッカは笑った。
演技染みた、曖昧なものではない。笑おうと努力したものではない。
久しく見ていなかった、リッカの確かな笑顔だった。
――横の方で「は?」と間の抜けた声が聞こえた気がしたが、さほど気にならなかった。
「……確かに、ちょっとおかしかったかも」
必死に言葉を紡いだだけではあるが……振り返ってみれば、およそ僕自身が口にしたとは思えない。
引き留めるための文言としては、不相応な気もする。
うん……やはり、格好悪かった。それはそれで、僕らしいけれど。
――横の方でまた「は?」と間の抜けた声が聞こえた気がしたが、割とどうでもよかった。
「必死すぎて、ちょっとおもしろかった」
「……戻ろう。戻ろう、うん」
全部本心であるのだが、こうして揶揄われると途端に小恥ずかしくなる。
……“大昔”のリッカらしさが少しだけあったことは、嬉しかったが。
リッカの手を引いて、一緒に立ち上がる。
少しだけふらついたその体を支えて、ちゃんと、立てることを確認してから、僕たちは『管理人』に向き直った。
「僕たちを、元いた場所に戻してくれないかな」
「え、ああ、もう拘束はしてないからあんたたちが出ようと思えば出られる……いや待て待てご両人、俺がここにあんたたち呼んだ理由忘れてないか」
「――そうだった。私の本当の特典、教えて」
「マイペースの化身か?」
そういえば……リッカと『管理人』の会話の中で出てくる、特典とはなんなのだろう。
リッカはここまでのやり直しの数々が、それなのではないかと勘違いしていたようだが……。
それが、これからの旅路の力になるものであれば、知っておかなければならないと思う。
「そうじゃなくて。不正アクセスの件。あんたたちの話が上手く纏まったのは別にいいんだけど、こう、現地民がなおもアクセス手段持ったままってのは不味いわけ。この転生領域の在り方に関わりかねない」
「……ユーリの力を取り上げる気?」
「出来ればそうしたいんだけど。はっきり言って、そいつの能力はおかしい。やろうと思えば、あんたのIPをいくらでも悪用できる」
……不正アクセス。やっているつもりはないが、僕はリッカとつながるあの力を通して、この領域に都合の悪いことをしているらしい。
問題のあることであれば、封じるべきなのだろう。
そもそも、僕には理解できないような場所だ。どのような問題が起きているのかさえ、正直判然としない。
だが……この、ようやく理解した僕の在り方をすぐに取り上げられるのは嫌だ。
これを通して意識すれば、リッカをより深く理解できる気がしたから。
「本当、空気読めなくて悪いんだけど。俺にも立場ってものが――」
手放す気はないと言おうとして、それよりも先に、真っ白な空間にピシリと罅が入る。
僕が、リッカが、そして『管理人』が見上げるまでの間で、その罅は十分に広がって。
「超絶奥義天衣無縫エモーショナルワールドテンプテーションストラァァァァァィクッ!」
――は? と、重なった三人の声は、罅を蹴り破って突っ込んできた
まったくもって意味不明だが、凄まじい威力を持つことだけは分かる、空間を割った一撃。
その主は、勢いのまま『管理人』に突撃する――ことはなく、勢いをゆっくりと殺して降り立った。
「っしゃあ! 座標ぴったり! 久しぶりね管理人!」
「――あんた怖いもんないのかよ」
軽く手を上げたように見える。七色の光を放つ何かは親し気に『管理人』に話しかけた。
……知り合いなのだろうか。同じように雰囲気は掴みづらいが、なんとなく……『管理人』より手の付けられない存在であるという予感がある。
「どうやって……はもう馬鹿馬鹿しいからいいや。何しに来た。今物凄く……とんでもなく忙しいんだけど」
「あーうんそれ。直談判とか色々? ほら、推していた作品に変な文句付けられて大事な要素外されたら誰だって萎えるじゃん? コレ多分そうなる案件だわって察したから待ったを掛けに来たのよ」
「行動力のあるオタクほど厄介なもんはないな」
「ありがと。んでまあ、そんなこと教えてくれた相棒も別件で用があるって言うからさ。『縁ができたな!』って感じで組んだ」
「切実にお願いしたいんだけど“縁”の一言で気軽に世界観超えないでくれない?」
気付けば、周囲に何やら赤色の文字の羅列が凄い勢いで出現しては点滅している。
文字は読めないが、警告音と雰囲気からして異常事態なのだろう。
そして、その原因が今目の前にいることは明らかだった。
「はぁ……御託は聞いてやる。場合によっちゃお前ら全員デリートするからな」
「やっさしー。流石、CP厨の
「殺すぞ」
……仲良いなあ、とは言ってはいけない気がした。
それを言えば――というか、言わなければ、この理解できない状況は“丸く収まる”ように思えた。
「んじゃまあその前に……ほれ起きろ相棒ー、出番だぞー」
「……、お前、マジでねえわ……二度と組まねえ……あと相棒呼ばわりやめろ……」
どうやら七色の光の中に、これまで喋っていた女性らしき声のほかにもう一人いたらしい。
打って変わって、男性の声だ。
光の中から転げ出てきたのは、
白衣を着込んだ長身……頭には、右目の部分に穴のような絵柄が描かれた、丸々と膨れたウサギの被り物をしていた。
「アバターの趣味悪くないか?」
「ゲーミングサキュバスよりマシだろ」
『管理人』の少し引いたような言葉に即答し、ウサギの男はこちらに向かって歩いてくる。
まったく敵意はないが、もしかしたらと――僅かな警戒心をもってリッカの前に立つ。
――ウサギから、空気が鳴ったような笑いが零れ、七色の光が何やら大きく仰け反って蹲った。
「警戒するな。悪さはしねえよ」
「……誰なの? そっちの……なんか悶えてる光も」
「あれは気にすんな。人間、限界を感じるとああなるもんだ。あいつ人間じゃねえけど」
警戒は抜けないが、限界は感じたくないなと思った。
客観的に見て、あれは正常ではない。七色に光っていることを抜きにしてもおかしい。
「簡単に言やあ、そいつの知り合い。会ったことも話したこともねえがな」
「……」
リッカは、少し合点が行ったように、目を見開いた。
……恐らく、彼は……あの光もそうだが……リッカが心の寄る辺としていた、どこかのだれか。
結局“それ”がなんなのかは理解できなかったけれど、どんな形であれリッカを支えていた、だれか。
確信はないが、本来――どんなことがあっても僕とは関わる筈のなかった存在だ。
「察しが付くくらいの理解はあるな。ならそれでいい。……で、だ。俺はそいつに筋を通すために来たわけ」
「……?」
「――死に戻りが特典だろうっつったのは俺の勘違いだった。悪い」
そう言って、暫くの間、彼はウサギの頭を下げていた。
僕が踏み入るところではないのだろう。気になることではあるが。
「……それだけの、ために?」
「俺はな。有識者ぶってドヤ顔で解説したんだ。ノリも何もねえ真面目なところで。それが間違ってたってんなら一言謝るのが筋だろうよ」
「……」
「……以上だ。続けるんなら暇なときにスレ監視といつものアレはやってやる。お隣さんのよしみってヤツだ」
経緯は掴めないが、ぶっきらぼうな口調の割に彼は義理堅いのだろうということは伝わってきた。
踵を返して、彼はぬいぐるみのような頭をガシガシと掻きながら離れていく。
……敵意は露ほどもなかった。
「おら、お前も。なんか言いたいこととかねえの?」
「――え? あっ、いや、ま、うん……ッスー……いいかなって。見ているだけで満足というか、ハイ」
「お前のその基準なんなんだよ」
もしかしなくても、あの光っている方は危険なのではないだろうか。
いや、追及はよそう。
あまり関わるのもどうかと思った。とはいえ……あの二人が、僕の知らないところで、リッカを手助けしてくれていたというならば。
「えっと……よく分からないけど。ありがとう、二人とも」
「ェ゛ウッ」
「……もしかしてこのまま追撃すればこの
そんなことを呟きながら、ウサギは何故か動かなくなった光の足らしき場所を引きずって、『管理人』の方へ歩いていく。
「……んで?」
「ここからは交渉タイムだ。俺じゃなくてこいつが主な。あいつら……っつーか、あの勇者の能力を見逃せってよ」
「――あ、そうそう。つまりそういうこと。たかが不正アクセス一人握り潰すための交渉テーブルにこんだけ規格外の二人が座ってやるんだから感謝しやがれ?」
「なんで速攻で復活して上から目線なのこいつ」
あの二人は……それを目的に来てくれたのだろうか。
正体不明の支援者だったが、リッカの知り合いであるならば問題ない。
少しだけ、リッカが他の誰かを頼るということを、複雑に思う気持ちもあったが……それが、この先に進むのに必要ならば、受け入れるべきなのだろう。
「……リッカ。戻ろうか」
「――ん」
戻ろうと思えば戻れると、『管理人』は言っていた。
リッカが、信頼関係はどうあれ、この場をあの二人に任せることが出来るのであれば、もうこの場所にいる理由はない。
随分と寄り道をした。それは、必要な寄り道だった。
さあ――僕たちの旅に戻ろう。
「それで? 何を交渉材料にしようってんだ? ■■■・■■■■■■、■■■■・■■■」
「え、辞書お前TSしてたん? それにクッソ名家っぽい姓じゃん。もしかして元お嬢様?」
「俺にはお前の素朴すぎる名前の方が驚きだよ」
「俺なんでこんな奴ら送り出したんだろう」
――荒廃した、かつて大都市だった場所。
そんな景色はもう一度見たところで変化はない。
けれど……価値観が大きく変わったうえで感じる僕たちの世界は、何かが、違って見えた。
動く死体は、“生前”に目を瞑って、倒さなければならなかった相手だった。
ここから先は違う。
僕が失態を演じれば、リッカが犯される。
それが曖昧な決意から確信へと変わった。リッカがかれらと向き合って――抱く感情が埒外の恐怖であるならば、消極的な戦いなど選べない。
感情はない。会話も出来ない。
感じるべき“相手”が存在しないならば、僕はかれらに、何を思うこともできない。
ゾンビたちを“リッカの敵”としか判断できなくなったのは、果たして良いことなのか、悪いことなのか。
もしかするとこれは、勇者らしい姿ではないかもしれない。
だが、僕はリッカのためならば、勇者らしさなんていくらでも捨てられる。
どこまでも僕は――“一つ”のために邁進できる。
「……ユーリ、リッ、カ……?」
試練が始まった最初の場所にいると、なんとなく、分かっていた。
ナディアは既に、魔法による外装に覆われていた。刃の群れを宿した右腕の武器が振るわれようとするのを、必死で耐えているように見えた。
その隣には、黒い外套の男がいる。
ナディアのように、今もなお――リッカが“助けたい”と思っている存在ではない。
かつて、面白みを求めてリッカを凌辱した、リッカにとっての恐怖の対象だ。
「ハッハッハ! 来たな勇者! 今度こそ、あたしたちの絆でお前を倒す!」
……あのレッドキャップの少女たちは、よく分からない。
傍にブラックドッグとリャナンシーの少女こそいるが、グレムリンの姿はなかった。
リッカも困惑の方が強いし。なんなんだろう。
「……また魔除けを張り出した時はどうしようかと思った。積極的に覗き見するほど野暮じゃないが、また何時間と引き籠られてもつまらない」
彼らを前にして立つ僕たちを囲むように、死の群れは増えていく。
数えることは馬鹿馬鹿しいほどのアンデッドたち。
日が暮れ始め、夜が近付いてきたからか。それとも、彼が死の支配者として、強化を施したのか。
先程までよりも一人ひとりの力は高まっていた。
「夜になったら見切りをつけて、襲撃しようとも思っていたが……出てきてくれたのは嬉しい。キミたちならそうしてくれると信じていた。だが――」
彼――オドマオズマは片手を上げることでアンデッドの群れを制しつつ、その冷たい目をこちらに向けてくる。
深い興味の中に、僅かな困惑が見て取れた。
「あんな僅かな時間で、何が起きた? 今のキミに満ちたその勇気の質を私は知らない。それは、なんだ?」
オドマオズマの問いを受けて、ようやく僕は、自分の内に起きた変化の正体を知った。
ここまでずっと、小さな火であり続けたそのきらめきは、今は確かな大きさを持っている。
彼の言う通り、質はまったく違う。だがこの――赤色の中に混じった炎の色は、僕の“先輩”が唯一持つ色と同じものだ。
すごく、熱い。意識すれば巻き込まれて、焼けてしまいそうなほどに熱い。
ああ――なるほど。
これが、本当の“勇気”というものなのか。
「――ユーリ」
「うん。行くよ、リッカ……ハッピーエンドを勝ち取ろう」
周囲のほぼ全てが、リッカにとっては恐怖の色。
だからこそ、僕は目指す場所を強く意識して、リッカの手を引いて先に進む。
僕に身を預けてくれるリッカが、少しでも安心していられるように。
「トランスコード! U-リッカ!」
道を切り拓く意思をリッカと一つにして、拳を合わせる。
『トランスコード! アクセプション!』
魔力に変換されたリッカを、体中に纏っていく。
こうして戦う僕を、リッカは常に守っていてくれている。だから、こうしていることで僕もリッカを守るのだと、決意を心に刻み込む。
カルラから、そしてリッカの中にいる、戦ってきた“相手”から、一方的に力を借りる。
これらの要素をもって――
リッカが紡ぎあげた、まだ色の無かった“第五”の可能性に、僕が色を注ぎ込む。
燃え上がるような勇気を、リッカに託す。
特別な意識をした訳ではない。
僕も、リッカも、殆ど無意識。自分たちの可能性を信じるままに成立させた、勇者の姿。
『ユニゾンリンク! U-リッカ!』
外見通りの熱を帯びた真紅の外装、その全域が稼働を始める。
体の内側から、勇気が溢れてくる。想いがそのまま力に変わっていく。
なればこそ、負けない。負けられない。
これが僕とリッカが信じる、新たなる希望のかたちだ――!
【転生領域】
大女神が創造した、無数の世界を管理するための中枢空間。
元々、大規模な領域が一つあったのみであったが、管轄の世界が増えたことで、領域を分割し優秀な転生者に管理を任せることにした。
現在進行形で全体は肥大化している。いずれシステムそのものが破綻しかねないが、どの可能性をも否定できないのは大女神の寛容さゆえであるらしい。
リッカが転生者として送り込まれた、本作の舞台となる世界は第十二転生領域に存在する。
管理を任された転生者――通称管理人は、滅亡の危機などにより世界のバランスの乱れを観測すると、転生者をその世界に送り込む。
この際、決められたリソースの中で、転生者に特殊な力を与えることが可能。この匙加減は管理人に委ねられている。厳しいところはとことん厳しい。
転生者同士がコミュニケーションを取れるような手段を構築した領域も存在する。
転生者が他の転生領域へと移動したり、異なる転生領域の転生者同士がやり取りすることは困難だが、方法がない訳ではない。
他の世界に直接干渉を行うクロスオーバー行為は世界同士のバランスを著しく崩しかねず、下手すると領域全体に影響が及ぶため強く禁止されている。禁止なんだってば。
【掲示板】
第十二転生領域における、転生者同士のコミュニケーション手段。
この領域特有の方式ではなく、手段としてはポピュラーなもの。
アクセスの仕方は個々のイメージに依存する。脳内で処理を行う者もいれば、パソコンなどのツールを使う者も。
世界の平定を潤滑に行うための情報のやり取りを目的としていたが、現在は嫌気が差した転生者たちのエンターテインメントを求める動きにより一種の娯楽になりつつある。
第十二転生領域の掲示板はその傾向も強い。「お前まともに世界救う気あんの?」ってレベルの縛りプレイも盛り上がる。お前のことだよ安価スレ。
【■■■・■■■■■■】
リッカのスレに出没していた、とある転生者。ウサギ頭。
白衣を纏った青年男性。リッカたちの世界と技術的に近い世界にいる。
専門は魔法薬だが自身の世界の各種技術や果ては転生領域の事情など外部世界の知識にまで手を伸ばす知識欲と好奇心の持ち主。
非情に徹しているつもりで割と付き合いがいい……というか一度舟に乗りかかると下り時が分からなくなる。
間違いは認めて筋を通さないと年単位で悶々とするタイプ。
特典の件を勘違いさせたことはきっと混乱を生んだだろうと、リッカに一言謝罪するついでに、ユーリという例外を管理人に認めさせるための交渉テーブルにも同席している。
【■■■■・■■■】
リッカのスレに出没していた、とある転生者。ゲーミングサキュバス。
本気を出せばだれもが惹かれずにはいられない、圧倒的な輝きを誇る魂の持ち主。
推しが能力を上層部に見咎められる可能性を↑のウサギ頭に教えられ、居ても立ってもいられず世界観の壁を単独でぶち破って↑のウサギ頭を拉致り、第十二転生領域中枢に凸った。
推し本人を前にすると緊張して言いたいことが言えなくなるタイプ。
ユーリという例外を管理人に認めさせ、かつリッカのスレを存続させるために本話後半の裏でそれはもう全力も全力で頑張っている。
【管理人(CP厨)】
勇者くんカワイイヤッター!
【転生特典】
「俺は……?」
【リッカ】
3295:TS幼馴染系魔法使い
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